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第二話 原作主人公

「どーもはじめまして!私はクラウディアって言うんだ。これからよろしくねっ」

 

「ど、どうも……」

 

 クラウディア・GOGO……言いづらいな。これからはファン名称である『クラゲ』という名前で呼ぶことにしよう。

 元々はクラゴと呼ばれていたのだが、とあるプレイヤーが掲示板でタイプミスしたことにより産まれた蔑称らしい。

 最初はアンチばかりが使っていたが、そのうちファンのほうが使うようになったと聞いた。ネットではもっぱらこの愛称で呼ばれている。

 

 いやまあ、ファンの動向はちゃんと追っているわけではないので情報が古いかも知れないが。

 流石に俺が大好きだった厨二エロゲシリーズやらDRPGの情報を追うことのほうが優先だった。

 

 クラゲでは席順やクラス分けは入学時にはランダムだ。

 二年目三年目もランダムではあるが、交友関係が深いキャラが選ばれやすくはなっている。

 その情報は知っていた、知っていたのだが……まさか、クラウディアが隣の席だとは思わなかった。

 

 ゲーム時代のように、男女が隣に座るとは限らない。

 

 というより、婚約者同士であったり、実家のしがらみがない上で仲の良い異性同士でしか組まされない。

 

 なので、婚約をしていない者は基本的に同性と隣に座ることになるのだが……いやはやまさかですよまさか。

 

「なんか元気ないね?……噂とちょっと違うかも?」

 

 後半はぼそっと呟いただけで、地獄耳でもないと拾えないだろうけどシアンの耳は地獄耳デビルイヤーなので拾えた。

 

「どんな噂と違うんですの?」

 

 軽く脅すように微笑みかけてそう問いかけた。いきなりシアンの性格とかけ離れたことをやるのは良くない。

 

 しかし、敵対はしないし嫌がらせもしない、これは徹底していきたいと思う。

 性格に難はあるけど以前よりはマシという程度でとりあえずは行こうと思う。

 入学式のアレについては気が動転していた。今では反省している。

 しかし、自分があの有名な暗黒微笑とやらをすることになるとは思わなかった……。

 

「や、やっぱり同じだ……」

 

 クラウディアが冷や汗をかきながら苦笑を浮かべた。

 

「こほん、取り乱しましたわね。しかし、なんの用があって話しかけてきたのかしら?要件次第によっては……」

 

 自分がですわ口調を使うとは思わなかった。前世の肉体で言っていたら、蔑称の数が海の砂より多く天の星すら超えるほど多い昔の虎の球団の監督みたいになっていただろう。

 

 流石に恥ずかしい。

 こんなとげとげしい口調にするのも違和感あるし、嫌だが……こっちは我慢可能だな。

 

「実はただ友達になりたかったからってだけなんだけどね……えへへ」

 

 クラウディアは顔がいいから、笑顔とその言葉に少しドキッとしてしまう。

 今は同性であるからか、思っていたほど衝撃はなかったが、それでも事前情報がなければ惚れていた可能性が高い……これはヒーロー共が墜ちるわけだわ。

 

 ……ん?顔がいい?それ、ちょっとおかしくないか?

 このゲームは育成ゲームでもある。行動を選ぶことによって、攻略に必要なパラメータを上げられる。

 その中に容姿も入っていて、クラウディアの初期値は20であった。

 公式設定では0でグロ、10でブス、20でちょいブス、30で……と続いていくわけだが、ならばクラウディアは少しブサイクでないとならないはずだ。

 

 と、ここまで言って気づいた。

 学園だのと言っても中世ヨーロッパ風のファンタジー世界だ。学生服やらセーラー服などというものは、時代的に生産できない。

 だから、各々の私服でここに通っているわけだ。

 しかし、クラウディアの服は明らかに汚れているし、黒髪にも艶がなく、すこしボサボサだ。

 

 周りと比べて、明らかに劣っている。

 今日は入学式で、スタートダッシュを決めるために重要かつ見栄を張っても問題ない日のはずなのにだ。

 そして、現実的に考えて見た目を良くしようと思ってもちょいブスから絶世の美女になんてなれるわけがない。

 骨格が変わっているレベルだよもはや。

 

 つまり、容姿とはこの世界においては見た目の良さというより、身だしなみやファッションセンスでもあるのかもしれない。

 ゲーム特有のおかしさがこの世界げんじつでは修正されているのか、それとももとからそうだったのかは知らないが……。

 

「ふん、ならばわたくしの友としてふさわしくなりなさい。とりあえず、その身だしなみはみっともないから、半年後までには直すように」

 

「でも……」

 

「お金がないというのでしょう?ならば、働き口を見つけてあげますから、そこで稼ぎなさい。あなたにお似合いの職場ですわよ。ああもちろん、放課後のバイトのようなものですから安心なさい。無理はさせないわ」

 

「ほ、本当!?」

 

 なぜ俺がクラウディアにここまで良くするのか?理由は簡単だ。好感度稼ぎでしかない。

 ゲーム中ではクラウディア自ら能動的にシアンと関わることで、絶望の未来を回避できるのだが、自分がシアンになった今ならば、こっちから好感度を稼ぐことも可能なのではないか?と思ったわけだ。

 もちろん、クラウディアに嫌がらせをしたことで様々な理由でひどい結末を迎えるのでそういう行為を控えるだけでいいのかもしれない。

 

 だが、ゲームシステムというものが今も働いている可能性もある。

 この宇宙セカイに数値的に判断され、殺される……などという可能性も否定はできない。

 極小の可能性ではあると思っているが……この世界が現実ではなく、現実に似た機械ゲームの世界でしかなかったら?と思うと……怖い、怖いな。 

 

 なので、こうして優遇している。

 それに、こっちから動くことでクラウディアをアニキとくっつけさせるという手段も取れるわけだし。

 二重、三重のルートで没落回避の可能性を探れる。

 

「わざわざこんなことを言ってまで人の心を弄びはしませんわ」

 

 クラウディアは喜びの涙まで流していたが、一年目の4月28日までは実家が貧乏だという情報を知っていて本当に良かったと思った。

 とりあえず、友好関係は築けそうで良かった。

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