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第七話 兆し

「どうも先日はお見苦しい真似を……」

 

「あはは、気にしていないから大丈夫だよ」

 

 転生した次の日の昼休み時間。俺はマイロの元へ向かうことにした。

 王に報告するより次の代の覚えをめでたくしたほうがリターンがでかいのではないか?と思ったからだ。

 今の王は功績を多く残しているが、病を得ている。……残りは少ないかも知れない。

 次代であるマイロは年齢が年齢だから、大した功績はないからな。

 

 人は満たされている状態のときに優しくされても大して恩義を感じないが、苦しいときに優しくされたら……というのはよく聞く理論だ。

  

 マイロはかなりおおらかで、礼儀にもさほど厳しくない。

 だが、周りにいる取り巻きというか……将来の股肱の臣となるであろう男子生徒たちの目が厳しい。

 今の俺になるまでのような振る舞いができなくなったからな。近づけようとは努めているが、やはりボロが出ている。

 一部俺の胸に目が行っている生徒たちもいるが、気にしないことにした。

 

 俺だってこんなばるんばるんのおっぱい持った美少女とか絶対そういう目で見ちゃうし。

 俺の見た目は紫色の髪をハーフアップにしたツリ目の美少女といったところだ。

 顔面レベルはひっじょーに高いが、それ以上に特筆すべきは凄まじいまでの巨乳だろう。

 乙女ゲーのキャラだけあってか、二次元キャラによくある奇乳になってないのもまた高ポイントだ。

 あんまりにも大きすぎると興奮よりも気持ち悪いという印象を与えてしまうが、そうならない程度にめちゃくちゃ大きい。

 

 俺は貧乳が一番好きだが巨乳も嫌いじゃない。否、大好きだ。

 だから彼らの気持ちはよ〜くわかる。なので責めはしない。できない。

 ただ、どうせなら貧乳が良かったと思う。好み的な意味でも肩が凝って大変という意味でも。

 

「今日はとある重要な要件があって来ましたの。できれば人払いをしてくれればありがたいのですが」

 

 臣下たちの目が一層厳しくなる。万が一俺がマイロを襲って既成事実でも作られたらコトだからな。

 体格差や腕力差もあるしそうは行かないとわかっているだろうけど、警戒を怠らないというのはなかなか優秀じゃないか。

 

「ああ、構わないよ。君たち、できれば……」

 

「ああいや、信用のおける臣下の方々ならば構いませんわ。いっし……いや、なんでもありません」


 一緒に密室にこもって噂されたら恥ずかしいし……と言おうとしたが、流石に礼儀が欠け過ぎだな。

 マイロが礼儀を気にしないタイプかつ、前世の貴族社会よりははるかにおおらかなこの世界でも問題だろう。

 

「それで、なにがあって僕に会いに来たんだい?」

 

「……マイアス子爵家に謀反の兆候あり、という噂はご存知ですか?」

 

 マイロが顔色を変えた。

 

「いや、そんな噂は聞いたことがないな。王家に恨みを持っているという話を聞いたことはあるけど……」

 

 いつだったか、マイアス子爵領を震源地として地震が起きた。津波の被害もあり、損害は甚大だった。

 しかし王家は当時起こっていた戦争のために、インパクトを受けた直後のマイアス子爵家からも兵を起こすように命じた。

 戦争は労働力も金も持っていってしまう。防衛戦だから仕方ないとはいえ、マイアス子爵家は踏んだり蹴ったりだな。

 一応王家も本来は500人の兵を集めるところを300人で良いと妥協はしていたが、一番辛いときに助けるどころか踏みにじってきたのだと王家を恨むようになった。

 

 それ故、麻薬によって金を得て、いつの日か王家に復讐を誓おうとしたのだ。

 麻薬を密造することを決めたのは先代マイアス子爵だ。彼の反骨心は相当なものだった。

 今代のマイアス子爵はその操り人形でしかない。彼は正義感からかバランス感覚からか必死に止めようとしたが、先代の復権を止められなかった。

 連座で死刑だろうが、まあ仕方ないな。可哀想ではあるし、できれば助けたいが助ける意味も義理もない。

 

 作中ではほとんど語られることのない部分なので前世ではあんまり直視していなかったが、こうして現実になると乙女ゲーとは思えないほどの凄惨さだと感じた。

 

「そんな噂はありませんからそうでしょうね。私とてつい最近気づいたので噂が出回ってるはずがありません」

 

 臣下たちの目が厳しくなる。しかし、マイロは表情を重くして聞いていた。

 

「……続けてください」

 

「ですが、謀反しようと思っていることは事実だと思いますよ。……これは我が商家やその系列店から買い上げた商品のデータです」

 

 マスデロから借りた資料をポケットから取り出し、広げてマイロに渡した。

 

 しかし頭文字がマな人物が多いな。


 マイロ以外は原作では対して関わらないキャラクターだから見逃された部分なのだろうか。

 

「な、なぜ魔道具をこれほど集められるだけの金があるんだ!?」

 

 驚嘆の声が響く。

 

 魔道具の中には戦争で使う兵器と呼ぶべき代物も多くある。

 

