第二十話 ユズと、四巡目
当初は一話5000字を目安に執筆してたんだからこれでいいんだよ。これまで一話で5桁とか書いてた方がおかしかったんだよ。
(異世か……メイド服を着てない人間たちはさあ、才能はあるけど戦闘経験は浅いのばっかりなんだよね)
自らが仕える主である、シュカの言葉を思い出す。
(逆に言うと、本当に厄介なのはヴィランが押し付けてきたメイド服の方。五人いる内の三人が直接的な戦闘型。まあ一番厄介なのはエクステラがどうにかするだろうし気にしなくていいんだけど)
自らが仕える主である、シュカの言葉を思い出す。
(近接特化のニンカと魔法特化のアネモネって感じ。両方に相性いいフラメリは多分妹の方に行っちゃうから思い通りに動かないだろうし……というわけでこの二人の対処はミラとセレンに頑張ってほしいんだよね)
自らが仕える主である、シュカの言葉を思い出し、
(出来ればミラがアネモネと、セレンがニンカと戦うのが理想かな。多分逆だと――――あんまり相性よくないから)
その言葉がまさに真実であるということを、目の当たりにしていた。
「あー、もうやだ、マジ帰りたい……」
自身の土属性魔法《土卵》による暗闇の中、這いずる地這姫ミラが溜め息混じりに呟く。
ミラの最大の長所は、一点特化した集中力である。シングルタスク故に成長した集中力は、持続している限り最大限のパフォーマンスを発揮できる。膂力も然り、魔法の才も然り、されど最大の武器こそが集中力。
それが意味すること。それは即ち、ミラの最大の短所こそが、その集中力が切れた途端にパフォーマンスが大幅に落ちること。そして、それだけに飽き足らずモチベーションまで低下することである。
ミラの基本戦術は短期決戦。《土卵》で圧倒的に有利なフィールドに持ち込んで、袋叩きにする。実にシンプルで、迅速に終わる戦術である。
途中まではよかった。《土卵》による有利な場の形成。自分の位置を悟らせない堅実な立ち回り。このまま戦えば、確実に勝てるはずだった。
だが、ミラは見くびっていたのだ。
ニンカという存在が、いかに化物じみているかを。そして、いかに自分との相性が悪いのかを。
「どんだけタフなのさ、まったく……」
あれだけ暗闇の中でタコ殴りにしたというのに、今なお僅かな這う音を頼りに縦横無尽に駆け回るニンカを温度で感知し、ミラはもう一度溜め息をついた。
仕留めきれなかった……否、仕留めたと誤認し、一度集中力を切らした時点で、ミラの負けは確定していたのだ。
ニンカの強さの真価は、その無尽蔵とも思えるスタミナ。高ステータスで構成された身体を、動かし続ける力。何人連続で相手をしようと、一切陰ることのないパフォーマンス。短期決戦を狙うミラとしては、最悪と呼ぶに相応しい相手。そしてもう一つの問題が、両腕を捕らえる半透明の枷。
ニンカの固有スキル『命枷』。最大数二つ、一つ枷をかけるごとにステータスに下降補正が入るというシンプルかつ厄介なスキルだ。それこそ、暴力の化身であったボスモンスターを、封印できるほどに弱らせることも可能だ。
ただでさえタフな相手、そこに自らのステータス下降補正が加わり、ニンカを倒すのにとてつもない時間がかかるようになり、その前に何とか繋ぎとめていたなけなしの集中力が切れた……というのが現状である。
事前にニンカの体力は大きく削れているが、それでも戦況はやや不利だ。『攻撃に触れた瞬間その部分を殴る』という理路整然とした脳筋戦法により、こちらの体力も大きく削られている。しかも枷のせいでこちらの攻撃はほとんど通らなくなってきたのだからタチが悪い。
敗北確定。それが、ミラが自身に下した結論だった。
あまりにも絶体絶命な状況ではあるが、そう思っているのはミラだけではなかった。
「露骨に方針替えちゃってさ……」
