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第四話 俺はお前が羨ましい

「あ、あはは〜。なんか聞いちゃいけないものを聞いちゃった気分……。恋愛対象の性別以前に性癖こじらせすぎですねぇ……。ヤンデレ?とかってのはよくわかりませんが……」

 

「お、応援するけど……私のことは狙わないでね?」

 

「こほん!あなたたちは聞かなかった、これでいいですわね?」

 

「「は、はい……」」

 

 多分、どこからか情報は洩れるだろうし家……『ルーネスト屋』やその当主である父にも届くだろう。

 だって、俺らの会話を聞いている生徒も相当数いるし。

 俺の動向は気になると思う。普段とは微妙に様子が違うというのは妙に思うだろう。大商家の娘だからな。

 

 俺というか、シアンの父は娘には甘々だからその意志を尊重して結婚させないことを選ぶ可能性はあるが、流石にやり手の商人らしく心を鬼にするだろう。

 原作知識ではなくシアンの記憶から見た情報だし、信憑性は高いだろう。

 その場合、どうなるか……キツいものがあるな。

 

 前者にしても、何らかの功績を残せない限り穀潰しだと家族や重役に非難される可能性もある。

 鬱々とした気分で過ごすよりは割り切って結婚したほうがマシかもしれない。

 まあ、やってしまったものは仕方ない。現代知識、そして原作知識をもって功績を残すしかないだろう。

 

「と、ともかく!第一王子の連絡先が欲しいなら私が教えてあげちゃいますよ〜?」

 

「いいの!?」

 

「その代わり、王妃となった暁には甘い汁を吸わせてくださいねぇ」

 

 うわぁ、ゲッスイ笑みだぁ……。

 この世界では王族であろうと恋愛結婚をすることも多いが、それでもある程度ヒエラルキーの高い者同士での結婚がほとんどだ。

 貧乏男爵家の娘が王妃に選ばれるとはとても思えないだろうし、冗談だろう。

 

 ミーシャの家は人脈が広く、また連絡先をばらまくという行為もモラル的にはともかく法律で禁止されているわけではない。

 それゆえ、半ば家業として連絡先や得た情報のバラマキの事業を行っている。

 そしてその過程でさらに連絡先や情報が集まっていく。

 ミーシャは連絡先というものの価値がまだよくわかっていないらしく、こうやって学生には無料でばらまいているが、その家族は人を選んだ上で金を取ってばら撒いている。

 

 貴族社会では忌避されることもあれど頼られることのほうが多い存在だ。

 

「ああそうそう、気になる男の子がいたのならこれからも連絡先は教えてあげますからねぇ〜。まあ、シアンさんには必要ないかもしれませんが……」

 

 俺には必要ないという部分は苦笑しながらだったが、とりあえず付き合いは続けてくれるようなので一安心だ。

 

「えー、HRを始めたいのですが、みなさん準備はできてますか?」

 

 談笑しているうちに、扉から教師……ヒーローの一人であるモード・デラエナス・ファイバスが現れた。

 

 顔立ちが整っていて、優男で、なおかつ前王の四男……現王の弟であるという情報から、女子生徒たちは一斉にキャーキャー騒ぎ出す。

 

 婚約者がいる子は流石に黄色い声援を上げていなかったが、このクラスには少ない。

 クラウディアも例外ではない。ミーシャも微笑んでるが、正直こいつに性欲を感じたことがないから測れない。

 いや、俺がミーシャに劣情を催したとかいう話ではなく、ミーシャが攻略対象やらの誰かしらにそういう感情をあらわにしたところを見たことがないという話だ。

  

「う〜ん、困りましたね……どうすれば収まるのでしょうか」

 

「せんせー!好きな食べ物とかありますか!?」

 

「どんなタイプの女の子が好み!?」

 

 騒動が収まらずこのような出来事が起こってしまったが、心底白ける。……いや、嫉妬する。

 

 前世ではあまりモテなかったので、素直に羨ましい。

 

 シアンじゃなくてモード……流石に心のなかでも教師に対する敬意は失っちゃいけないな、うん。先生だ。先生に転生したかったなぁ……本当に。

 

「……えー、そうですね。ではまず自己紹介から始めましょう。私はこのクラスの担任で、数学教師のモード・デラエナス・ムルシュと言います。好きな食べ物はりんごのはちみつ和えで、好きなタイプは……流石に勘弁してください」

 

 女子生徒が沸き立つ。クラウディアなんか熱心にメモっている。

 その後は席順で自己紹介することになり、好きな食べ物と好きななにか、そして座右の銘を公言することとなった。

 好きなタイプを公言するというのはさすがに上流階級として難しいものがあるのだろう。

 そして、俺の順番が回ってくる。

 

「私はシアン・モーナと言いますわ。ルーネスト屋当主であるマスデロの娘でございますの。すでにご存知の方もいるかと思いますが、どうぞお見知りおきを。好きな食べ物はステーキで、好きな教科は科学。座右の銘は『人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し』、です」

 

 座右の銘なんてものは俺にはないので、テキトーに思いついたことを言った。家康の名言から取ったのだ。

 別に戦国武将の中で特段家康が好きなわけではないが、パッと思いついて自分の人生観にも合ったのでこれをチョイスした。別に豊臣贔屓過激派の人みたいに大嫌いというわけでもないし。


 しかし、周りの人間は妙な目で俺を見ていた。さっきの性癖暴露のせいだろうか。

 それにしては見ていないはずの先生も、というのはおかしい気がするがまぁ良いだろう。

 その後も自己紹介はつつがなく続いていき、問題が起こることもなく終わった。

 

 だが、攻略対象が先生一人しかいないというのは妙だな。

 通常は先生+一人、二年生以降では条件によって二人という形になるのだが。

 まさか俺が攻略対象としてカウントされているのか?クラウディアのことは好きだが、肉食系過ぎて恋愛対象としては見れない。割り切った夜の関係だけならともかく、恋人、ましてや嫁?夫?にしたいとは思えない。

 

 彼女の目線で見ても(表面上は)同性である俺のことはそういう目では見れないだろう。

 クラウディアにそういう素質があるみたいな描写は俺が知る限り一切なかったし。

 まず恋愛関係には発展しなさそう……ああ、席が不自然に一つ空いているな。攻略対象の一人であるルグの席なのだろう。

 

 あいつは異常なまでの面倒くさがりで、絶対に必要なとき以外は基本サボりまくるからな。 

 早い話が留年してるようなものなのだ。法律の上では扱いは違うけど。

 第一王子であるマイロの命令を受けて動いているときもあるが、それを隠れ蓑にしてサボっている面も否めない。

 優秀だから許されているらしいが、俺からしたら平凡でもいいからサボらないやつのほうが優れていると思う。

 留年に関しては、マイロを守るためという面も大きいからあーだこーだは言えないが。

 

 勤勉かどうかというのも一つの能力で……まあ、能力主義は好きじゃないんだが。

 ルグを攻略完了するとクラウディアのために真面目に働くようになるので問題はないのかもしれない。

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