 そういうものは値が張りすぎて多くは買えないのだが、マイアス子爵家はなんと40個もの魔道具の兵器を集めていた。

 これ以外にもカモフラージュ用に様々な用途の魔道具を集めたり、マイアス子爵の実直な人柄などもあって露見しなかったのだと思われる。

 それだけでは王家を打倒するには全く足りないが、さらに数を増やしていけばどうだろう。

 領内の多くの兵士に支給できるだけの数を集めれば、王家を打倒できなくても痛い目を見せるくらいはできるだろう。

 うまく行けば他の国と通じてこの国を滅ぼすこともできるかもしれない、

 

「彼らは違法に金を集めているのです。収支として報告しなくて良い、裏の金を。この資料もご覧下さい」

 

「青鈴星花とイェルメン銅貨を大量に買っている……異常なまでに。だがこれと違法に金を集めるということには関わりがない。なにか知っているんだろう?……教えてくれ」

 

「わかりました。ただし、少し危ないので下がっていてください」

 

 そこから俺は昨日家族の前でやったような実験をした。

 

 これはイェルメン銅貨の中に含まれる璃銅という成分を抽出するための実験なのだが、その璃銅を青鈴星花を液体にしたものと混ぜ合わせると麻神水が出来上がってしまう。

 

 本当ならマスクとか防護服とかを着たほうが安全なのだろうが、これら全てはそれ単体ではそう危険なものでもないので大丈夫だとは思う。

 

 そもそもこの世界にそんなものないし。

 

「……もしや、それは」

 

「そのとおりでございますわ。麻神水ですの」

 

 麻神水単体では麻薬のような作用はないし、処理も簡単だ。

 

 なんなら、使いようによっては薬にもなる。

 

 遠い未来ではそのように活用されるようになったとビジュアルファンブックに書かれてあったし、作り方も書いてあった。大雑把にだけど。

 

「そうか、そういうことか。どうも最近ニルヴァーナ中毒者が多いという報告を受けると思った。マイアス子爵家が関与していたのか」

 

 この方法を使った作り方では、本来のやり方より製造効率は落ちる。

 だが、バレにくいという利点があるのだ。

 だってこんな麻神水の作り方マイアス子爵家以外は誰も知らないからな。

 それに、マイアス子爵家の土地くらいにしか原材料となるきのこは存在しない。

 マイアス子爵家がなんで知ってるかは俺も知らん。

 

「ありがとう。君のおかげで僕は手柄首を取れそうだ。……でも、一つ聞いておきたい。君がこの方法をマイアス子爵家に流したわけではないでしょうね?」

 

 ……ああ俺の馬鹿!こんな方法取ったら普通疑われるのは当たり前だ!ポカやらかした!

 こんな密造方法知っているなんて普通じゃない。科学の実験とかいっても信じて貰えないだろう。

 マスデロは信じてくれたが、マイロからはそこまでの信頼はない。

 マイロは幼なじみだから、シアンのことは変人とはわかっていてもそこまでやるとは思われていないだろう。

 

 そこを勘違いしていた。

 

 俺がマイアス子爵に方法を横流ししたか、逆にこっちが教えてもらったのに恩知らずにもリークしたんだと思われているだろう。

 後者ならおとり捜査的なものだと言い訳することも可能だが、前者として受け止められているのなら……どうしよう。詰んだか?

 

「ああいや、別に責めているわけではないんだ。そうだとしても別に問題はない。僕には父上に負けないだけの手柄が必要だ。それを掴むチャンスを与えてくれた君には感謝しかない」

 

 マイロがにこやかにそう語りかけてきた。……ああ、そういえばこいつはそういうやつだったな。

 

 それをわかっているから話を持ちかけていたというのをド忘れて焦ってしまった。

 

 マイロの父親、今の王であるアレゲは中興の祖と呼び声が高い。

 

 実際には欠点も多い人物であったがその父に、自分のように有能であることを求められたマイロは父に並ぶ、そして超えることを目指していた。

 だから攻略序盤はある程度ダーティな手も辞さないし、後半にも清濁併せ呑むタイプの名君に育つ予兆を感じさせる人物へと成長していたのでこういう反応にはなるだろうな。

 

「私の名誉のために言っておきますが、そういった事実はありません。あのデータを見た際に、この成分なら鎮痛薬が作れるものだと思って試していたらできたのでございます。事実として麻神水、ルイゴミント、帳風枝、それと食事の香り付け用として知られているいくつかの香草を調合すると鎮痛薬として使えますので、その推論は間違ってはいませんでした」

 

 動揺を悟られないように、淡々と話す。

 マイロの臣下たちには麻神水を真っ当に薬として用いようとするなんて、それはそれでマッドサイエンティストみたいでやべーやつだな……みたいな扱いをされている気がするが……気にしないことにした。

 

「そこはなんでもいい。被害者たちもまだ立ち直れる段階にある。ならば問題はないよ」

 

「いや、本当にそういうのではないですからね!?薬物、ダメ、ゼッタイ!」

 

「……あはは。なんてね、からかっただけさ。君の態度を見ていればわかる。ポーカーフェイスはなかなかのものだったけど、うかつすぎてそういうことができるタイプじゃないとわかっているよ」

 

 からかってただけかよ!こいつは本当に……。

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