ミラの土魔法で顕現した杭に吹っ飛ばされながら、ニンカもまた呟く。
集中力が切れたミラは、戦闘スタイルを変更している。直接ニンカを打倒することを諦め、暗闇から魔法でちょっかいを出すことに徹したのだ。
枷は膂力だけでなく魔法の威力さえも減衰させるらしく、弱まった魔法ではニンカを仕留めきれない。だが、それで良しとした。暗闇の中を逃げ回りながら、魔法でチクチクとダメージを与えていく方針に変更したのだ。最低ラインの《土卵》の破壊だけは阻止しつつだが、そもそもたとえ全快した状態の一撃であっても、壊れるような設計ではない。
しかし、その果てしなさにミラは唇を噛む。魔法でちまちまと削っていても、相手のHPよりも自身の魔力の方が先に尽きる。確証はないが、ミラはそう確信していた。
だが、この作戦変更は、ミラが思っている以上にニンカに刺さっている。
「こっちはそんな暇ないってのに……!」
そもそも、ニンカの本来の目的は、魔王ヴィランという魔王連合の一大戦力を足止めすることである。
我らが大将たる勇者ラゼと、魔王シュカとの邂逅こそが、本作戦の肝。そして、それらをすべて破壊しかねない最大の不確定要素こそが、魔王ヴィラン。ニンカは、その魔王ヴィランを止める役割を仰せつかっていた。
ミラと戦っているこの状況、一秒一秒がタイムロスなのだ。そもそも簡単に《土卵》が破壊出来ない、即ち簡単に戦線離脱できない以上、相手に逃げに徹されるのは閉じ込められている側にとって最悪という他ない。
真っ先に《土卵》に覆われ、外界から情報を遮断されたニンカは、外の状況を――――ユズの計らいによって、ヴィランは有吾が足止めしていることを知らない。フリーになったヴィランが仲間を殲滅している可能性すら考慮している。
泥試合になったら困るのはミラだけでない、ニンカも同じなのだ。何やら格好つけて「さあ、泥仕合を始めようか!」などと言っていたが、あくまで方便。本音は泥仕合などもってのほかだと思っていた。
双方ともに得をしない、奇妙な膠着状態での拮抗が続く。
――――故に、その拮抗が破られるとしたら、それは外部からの介入に他ならない。
「ヒュハハハハハハ…………」
「っ、愛弟子!?」
暗闇を振り撒く土壁の外から、何やらテンションがおかしい狂笑が微かに聞こえてきた。ここまでのタガの外れっぷりは地上では見たことがないが、間違いなく愛弟子――――ユズの声である。
外の様子は伺えないから、何が何やら分からない。しかし、どんどんと声のボリュームが上がっていくあたり、ユズがここを目的地として向かっていることは間違いなさそうだ。そこまで判断して、ニンカの脳が急速に回転しだす。
今の自分のコンディションと、ユズの特性を脳内でシミュレーションして……成った。
「イケる……!」
「えっ、は……う゛!?」
笑みを浮かべるニンカに対し、まずミラの口からこぼれたのは本気の困惑だ。それはそうだろう。たとえ魔王軍幹部であろうとも、他人の額が急に電撃を発したら、驚きもするし困惑もする。
ニンカがこの状態になるには、その日のコンディションが要になる。そしてそのコンディションは、本人にすらどうこうできるものではない。完全にその日の運でしかない。
しかし、傾向はある。前日に調子が良かった場合、その翌日もある程度のコンディションは保証される。前日のコンディションの良さは、ユズとの戦いで実証済みだ。
最初にミラの口を突いて出たのは困惑だったが、最後の呻き声だけは違う。
突如としてニンカから吹きすさぶ殺意に、本能的に身を捩らせたと同時に、喉から飛び出たのだ。
前日にユズと戦ったときよりは劣るものの、まるで角が生えるかの如く額から集中的にあふれ出す電撃のエフェクトに照らされ、ニンカが殺意を振りまいた。
