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余命1年の僕は世界一幸せな国と呼ばれる300年後の日本にタイムスリップしました。

作者: ウダユイ

 0




「治療法はありません。長くても一年が限界かと」




 冷静に、ただただ事実を口にする白髪の男性医師に、佐藤和樹の母親は泣きながらすがっている。


 母親には白髪の医師が神にでも見えているのだろうか。




「そんな! まだこの子は一六歳なんですよ! そんなの! そんなの!!」




 普段静かな病院に悲痛な声が響く。


 病が蝕む体はもちろん痛い——けど、それよりも心が痛かった。


 どうか泣かないで——と思いながらも、




「ありがとう」




 と和樹はそれだけ言う。


 その言葉は母親の感情を大きく揺さぶる。一人息子の名前を何度も叫びながら、昔はもっと大きかった手で顔を覆い泣き崩れていた。母親だけではなく、父親も鼻をすすりながら涙を流している。両親だけではない。居合わせた看護師までも、その悲痛な光景に涙を流していた。


 ——ただ一人、白髪の医師を除いて病院の一室は泣き暮れた。




 1




「はじめまして。気分はどうかな?」




 知らない天井だった。昨日までとは違う知らない天井。そして和樹の顔を覗きこむのも知らない顔。白衣を着た小太りで人の良さそうな初老の男で、胸には名札が付けてある。


 太田、と簡素な味気のない書体だった。




「安心してくれたまえ、君の心臓はもう完治したからね。まあ、切ったから数ヶ月の入院とリハビリは必要だがね」




 白衣を着た太田の言葉に和樹は耳を疑った。




「完治……? 完治はありえないって、昨日言われたんですが」


「うん? それは何百年前の医学の話かな? 手術は成功したよ。この私が保証する」




 フカフカのベッドに身を包まれた和樹はそっと目を閉じ、息を吐く。息を吐くと体が痛むが、昨日までの痛みとは少し違う気がする。


 薬物投与による体の麻痺、つまり——安楽死。


 和樹は楽観的に考えることにした。余命が一年もない和樹にはどうでもよかったのだ。




「そこで一つ質問なんだけど、君の名前と年齢を教えてくれるかな?」


「佐藤和樹。一六歳です」


「うーん……、やっぱり見当たらないな。『カウンターバンド』も付けてなかったし……」




 太田は親指と人差し指で顎を挟んで一人で呟く。




「……カウンターバンド?」




 聴き慣れない単語を和樹は反復する。




「『カウンターバンド』、君は付けていなかったからね。でもちゃんと更新して付けておいたから安心してね」


「なんですかそれ?」


「なるほど。もしかすると君は記憶喪失なのかな。なら無理やりに辻褄を合わせることができるかな……。あぁ『カウンターバンド』は人の寿命を示す機械のことさ。ほら君の左手首を見てごらん?」




 痺れる左手を布団の中から出すと、デジタル時計のようなものが巻いてあった。




「えーっと……、二一億七七二七万、八六九〇?」


「その数字は君の残りの脈拍数さ。ヒトの生涯で脈の数は決まってるから、逆算すれば寿命がわかるのさ。まあ細胞の優劣や劣化によって多少は変わってくるけど、そこは機械が計算するから完璧だよ。安心して」




 小太りでヒトの良さそうな初老の医者、太田は言う。




「あくまでも脈の速さによって変わってくるから正確ではないけど——君の寿命は残り六〇年位だよ」




 2




『こんにちは! 二三二〇年九月一日、今日の天気は晴れです! 今日は今から三〇〇年前に世界的に大流行したコロアウイルスを受けて進化した医学についての特集です。


『世界幸福度ランキング一五七年連続で一位の日本ですが、日本は三〇〇年前から急な発展を遂げました。


『——。


『医学の発展により病死者は一六四年連続〇人。自動運転や交通整備が進み、一五六年連続、事故による怪我人並びに死者〇人。幸福度の向上により一五〇年連続、傷害による怪我人、死者共に〇人。日本人の死因は衰弱死のみとなりました。


『——。


『幸福の要因はやはり一六〇年前に開発されたカウンターバンドでしょう。正確に寿命が表示されることにより人々は悔いがなく、幸福で完璧な人生をおくることができています。——。』




