第十三話 ユズと、戦闘後であり戦闘前
作者が入院中だったため一週間ほどお休みを頂いていましたが、本日より更新再開です。
また、本日は本編と閑話で計二話の投稿となります。どうぞよしなに。
――――目が覚める。
「……あの後、また気絶したのか」
フォールンセイントを撃破した直後の記憶ですら存在しないことから、気絶したタイミングを逆算する。よくよく思い返してみれば、戦意喪失していたとは言え、まだゴブリンたちが残っていたのだが、よく生きていたものだ。ラゼがどうにかしてくれたのかね。
どれほどの時間が経過したのかは分からないが、俺はまたしばらく気絶していたようだ。
辺りを見渡すと、いつもの見慣れた拠点の光景が広がっていた。どうやら俺はまた、気絶した後にラゼに助けられたらしい。マジかよラゼ、女神過ぎない? 本人に言ったら2つの理由で怒りそうだけど。
そして俺は、首と腕と腹には痛みが残っていて、包帯が巻かれている。それ以外はほぼ完治しているようだ。どうやら俺はまた、気絶した後に回復魔法をかけられたらしい。マジかよラゼ、女神過ぎない? 照れ隠しと『女神なんかと一緒にするな』って意味で怒りそうだけど。
そのラゼだが、今は拠点にいないようだ。ふと手元を見ると、何か文字が書いてある樹木の葉が置いてあった。
『少し牢獄迷宮の中を調べてくる。目が覚めたら無理に動こうとしないで、ステータス画面とかドロップアイテムとかを見て待っていてほしい。お大事にね。 ラゼ』
俺はそっと、葉をインベントリの中にしまう。実質好きな人からの手紙だ。宝物にしよう。
しかし、不思議なものだ。この世界の文字は勿論日本語ではなく、更に言えば地球のどの文字とも違いそうなものなのに、何故だか読める。意味を理解しているわけではないのに、脳内で勝手に日本語訳されている感覚だ。なんか違和感が拭えない。
葉をインベントリにしまうついでに、ステータス画面やドロップアイテムを確認する。
最下層に降りるまではレベル27だった俺だが、今やレベル36まで上がっている。レベル103を倒した割にショボい気もするが、経年の補正は経験値にも響くらしく、そもそもフォールンセイントが死にかけだったのは俺に何の関係もないことから、俺に入る経験値はかなり減るらしい。それでもメチャクチャ多かったんだけどな。
次に、ドロップアイテムだ。ゴブリンたちのドロップアイテムは、大体見たことあるからスルー。目を引くのは――――
「『フォールンセイントの骸殻』『フォールンセイントの宝魂』『魔王の遺物』……うわあ、絶対面倒くせえ奴じゃんか……」
特に最後のドロップアイテムから、俺のキャパシティを越えている予感がビンビンに伝わってくる。そうじゃなくても、よく分からない割に希少なビー玉が増えた時点で整理がつかないと言うのに。
とりあえず1つずつ取り出してみる。『フォールンセイントの骸殻』は骨の欠片のようなもの、つまりよくある素材アイテムだ。『フォールンセイントの宝魂』もレッサーゴブリンのものと大きな変わりはない。せいぜい模様の色が黒と金になっている程度だ。
問題は『魔王の遺物』である。そういえば、フォールンセイントは『主君の望みを託す』とか言ってたよな。それと無関係とは思えない。
インベントリから取り出したそれは、野球ボール程度の大きさの水晶玉だった。何で俺のもとには透明半透明の球体ばっかり寄ってくるのかね。
その水晶玉は、俺が持たずとも宙に浮いており、何やら不思議パワーでその場に留まっていた。この時点で不自然と言えば不自然なのだが、しかしそれ以外に見た目には変わった点は見られない。魔王の遺物って言うくらいだから、もっととんでもないものを予想していたのだが……。
