第二話 ユズと、悪魔祭り
カップヘッドは執筆に致命的な影響を与えますね。
そういうわけで、投稿が遅れたのも全部あの腐れ女王蜂のせいです(反省しろ)
あと、しれっと一章五話のシハロの固有スキルの描写をサイレント修正しました。宝魂、魔王の遺物ときて、透明半透明球体がこれ以上増えるのはダメすぎる……
「……って感じだわ、こっちは」
「大変だねえ、ユズも」
訓練が終わり、神殿へと戻ってきた俺は、大城と下村と訓練内容について話していた。やっぱり元の世界から仲良かったこともあり、この3人で自然と集まることが多い。
ラゼとも会いたかったが、今日はソウさんと忙しそうに話してたし、仕方あるまい。
「そういうお前らはどうなのよ、下村と大城は」
「全力で魚から逃げ回ってるところ」
「ゴーレムの改造、指輪、サイリウム、ジェットスキーにフライボード……『キャシー』の作成も進めて、とにかくやることが多かった……」
「どういうこと?」
なんか途中で海に遊びに行こうとしてなかった?
「で、それ完成したの?」
「今日出来上がったのはこれだけだったね……丁度いいし渡しとくか」
下村が興味本位で大城に聞くと、大城はポケットから何やら棒状のものを二本取り出し、俺と下村に手渡す。
その棒の先端はピンク色に塗られ……というより棒の内側がピンク色に染まっていると言うべきか。何やらボタンが1つ付いている半透明の棒である。
いかにもボタンを押したら棒が光りそうだ。
「……これって」
「え? サイリウム」
「何でだよ!?」
何故よりにもよってこれを真っ先に完成させちゃったかなあ! 用途は何だよ!?
他にもあっただろ、それこそ……あ。
「そうだ大城、お前ゴーレム作ってんのか?」
「俺じゃなくてタスクが作ったんだけどね。それをメカニカルに改造するのが、俺の役割」
牢獄迷宮にて聞き覚えのある単語が会話の中に潜んでいたことを思い出す。
あの偽ゴーレム、結局何だったんだろうか。ラゼに聞くのを忘れていた。
「そもそも、その鎧はユズのために作ってたんだけど」
「……鎧?」
急に話が飛んだような感覚に陥ったのは、どうやら俺だけらしい。言った本人の大城は勿論、下村も納得しているようだ。
「あれ、ユズは知らなかったっけ? タスクの固有スキルでさ、全身鎧を作ると、ごく稀にゴーレムになるらしい」
「へえ、どんな改造してんだ?」
石井侑、通称タスクは大城と同じく非戦闘要員。そういえば、鎧とかの防具系統を作っているとか聞いた気がする。
それが元となってゴーレムを形成しているなら、全身鎧が独りでに動き出すって感じだろうか。
「とりあえず首の装甲を厚くしとく? って議題になってる」
「あぁー……」
その言葉に、俺はそっと首に巻かれた包帯に触れる。
フォールンセイントの呪いが解けていないため、長らく傷が完治しない状態だった。
一応包帯がなくてもいい状態なのだが、ティザプター戦で真っ赤になった包帯(実質ラゼとお揃い)が割と気に入っているのでそのまま放置――――は流石に衛生的に駄目なので、新しい包帯をわざわざ赤く染めて改めて巻いている。律儀にニンカやアネモネさんたちと染料合わせたわ。
おい誰だ、今首輪って言った奴。なに、実質ラゼに飼われてる? 否定は出来ねえ。
「あとは、あの籠手に合うような改良をしようかなって」
「ああ、あれね……」
俺はインベントリの中、堂々と鎮座する問題児に思いを馳せる。
その名は『剛枷拳ティザプター』。
名前そのまま、ティザプターを倒した際にドロップした専用の籠手。攻撃力にかなりの補正がかかったり、性能面だけ見れば中々優秀ではあるのだが……ただ、ひたすらに重いのだ。
それはもう、重量挙げほどの間と勢いでなければ両腕を挙げられないくらいには重い。秘められたもう1つの機能が使えないほどに重い。一度ニンカとの戦闘で使ってみたが、普通にサンドバッグになっただけだった。
要するに、俺の屋台骨である回避、その礎となる機動力が死ぬので、今日も今日とてインベントリでお留守番中だ。正直それを言うなら、多分全身鎧も俺との噛み合わせが悪いのだが、黙っておこう。
まあ、あれでも魔物の極致、ボスモンスターからのドロップアイテムだ。そう簡単に御させないということだろう。
……それにしても、ティザプターの『枷』ってニンカの固有スキルだよな? 何でティザプターのドロップアイテムに反映されてんだよ……重量による制限も含めて枷ってことか?