 3




 和樹は空間に表示される動画と、窓の外に見える空を飛ぶ車のような物体を眺め、静かに涙を流していた。




 4




 結論から言うと、和樹は回復した。数週間たった今では一人で歩くこともできる。常に痛み続けた体はもう痛むことはない。治療法はないと言われた病は治っていた。


 看護師のお姉さんが見せてくれた動画や、窓の外の景色は和樹に一つの事実を突きつける。


 ——タイムスリップ。


 和樹は一六年間生きていた時代は三〇〇年前で、すでに大昔のことになっていた。




「採血しますねー」




 血を抜く看護師のお姉さんの胸の名札には『椎名』とある。椎名は和樹の担当のようで、体が動かない時には何から何までお世話になった人である。


 理解し難い現実に少し慣れ始めた頃、和樹は思うことがある。それはお金だ。三〇〇年前からタイムスリップしてきた和樹には両親、つまり保護者がいない。一六歳の高校生がお金を持っている訳もなく、




「僕、保護者がいないので、お金持ってないんですけど……」




 と現実的な心配をするのだった。


 すると椎名は献血の手を止めて屈託のない笑顔で答える。




「大丈夫ですよ! これは私たちの善意です! 受け取ってください」




 そして作業を再開した椎名は付け加えた。




「それに記憶を失っている子どもをお金がないからと言って、放り出せるわけないじゃないですよ。子どもは無条件に大人に守られていいんです。子どもは社会の宝ですから」


「ありがとうございます」




 泣きそうになる和樹に、一通り検査を終え病室を出ようとした椎名は言う。




「もしよかったら隣の子とも仲良くしてあげてください。歳も近い君になら心を開いてくれるかもなんで」







 悲しげな表情をしていた椎名の言葉が忘れられない和樹は隣の病室を訪ねることにした。善意で入院させてくれている病身の看護師さんに頼まれたのだ。無下にはできない。


 六名分の名前が記入できる表札には、『一条幸』と一名分の名前だけ書いてあった。


 女子の名前に躊躇する和樹は意を決してノックする。しかし返事はなかった。もう一度ノックする。返事はない。最後にもう一度ノックする。やっぱり返事はない。




「はあ、戻ろ」




 和樹は歩けるようになったが、不自由がないというわけではない。満足に日常生活を送れないほどには筋肉が低下して、歩くのにも一苦労なのだ。


 完全に無駄足だった。


 無駄骨ならぬ無駄筋肉に終えた和樹は病室に戻ろうとして、一歩踏み出した。その時、病室の中から聞こえた。




「どうぞ」




 それは晴天の空のように澄んだ声で、決して大きな声ではなかったが、病室の扉を一枚隔てた和樹にしっかりと届いた。




「失礼しまーす」




 ベッドに腰掛けている少女は和樹と同じ入院服を身につけている。入院しているので体調が良くないものだと思っていたのだが——一瞥する限り、そうでもないらしい。


 開いた窓から小さな風が入る。それは幸のいる病室から和樹の立つ廊下へと駆け抜けた。


 幸の黒く艶やかな髪が風に吹かれ揺れる。




「若い男子なんて珍しいお客さんね」


「若い女だ……」


「ひぇ!?」




 どうやら精一杯に虚勢を張っていたらしい幸は、一つ咳払いをして平静を装う。




「な、何の用かしら?」




 和樹は幸のベッドと向かい合うベッドに腰掛ける。




「いや、特に用事があるわけではないけど……」


「なら帰ってくれるかしら、私もあなたに用はないわ」


「……えっと、じゃあ質問していい?」




 質問? と反復した幸はため息をついた。




「仕方ないわね、一つだけ答えてあげるわ。その代わり答えたら今日は帰って頂戴ね。いい?」


「わかった」


「で、質問は?」




 出まかせの提案で質問の内容なんて考えてなかった和樹は唸る。




「お、おいくつですか?」