謎の特技を持っている愛弟子を、ニンカは大いに信頼している。ニンカが今の状態になっているであろうことも、その殺意を誰に向けているかも、恐らくユズは勘づいている。そう信じて、ニンカは愛弟子にチップを全賭けした。
徐々に近づく狂笑に、ニンカは感覚で距離を測る。賭けに賭けを重ねた超理論。ユズに作戦の大部分を委ねた大雑把すぎる打開法。しかし、ニンカには確信があった。あのびっくり人間は、それくらいやってのけると。
ユズでなくても気付けるほどの殺意を込めたその拳に、ミラは最大限の警戒を置く。どういう理屈か分からないが、今まで使ってこなかった明らかに切り札っぽい技を切ってきた。それはもう、ミラは否応なく警戒する。現にステータスに下方修正がかかっている今、あの拳を真正面から食らったら、冗談抜きで死にかねない。
しかし、ニンカがミラの位置を把握していないという事実は揺るぎない。額から電撃のエフェクトは出ているものの、あれは光源として使えるものではないとミラは判断していた。今まで温存していた以上、連打できる技ではないのだろう。ならば、あの一撃を回避すれば、状況は戻せる。
そもそも当てられるとも思わない。今のニンカは自分の位置すら分かっていないのか、《土卵》の内壁に非常に近い位置に立っている。その分、その拳をミラに回避される可能性は高くなって――――
「――――まさか」
「ここかな、合わせろ愛弟子――――《人砕き》」
「ヒュハハハ、ハハハハハハハハァ!」
ミラの遅すぎる気付きと、ニンカのスキルの宣誓と、外のユズの到着を知らせる大狂笑は、ほぼ同時。
反転したニンカが、その拳を《土卵》の内壁に全力で打ち付ける。
すぐに修復可能な程度のヒビしか入らなかった土の壁から、破壊音と、光が流れ込んだ。
ミラの視界に入ったのは、崩落する土塊の中、額から電撃のようなエフェクトを出すメイドと、首から電撃のようなエフェクトを出す少年の拳が交錯し、まさに殴り合うその瞬間だった。
「ぎゃん!」
「うべァ!?」
ついでに、可愛い声質にしては少し可愛くない悲鳴と、割と命の危機に瀕していそうな悲鳴も聞こえた。
●
土の壁で威力が減衰しているってのに、このダメージですか……?
師匠の底力の果てしなさを物理的に肌で感じた俺は、着地と同時に思わず身構えるが、
「さすが愛弟子ぃ~っ! えらいぞ!」
待っていたのは、崩落した土のドームから飛び出した師匠(と俺が勝手に呼んでいる)ニンカからの熱烈なハグだった。この時の俺の感情は推して知るべし。ヒントは膂力。
昨日感じたニンカの極上殺意が土のドームの中から俺に飛んできた時点で、大体の意図を察した。殺意の発生源からどの辺を殴ればいいかは割り出せたが、まさか一発でタイミングが合ってドームを壊せるとは思っていなかった。意外と上手くいくものだ。というか俺は普通に自分のタイミングで突撃してぶん殴っただけなので、多分ニンカが上手く合わせたのだろう。
というかそれよりもその一撃の威力だよ。昨日より殺意は抑えめだったし、土の壁に阻まれて減衰しているから、もちろん昨日の死神の鎌みたいなダメージではなかったとはいえ、下手なガオウの一撃よりも普通に重かったんですけど。
忘れがちだが、今の俺は感情暴走状態。ニンカの殺意に充てられて俺自身テンションがブチ上がり、下手をすればまた戻れなくなる可能性があった上での決断だったのだが、味方に割と深刻なダメージを与えられたという事実にちょっと冷静になっちゃったんですけど。怪我の功名をマジで怪我して得るパターンは初めてだ。
「助かったよありがと~! 何より無事で…………えーと、うん、無事でよかった!」
「俺が言うのも何だけど、明らかに事が無くはねえだろ。いいって気ぃ使わなくて」
俺の首をじっと見た後、何事もなかったように朗らかな笑顔を見せるニンカに、俺は思わずツッコむ。