話をかなり巻き戻す。
「魚から逃げてるってのはアレか、シハロの固有スキルか」
「うん、あれ意味わからんくらい素早いのな」
監視カメラとドローンを合わせたようなシハロの固有スキルは、何故か透明な5匹の魚の形をしている。牢獄迷宮の中でも、それを使って俺が死なないように監視していたらしいしね。
下村は準戦闘要員だが、その役割上スピードが求められるので、そこを鍛えているということだろう。
「でも凄いんだよね、名塚さん。他人と息を合わせるのが上手いっていうか。俺も名塚さんのお陰で凄い動きやすかったし」
「それはお前だから……いや、何でもない」
同じ準戦闘要員である名塚さんについて話す下村に、大城は何かを言いそうになって、咄嗟に口をつぐむ。懸命な判断だ。
先程から感じる視線の方を――――下村の背後の柱へと目を向け、俺は声をかける。
「でもまあ、何かコツとかあるんじゃねえ? ね、名塚さん?」
「え?」
俺はさっきから邪悪な気配を感じ取っていたから分かっていたし、大城も気付きこそしなかったものの、この場に名塚さんがいてもおかしくないと思っていたらしい。顔は引きつっているが。
下村が振り返ると、背後の柱の裏から顔を出した名塚真紀さんはこちらに向かってにっこりと笑った。
「あ、噂をすれば名塚さん、どうしてここに?」
「ふふ、ちょうどここを通りかかって、さ……」
「へー、そうだったのか」
「「…………」」
俺と大城は、純粋な下村からそっと目を逸らし、咄嗟に顔を合わせて小声で喧嘩する。
(おいユズ! 何でわざわざ声かけちゃうんだよ!? どう考えても見え見えの地雷だろ!)
(気付いてる俺一人だけ恐怖体験だなんて納得できるか! 道連れだお前も!)
「ふふ、ユズ、大城くん? 用事があるのは本当なんだけ、ど……?」
「え? そうなの?」
てっきり下村目当てなだけかと……あ、名塚さん、こっち見て笑わないで、怖い! その笑顔がマジで怖い!
何されるの!? 俺、今から何されるの!? 存在をバラした報復としてこれから暗い地下室とかにでも連れていかれるの!?
断固拒否だ、俺は絶対にここから一歩も動かんぞ……!
「ふふ、私はあくまでメッセンジャー、ラゼさんたちから『降神の間』に召集がかかってる、の……」
「ほら、さっさと行くぞ、一分一秒が惜しい」
「俺、ユズのそういうところ嫌いじゃないけど、正直どうかと思う」
うるせえ、ラゼからの召集なんて、命に変えても遵守すべきだろうが……!
●
「――――という訳で、3日後、魔王シュカと魔王ヴィラン、その配下たちが私たちを襲撃して来るよ」
「えぇ……」
魔王たちによる秘密裏の暗躍がこちら側に筒抜けだったという事実に、安堵と同時に一抹のやるせなさを覚える。
「向こうの人員は双方の魔王合わせて精鋭11人+α。人数こそ少ないけれど、強敵揃いだから気を付けて」
「面子も割れてるのか……」
+αの部分が少々気になるが、確かに人数としては少ない。こちらの非戦闘要員を除いても、人数上はこちらに利がある。
しかし、基本的に一人あたりの強さでは向こうが格上と考えていいだろう。
「じゃあここから、各人員について解説していくよ。11人の戦闘傾向は覚えておいてね」
ラゼはそこまで語ると、恐らく以上全ての情報源であろうソウさんに目配せする。
「前提として覚えておいて欲しいのは、魔王シュカと魔王ヴィランは、基本的に配下を魔物で構成しているということですわ。まず、シュカ陣営は魔王本人含めて5人。4人の配下は、それぞれの魔法属性のスペシャリストですわ」
魔法の属性。基本的に火・水・風・土の4つらしいから、恐らくそれらを1つずつ極めた配下なのだろうか。
複数属性を用いることができることはごく稀らしいし、それ1つを極めるのは自然なことと思える。因みに我らがラゼは4属性は当然、加えて希少な回復魔法も使えるぞ! 流石だぜ!
