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第二十二話 真実・下の巻

「で、ある朝起きたらこうなってた。入学式の日だな。……で、先生はシアン・モーナについてどれくらい知っていますか?」

 

「学園生時代のクラウディアにさまざまな嫌がらせをしてきた、小物な悪女としてドラマで描かれてたくらいしか知らない」

 

 なるほど、未来ではそういう認識なわけか。こうなると、歴史に詳しい人じゃないのが少し残念だな。

 ドラマは俗説や講談による逸話を中心に組み立てることも多いから、実像については浮き彫りにしにくいことが多い。

 そっちのほうが物語を作りやすいから仕方ないんだろうけど。

 

「そうか。そのシアン・モーナは俺達の世界では、たしかに人としては未熟ではあるけど、やったことに対して与えられた制裁が厳しすぎて可哀想だという評判が多い女でした」

 

「……そう。ねぇ、そのゲームってどんなゲームなの?戦略シミュレーションゲームかなにか?」

 

「いや、恋愛シミュレーションゲームだ。クラウディアを操作して、自身を磨いてヒーローたちを攻略するか、誰も攻略できないか、友情エンドを迎えるか……みたいな」

 

「それ、キミもやってたの?男だったはずなのに。……それっていわゆる乙女ゲームってやつだよね」

 

 妙なものを見る目で見るな!あれは仕方なかったんだ!

 

「姉から熱心に布教されてね……断りきれなくて全ルートプレイさせられた。言っとくが俺にそういう趣味はない。噂を聞けばわかるだろう?」

 

「……うん、わかった。でも、ルート分岐もあるの?」


「そうだ」

 

「……私の世界ではクラウディアは九人の男性を虜にしていた。それでも、後の世での扱いは悪くなかった。いえ、とても人気のある人物だったわ。なぜなら乱世に一度終止符を打ちかけたから。そして、その時代自体が特別人気のある時代だったから……歴史の主役とも言える彼女の人気は凄まじかったわ」

 

 ……クラウディア、そんなやべーことやってたのか。逆ハーレムルートというのも凄まじいが、乱世を止めかけたって凄いな。

 

「クラウディアが卒業した直後、遠い大陸の王が死んだことをきっかけに、乱世が勃発したの。その後のクラウディアの行動は早くて、マイロ殿下から国を禅譲され、また、祖王のお墨付きを得て、正当性を得た」

 

 ……!?とんでもないめちゃくちゃやってんなぁおい。

 そんなこと、許されるのか?……クリア後のステータスを持つクラウディアならやれそうだな。

 

「そして、アルスド王国をミゲル殿下を利用して乗っ取り、そこからは快進撃を続けて中原を支配したわ。そして天下人となりかけたけど……重用していた家臣の一人が謀反を起こして殺された。でもその志はマイロ殿下が引き継ぎ、ついに乱世は終結した」

 

 あの腹黒王子なら、クラウディアを殺した重臣に酷い刑を与えたんだろうな。

 しかし、なんとなくその歴史におけるクラウディアは信長に似ている感じがする。

 でも細部はだいぶ違うしな。別モノとして捉えておこう。

 

「……少し納得がいかないな。クラウディアの子が誰の子であるかで揉めたりはしなかったんですか?男が女を囲うなら誰の子であるかはわかるが、逆なら特定するのは難しいんじゃないですかね?」

 

「それくらいは魔法でわかる。クラウディアとマイロ殿下との子を後継者とし、その後400年以上に渡る平和が訪れた。他の男との子供は各地に封建されて王になったし、祖王様は子供を作らなかった。ミゲル殿下の子も元の国を取り戻せた」

 

 魔法か……便利だな。だから一応逆ハーレムも認められているわけか。

 ……しかし、カオスだなぁ。

 でも、平和が訪れたんなら良かった良かった。

 

「それなら、火縄銃なんか作る必要はないんじゃないか?クラウディアやマイロ殿下たちに全部任せとけば何ら問題なくないですかね?」

 

「言ったはず。私はこの国をよりよい未来に導きたい。民たちに安寧をもたらしたい。そのためなら悪魔の兵器でも作って見せる」

 

 その目には尋常ならざる覚悟が宿っていた。ただの女子大学生が持つには相応しくない大きな覚悟だ。

 ……この世界でなにかあったのか?でも、今はそれを聞ける段階じゃないか。

 

「しかし、他国に鹵獲されたらうちの国も銃の被害を受けるんじゃ?」

 

「問題ない。史実ではこの国以外に鉄砲の力を重んじた国は殆どないから」

 

「そんなもんですか。……よしわかった。協力しようじゃないか。とはいえ、俺はこの世界の事情には明るくない。一部先生が知らない事情も知っていると思うが……植生や鉱物などについても詳しくない。科学とか発明方面で役に立てるようになるにはだいぶ時間が掛かりそうだ」

 

「構わない。それでもこの時代の人達よりはよっぽど『わかってる』から」

 

 どちらからともなしに、握手を交わす。

 

「ふふふ……久しぶりに元の口調で話せて楽しかったわ。あなたとはいい友人になれそうね」

 

「私はもう慣れたというか……正直こっちの口調のほうがしっくり来るんですけどね」

 

「あらそう、キミは女の子としての素質があったのかもしれないわね」

 

 ニヤニヤしながらレイダがからかってくる。

 

「……そういうのはやめてくださいまし」

 

 思わず顔が屈辱と照れで真っ赤になってしまう。……むう。

 

「ふふふ、からかいがいがあるわね。でも、あなたは本当に、とっても可愛らしいと思うわ」

 

 ジリジリとにじり寄られる。なに?この人そっちのケでもあるの?

 大歓迎だけど大反対だ。この人は前世の『この人』でもあるけど間違いなく『レイダ』でもある。危険だ。

 

「……そういうシュミでもあるんですの?」

 

「ないわね。女の子には当然興味ないし、男の子にも興味はないわ。でも、どっちでもない君には……」

 

「……ひっ」

 

 思わず悲鳴を漏らす。襲われるんじゃないか?思考がぐるぐるする。怖い、怖い……!

 

「冗談よ冗談。私には恋愛やらなんやらをする気はないもの。そんな暇ないし、それ以前に面倒くさいわ。それに精神年齢は同年代とはいえ、教師が生徒を……なんて最低じゃない。そういうのは大嫌いだから、安心して」

 

 少し、心が落ち着いた。前世のこの人は根が凄い真面目だったのかもしれない。助かった。

 

「久々に『真の同郷』の人とあった気がして、舞い上がっちゃったのかもね。ちょっとやりすぎちゃったわ」

 

 この人は孤独感を感じているのかもな。まあ、転生したら普通喜ぶより不安がったり不便さを感じたり前世の人たちに会いたいと泣くだろうし。

 

 ……そういや姉ちゃん、何してんのかな今頃。

 今更会いたいとは思わないが、幸せな人生を送っていてほしい。

 

「そういうことならば、私と二人で話すときは前世の口調でよろしいですわ。素の自分を覆い隠すのも疲れるでしょう?」

 

「……そう、わかったわ。……うん、わかった。ならそうすることにする。キミにも素の自分でいてほしい」

 

「万が一見られたら嫌ですし、さっきのが特別ですわ。もう金輪際あの口調では話しません」

 

 好みの話になるのだが、オレっ娘キャラはあまり好みじゃない。自分がなるのも嫌だ。結論、それだけ!

 

「そう。わかった。なら……これからもよろしく」

 

「コンゴトモヨロシク、ですわ」

 

 そう言って、レイダと別れた。

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