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三助「大久保かなめ」10 白銀の世界とウィンターコーディネイト

今日は2話更新されています。

もしこちらを先に読まれている方がいらっしゃいましたら、一つ前にお戻りください。

 結局二人の準備が終わって家を出るころには11時近くなっていた。

 玄関を開けると、外は青空のまま。雪は降っていないが、時々風に乗って飛ばされた雪が舞うのが見えた。


「結構寒そう。前ちゃんと閉めた方がいいよ」

「おっけー」


 ひんやりとした風が火照った顔を冷ましてゆくのを感じながら、錆の浮いた手すりに掴まりながらゆっくりと階段を下りてゆく。少しだけ積もっている雪を足で蹴飛ばしながら。


「おー。結構積もったんだね」


 玄関を出たらしい涼が二階部分で声を上げる。


「さすがに昨日は結構降ったからね。一気に景色が変わったよね」

「前回の時とは別物だ。いい景色だね」

「毎日見てると直ぐに飽きるんだけどね」


 一階に置かれているスコップで簡単に歩道までの道を作っていると、かんかんかん、という音が聞こえてくる。


「手伝う?」

「いや、大丈夫。ありがと」


 降りて来た涼から掛けられた言葉に振り向く。

 トレードマークだったベースボールキャップは毛糸のニットになり、モスグリーンのコートの裾からは、今まで見たことのないベージュのスカートが風に揺れていた。


「お、やっぱり惚れ直した?」


 ニヤニヤとした顔の涼にそう言われ、少しだけ顔を反らす。

 視界の端に見える涼の顔には今日は初めてあった頃に見た、紫色のフレームのメガネが掛けられている。どうやら交換用のコンタクトレンズを忘れて来たとのこと。

 風呂場から出て来たその姿を見て、どうやら俺は馬鹿みたいに口を開けて突っ立っていたらしい。少し記憶が飛んでいた。


「さっきはちゃんと見てくれなかったからさぁ。折角気合入れて来たのに」

「……不意打ちはズルいと思うんだ」

「かなめのそんな顔が見れたし私は満足だ」

「心臓止まるかと思ったんだぞ」

「で、感想をまだ聞いてないんだけど?」

「……正直スカート着てるの初めて見たし。……眼鏡も似合ってると思うよ」

「ほう、それで?具体的な感想を求めます」

「……似合ってて可愛い!惚れ直した!!これでいい!?」


 やけくそで叫んでみると、自分の顔が真っ赤になっているのが見なくてもわかる。そこらの雪に顔でも突っ込みたいくらいには熱くなっている。屋外で三十路過ぎたおっさんに何を言わせるんだこいつは。


「そっかそっか。こういうの着るの久しぶりだからさ、気に入ってもらえるかどうか、結構不安だったんだ。嬉しいよ」


 涼から帰ってきた言葉はちょっと意外だった。てっきり揶揄われると思っていたが、少しはにかみがちに俺のことを見つめている。え、何この人、可愛い。


「え、そんなこと考えてたの?」

「悪い?そんな事って言うけど、私こんな格好しないでしょ?」

「まぁ、そうね」

「随分あっさり言うなぁ……。ま、勇気を出して着てみて良かったってお話。じゃ、行こうか」


 少し顔を赤くした涼が雪をどけた道を歩き、歩道へと出てゆく。

 その後ろ姿の、自慢の黒髪にはバレッタが陽光を浴びて薄く輝いている。


「うん。行こうか」


 少し先で止まり、こちらを振り向いている涼の隣へ行くと、しっかりと腕を絡め取られる。

 驚いて涼の顔を見ると、先ほどまでのはにかみ顔は何処へやら。おすまし顔で何やら手を振っている。その先を見てみると、吉田さんが歩道のあたりに立っておりニコニコ顔で手を振り返していた。


「吉田さん何時からいたの?」

「え?私たちが出た時からいたよ?見てなかった?」

「見てないけど?聞いてないけど?」

「そーかぁ。見られちゃったものは仕方ないよねぇ」

「ねぇ、さっきの聞かれてないよね?」

「さぁどうだろうか?じゃあ吉田さんに直接聞いてみようか?かなめがなんて言ってたか聞こえましたか?って」

「いや、そこまでは……」

「じゃあさ、吉田さんにかなめがなんて言ってくれたかをちゃんと教えてあげようか?」

「……鳳梨館行こうか。食べたいもの奢るから」

「お、太っ腹だねかなめくん。何食べようかなぁ」

「……お手柔らかにお願いします」

「じゃあ、おかみさんのところでワンタンスープ頼んでも良い?」

「ええ、涼様の言うとおりに致します」

「よーし。では出発!」

「おー……」


 思わぬ出費に頭が痛くなるが、それでもその笑顔が見られるなら安いものだ。

 そう思っているのは昔からなのだけれども。

私はメガネ女子が好きなのです。

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