「火魔法の使い手である悪魔、水魔法の使い手であるセイレーン、風属性の使い手であるハーピィ、土属性の使い手であるラミアという内訳ですわね」
何やら魔物の名前が列挙された。
悪魔は何となく分かる。セイレーンも、確か人魚みたいな奴だった気がするからイメージ通りだ。ただ残りの2体が分からん。
とりあえず偶然隣にいた、そういうことに詳しそうな奴に聞いてみる。
「なあ江口、ハーピィとラミアって何?」
「翼の付け根がエロいのがハーピィで、脱皮がエロいのがラミアだよ」
「なるほど。これは聞く相手を間違えたな?」
何で俺は、除夜の鐘でも祓えないレベルの煩悩マンに聞いちゃったんだろうな?
後で聞いたが、簡単に言うと鳥人間と蛇人間らしい。元から知ってた人もちらほらいたらしいが、俺は初めて知ったわ。
「ヴィラン陣営も、魔王含めて5人。配下は、呪い使いの悪魔、直接戦闘力の高いオーガ、拘束に長けるアラクネ、この中で唯一軍勢を率いることができるゾンビ。中々の曲者揃いですわね」
オーガ、アラクネ……もう聞くのは後でいいや、江口精一は偏った情報しかくれないし。
再び、ソウさんからラゼへと会話のバトンが渡る。
「当日は、魔王シュカを私、魔王ヴィランをニンカで対応する予定だよ。アネモネさんと戦闘に参加しない人たちは、神殿の中で待機。戦闘が可能な皆には、配下の担当をお願いしたい」
ラゼが俺たちを見る。承った。
「今一度私たちのスタンスを確認するけど、私たちは基本的に誰も殺したくない。魔族とは共存できると思っているし……」
ラゼは言葉を止め、一人のクラスメイトを見る。視線の先には、今も狼の魔物を抱えている少年。
「意思の疎通が可能な魔物も、不必要に殺すことはしない。魔族との戦いに終止符が打たれれば、経験値のために魔物を狩る必要もなくなるわけだからね」
「……!」
ロガルと、ロガルを抱えたコミっちの表情が明るくなる。
神が定めた世界のルールに則れば、いずれかの種族の殺戮は避けられないだろう。
しかし、俺たちの本懐は神殺しだ。それ以外の全てを生かしたいと思うラゼの望みは、難しいことだが、達成できない夢物語ではないと俺は確信している。ラゼに対する色眼鏡を抜きにしてもね。
「だから、皆には魔王を倒すんじゃなくて、追い返して欲しいんだ。難しいことかもしれないけど、そうしてくれると私は嬉しい」
確かな決意を持って、ラゼは俺たちに語りかける。
多分、ラゼ本人が魔王シュカに対応すると言ったのも、1つの意思表示の表れなのだろう。
互いに、世界の真実を知った者同士。相対したいというのも、十分に分かる話だ。
少し重苦しくなった話に、ふと突然に割り込みが入る。
「はいはーい、質問なんだけど」
そう言って手を挙げるのは、一人の女子生徒。
菊池玲奈。有吾と同じく人望でクラスカースト最上位に登り詰めた女帝だ。一部の生徒は、彼女に敬意を持って『姉御』と呼んでいる。そういえば、有吾と付き合ってるとかいう噂が立ってるんだけど、マジなのかな。今はどうでもいいけど。
異世界人最強が有吾だとすれば、次点が菊池だ。それほど強いらしい。普段は魔法チームにいる菊池は俺たちとはあまり合同練習をしないから、あくまで伝聞形だが。
「それぞれ魔王が配下4人連れてくるわけでしょ、そしたら10人になるわけじゃん。もう一人の精鋭って、どこの誰なわけ?」
そういえばそうだった。この話ぶりだと、まるで双方の魔王に属さない第三勢力がいるように聞こえるのだが……。
「魔王シュカの配下でも、魔王ヴィランの配下でもない、その11人目の名前は……【極悪魔エクステラ】」
その名前に────正確には、どことなく聞いたことのあるような名前の形式に、俺とコミっちが目を見開く。
「今回の戦いに便乗して襲来する……ボスモンスターの名だよ」
ただでさえどうなるのか分からなかった戦局が、更に混乱に満ちるのを、俺はより一層感じていた。
名塚真紀:ヤバい奴。
江口精一:ヤバい奴。
石井侑:相対的にまともだが、異世界に来てからタガが外れ始めた。
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