 精一杯絞り出した質問がこれである。とりあえずの質問トップスリーには入るその無難さと言えば、居酒屋で聞こえる「とりあえず生」みたいなものだった。




「一四よ。今年で一五になるわ」


「そっか。俺一六だわ。今年一七。よろしく」


「と、とりあえず質問には答えたわ。帰ってくれるかしら」


「じゃあ明日も来るから」


「え、ちょっと!? 来ないで!」




 5




 次の日もやっぱり、佐藤和樹という男が病室にやってきた。


 あいつは前日に私の「一つだけ質問に答える」というセリフをいいように解釈して、毎日一つ質問してくる。年上だからといっても無遠慮な態度は気に入らない。初めはあのふざけた解釈と態度に腹が立ち、こみ上げる感情に任せて暴言を吐いてやろうと思ったが、大人の対応として一日に一つだけ質問に答えてあげることにした。だけど一つ質問に答えたら何がなんでも口を聞かずに無視する。


 普通なら数日もすれば私の態度に嫌気がさして、向こうから姿を表すことはなくなるだろう。




「身長は一四七センチ」「体重は秘密」「好きな食べ物はリンゴ」「好きな色は白」「趣味は読書」




 数日が経ったが、あいつはまだ私の病室にやってくる。


 それに質問の後は私に向かって話しかけてくる。もちろん私は質問以外には口を開かないから、あいつが一人で滑稽に喋っているのだ。それでも表情は柔らかく、嫌な表情をすることはない。


 まあ病室が騒がしいのもあと数日で終わるだろう。いつものように……。




「最近嬉しいことはなかった」「テレビは見ない」「出身は東京」「冬が好き」「夏が嫌い」「猫派」「今はうるさい人を黙らせるものが欲しい」




 あいつは今日も来た。私みたいな可愛くない子のために、なんでそこまでするのか。


 次は少しくらい話してあげてもいいかな。




「自分の好きなところは素直なところ」「嫌いなところは不器用なところ」「運命は信じない」




 ……なぜか話しかけることができない。




「小さい頃の夢はお嫁さん」「恋人はいない」「好きな人と海に行ってみたい」




 とてもは恥ずかしいことを言っちゃった。




「好きな人はいる」




 私は気づいてしまった。




 6




「あんた、短命やね」




 和樹のカウンターバンドを見た活き活きとした白髪の老人は言う。


 若い男である、佐藤和樹は、病院に若い人間は珍しいと、お年寄りに囲まれていた。幸にお年寄りが群がらないのは、彼女のめんどくさい性格故である。




「太く短く」


「そうやそうや」




 ガヤガヤと自由に喋るお年寄りに和樹は一つ質問をした。




「ちなみに平均寿命ってどれくらいなんですか?」




 和樹の余命はおよそ六〇年——約七六歳まで生きられることになる。七七歳は短命なのか。和樹の知っている平均寿命は八〇歳だったので、短命、という言葉が気になった。


 医療が発展した未来の日本では少しぐらい寿命が伸びていてもおかしくない。江戸時代の平均寿命が五〇歳だったように、医療の発展により平均寿命は伸びる。




「一五〇歳じゃ」


「え?」




 別のお年寄りが捕捉する。




「平均寿命はもう一〇〇年位変わってないの。なんか人の体の構造の問題で長くても一八〇歳位が限界だとか」




 大きな常識のズレに愕然とする和樹は恐る恐る質問した。




「おばあさん達は今いくつなんですか?」


「いくつに見える?」




 お年寄りの中でも若い方のおばあちゃん。


 この常套句は三〇〇年変わらないらしい。和樹は干若めに設定する。




「五〇歳くらい?」




 がははは、と笑いに包まれる病室。




「一四三歳じゃ」


「え」




 笑い声に包まれる病室の時間に、和樹は置き去りにされた。


 一四三歳の老婆は中野花。周りの人からは花さんと呼ばれ慕われている。短い白髪に柔らかい笑顔を作り落ち着いた雰囲気を醸し出していて、和樹の常識では逆立ちしても一四三歳には見えなかった。