「価値は分からんけど、貴重なものだったりするのかね?」
そうして特に何も考えずに、俺はその水晶玉に触れて――――
『あ、あー、聞こえているかしら』
「――――は?」
声が響いた。
唐突な第三者の言葉に、俺は思わず水晶玉から手を離す。それと同時に、聞こえてきた声は止んだ。
周囲を見渡して、誰もいないことを確認し、まさかと思いながらも再び水晶玉に触れる。
『あ、あー、聞こえているかしら。私の名はリリス――――魔族の頂点、魔王が一人よ』
またしても動揺のあまり、水晶玉から手を離しそうになるのを、なんとか抑える。これ離したら最初から再生されるシステムっぽいしね。
間違いない。この音声は、この水晶玉から流れてきている。触れたら再生される便利システムだ。
『このメッセージを受け取っているのが誰なのか、いつの時代を生きているのか、そもそも誰かに受け取られているのかどうかすら分からないけど、これを聞いているあなたが私たちの意志を次ぐ者だと信じて、言葉を送るわ』
恐らく水晶玉の正体は異世界版レコーダー。その音声に混じるように、怒号や悲鳴、狂声、爆発音が聞こえてくる。
一度だって聞いたことがないのに、なんとなく分かる。今この音声が録音されているとき、戦争が起こっているのだと。
『多分私は、もうすぐ死ぬ。足掻いてみるつもりではいるけど、十中八九無駄でしょうね。私たちの野望は、これでお終い。私たちには、この世界を変えることなんて出来なかった』
その声は、まるで死ぬことを受け入れているかのような、澄んだ声だった。
しかし、それは諦念とは違うそれに思えた。絶望など、欠片もしていないように感じた。
『けれど、未来は違う。今はダメでも、必ず私たちの野望が果たされる日が来る。この世界に息づく命たちが、本当の意味で救われる時代が訪れる』
死の淵に立っているとは思えないほど、彼女の言葉は流れるように紡がれていた。
そして、音声は終盤に差し掛かり、彼女の語気が少しだけ強まる。
『この声を聞いているあなたが、私たちの野望を果たしてくれると信じて、私はこの言葉を遺すわ』
そして彼女は、最後に初めて怒りを滲ませて、告げた。
『――――神々を、殺せ』
その瞬間、水晶玉の向こうで破壊音が響き渡り、そのまま音声は途切れた。
●
「……ってなことがあったわけなんだけど」
「なるほど……確かに想像以上だね」
あの後ラゼが拠点に帰ってきて、俺が『想像以上のもの拾ったぜ』と水晶玉を手渡して、今に至るわけだ。
ラゼの心情が如何ほどかは分からないが、俺と同様にリルティアに追放されたというラゼには、神を憎んでいるらしいラゼには、この水晶玉は見せておくべきだろうと思った。
「因みに、魔王リリスって名前に心当たりはあるのか?」
「聞いたことはある」
ラゼは、顎に手を当てて何かを考えるように答える。
「私も詳しくは知らないんだけど――――この世界に生まれた一番最初の魔王だと言われてる」
「最古の魔王ってか。とんでもねえな」
「うん、とんでもない。数百年前の出来事だと伝えられているからね」
「数百年前――――」
思い出すのは、先程まで俺と命を散らしあった相手。
俺と同じことを考えていたのか、今度はラゼが俺に訪ねる。
「その、さっき言ってたフォールンセイントって魔物は……」
「ああ。口振りから察するに、魔王リリスの配下的な存在だろうな。多分、その数百年間を生きてきた魔物だ」
最後まで確認はできなかったが、恐らくステータスの下方補正が掛かっていたのはほぼ確実。そして『主君』というワード。まあ実質確定みたいなものだろう。
