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第二十五話 祝福

「ジョイン。わかっているとは思いますが」

 

「はっ、他言無用でございますね」

 

「よろしい。……で、ロゼッタのことは家族にどう説明すればいいんでしょうかね。割と思いつきでやってしまいましたし」

 

 街を3人で歩きながら、相談する。

 

「そんなもの、捨て子を拾った……で通せばよいのではないか?」

 

「そんな捨て犬みたいな言い訳は通らないかとおもいますが……はぁ、いいでしょう。捨て子だったけど頭がなかなか働くし計算もできるから拾ったということにしておきましょうか。ああ、でも勘違いされそうですわ……」

 

 俺の好みのどストライクは家族に知られている。だから、『見た目で拾った』と勘違いされかねない。

 

 最悪家中から変態扱いされるかもしれない……。

 

「ははは、そういえば今の我の容姿はお主の好みのどストライクなのじゃったな!愛妾を囲ったとでも思われかねんか?」

 

「思考を読まないでくださいよ……。ええ、そういうことです」

 

「ならそれでいいではないか。我もお主ほどの美女相手なら、いくらでも相手してやるぞ?」

 

「流石に見た目がここまで愛らしくても、中身が男なのは少しハードルが高いですわ……」

 

「何じゃお主。だらしないのう。まあ、冗談じゃ。本気にしたか?……流石に我とて初めてを経験するなら好いた相手が良い。もっとも、この体では無理じゃろうがな。はっはっは」

 

 よかった、冗談らしい。しかし、割と乙女チックな思考回路だな。

 

 初めては好きな相手と、か。まあ、気持ちはわかる。ああ、わかるよ。

 しかし、好きな相手と言っても女の体ではそういう関係になれないよなぁ。

 近代を通り越し、少し寛容になった現代日本ならともかく、この時代では少し難しいと思う。

 宗教によって禁じられているとかいうわけではないんだけど、やっぱり白眼視されかねない。

 ……その悪名(?)を帳消しにするくらい功績を立てればいいのかな?

 まあ、そんなこと言っててもそもそもの相手がいないけど。

 

 シたいと思っている、というか恋人になりたいと思う相手はいる。……ヒューラだ。でもヒューラは乗り越えるべきハードルがいろいろ高いし……向こうから見たらやっぱり嫌だと思う。

 脈がないわけじゃないってのはこの前知った。むしろ、意識されている可能性もある感じだった。

 だから、完全に無理と諦めた訳ではないけど、やっぱり難しいよな……。

 

 そのうち、家についた。

 

「おお、シアン!無事だったか!何も知らせずに出ていったので心配していたのだぞ!」

 

 マスデロが俺を抱きしめる。父親……か。元の世界にもいたけど、あの人を思い出すことは今までなかったな。

 特に酷いことをされたわけでもない。ただ、印象に残らないだけだ。

 特に遊んでくれるわけでもないけど、おもちゃは飽きるほど買ってくれた。お姉ちゃんに対してもそうだった。

 構う時間がなかったわけではないと思う。俺達が嫌いなわけでも、愛していなかったわけでもないんだと思う。

 そう、だな。不器用だったのかもしれない。

 

 ……なんとなく、だけど。心のなかでの呼び名を変えよう。マスデロのことは『シアン』と同じくお父様と呼ぶことにする。

 

 こんなニセモノに呼ばれて嬉しいのかはわからないが……いや、俺は本物のシアンにならないといけないんだよな。

 ……本当にそうなのか?まあ、いい。俺が『シアン・モーナ』であることは変わらない事実なんだ。それでいい。

 

「実は阿弥陀如来様のお告げがありまして。神算鬼謀の士が在野にいるから取り立ててこい、と」

 

「おお、おお、そうだったのか。……しかし、その少女が?」

 

 俺の隣にいるロゼッタを見て、お父様は疑問符を浮かべた。

 

「そうじゃ。これでも我は40万もの大軍を2万で破る(ことになっておる)こともできるし、敵の手の内を完全に読み切った(逸話もある)こともあるし、そろばんも扱えるぞ!」

 

 脳内に小声で何やら補足が聞こえた。……そんな事もできるのかよ。……凄いな。同じTS娘で転生者……転生者?ロゼッタがそう言えるかは良くわからないが……。

 ともかく似たような境遇でも色んな面でスペックが違いすぎる。

 

 そういう自虐はともかくとして、まあ歴史上のそういう寡兵で大群を破ったみたいな話って大抵誇張されてるよね。それでも凄まじい人物だというのは、契約パスから良く感じ取れる。

 この世界における有名な歴史小説なんかでも、かつてのロゼッタは建国王に次ぐくらいの扱いをされてたし、初代を立てる意図がなければ並んでいるかもしれない。

 

「おお、それほどの士であるならば問題ないな。我が商会で雇い入れよう。前半は少し信じがたいが、そろばんに関しては今にでも証明できる。さあ、中へどうぞ」

 

「あ、いえ、この少女は私の直属の部下としたいのです」

 

「ううむ……しかし、その娘、シアンにとって……その……」

 

 お父様は言いにくそうな表情でどもりながら伝えてくる。うわぁ、恥ずかしい。父親にこんなことを言われるなんて、憤死してもおかしくないレベルだぞこれ!

