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幕間

 12月30日。午後8時ごろ、農道の基線を一台の軽自動車がヘッドライトを光らせて走っている。運転手には煙草をくわえながらハンドルを握る男が、後部座席にはシートベルトに縛られ、辛うじて体勢を保っている眠りこけた女が乗っている。


 ヘッドライトに照らされる冬の農道の先には、辛うじて町の明かりが見えていた。運転席の男はそれを見て安心したかのように、大きなあくびを一つした。


「ああ、そろそろ着くころか。この辺は変わらないなぁ」


 気が緩み、ふと襲ってきた眠気を誤魔化すように、少し大きな声でそう独り言ちると、短くなった煙草を灰皿へ押し付け捨てる。その際、少し開けた窓から吹き込む風が、煙草の灰を少しだけ巻き込み車内を舞った。


「おーい、麻衣。そろそろ着くから起きろ」


 運転手の男はフロントをぼんやりと見つめながら、大きな声を上げる。


「あー、もう着くの兄ちゃん」

「もうすぐだぞ。俺は一寸出かけてくるから先に実家に行くぞ」

「あ、かな先輩のところ行くんでしょ。私も行くわ」

「まぁそうだけどよ。お前が何で来るんだよ」

「久しぶりに顔見てみたいだけだって」

「邪魔くせぇな……」


 運転手の男、正木啓介は新しい煙草を咥えながら溜息を吐いた。


「……あいつ彼女いるみたいだからあんまりちょっかいかけるなよ?」


 啓介が口を開いた後、10秒ほど沈黙が訪れた。その後、麻衣が大声を上げる。


「はぁぁぁあああ!?かな先輩に彼女!?ありえないんだけど!?その女どんな変態なのよ!?」

「おい」

「だって、あんなどこにでも良そうな人選ぶなんておかしいじゃない!?」

「おい。そうだけれども」

「そもそも若い人なんていないでしょ!?」

「いるわ。自分の地元馬鹿にすんな」

「意味わからないんだけど。これはしっかりとお話聞かないといけなくなったわ」

「……すまんな会長」


 軽自動車は安全運転で進んでゆく。明かりのある方向へと。

第三幕の導入です。今回は登場人物が増えます。


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