彼は間違いなく、数百年間を行き続けたとんでもない魔物だ。
「あ。そういえば、ユズ君を回収してたときに、これを拾ったんだ」
ラゼがインベントリから取り出したのは、見覚えのある剣。
【『護鎧の剣』
・装備したとき、対象の防御力と装備品の防御力補正が上がる。】
先程から話していたフォールンセイントが持っていた剣だ。盾と鎧は破壊されたが、そういえば剣は残っていたのか。
「というか、これはドロップアイテムではないのな。インベントリに見当たらねえな、とは思っていたんだが」
「あくまで、その魔物の装備品という扱いだからね。ゴブリンの棍棒とか、ドロップしたことないでしょ?」
「確かに」
直近の例で言えば、戦闘中にフォールンセイントの盾をインベントリに仕舞ったときが挙げられる。仮にあれがドロップアイテムだったら、フォールンセイントを倒さないと俺のものにならない。
もしあの盾が使えなかったら、俺は今頃死んでいたかも分からないのだから怖いものだ。
ラゼから剣を受け取る。ラゼよりかは使う機会がありそうだが、俺も剣――――というか武器全般、扱いがド下手なんだよなあ。棍棒を力任せに振り回すのがギリギリのラインだ。
まあ性能は破格だ。あまり長持ちしないだろうが、重宝させてもらおう。
「そういや、あの偽ゴーレムはどうなったのよ? 倒した?」
「……確認はできてないけど、多分直前で逃げられた」
剣をインベントリに入れようとしたときに、ふと頭から抜け落ちていたことを思い出す。
俺は多分フォールンセイントとの戦いに夢中だったか、気絶していたかのどっちかで、ラゼと偽ゴーレムとの決着を知らない。だが、その超僅かな表情の変化を見る限り、あまり満足いく結果は得られなかったようだ。
ラゼは、閉じようとしていたインベントリから、何かを2つ取り出す。
それは、先程の水晶玉程度の大きさに砕かれた、石の塊だった。その片方を、俺に手渡す。
「これは偽ゴーレムが砕け散ったときの残骸だよ」
「ああ、確か本体が土魔法で作ってたんだっけ」
「そう。そして、仮に魔法の使用者が死んだら、魔法は魔力に還るはず」
「はー、なるほど。こうしてこれが残っている以上、本体は逃げ仰せている可能性が高いってわけか」
思い出したのは、ゴブリンメイジの火魔法。フォールンセイントに着火したときは燃え続けていたが、ゴブリンメイジが死んだと同時に火は消えていた。やっぱりそういうシステムなのか。
魔力と言うものは、一々奥が深くて素直に感心する。俺にはさっぱりな領域の話だけどね。
そして俺は、水晶玉と剣、そして偽ゴーレムの残骸をインベントリに放り込む。別に欲しくもなかったのだけれど、正直、この時の俺は無意識、というか気付かずに入れていた。
「結局、あの偽ゴーレムは何だったんだろうな」
「いくつか推測はできるけど、どれも根拠に欠ける。それに、フォールンセイントがここにいた理由も不可解だ」
「不可解?」
「試練を与えたいのに、こんなに人間が少ない場所に留まっている必要がない。魔物にも試練を課していたなら話は別だけど……」
「意思の疎通がどうこうとか言ってたし、流石にないと思うけどなぁ」
魔物によって意思の疎通の可否はまちまちだ。フォールンセイントのように意図を察することができる激レア魔物もいるが、問答無用に襲いかかってくるものがほとんどだ。
「単純に牢獄迷宮から出られなかったっていう可能性もあるけど……あまり楽観的な考えはしたくないな」
何やら悩んでいた様子のラゼは、決意するかのような表情でこちらに向き直る。