 7




 和樹は花さんの病室に遊びに行くことにした。


 幸を連れて。


 普段から本当の孫のように接してくれる花さんに和樹がなつくのは至極当然で、よく花さんの部屋に遊びに行っていた。


 なぜ幸がついてきたのか。


 それは少し前のこと。







 和樹はいつもの日課のように幸の病室に遊びに行っていた。その日、和樹は機嫌が良かった。もちろん以前より歩くのが楽になったから、というのもある。しかしそれとはまた別の理由があった。




「最近は一条幸さんの機嫌がいいの。和樹くんのおかげかな?」




 と、前に「幸のことをよろしく」と言っていた看護師の椎名が笑顔で話してくれたからだ。聞くところによると幸は精神的にかなり消耗していたらしく、看護師の中で幸の精神的ケアは課題だったらしい。しかし幸の扱いづらい性格のせいで、難攻不落。困りあぐねていたと言う。


 そんな看護師達の役に立てたことは、彼らの善意で病院に置いてくれている和樹にとって喜ぶに値することだった。


 という訳で、幸に聞かせる僕の一人語りもノリに乗っていた。




「いやー、驚いたよ。平均寿命が一五〇歳って!」




 和樹の隣に腰掛ける幸は、小さな機械から空中に表示されている活字を目で追いかけている。どうやら電子書籍を読んでいるらしい。やはり幸は和樹の一人語りに口を挟むことはなかった。一日に一言、和樹の質問に答えるだけだ。




「てか、カウンターバンドとかびっくりしたよ。寿命が分かるなんて」




 一度、幸の方へ目をやるも、幸の目線は活字に惹かれていた。


「俺の寿命はあと六〇年位だってさ」


 和樹は幸が反応する話題を探るために、話題を無作為に変えていく。


「最近は花さんとこにも行くようになった。ありがたい話がきけるからいいんだ」


 和樹は合掌をして両手を上下に擦る。もちろん念仏を唱えているわけでも、神に祈っているわけでもない。無宗教の和樹にとってはただのジェスチャー。ふりに過ぎない。




「私も行ってみたいわ」


「へ?」




 まずは口を開いたことに驚いた。そして次に、幸が他人に興味を持ったことに驚く。




「じゃ、じゃあ今から行く?」


「ええ」




 コクリと幸は頷いた。







 そして今に至る。


 花さんは初めて見る幸の顔に驚いていた。一度、幸の病室に足を運んだことがあると言っていたが、幸と顔を合わせることはなかったらしい。そんな幸が自ら病室に足を運んだのだ。花さんは「ようきたなー」と完全に孫を迎えるおばあちゃんであった。その姿に幸は少し押されている。


 今日は花さんの病室には誰もいない。他のお年寄りは病院の外庭でティータイムを楽しんでいるようだ。花さんは診察の都合、参加できなかったらしい。


 それにしても、この病院の入院患者は自由すぎる。


 花さんはどこから取り出したのか、大量のお菓子をベッドに備え付けられているテーブルに並べる。和樹が一人で訪れる時もいくつか用意してくれるけど、この量はみたことがない。やっぱり男の子の孫より、女の子の孫の方が可愛いのね。




「遠慮なくお食べ」




 基本的にこの時代のお菓子は美味しい。それでいてカロリーで殴るようなジャンキーなお菓子は無く、健康に良さそうなものが多い。これは病院で手に入るお菓子だからという可能性もあるが——とにかく、ベッドの脇で椅子に腰掛ける和樹には満足な時間だった。


 花さんの話は今日も面白い。




「昔はそれはそれはモテたわ。たくさん男が群がってきおる。まあ今もじゃがな!」




 がはは、と大きく笑う花さん。


 和樹は時々、隣に腰掛ける幸に目をやる。幸は基本無表情だから感情はあまり読めないが、おそらく苦痛には思っていなさそうだ。その証拠に口元が小さく綻んでいる。


 基本的には花さんが一方的に喋っているが、たまに和樹や幸に話題が振られる。幸は話を振られるとあたふたして、最終的には「和樹はどう」と丸投げする。やはり一四歳らしく可愛らしいと和樹は思うのだった。


