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幕間

 とある日の夕暮れ、大型商業施設のイートインスペースの窓際のテラス席で涼と麻衣が並んで座っている。沈みかける太陽からの真っ赤な光を浴びたテーブルの上には、ハンバーガーやフライドチキン、ラーメンやドーナツなどがひしめき合っている。


「……マジでそんなに食べるんですね」

「え?晩御飯前だから少し抑え目だけど?」

「この後晩御飯食べるんですか!?」

「そりゃそうでしょ。これからかなめに逢いに行くんだし」

「……はぁー。そうですかそうですか」


 麻衣は仕事帰りなのだろう、パンツスーツにグレーのウィンターコートを着ているが、室内では暑いのだろう。コートの前を開けている。涼はきっと寒いのだろう、頭には白いニット帽を乗せ、丈の長い黒のダウンコートの前をしっかりと閉めている。そして、ハンバーガーのセットのフライドポテトをつまみながらラーメンをすするという、器用な真似を行っていた。


「……しかし、こんなに早く二人でお会いすることになることとは思っていませんでしたけど」

「私って不定休だからさ、スケジュールを見ながら行けるときには迷わず行くようにしてるのよ」

「……今日はどちらから?」

「福岡から。飛行機一本で来れるから楽なもんだ。札幌に来るのもエアポートで乗り換えなしとかあまりにもイージーすぎる」

「行動力の化身か?」

「やりたいことやってるだけ」

「やりたい放題とか、かな先輩大変そう」

「んー?まぁなかなか一緒にいる時間が取れないからさ。その分まとめてお届けしてるって感じかね」


 そう言ってラーメンを片付けに入った涼を横目で見ながら、麻衣は小さな溜息を一つ吐いた後、紙コップに入ったコーヒーを一口飲む。


「かな先輩は愛されてますねー」

「ん?そうね」


 喉を潤した麻衣の口から出た言葉にはやや棘があったが、涼は我関せずといった表情でレンゲを忙しそうに口に運んでいる。


「あーあ。何言っても無駄な感じです」

「あれ、あたしのだから」


 スープが空になったラーメンのどんぶりを端に除けつつ、涼の手がハンバーガーに伸びる。


「えぇ、まぁ。正直なところ、かな先輩に相手にされていなかった感じありましたし、そこは理解していますよ」

「あんたも綺麗なんだから引く手あまたでしょ」

「勿論です。ただ、私に合う男がいないだけです」


 ハンバーガーに豪快にかぶりつく涼はその言葉を聞いて肩を竦める。通りすがりのサラリーマンの男が、美人が二人並ぶのを珍しそうに一目見て小さく口を開けて何か言った後、テーブルの上を二度見してから去ってゆく。


「結構言うねぇ。ま、その内見つかるんじゃない?」

「うわ、全然心がこもって無いです。で、今回はどんな御用ですか?」


 既にテーブルで頬杖を突きながら、既にやる気の無さそうな麻衣は目の前のオニオンリングを摘まみながら投げやりにそう言うと、涼は一度手を止め頬のあたりを指で掻いた。


「んー。今度かなめにプレゼントでもしたいんだけど、あいつの好きそうなものとか教えてもらおうかと思ってさ」


 それを聞き麻衣は「ニチャァ……」と音がしたかと思うほど、唇を三日月型に歪ませて涼の肩をバンバンと叩き始める。


「おーおー、良いですね良いですね。えぇ、えぇ。教えてあげますとも。かな先輩の事なら何でも聞いて下さいな」

「……あいつあんま自分の事話さないし、あたしのことも聞かないからさぁ。それはそれで嬉しいんだけど、こういう時困るんだよなぁ」

「かな先輩あるあるですね。あの人、そう言う事気にしないですし。」

「まぁそれは感じるね。で、どんな物贈ると良いかな?」

「えー。それはまず私をどうぞーってやってみればいいんじゃないんですか?」

「それはもうやった」


 ニヤニヤしていた麻衣の顔が涼の言葉で盛大に引きつり、肩を叩く手がはた、と止まる。そして、苦虫を嚙みつぶしたような表情でまたテーブルに頬杖をつき始めた。涼はそれを見て、口角を少しだけ上げる。


「……この人やっぱヤベーよ。何で聞きたくもない話聞かせるんですか」

「あんたが聞いてきたんでしょうが。で、どんなもの買えばいいんだろうか?」

「もう好きにして下さいと言いたいところですけど……。そうですね、かな先輩は……」


 ダルそうな表情でドーナツを手に取りながら、麻衣はゆっくりとかなめの事を語り始めた。

次回より第四幕になります。

今までとは違い涼の視点でのお話となります。

最初は少しだけ暗めのお話となりますが勿論最後はハッピーエンドです。

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