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星空の少女は兄の影を追いかける  作者: 白雪
第2幕A

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25 髪飾りとメッセージ


 一部始終を見届け、立ち尽くす。


 なんともいえないまま、各々で考えた。


 最後の言葉の意味はなんだったのだろう。

 彼女たちだけが知っているなにか。

 彼とはいったい。


 釈然としない。



 ややあって、異界が解けていないことに気づく。

 なにかまだやるべきことがあるらしい。


 トリガーはどこだ?


 探索するも見つからない。

 隅々まで行ってもない。

 娘を辿って場所を行っても、意味はなく。


 無人のテーマパークは寂しく、より静けさを増す。


 あと行ってないのはどこだろう。


 落ち着きなく周りを見渡し、ふと秘密基地の存在が気になる。

 あそこはなにもなかった。

 だからこそ逆になにか隠れているかも。



 再度行ってみる。

 空き家だった。

 だが、床はよく見ると色が違う。


 叩いてみると、隠し扉が開いた。

 自宅の地下室と同じタイプだった。



 目を丸くし、顔を見合わせてから、視線を戻す。

 ぽっかりと空いた空間へ、身を滑らせる。

 こもった空気が肌にまとわりつく。


 壁際にぽつんと宝箱が置いてあった。

 その手前で屈み、蓋に触れる。


 しっかりと境目に指を添え、持ち上げた。

 きしんだ音を立てながら、底が顔を出す。


 入っていたのは手紙だった。

 乾いた質感で、少しだけくすみを帯びている。


 ***


 瘴気が吹き荒ぶ荒野で対峙する二人。


「話がしたいのだ」


 エウリックはひどく真剣な顔で、訴えかけた。


「王国に仕えた者がなんの用ですか?」


 マハナは頑なな態度。


 爪を尖らし、空気をえぐる。

 そのモーションで術を発動。

 赤褐色の色が広がった。


 敵意をむき出しにし、殺しにかかってくる。


 対して、手を振るった青年。


 爆発音が花火を打ち上げるように、順に破裂。

 相殺。


 爆炎が晴れた後、平然とした顔で立っている男。

 つまらなさそうな顔になるマハナ。


「皮肉かしら? エウリックの能力なら無理やりにでも、私を従えることができたでしょうに」


 それをなさないということは、本気でなんとかするつもりがないことを指す。


 無言のままの相手。

 沈黙が肯定の証だった。


「あくまで私の意思でゆるしてほしいのですね。みそぎのつもりですか? そのようななことをしたところで罪はなかったことにならないのに」


 皮肉げな言葉は的を得ていた。

 図星だと理解した上で、言い訳はしない。


「お引き取りを。王国の犬にできることは、ありません」


 さげすむ目にエウリックは無言。

 ただ、なにか思うところがある様子だった。


 男は目を伏せ、剣を背負い直す。


 やがてはっきりとまぶたを開く。


 闇夜の中で赤く光る目はまるで、月蝕のようだった。

 濃い青の片目が埋もれている。


「了解した。退けばいいのだろう?」


 息を吐きつつ言い捨てる。ぶっきらぼうな口調だった。


「幸い私もやるべきことは済ました。土足で失礼したな」


 あっさりと背を向ける。

 あっけに取られるマハナ。


「あなた、いったいなにをしにいらしたの?」


 純粋に尋ねる。


 男はチラリと視線を後ろへ向ける。

 頭上には丸い月が孤独に浮かんでいた。


「なぁに、ただの置き土産だよ」


 軽く答えてから、歩き出した。

 遠ざかっていく影を、ぼうぜんと見送った女。

 遅れてなにをしたのかに気づく。


「あの男、心象風景に干渉していった……?」


 しかもさらっと抜け出して。


 なんて規格外。

 やはり本物は違う。


 ぼやいている間に、エウリックの影は闇夜に溶ける。

 彼が辿った痕を冷ややかな月の光だけが、照らしていた。


 ***


 島に来たのは国の痕跡を確かめるため。禊のため。

 エウリックでは生贄の娘の心を癒やすことはできなかった。


 だからこそウイユたちに託し、はこの底に全てを収める。

 彼女にだけ届くように。


『時が来たら本当の私を見せてあげよう。終点で君を待つ』


 手紙の最後に書かれていた内容を読んで、余韻よいんに浸る。


「ウイユ、もっと深く見てみて」


 エレナの喜々とした声。


 はこの底を見る。魔道具も同封されていた。

 報酬らしい風の属性の武具。もしくはアクセサリーか。


「まあ素敵。きっとあなたに似合うように選んだ髪飾りよ!」


 エレナが感激で声を大きくする。


 確かに兄からの贈り物はセンスがよかった。

 天青石を散りばめた花の形、中央にピンクトパーズ。


 皆は譲って、ウイユが掴み取る。


 装飾を頭の毛の隙間にした瞬間、流れ込んできたメッセージ。


「私――エウリックは冒険者として、妹に遺すものがあった。どうか君にも同じところまで来てほしかったのだよ。冒険者は冒険を通してしか、想いを伝えられない。そこでした互いの視点は交わらないと思ったからだ。私と同じものを見て、同じ感情を共有してほしかったのだよ」


 同じものを見ることで伝わるものもあるだろうから、と。


「だが、私のあり方に巻き込むつもりはない。おのれの人生を貫き通してほしい。誰に反対されようと、おのれで決めろ。君にはそれをする権利がある」


 霧がかった景色が晴れ、クリアになった。


 我に返り、前を見据えた。


 独白と共鳴するようにして聞こえたエウリックの言葉は、まだ耳の奥に残っている。

 ホラ貝を耳に当てると海の音がするように。


 それだけ伝えるために、自分をナティア島の奥に導いた。

 それは確かに重要なこと。

 だって、自分にはちゃんと届いたから。


 喪った相手の思いを受け取った。

 それだけで達成感と万感の思いで、いっぱいになる。


 兄にもできなかったことをなして誇らしくもあった。

 やっと彼の気配を追えた気がする。


 ちょっとした儀式を終えたように、パチパチと手を鳴らすエレナ。

 彼女が祝福を送る中、ハイラムは静観する。


 一方でアルフはどこか複雑な感情を、表に出していた。


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