 こんな何気ない日常が続き、いつしか三人で過ごす時間は——和樹の心に開いた隙間を埋めるように幸せで——かけがえのない時間となっていた。




 8




 和樹の日課は変わらない。毎日懲りずに幸の病室へ足を運ぶ。幸に一つ質問した後は、飽きるまで幸に自分の話を聞かせる。


 質問以外に口を開くことのなかった幸はもういない。


 幸は寡黙ながら、和樹と会話をしている。


 和樹を囲む関係は大きく変わった。花さんの病室へ幸と二人で顔を出すようになって、もう一週間になる。初めは緊張して話すことのできなかった幸も自分から花さんに話をするようになった。無表情に見えるその表情も、よく見ると口角があかり、微かに微笑んでいるのがわかる。初めてあった時の虚勢を張ったような姿からは想像出来なかったが、幸は口下手で大人しいタイプの女の子らしい。


 楽しい毎日だった。


 しかし、楽しい時間はあっという間なんて言うように、心地よい日々は長くは続かないのも世の常である。




「明日、花さんのお別れ会だから、一条さんと参加してあげてね! 花さんきっと喜ぶよ!」




 看護師のお姉さん、椎名は言った。彼女の笑顔は屈託がない。







 翌日、和樹は幸を連れて花さんの病室へ向かった。


 看護師のお姉さんはお別れ会と言っていた。花さんの顔を思い出す——おそらく退院するのだろう。少し寂しいけど、めでたいことだ。ここは病院だから。和樹が少し特殊なだけで、基本的には健康な人は入院なんてしないのだ。だからたくさん祝おうと、そう考えていた。




「では花さんのお別れ会を始めます!」




 司会進行は椎名とは別の看護師さんだった。


 花さんの病室には和樹と幸の他に、お年寄りの入院患者の方や看護師の方や医師の方がたくさん参加していた。お別れ会にこれだけ多くの人が集まる花さんの人望あってのことだろう。病室は子どもの頃にしたクリスマス会のように飾られていて、六床あるベッドの机にお菓子やジュースが並べられていた。


 まるでクリスマスパーティーのように幸せな空間だった。




「およそ三時間後、花さんは天国へ旅立たれます。皆さん笑顔で送り出しましょう!」




 看護師さんは屈託のない笑顔をしていた。




「……?」




 和樹はお看護師さんの言葉の意味を理解しようとする。吟味をした。何度吟味をしてもたどり着く結果は同じだった。脳の中で暴れる答えを理解しないようにするも限界がある。やがて感情は溢れ出し、足を失ったように浮遊感を味わう。しかし実際に体から外へ溢れるのは感情ではない。針の穴から溢れでたような情けない声だけだ。




「えっ、あっ、え?」




 その間も花さんをお別れ会は進行をしている。しかし和樹にはノイズが入った映像でしかない。何も頭に入ってこないのだ。


 心から感情を溢れさせないよう、せき止めてはいたがやがて決壊する。




「ちょっと待って! 何これ?? 花さん嘘だよね? ねえ!?」




 悲しみと怒りを混ぜたような感情。




「そっか、佐藤くんは記憶喪失だから……」




 どこかでそんな声がする。




「ごめんね和樹。ほら見ての通り、あたしの寿命はこれだけさ」




 左腕のカウンターバンドを見せる花さん。電子表示された数字は一定のリズムで減っていく。決して遅くはなく、読み上げようとすると、すでに数字は変わっている。




「一万二四八〇?」




 数字だけ見ても具体的な残り時間は分からない。けど、その数字の減る速度から長くないことは理解できる。


 今も目に見えて減っていく命の灯火。




「でも、そんな機械信じられるわけないよ! ほら? 故障とか! だって花さんこんない元気じゃないか!」




 花さんは何も言わない。一瞬だけ曇った表情をするが、すぐにいつもの花さんに戻る。




「ほら佐藤くん、花さんのためにも楽しんで!」




 そして何事もなかったように、再開されるお別れ会。


 花さんも椎名も太田も、お年寄りの入院患者も、看護師も、医師も、みんな笑顔で。


 花さんとの一生の別れというテンションではない。まるで数年間、留学へ行く友人を送り出すような感覚。


 出し物もなければ、プレゼントもない。ただジュースを片手にお菓子をつまみ、ただ話をするだけ。それでもみんな楽しそうにしている。


 幸福度ランキング一五七年連続一位。それは人間が恐るべき『死の恐怖』さえも克服している。和樹はその『死』を恐れない様子に、狂信的な宗教にも似た歪さを感じた。和樹は三〇〇年前の人間だ。どこまで行っても歪んだ常識に染まることはない。染まれない和樹は取り残されるだけだ。幸せな世界の住人にはなれない。


