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第十二話 恩着せ

「ルーネスト屋様に呼び出されたものだと思っておりましたがね……。なんのために私を呼び出されたのでしょうか」

 

 ジョインが目の前に座っている。不安そうな顔だ。原作での立ち絵とは違い、仮面を被ってないし全身黒ずくめでもない。

 ごく普通な平民スタイルだ。


「あなたのお父上、ハルキド子爵は実に勇敢なお方だったとアレゲ陛下からお聞きしています」

 

 これは嘘じゃない。8歳頃、貴族や有力商家が出席したパーティに連れて行かれたとき、王様がマスデロにポツリと一言そんな感じのことを言っていた。

 何の話のときだったか……それは覚えていない。

 友達だったのかもしれない。その時の表情があんまりにも印象的だったものだから、シアンの記憶によく残っている。

 

「陛下がそんなことを……」

 

 ジョインは目を見開いて驚いていた。そして、少し嬉しそうな表情をしたあと、平静に戻った。

 仇敵が死んでからだいぶ経っているから、心の整理はついていたのかもしれない。

 

「しかし、それだけのお方の息子さんが平民に落とされて、しかも夫人が難病を患っていると聞きまして、居ても立っても居られなくなりましたの」

 

「……で、何が言いたいんです?」

  

 護衛たちは誰も咎めない。どれだけ偉くても所詮は商人。敬意を払われなくても当たり前だ。相手が平民だとしても。

 

「まあまあ焦らないで。私はその状況を救いたいと思っているのですから。……アルフォス、アレを持ってきなさい」

 

「はっ」

 

 社員のアルフォスに大事なブツを持ってくるように促す。

 彼はマスデロにねだった結果俺につけられた部下の一人であり、元からの護衛でもある。

 同じ15歳で、結構な上役の息子なので学園にも通っているが、その時はあまり一緒に行動したりはしない。

 だが、登下校は一緒だ。学園の外では何があるかわからんからな。護衛は必要だ。

 

 マイロに言おうとして諦めた、一緒に帰って噂されると恥ずかしいし……というネタを言ってみたが、『誰もそんな噂するわけないじゃないですか。あくまでも上下の関係ですから、誰もそんなこと思いませんって。流石に自意識過剰ですよ』と言われて消沈した。

 

 その後冗談だと言って流したが、貴族じゃなくて商家だからか、そこまで上下関係が厳しくないのか?

 いやでも、それを加味してもかなりズケズケ言ってくるタイプの人間だな、アイツは。

 そんなことを考えているうちに、アルフォスが少し重そうな箱を抱えて持ってきてテーブルにおいた。

 

「ご苦労でしたわ。……この中身、気になりませんか?」

 

 ジョインはまさか、といった顔をして俺の反応をうかがった。

 期待と困惑半々だった。

 

「まあ、もったいぶっていても仕方ないですから開けましょうか」

 

「こ、これは……。母の病への特効薬……」

 

 ジョインの母親の病気はハンセン病だ。

 地球の中世ならば不治の病とか言われて隔離されたりもしたかもしれないが、この世界では植生が違うから治せる病気だった。

 隔離はされることもあるが、それは知識が不十分なだけだ。

 小さい子供や老人以外はまずかからない。

 

 ジョインは喜びつつも、なにをされるのかとビクビクしているようだ。

 まあ、無償でこんなことは普通しないよな。

 俺も無償のつもりはない。無償であると装いはするけどな。

 

「見返りは求めませんわ。話を聞く限り、あなたは両親への愛情が深い方のご様子だったので、ハルキド子爵ほどの猛者のご子息に悲しい真似はさせたくないと思い、ご用意しました」

 

「……っ」

 

 ジョインは感涙していた。号泣、大号泣だ。そこまで嬉しく思ってくれるのならこっちも嬉しいが、正直感情が強すぎてついていけない部分もある。

 まあ、クラゲ原作の時点でそういうやつだとはわかっていたが。

 原作ではジョインの母親は世を儚んで自殺していた。

 

 それ故、天涯孤独になった彼は心を病んでいた。鬱に近い状態かもしれない。

 そして心の闇を取っ払ってくれたクラウディアにめちゃくちゃ重い感謝と一途すぎる愛を誓っていたのだ。 

 ……となると、その状況を救った俺に惚れるとかあるのか?

 

 それは勘弁してほしい……が、ジョインは感謝が重くて一途と言ってもヤンデレではない。男のヤンデレとか誰得すぎるし、原作のシナリオライターにとっても好みではなかったのかもしれない。

 今から美女としてTSFしてくれるなら考えなくもないが……。それはまあ有り得ん過程だ。

 

 話せばわかってくれるはずだ。最悪でも心に想いを秘めながらも表には出さない状態にしかならんだろう。

 多分、きっと、メイビー。

 

「ありがとうございます、本当に、ありがとうございます……っ!」

 

 なんどもなんども頭を下げて、ついには土下座しようとしたのでやめさせた。

 

「……そういえば、あなたは相当な腕前らしいですわね」

 

 これは誘導だ。自分から俺に仕官してもらうためのな。

 俺から誘いをかけたという形になれば、薬をもらう条件でもあることになってしまい恩が薄れるかもしれない。

 だから、やるなら徹底的にやろう。

 

「いえ、私の強さなど大したものではありません。仲間内では強くても、ルーネスト屋の護衛の方と戦いでもすれば、一分と経たず破れてしまうでしょう」

 

 いやいや、アンタこの世界で最強だから!ルシュドルートで戦うことになる魔王より遥かに強いからアンタ!もっと自信を持って!

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