プロローグ
初めて本格的に連載します。至らぬ点はあると思いますが、どうぞよしなに。
なに、『AIr事件』について教えてほしい?
君がそんなことを聞いてくるなんて珍しいね、僕としては嬉しい限りだけどさ。
いいよ、少し長くなるけどいいかな?
――――あ、手短に?
分かった、善処する。
皆は『AIr事件』略して呼んでいるけど、本来の名前は『AI rebellion事件』……つまり、AIの反逆の事件って意味なんだ。
よく映画とかで見る設定でしょ? AIが人類に反旗を翻したってやつ。それが実際に起きたんじゃないか、って言われているのさ。
――――まあ実際は、AIが人間に反逆した結果起こった事件かどうかは謎らしいんだけどね。ネットで一部の人が騒ぎ立ててるだけだし。
一言で事件の概要を説明してしまうなら、世界最高峰と目されていた二種のAIが、消失した事件なんだ。
片方は結構ニュースとかにもなってたし、有名でしょ?
名前は…………ああ、そう、それそれ。やっぱりネットで検索してもすぐに見つかるくらいには有名だね。
そう、世界初のゲーム製作AI。
とある大手会社が立ち上げた、人間の手を一切要さず、AIだけでゲームを作るという一大プロジェクトだよ。
購買層の需要のリサーチからプログラミングまで、本当に何から何までやっているらしいね。国からも相当な援助を貰っていたらしいし、相当とんでもないAIか開発されたんだろうさ。
でもある日、そのAIは消失した。
ゲームに手を加えないとはいえ、開発スタッフが定期的に様子を見ていたんだけどね。ある時を境に、反応が一切なくなったらしいんだ。
手口も犯人も一切不明。一大プロジェクトの予期せぬとんでもない損失に、会社の経営そのものが危ぶまれているって話だよ。
もう片方は某国の研究所で開発された、名前は…………あっ、うん、それだね。やっぱりネットに普通に出回ってるし、自分で検索した方が早くない?
あー、なるほど。小難しいから要約してほしいってわけね。
えっとね、そのAIが開発された目的っていうのは、大きく分けて2つあるんだ。『思考の究極』と、『身体との連動性』。
……いや、別に難しい話でもないから、そんなに眉を潜めないでよ。
まず、『思考の究極』ってのは単純。ただひたすらに、AIというものがどれほど物事を深く考えることができるのかを計ったわけだ。
身も蓋もない言い方をするなら、『結局俺達が本気を出して開発したら、どんだけ賢いAIが作れんの?』ってことだね。
次に、『身体との連動性』だけど……例え話をしようか。
例えば、君の目の前から突然、凄い勢いでボールが飛んできたとする。
そうしたら君は、避けようとするなり、咄嗟に手で防ごうとするなり、思わず目を瞑るなり……とにかく、反射的に何かしらのアクションを起こすだろう?
生物っていうのは大体そうなんだよね。五感から情報を脳へと伝達して、今度はそれに対して体を動かして回答とする。これが脳と身体の連動性だ。
んで、このAIの役割は、それらをどれほどまでに生物のそれに近付けることが出来るのかって実験なんだ。
…………そう、よく気付いたね。こっちのAIには、機械の身体があるんだ。
まあ要するに、物理的にAIを盗み出すことが可能ってわけさ。その機械の身体ごと奪ってしまえば良いわけだからね。
だからと言って、研究所内のAIを盗み出すことが簡単なわけじゃない。
一流の研究所だし、セキュリティも厳重。そもそも関係者以外立ち入り出来ない造りになってる筈だし、万が一セキュリティにハッキングしようとしても、そう易々と突破できるものじゃないよ。
でも、現実には突破された。
監視カメラは何も映さず、センサーは何も感知したかった。それでも世界最高峰のAIは、その身体ごと消えてしまったのさ。
――――だから人々は言うんだ。『人間業じゃない』ってね。
それが、『AI rebellion』だなんて名付けられている理由だよ。人間に出来ないのなら、AIが人智を越えた方法で逃げたしたに違いないってね。
……まあ、実際に誰が、どうやって、何のためにやったのかは、まだ一切謎なんだよ。そもそもその二種のAIがほぼ同時に消失したとは言え、実行犯が同じとも限らないしね。
ただ、ネット上で噂されている説が本当に正しいのだとしたら、それこそ映画のような凄惨な事件が起こってしまうかもしれない。
だからこそ、ここ最近で最大のニュースになってるわけさ。
簡単に説明すると、こんな感じなんだけど。どう? 聞きたいことは聞けた?
……え、僕はこの事件についてどう思っているのか、だって?
僕は、どっちとも断言できない――――けど。
この事件によって、何か世界が大きく変わるんじゃないかって、そういうトキメキを、一人の機械好きとして期待しているよ。
ま、それで僕たちの身に何か起こるほどまで事件が拡大するとは、さすがに思えないんだけどね。
僕たち、ただの高校生だし。
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