 楽しかった日々の思い出さえも、信じられなくなる。


 これが三〇〇年前に望まれた世界なのだろうか。







「これにてお別れ会を終了します! 花さんありがとうございました! 残りの時間も楽しんでください!」







 お別れ会は終わったらしい。和樹は病室の端で座っていて、隣には艶やかな黒髪の少女、幸が隣にずっと腰掛けていた。


 夕焼けに染まり出した病室には和樹と幸、そしてベッドで横になる花さんが取り残されていた。


 花さんの左腕のカウントは一五〇〇ほど残っている。脈の一五〇〇回はおよそ二〇分。


 だけど、花さんはいつもと変わらず元気な表情をしていた。


 やっぱりこんなカウンター嘘に決まっている。


 しかし和樹の足は病室に張り付けられていた。




「和樹、幸、こっちにきてくれるか?」




 いつもとからない元気な声だった。


 和樹は花さんの左側、幸は右側に。




「和樹、幸。あたしは最後に二人と話す時間が最近で一番幸せだった。ありがとう」


「うん、僕も楽しかった」




 和樹は花さんの手を握る。




「幸、お前も手を握ってくれんか?」


「うん」




 幸の小さな両手は花さんの右手を包む。




「あたしは幸せだよ。ずっと、生まれてからずっと」




 花さんの腕の数字は非情にもどんどん小さくなっている。




「そんな悲しい顔をするんじゃない」




 顔が崩れる和樹にそう言って——さらに続ける。花さんの顔はやはり笑顔で、あと二〇分で命を落とす人の表情には見えない。


 生きることを諦めている、とは少し違う。生き抜いたのだ。花さんは生まれた時から左腕に余命宣告され続け、長い間生きてきた。


 これが幸福の形。


 カウントは進む。




「二人に黙っていたことは悪かった。でもな、人は死ぬために生きるものだ。生まれてからずっと死に向かい続ける——死こそが人生のゴールだから」




 花さんは問い目をしている。遠い昔を振り返っているのだろう。和樹が知らない花さんの歴史を。親の愛を受けて育ち、恋の痛みを知り、愛の意味を知る。自分よりも大切なものが出来て、親の気持ちを理解する。




「人は有限じゃ、例外は無く、皆に平等に。神様は見ているからの」




 和樹の視界にバンドの数字が入った。


 もう五〇〇も無い。


 数字が減るたびに擦り切れそうになる感情。


 左腕の数字はインチキだと、和樹は自分自身に言い聞かせる。




「和樹、強くなりなさい。弱さに負けない強い心をもって、優しく生きなさい」


「わかったよ、花さん」




  三〇〇




「幸、あんたとはもっと素直に生きなさい。後悔しないように、楽しく生きるの」


「うん」




 花さんの手を握る幸の手に力が入る。




「なんだい幸。あんたもいい笑顔できるじゃないか」


「うん」




 幸は笑っていた——和樹が見たこともない笑顔で。


 そして幸の瞳からは涙が流れている。


 幸のクシャクシャな笑顔を見て花さん嬉しそうに笑う。




  一〇〇




 花さんは大きく息を吐く。




「あんた、あたしも今から行くからね」




 それは和樹でも幸でもない誰かに向けた言葉だった。おそらく最も長く隣にいた存在。




  五〇




 病室が暖かい赤色に染まった。




「じゃあな、二人とも」




 和樹と幸の手に力が入る。どんなに視界が朧になっても、和樹と幸は花さんを視界から逸らさない。


  一〇


「ありがとう、花さん」




 和樹は笑顔で伝えた。和樹の顔を見た花さんは小さく笑い、そっと目を閉じる。




「ありがとう」


 と、幸。


「こちらこそ、楽しい、時間をありがとう。」




  五、四、三、二、一




 二人の涙が綺麗な花さんの顔に一つ、二つと落ちていく。


 おだやかな笑顔とは反対に、病室は悲痛な泣き声が響き渡る。




 9




 花さんが亡くなっても、この病院は何も変わらない。花さんが中心となっていたお年寄りの集団は、他の誰かが中心になって代わって、ティータイムに精を出している。もちろん看護師も——職業柄なのか、いつも通りに検査をしていた。