あと普通に恥ずいし、何より全身の骨が粉々になりそうなんで離れてくれます? 俺を抱き締める(どちらかというと締めるの方の意味が強い)ニンカの肩を掴んで引き離す。
茶番も終わり、ニンカが振り返って見つめる先には、完全に崩落した土のドーム……確か《土卵》的な名前だっけか、その瓦礫の上に鎮座する存在。
「あー……ちらっとしか見てないけど、もしかして君、魔王ヴィランに突っ込んでいった命知らずくんか。弟子がいるとか聞いていたけど、似た者同士ってわけだ。はあ……」
その表情は、人間のそれと変わらない。さすればミラの胸中を渦巻くその感情は、魔物メンタリズムがなくても察することができる。
疲労感と、倦怠感が、地這姫ミラを支配していた。
「まさか普通に《土卵》壊しちゃうとかさ……あー、そっか。ああいう時に固有スキル使えば良かったのか。やだなー、こういうの苦手だ……」
そう愚痴のような独り言を呟き、ミラは自らの真下に向かって掌をかざす。
「『ソリル・フォーマ・マイスト・トレジア』」
それは、間違いなく魔法の詠唱。ミラが使っているんだし多分土属性なのだろう、その魔法の詠唱を許してしまい、
「もう出来ることないし、十分時間稼いだでしょ……そんじゃね」
魔方陣から発生した砂煙が周囲に充満し、俺とニンカの視界を奪う。魔法を駆使した簡単な目くらましだが、逆に言うなら魔法の才能を持たない俺やニンカにはどうすることもできない…………
「くっ……愛弟子、ちょっと両手出して」
「えっ? おう」
咄嗟にかけられた意図が不明の言葉に、俺は思わず素直に声のした方へと両腕を突き出す。そして、その両腕の手首をニンカの両手が掴んで、その両手に力が籠って…………おいニンカ一体何をす
「口閉じて、舌噛むよ」
「待ん゛んんんんんんん゛っ!?」
俺の全身を力任せに数周振り回して、その勢いで周囲に突風を巻き起こすことにより、砂塵を強引に晴らした。冷静かつ的確な判断だぜ師匠、弟子を芭蕉扇か何かと勘違いしていないか?
ともかく、砂埃が晴れ、視界が明瞭になった頃には、ミラの姿は影も形もなくなっていたようだ。
「うーん、辺りを見てもそれらしき姿は見えない……これは逃げられたね」
「師匠! 世界が揺れてそれどころではありません!」
師匠と弟子と言えば聞こえはいいが、その実態はボコボコに殴っている人と殴られている人という構図でしかないから、そんなことを続けているとやっぱり価値観おかしくなっちゃうのかな。
しかし、その見立て自体は間違っていないようだ。
「実際、俺が見た限りではマジで萎えてたっぽいし、まあ逃げたでしょ」
少なくとも俺が加勢した後は、完全に逃げる方へと思考が傾いていたし、砂煙を展開する寸前の言葉には一切の嘘が含まれていなかった。俺という加勢を確認した時点で逃げていく、という考えうる限りの最良の選択をようやく引き当てた形だ。手っ取り早くていいね。
リンパ液を落ち着かせる俺の言葉に、ニンカは異論を挟まない。
「いや、本当に助かった。ありがと愛弟子」
「何よりですよ。んで師匠……」
「というかそうだ! ごめん、話ぶった切って悪いんだけどさ、魔王ヴィランって今どうなってる!?」
唐突に逼迫した表情になるニンカ。そうか、今の今まで閉じ込められていたから外の状況を知らないのか。
「今、有吾が足止めしてる。落ち着いてくれ」
「うぐ、な、なるほど……じゃあ私が加勢に」
「いや、待ってくれ」
恐らく魔王とかいう肩書を持った強者を異世界人たる俺たちに押し付けるのは、ラゼはもちろんニンカからしても不本意なのだろう。仕方なかったとはいえ、自らの力不足により魔王ヴィランをフリーにさせた責任を感じているらしいが、もはや自身より強くなっている有吾がヴィランの対応に当たっているというのが現実だ。つーかマジであいつこの師匠より強いの?
