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第十九話 信用ならない油売り

「……で、なんであなたがいるんですの?」

 

「やだなー……これでも一応友達じゃないですか。ほら、私とよしみを通じておくと後々便利ですよぉ?」

  

 次の日の放課後、教室を貸してもらって勉強会を開いているのだが、なぜかそこにミーシャもいた。

 正直、彼女は『連絡先を教える』という重要な役割を持っているのにも関わらず、原作時点で影が薄い。

 キャラ立てを失敗したというか、メスガキという女性ウケしなさそうな属性を持ったキャラだからか扱いづらくてあまりイベントに絡んでこなかったのかもしれない。

 元々エロゲーを開発している会社だったからか、乙女ゲーを開発するようになっても、メイン顧客である女性プレイヤーへの配慮が足りないなどと批判されがちだったので、開発も二の足を踏んでいたのだろう。

 

 プレイヤー間では『もしもしちゃん』なんて愛称をつけられていたくらいだ。

 それくらい、連絡先を聞く以外での絡みが薄い。友情エンドもシアンの描写に比べてミーシャの描写は取ってつけたようなものだった。

 一応同じクラスだが、希望してきたわけでもないのでメンバーに選んだりはしなかったし、なんで来たのか謎だ。

 クラウディアとはよく話しているところを見るが、俺とは関わりが薄い。

 友達という感覚も正直薄い。なんなら、原作では名前もないモブとして扱われていた生徒と話すことのほうがよっぽど多い。

 

「言うほど仲が良かったとは思いませんがね」

 

 なんなら、個人情報をバラまきまくるミーシャのことはあんまり好きではない。

 俺が危害を被ったわけではないが、対価も得ずにバラまくというのは正直危険すぎる。

 前世の世界に生まれていたならゴシップ記事とか飛ばしまくっていそうで、あんまり関わりたくない人種だった。

 周りからもそう思われているようで、今もあまり好意的な目は向けられていない。

 

「そんなこと言っちゃっていいんですか〜?有る事無い事言いふらしちゃうかもしれませんよ?」

 

 小悪魔に笑んだその表情が少し憎らしい。

 

「そうですか……ならば、実家の総力を上げてあなたを叩き潰すだけですわ」

 

「じょ、冗談だったのに……。流石に私でもそんなことはしませんよ。これでも嘘やデマは吐かないことで有名ですからね?」

 

 少し言い過ぎたな。でもなんか妙だな。こいつを相手にすると前世ならとてもしなかったような冷たい反応が次々と出てくる。

 前世だったら多少性格や行動に問題があっても、これほど可愛い女の子相手に冷たい対応なんてできなかった。

 肉体がシアンであることの影響が思考にも及んだということなのか?

 

 それにしては今日もクラウディアには優しく接することができているしな。

 まあ、気にするほどのことでもない。本物のシアンになれるのならそっちのほうが良いんだ。

 俺が消えようと大した問題じゃない。死ぬのは絶対に嫌だが、消えるというのであれば納得できる。

 

「開口一番デマ飛ばしてきたのは誰でしたっけ?」

 

 ニヤリと笑いながら口にする。なんだか自分の性格が悪くなったような気分だ。

 前にクラウディアがマイロと結婚云々言っていたのはミーシャが放った最初の言葉のせいだろう。

 ここは指摘しなけりゃ気が済まん。あの場でちゃんと否定できていなければ、噂が広まって俺が暗殺されていた可能性もあるのだから。

 

「うっ……ま、まぁそれは良いじゃないですか。あの時はインパクトを残したかったというか、気が緩んでいたというかぁ……うん、普段は気をつけているんですよ?ね、クラウディア?」

 

 突然話題を振られたクラウディアが困惑しながらもかばい立てる。

 

「え、え?私?……ミーシャちゃんも普段は悪い子じゃないんだよ。むしろ優しい子なの。できれば信じてあげてほしいな」

 

「……まあ、水に流しましょう。しかし、あなたやあなたの家は大きな力を持っていることを忘れないでくださいね?あなたの言葉一つで、他人の立ち位置が大きく変わるんですのよ」

 

 これは忠告だ。ミーシャが今のまま突っ走ると、誰にとっても良くないことが起きるだろう。

 ミーシャの家の情報バラマキ家業は利用価値が多いから見過ごされているだけにすぎない。

 情報を売り物にしている以上、信用を失ったら終わりなんだ。これは商人のはしくれである俺にも言えることだが。

 対価を払わせることは信用を得るのに必要な儀式でもある。

 誰彼構わず連絡先や情報を渡すなんて、現代ほど情報が溢れかえっているわけでもないこの世界では特別に危険だ。

 

「特に、連絡先をばら撒くような行為は控えたほうがよろしいですわ」

 

「え?……え……?。これでも頼りになるって言われるんですよぉ?」

 

 やっぱりよくわかっていない。情報の価値にも、影で何を言われているかも。

 ミーシャはそうやって頼られる一方で、『信用ならない油売り(ユルヌ・テイソン)』なんていう渾名をつけられるくらい影では嫌われている。

 

 価値と扱い方を理解している彼女の両親ですら嫌われがちなのだ。わかっていないミーシャが嫌われるのも必然だろう。

 この勉強会に集まった人の中にも、嫌っている生徒も少なくない。

 

「お貴族様にこういうことを言うのは不敬に当たるのかもしれませんが……あなたの家は情報を売り物にしているある種の商人なんですのよ。そういう行為は信用という商人にとって最も大事なものを失う行為ですわよ」


 ここまで言っていいのかはわからなかったが、言ってしまった。

 

「よくわからないことはよくわかりました。なら、そこらへんについてもみっちり教えてくださいねぇ」

 

 ミーシャがニコニコ笑顔でそう言った。まあいい。忠告はしたし危険性も教えはする。

 

 これで変わってくれればいいんだが……。

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