 誰も花さんについて話ことはない。まるで皆の記憶から花さんの記憶だけがすっぽりと抜け落ちたようであった。


 そんな世界を和樹は疑う。これが世界一幸福な国なのかと。


 確かに三〇〇年前はこの病院の入院患者のように皆が笑顔ではなかった。同じ病院を比較しても、病院の中では病や怪我に苦しめられている人が不安な顔をしていた。日々多くの人が死んでいるし、自ら命を断つ人も少なくなかった。絶対に幸せな国ではない。


 だけど。


 人は死んでも人の心の中で生き続ける。


 忘れられないことこそが、全てを失う『死』に対しての唯一の救いなのだ。


 しかし、この世界はどうだ。亡くなった人間はもともと存在しなかったように、記憶から意識的に消されているのだ。


 そんなの辛すぎる。







「和樹……?」




 いつもは和樹が幸の病室に足を運ぶのだが、その日はいつまで経っても幸の病室に和樹が訪れることはなかった。そこで不審に思った幸が和樹の病室に足を運んだのである。


 幸が和樹の病室を訪れたのは初めてだった。少し前なら和樹は泣いて喜んでいたかも知れない。しかし今の和樹にはそんな感情を持つ余裕がないのは、花さんの死から立ち直れていないからである。




「何?」




 白く清潔な繭を身にまとい、不貞寝をする和樹。




「和樹……」




 幸は自分の小さな手で胸を押さえる。こみ上げる感情を無理やりに押さえ込むのは自分が泣いたところで、和樹を苦しめ、困らせるだけだと分かっていたから。


 だから、笑顔で。


 後悔しないように。




「和樹! 私ばかり質問されたのは不公平だわ。だから……今度は私の質問に答えて」




 精一杯の虚勢を張った。




 10




 あの日から幸は毎日和樹の病室に足を運ぶ。そして幸は和樹に一つ質問して、質問の後、幸は一人話をする。以前、和樹がしてくれたように。


 幸は和樹より話がうまくない。何度も詰まりながら、和樹の反応の良い話題を探す。


 花さんが亡くなってから和樹は塞ぎ込んでいた。それは誰が見ても明らかで、和樹は自ら病室を出なくなった。検査している時も以前は看護師と愛想よく話をしていたと言うが、今は話をすることはなくなったらしい。


 それでも幸の質問には答えるし、幸の話には相槌を打つ。前までのように元気はなかったけど、それでも、幸は嬉しかった。なんだか和樹を独り占めしているようで……。


 悪い考えかもしれないが、和樹を独り占めできるなら、このままでもいいのかな——なんて考えてしまう。




 11




 和樹は一通の手紙を手にしていた。


 時刻は一〇時となる頃。消灯時間をすぎた病院は不気味なほどに静かだった。和樹の病室にノックの音が響き渡る。すると貫禄のある白髪の医師が入ってきたのだ。すると白髪の医師は一通の手紙を和樹に手渡す。




「この話は誰にも言うんじゃないぞ」と、そう言うと和樹の言葉も聞かずに白髪の医師は病室を後にした。


「……ッ!」




 差出人は和樹の母だった。


 心臓が飛び出そうになる和樹は急いで封を切る。


 手紙を読み終えた和樹は走り出していた。


 消灯時間がすぎた院内を、痛む体と心を引きずって。


 そして和樹はノックもなしに勢いよく扉を開けた。




 12




 和樹へ。この手紙を読んでいる頃には私はもうこの世界にいないと思います。そして和樹の病気もきっと治っていることでしょう。きっと和樹は何が起こったのか、よく分かっていないと思うので、きちんと説明をします。