「この牢獄迷宮で、無視できない何かが起こっているのは確か。もう、ここに長居する意味もなくなってきた」
そう言うと、ラゼは天井――――否、地上を指差して言った。
「2日後、牢獄迷宮を出るよ」
●
その日の夜――――牢獄迷宮には日の光が射し込まないため、正確には、俺たちが夜としている時間。
脱出が2日後に決まり、今日一杯は疲労を回復させることに専念。明日には、レベルが上がってステータスも急増した俺の戦法の最終調整が控えている。
その一環として、ラゼによる回復魔法の施術を受けていたのだが、ラゼが観念したかのように、ため息と共に告げた。
「首の傷が完治しない」
「えっ……俺、死ぬの?」
「いや、そこまで酷くはないけど」
フォールンセイントとの激闘を経て、俺の身体において重症とも呼べるのは、『亡獄』を受けた左腕と腹。片や骨がバキバキ、内臓の方もヤバかったらしい。
それでも俺が一命を取り止めたのは、ラゼの適切な処置と回復魔法があったからこそだ。
彼女の回復魔法は凄まじい。ラゼ曰く、実際は回復魔法という魔法そのものが凄まじく、回復魔法に多大な適正を持った者なら、死にかけだろうが秒で完治することが出来るらしいが、まあ俺はラゼが一番だと思うね。セラピー的な意味も含めて。
そんなわけで、左腕と腹はほとんど完治。明日には包帯も外すことができる見込みらしい。
しかし、そんな回復魔法でもやたらと治るのが遅い傷がある。それが首の傷だ。
それは、フォールンセイントの『亡獄十三連撃』の十二撃目に繰り出された刺突。それが俺の首の端を僅かに抉った。
ラゼの処置が幸いして傷自体は塞がっており、そもそも気管は生きていたこともあって命の危険はないものの、傷の規模を鑑みると、左腕や腹よりもさっさと治っている筈なのだ。
それなのに、まだ俺の首に傷は刻まれている。
「傷が塞がったくらいから急に治りが遅くなった。激しい動きをしたら傷が開くくらいには残ってる」
「そうか、原因に心当たりってある?」
そう聞いてみたものの、冷静に考えたら、俺とフォールンセイントとの戦いにラゼが不在だった以上、ラゼからしてみれば『こっちの台詞』状態だろう。なんて詮無いことを聞くんだ俺は。
「あるには、ある」
「あるんだ……」
どんだけ博識なんだよ、すげえよラゼ。惚れ直すわ。
「魔物が強い感情によって生み出す状態異常、『呪い』。この傷は、その類いだと思う」
「呪いっスか」
また新たなる異世界ワードが生まれてしまった。この世界はどれだけ俺を置いてけぼりにしたら気が済むんだ。
「発生条件は決まっていないけど、魔物の強い感情を伴った攻撃を受けたときに、傷の治りが遅くなるって言うのは、頻繁に聞く話ではあるんだ。それらを総称して、呪いと呼んでいる」
「あ、今回ばかりは珍しい症例じゃないのね」
思い返してみれば、牢獄迷宮に来てからやたらと希少な体験をしている気がする。ほとんどが嬉しくもないことだったけど。
「魔物の中には、意図的に呪いを引き起こす『呪術』を使うものもいて、魔物以外が魔物を研究することで呪術を自在に扱う『呪術師』って人たちもいるんだけど……あまり詳しくないんだよね」
「いや、十分詳細な情報だったんだけど」
風貌も性格もクールビューティーではあるのだが、意外に語り癖、というか解説好きな面があるのは重々知っているが、専門外でもここまで知識が深いのか。
それとも呪いやら何やら、その辺の情報は、この世界では常識扱いなのかね。
――――あれ?
「魔物の強い感情?」
「うん」
ラゼから肯定の頷きが返ってきた。
ちょっと待て、俺が首に受けた攻撃は、殺意を消して攻撃する『亡獄』だぞ? 呪いなんて発生する余地があるか?