 

「心配していることは起こりませんわ。あくまで主従の関係。私にとってのブレーンですもの」

 

 実際、手を出す気はない。ほんのちょっと、ほんのちょっとだけだぞ?ロゼッタのギザギザ八重歯を触りたい気持ちはあるが……うん。そんな事案は起こさない。

 

「はっはっは、心配せんでも我はほんの少しばかりこやつの好みとは外れておる。事案は起こらんよ」

 

「う、うむ……了承した。……あまり羽目は外しすぎないようにな」

 

 やっぱりここらへんのことは信用されてない!……しかたねぇなぁ、もう悪名なんて背負ってやるよ!

 そうやってお父様は屋敷の奥へと下がっていった。

 

「……そういえばロゼッタの部屋がありませんわね。そうですね、用意してもらいましょうか」

 

「いや、良い。気楽な一人部屋もよいが、我らがするのは国をも変える悪巧み。できるだけ離れんほうが良かろう。状況が変わったときに離れ離れではまずいからな」

 

「それ、本格的に愛妾扱いされますけど、いいんですか?」

 

「よいよい。このようなとびきり美しい少女の愛妾として扱われるなど、名誉ではないか。はっはっは」

 

 ……こいつはだいぶ見栄を張っている。実際はそんな扱いされたくないというのは原作をプレイしたから予想はつく。だいぶ乙女チックな思考回路をしているからな。あるいは喪女か。

 でもなぁ、表面上はボロ出さないんだよな。いくらからかっても平然として、俺の勘違いだということにされる。

 ゲーム本編での彼女や、レイダ先生が言っていた『史実』における人物像からして間違いない。

 どうあがいても負けだ。

 しかたない、ここは提案に乗ってみるか。

 

「わかりましたわ。でも、勉強や仕事の邪魔はしないでくださいましね?」

 

「わかっておるわかっておる。とはいえ、お主が呼び出したのじゃ。その責任はちゃんと取るのじゃぞ」

 

 責任、とってよね?みたいなセリフを言われたので誰かに聞かれていないか感覚を研ぎ澄ましたが、大丈夫なようでホッとした。

 

「ええ、わかっていますわ。利用はしますが、それだけではなくあなたの希望も極力叶えます」

 

「本当じゃな?嘘ではないな?誓えるか?」

 

「ええ、誓いましょう」

 

「よし、ならば……『ここに契約はなれり。破りしものには罰を、守りし者には祝福を。やがては敵手をくびる帯となる。汝、忘れることなかれ』……よし、うまく行ったな」

 

 なにやら聞き慣れない文言が飛び出したので、聞いてみる。

 

「その文言は?」

 

「んん?契約じゃ契約。我はお主に利用されてやる代わりに、お主は我の希望をできるだけ叶えなければならない。呪いと呼ぶものもおれば祝福と呼ぶ輩もおるな。まあ、破らなければメリットしかないゆえ、気にするな」

 

「……効果の程は?」

 

「あまりに無体な破りかたをすればお主の片腕がもげる。それなりの破り方なら群発頭痛が一時間治らない。口約束程度の軽いものならばちょっとした不運が襲う。冗談程度の約束であれば、まったく問題はない。代わりに守ればお主の魅力が増すじゃろうし、守り続ければ戦闘術の上達が大幅に早まる。お主のような娘の場合は、魂と肉体の齟齬が薄まっていくかもしれぬの」

 

 守り続けることのメリットはでかいけど、デメリットがそれにも増して大きすぎるな……。

 

「だまし討ちとは卑怯ですわね」

 

「お主から言い出したんじゃろうが。それを利用してやって何が悪い」

 

 本来なら無償でこき使えたんだけど、契約?とやらをすることによって多大なデメリットを抱えてしまった。

 

 正直、片腕がもげることより群発頭痛が一時間やまないデメリットのほうが怖いんだけど。

 あれの別名、『自殺頭痛』だぜ。怖い怖い。

 

 こりゃ迂闊だったな。

 

「それに、言ったじゃろう?これは祝福にもなりうるとな。間違いなくお主の役に立つはずじゃ。とりあえずお主の部屋へと案内せい!」

 

 安易に希望を断れないので、案内してやった。

 特になにか変わった気はしないが……積み重ねによるんだろうか?まあいいや。

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