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第十六話 友

「……あんたってそういう趣味があったのね」

 

 クラウディアとのあの会話は学園中に広まったようで、俺は色々な意味で有名人になってしまった。

 

「ええ、そうですね。しかしヒューラさんはあんまり驚いていないようですわね?」

 

 ヒューラにも呆れられたが、あまり咎めたり嫌うような視線はなかった。

 

「稽古つけてる途中で、たまにそういう目で見てることくらい気付くわよ、馬鹿」

 

 ああそういう……。俺も女になってから、そういう目で見られたときは気づきやすくなった。

 最初から女のヒューラなら俺よりもっとよくわかるだろう。

 しかし、気づかれていたのか……なんか恥ずかしいな。

 

 ヒューラは美少女だ。そんな相手と近寄ってドキドキしないわけがない。

 密着して剣の握り方を教えてくれたりするから、抑えられなかったのだ。

 

「私はその趣味に対してどうこういう気はないわ。一応これでも……その、一応!と、友達だし……」

 

 顔を真っ赤にしていてひっじょーに可愛いが、傍から見たら勘違いされないだろうかこれ。

 会話内容なんて剣戟音なんかでかき消されてるだろうし、状況だけ見られればなぁ。

 いや、俺は嬉しいんだけどね?こんな可愛い子にそう思われていると勘違いされるのは。

 でもこの子は寛容なだけでそういう趣味はないだろう。

 申し訳ないことをしたかもしれない。

 

「ふふふ、とても嬉しいです。……ですがよろしいんですの?」

 

「?」

 

 ああ、この感じだと気づいていないみたいだな。

 

「私の目の前で顔を真っ赤に染めるなど、他の方たちに勘違いされてもおかしくありませんわよ」

 

 あえてクスクスと笑って指摘する。

 

「……はっ!」

 

 今は部活は終わっているが、居残り練習をしている部員たちもいる。

 彼らは武官の息子ではなく騎士として己が身一つで身を立てなければならない身分なのだろう。だからここまで熱心なのだ。

 だが、彼らは俺たちの方を見てはいけないようなものを見たような目で見つめていた。

 

「……誤解を解いてくるわ。まだ練習は終わってないから、待っていなさいよね」

 

 焦った顔で釈明する様はとても面白いものだった。

 半信半疑とまでは言わないが疑惑は彼らの脳裏に刻み込まれたであろう。

 

 ……あの二人はできているのではないか?と。

 

 いや、本当にこんな状況にする気はなかったんだ。真面目にスマン。

 ヒューラを狙っているとかじゃないんです、誤解させようと動いたわけじゃないんです。

 帰ってきたヒューラに対して一言謝ろうかと思ったが、俺の行為のせいであると認めると友好関係に亀裂が入りそうだったので、黙って申し訳無さそうな態度だけを取っていた。

 

 ちなみにその後の居残り練習はいつもの4倍はキツかった。誤解されたことへの怒りがにじみ出ていたのだろう。

 

 ……本当すまない。

 

 

 

 

「しかし、あんたってどんどん強くなっていくわよね。この一ヶ月足らずで女子の先輩たちを倒すくらいだもの。……才能がありすぎて正直ムカつくわ」

 

 部活終わりの帰り道、ヒューラとともに歩いていく。

 

 ルーネスト屋の本店は学園と同じく王都にあり、屋敷も本店の近くに建てられている。

 

 しかし、ヒューラは地方貴族の騎士の娘だ。実家は遠くにある。

 毎日地方から王都に通うなんてことは物理的に不可能なので、ホテルに泊まっているようだ。

 ホテルはルーネスト屋の子会社的な商家が運営していて、本店の割と近くに位置している。

 

 なので、帰り道が一致するのだ。

 

「そういうヒューラさんこそ、同学年の中では最強ではないですか。才能だけでは、積み上げてきた努力と才能の相乗効果には敵わないと悲しんでおりましたのよ」

 

 俺は部活とヒューラの指導によってだいぶ強くなった。自分でも異常と思うほどのスピードで。

 

 しかし、ヒューラも負けてはいない。同じくらいの実力であった同学年の剣士たちを次から次へと打ち負かし、負ける回数も極端に減った。

 俺の言ったことは本心だ。俺の強さはいつか頭打ちになる。あるいは、永遠に追いつけないのではないかと思っている。

 

「あんただって他の人より努力しているじゃない。これまでしてこなかっただけで、今は剣術に対する熱意が違うわ。だから、追いつかれそうで不安なのよ」

 

「そこまで評価していただいていましたのね。それは大変嬉しいですわ。しかし、自分を過小評価し、敵を必要以上に恐れるのは武人としてもっとも恥ずべきことですわよ。もっと自信を持ちなさい」

 

 良いこと言った!と思ったのだが、どうやらヒューラ的に違ったらしい。

 こらえきれずに笑っている。失敬な。

 

「ぷ、くくく……あんたっていくら才能があっても武人ではないのね、なんか安心したわ。敵を恐れすぎるのはたしかに良くないけど、敵はある程度過大的に捉えるべきだし、自分を多少過小評価するのは命の安全につながるわ。つまり、あんたの言っていることはだいたい間違ってるのよ」

 

 ここまで言われたら流石に恥ずかしい。やっぱり誰かから聞いた理論をよくわかっていないまま自分のものにするのは良くないな。

 

 親戚の山田蓮人さん(57)、どうやらあなたの言っていたことは間違っていたようですよ。

 

 と、責任転嫁するのは良くないことだな。しかし恥ずかしい。

 ……うぅ。

 

「なに恥ずかしがってんのよ。でも、もっと自信は持ったほうがいいのかもね。ありがとう」

 

 ヒューラには珍しい素直な褒め言葉に、少し驚いたが嬉しかった。


「(……なぁ、いかにも青春って感じのやり取りだが……なんかおかしくないか?あきらかに年頃の娘さんの話題ではないよな。もう少しおしとやかな話題をしたほうがいいと思うんだが……。おい、お前からなんか言ってやれよ)」

 

「(なぜ私に押し付ける。お前が言えば良いだろう。それに、女性が剣術に興味を持つなど素晴らしいことではないか。シアン様が望むのならば、よほどでもない限りその方向に押し上げるのが私の努めだ。聞けんな。……まあ、怪我をしそうで気が気でないのも事実だが)」

 

「(やっぱお前の感性ってなんかズレてるよな)」

 

 アルフォスとジョインが小声で何やら言っていることは聞こえなかった。

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