表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/68

菅野涼の追憶22 何気ない朝に

 香ばしいコーヒーの匂いと流れる水の音で目が覚める。一つ大きなあくびが出た。首を少し動かし時計を見てみると10時を少しだけ回っている。台所ではかなめが背を向けて忙しなく動いているのが見えた。多分、昨日帰ってきてから食べたままにした食器を洗っているのだろう。


 その背中を何となく眺めていると、流れる水の音が止まる。タオルで手を拭いた後、両手にマグカップを持って振り返るかなめと目が合った。


「あ、起きたんだ。おはよう」

「おはよう。良い匂いで起きたよ」 

「そりゃ良かった」


 ちゃぶ台の上にマグカップを二つ置いたあと、かなめが目の前にやってきて、ベッドに縁に腰を下ろす。その際にパイプベッドがギシリと音を立てた。その後に、少し長めの音を立てながらフレームが軋みもう一度音を立てる。

 私は少し濡れた唇を舌でなぞった後でゆっくりと布団を抜け出し、かなめの隣に腰掛けた。


「今日はベッド買いに行くんだよね?」

「その予定だけど部屋が狭くなるなぁ」

「流石にこのパイプベッドは狭すぎるよ。それとも引っ越す?」

「……俺一人ならどちらも十分なんだけど。……わかったよ。噛むな」


 何とも男らしくないかなめの発言に軽く抗議をした後、一つ伸びをして立ち上がる。


「さて、冷めないうちに飲んじゃおっか」

「そうだね。折角淹れたんだし早めに飲んで欲しいな」


 ちゃぶ台に座り、湯気を立てるコーヒーを飲みながらかなめの顔を眺める。


「どうかした?」

「別に。見てるだけ」

「……面白い物でもないだろうに」

「案外面白いけど」

「……そう?」

「うん」

「……ならいいんだけど」


 不思議な顔をしてマグカップに口を付けるかなめの、昨日の言葉を思い出して、口に出してみる。


「好きな人の顔見てるの、私は好きだよ」 


 コーヒーを少し零したかなめに数枚ティッシュを渡し、先ほどまで見ていた悪夢の事を思い出そうとするが、見ていたことしか覚えていない様だ。


「いきなり何言うのさ。コーヒー零したよ」

「あら、あんたがそれ言うの?」

「ああもう」


 ティッシュで口元とちゃぶ台を拭いているかなめを眺めながら、コーヒーを一口飲むと、少し頭が目覚めてくる。


「うん。美味しい」


 恨めし気な視線を向けるかなめをつまみにしつつ、ゆっくりとコーヒーを口に含む。

 

「これ飲んだら準備してアーケードに行こうか。少し早いけどおかみさんの所で何か食べてからにしても良いし」

「お腹減ったから先にご飯」

「うん、知ってた」

「でしょう?」


 少し温くなったコーヒーが、少しだけ甘い気がした。

コーヒー大好きな二人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