ペンキ絵師「菅野涼」5 夜食は二人で
結局出来上がったものは焼きそばだった。
冷凍していた袋めんと豚肉を解凍し、ややしなびたキャベツとニンジンと一緒に炒めながらみそ汁に乾燥わかめをぶち込む。勿論隠し味は大量の味の素だ。
炊飯しているコメは一人用炊飯器のギリギリである3合。それでも涼と一緒に食べるなら少し足りないとも考え、慌てて冷凍ご飯をレンジに放り込む。
涼は飯を良く食う。とにかく良く食う。運動系の部活をやってる高校生の男子かって位に食う。なのにあの体系を崩さないのはずるいと思う。最近は30を過ぎ、腹回りを気にすることが増えてきた俺にとってやや嫉妬を覚えてしまう。毎日あれだけ汗を流してるってのになぁ……。
味噌汁が沸騰する前にコンロの火を止めると、炊飯器から陽気なメロディーが聞こえてくる。急いで焼きそばを大皿に盛りつけていると後ろから聞こえていたいびきが止まった。
「んー。この匂いは焼きそばぁ?」
完全に寝惚け声で涼が声を掛けてくる。その後は大きなあくびもおまけについてくる。
「ちょうど今できたところ。盛り付けるからもう少し待ってて」
「おしっこしてくる」
「言うな馬鹿!子供か!」
「あー、まだ眠い」
フライパンから焼きそばを大皿に移しているため振り向くことも出来ずに声だけを張り上げていると、俺の横を涼は頭を掻きながら玄関側にあるトイレへと歩いて行く。この部屋の隣室はだれも住んでいないのが本当に幸いしてると思う。
「トイレのドアは閉めろよ!!」
以前あった、なぜか俺だけが気まずい空気になった事件を思い出し、慌ててそう大声で叫ぶと少ししてからドアが閉まる音がする。……やっぱりかよ。
盛り付けが終わり、ちゃぶ台に焼きそばと大盛りのご飯をよそった茶碗、二人の箸を置いているとトイレから水を流す音がする。
台所に戻りみそ汁をよそっていると玄関のドアが開き、涼が部屋に戻ってきた。
目をやるとまだ眠たそうに眼をこすりながらちゃぶ台の前に胡坐をかいて座る。口元には3本ものよだれの跡が白く線を引いていた。
「んー。やっぱまだ眠い」
「ご飯食べれる?」
「食べれる」
両手にみそ汁の入った椀を持ちながら俺もちゃぶ台の前に座る。涼はふと思い出したかのように、自分の足のにおいを嗅ごうとしていたのですぐさま止める。子供か。
「はい!ご飯食べますよ!」
「ねぇ、こっち来て匂い嗅いでみない?」
「はい!頂きます!」
「いただきまーす」
やっぱりこいつは大分変わっていると思う。
一寸だけ修正しました。ヒロインの奇行が高い壁となり、脱落者が多数だった模様。
何と言う狭き門だったのか……。少し前の雰囲気は残しています。
もしよければ感想など頂けましたら泣いて喜びます。