「……いや」
あの時の俺は、あえて殺意を籠めるフェイントをかけられたにも関わらず、即座に十二撃目が刺突だということを認識できた。
当時はそこまで考えが至らなかったが、あれは相当に殺意が漏れ出ていた証拠。『亡獄』の十二撃目は、かなり失敗していたのだ。多分、フェイントの殺意を消しきれなかったのだろう。
「とりあえず、基本的に包帯は巻いたままにしておいて。いつ傷口が開くか分からないから」
そう言って、首に包帯を何周も巻き付ける。戦いの最中に相手に掴まれないように端は切ってあるので、首輪みたいな形状になっている。
「脱出時までには完治させておきたかったけど、これだけは無理だね……」
お手上げだと言わんばかりに、ラゼは口を噤んだ。
その脱出という言葉に、俺はラゼに問いたいことがあったことを思い出す。
「話は変わるんだが、ラゼは地上に出たらどうするんだ?」
その時ふと、ラゼに水晶玉を見せたときの反応が淡白だったことを思い出したのだ。
ラゼが神を憎んでいるらしいということは、ラゼにとっては結構な地雷らしく、どうにか機嫌を損ねないように、それとなく遠回しに尋ねてみた。幸い、もうすぐ牢獄迷宮の外に出るのは確定事項になったから、話の流れも不自然ではない。
ラゼは少し迷ったあと、
「……友達に、会いに行くかな」
と答えた。何そのめっちゃ可愛い答え。
「友達、ねえ……」
その呟きに、ふとクラスメイトのことを思い出す。
最後に見たのは、牢獄迷宮に追放される直前。リルティアによってゴミのように扱われた俺に、何とも思っていないような笑みを向けてきた奴ら。
そりゃあ、思うところがないわけじゃない。
「俺は逆だな。ムカつく奴に会いにいかなきゃならない」
冷静に考えたら、この世界に放り出された俺の行動指標は2つしかない。難儀なものだ。
「ユズ君は……いや、何でもない」
何かを尋ねようとしたラゼは、少し逡巡した後、発言を取り止めた。
その様を見て、ラゼが何を聞こうとしたのか、何故聞くのをやめたのかをなんとなく察した俺は、自らラゼに話しかける。
「俺がリルティアに追放された時のこと、聞いてくれるか?」
「っ! でも……」
「聞き出すのはアウトでも、自分から話すのはセーフだろ」
牢獄迷宮に存在する暗黙の了解。ここに来た経緯を聞くのは御法度だが、自発的に言う分にはレギュレーションに違反していないはずだ。
「……分かった。聞くよ」
「おう、どこから話そうか……」
●
それから、俺は牢獄迷宮に追放されたところまでを語りきった。
女神によって、異世界から勇者として召喚されたこと。自分だけが弱いと判断されたこと。クラスメイトたちから見捨てられたこと。牢獄迷宮に追放されたこと――――。
ラゼはそれを、時々相槌を打つだけで、何も言わずに聞いていた。
「そんなわけで、俺の目的は現状、リルティアの奴に会うことくらいなわけだ」
そう締め括る俺に、何故かラゼはどこか申し訳なさそうな、それでいて不思議そうな複雑な表情をしている。まあほとんど表情は変わってないけど。
「……1つ、聞かせてほしい」
「何?」
「ユズ君はずっと、女神に復讐したいって言ってるんだよね?」
「まぁ……そういうこと、なのかな」
歯切れの悪い答え方をする俺に、聞くのを躊躇いながらも、ラゼは意を決したかのように俺に問う。
「何で、クラスメイトは除外してるの……?」
第三者が俺の話を聞けば、ほとんどの人が抱くであろう尤もな疑問を挙げた。
確かに第三者からすれば、クラスメイトがやったことは極悪非道――――とは言わずとも、少なくとも薄情だとは思うだろう。特に、明らかに俺の追放に荷担していたように思える、鈴木有吾や菊地玲奈に関しては言うまでもない。
しかし今まで俺は、牢獄迷宮に追放された全ての憎しみを表現するときに、ずっとリルティアを槍玉に挙げてきた。一度だってクラスメイトを悪し様に言ったことがない。
それが、ラゼにとっては奇妙に思えたようだ。
俺からすれば、結構単純な理由なんだが。
「単に、俺があいつらのことを、憎んでないからだな」
「……?」
ラゼから『意味が分からない』という感情がひしひしと伝わってくる。
珍しい状態に陥っているラゼを微笑ましく思いながらも、俺は苦笑しながら言い切った。
「誰かに操られでもしなけりゃ、あいつらがそんなことするわけないんだよ」
俺のクラスメイトは、底抜けのお人好しばかりなのだから。
追放モノ…………追放モノ???
『面白かった!』
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『さっさと続きを更新しろやブン殴るぞ』
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