その悔しさ自体は尊ぶべきものだが、とはいえ今ニンカが有吾の加勢に向かわれるのは非常に困る。具体的に言うと俺の計画が破綻する。
「色々省いて説明するが、もし加勢するなら、それは俺がやる。師匠には、別にやってもらいたいことがあるんだ」
「何?」
ニンカの相槌を受け、俺は振り返る。その方向は、俺がここに来るまでに進んだ道。
「ここからまっすぐ進んだ先に立ってるデカい木の上に、下村と名塚さんが潜んでる。師匠には、二人の護衛をしてほしいんだ」
「ノボル、ちゃんと見つかったんだ……護衛?」
「そっか。そこからか」
そういえば、あのミラクル方向音痴マンは行方不明扱いだったという事実を思い出す。まあそれは今いい。問題は、あの二人の身が割と危険だということ。
二人はハピアが離脱する直前に、魔王シュカと通信する羽根を奪い取った。俺たちが掲げる最優先事項だったのだ、それ自体はいい。だが、俺たちが重要視しているということは、ハピア視点でも重要なものだということを完全に忘れていた。
要するに、羽根を失ったことに気付いたハピアが、取り返すべくリベンジを仕掛けに来る可能性がある。
足を封じたハピアだけなら、逃げに徹した二人だけでもどうにか対処できるだろう。だが、他の魔王連合幹部が合流した場合、恐らく二人ではどうにもならない。
フラメリは戦えるメンタルじゃない、何故かガオウも同様、セレンもこっちが確保しているってことで、この辺りは大丈夫だろう。だが、今離脱したミラは萎えていたとはいえギリギリ参戦してもおかしくないし、俺がまだ会っていない幹部と合流される可能性だってある。
これで、実は自由に動き回る俺が羽根を持っていました、ってオチならもう少し話を有利に進められるのだが、普通に羽根はあの二人に預けてあるんだよなあ……つまり、今あいつらが襲われることは二重の意味でマズい。
だからこそ、あいつらが安全にアネモネさん達のところへと戻れるように、強力な護衛が必要だ。
「そこで師匠なわけだ。今の今まで戦ってたってのに、頼むのは気が引けるが……どうせ体力有り余ってんだろ?」
「当然! ポーション込みで、あと三戦はいける!」
「いくな。傍目から見て普通に引くから……とはいえ助かる。木に近づいたら、二人の方から合流してくれる手はずになってっから、この方向にまっすぐ向かってくれ」
「了解――――愛弟子の悪運の強さは知っているけど、無理しないでね」
指差す方向を見て頷いたニンカが駆け出す。うわあ、走るの速ぁ。風を切る音が聞こえる。そんなことを言っている間に、もう背中があんなに小さく…………。
さて、ニンカも頑張ってくれているんだ。俺も次の殺意を探さなくちゃな。
殺意、殺意ねえ…………。
「はぁー……行かなきゃダメだよなあ…………」
俺は最大の溜め息をつきつつ、肩を落とす。
俺は、デカい殺意が発されている方を重点的に割り込みに行った。だからこそ、この戦場に残っているのは、これまで戦ってきた奴らよりも純度の低い殺意ばかりなのだ――――たった一つを除いて。
その殺意を避けていた理由はただ一つ。殺意があまりにも互いを向きすぎているからだ。俺が殺し合いに惹かれるのは事実だが、当事者でも何でもない殺し合いに巻き込まれるのは流石に面倒だとしか思えん。
だが殺意が大きすぎて、これ以上は強化された殺意レーダーでも支障が出そうなんだよなあ……いい加減片付けないとだよなあ…………。
「行きたくねえ…………」
俺は、何度目かもわからない溜め息をついた。
マジで行きたくねえ……個人のいざこざは個人で解決してくれよ…………。
Q. 今回、なんか今までに比べて短くない?
A. メイドは強さが安定してるから言うほどピンチにならない分、本文が短くなる傾向がある。というか今回は8000字も書く気なかったしこれでも長くなってる。
☆相性
ニンカVSミラ:ニンカ有利。魔法が理想的に決まっても何故か互角。
ニンカVSセレン:セレン超有利。十回戦ったら十回勝つレベルの相性差。
ニンカVSフラメリ:フラメリ有利。本来接触で炎熱と呪術押し付けてくるとかクソボスなんだよね……どうしてああなっちゃったんだろうね……
☆電撃のエフェクト
ユズ君の首から出ているやつはフラメリの呪術によって顕現したもの。
Q. じゃあニンカの額から出ているやつは?
A. 全くの別口。