 まず先に謝っておきます。ごめんなさい。


 和樹、あなたは今、不治の病を患っています。今の医療では治すことは出来ないそうです。余命は長くても一年。ここまでは和樹が知っている通りです。そんな和樹を救う方法がまだ一つだけ残っていると先生は言っていました。


 コールドスリープです。


 コールドスリープなら余命一年と宣告された和樹を救えるかも知れない、と。でもコールドスリープは不確定要素が多いと先生は言っていました。そして冷凍保存すると言うことは、和樹を殺すことと同じだとも言っていました。私とお父さんは考えました。でもやっぱり、あなたの命を、未来を諦めることは出来なかった。けど、和樹を不安な気持ちにするのも嫌でした。だから寝ている間に先生に頼んで、和樹を凍らせることにしました。


 ごめんなさい。


 和樹が私を恨むのは当然のことです。だって私は息子を、和樹を殺したのですから。


 でも、もし少しでも私のことを許してくれるなら、一つだけお願いを聞いて欲しいの。


 どんな世界に和樹がいるかは分からないけど、どうかその世界を楽しんで。お友達をたくさん作って、愛する人を見つけて、後悔しないように精一杯生きて。


 いつまでも愛しています。


 母より。




 13




 和樹は一六歳の男の子。誕生日は一二月二四日、なんと私と同じ誕生日! 聞いた時は本当に驚いた。好きな食べ物は唐揚げ。男の子はみんな好きだよね。趣味は読書。これも一緒。私たち似ているのかな。小さい頃の夢はサッカー選手。意外とかわいい。好きな動物は猫。犬みたいな顔だから意外! 付き合ったことはないって。なんでだろう、かっこいいのにな。


 明日は好きな人がいるか聞いてみようかな。


 も、もし和樹も私のことが好きだったらどうしよ……。 私たち恋人になるのかな? 恋人ってどんなのだろ。手……とか繋ぐのかな。キ、キスとか。そ、それ以上のことも……? 恥ずかしいな。けど和樹なら私は……。なんて気が早いよね。







「幸!」




 ベッドに横になっていた幸はビクッと大きく肩を動かした。そして声の方向に視線を向ける。




「和樹……」




 懐かしい感覚は、幸の体を暖かくする。


 和樹はベッドに腰掛けた幸の隣に腰を下ろす。幸の気持ちも考えずに遠慮なく——あの頃のように。




「ごめん、幸」




 和樹は両手で幸の小さな左手を包む。手が握り潰されそうなほど握る手に力が入っていた。


 幸は答えるように余ったもう一つの手で和樹の手を包む。


 冷たい手に温かい手。滑らかな手に角ばった手。


 お互いの体温の差が心地良い。




「ううん、全然大丈夫」




 幸は溢れそうになる感情を必死に押さえ込む。和樹を困らせるからじゃない。ただ恥ずかしいから。




「そうだ、悪いって思うなら今日はもう一つ質問してもいい?」




 幸は悪戯に言う。




「うん、なんでも答える」


「やった」




 幸は一度、嬉しそうに笑い、そして真剣な表情をする。




「今、好きな人はいますか?」


「うん、いる」




 幸の心臓は大きく跳ねる。


 和樹は幸の目を見て答えるのだった。




「幸のことが好きだ」




 幸の感情が溢れる。


 その刹那、色が変わる世界。


 触れたことのない優しいさや暖かさは、ずっと前からひび割れていた幸の心を満たした。




「私も和樹のことが好き」




 14




「デートです、デート!」




 鼻息荒めの看護師のお姉さん椎名の鼻と、和樹の鼻がぶつかりそうになった。


 和樹と幸が付き合い始めたことは院内では有名な話だ。


 椎名は幸の変化を見逃さなかった。検査中に問い詰められた幸は嬉しそうに話をしていたと、和樹は耳にした。特に付き合っていることを隠そうとしていた訳ではないので、全く問題はない。反対にこの病院という小さなコミュニティで隠し通せるなんて考えもしなかったし、隠すのも普段世話になっている和樹としては失礼なことだと考えていた。


 和樹の病室に、次から次へと看護師やらお年寄りの入院患者が入ってくる。そして「頑張れ」、と言ってお菓子をくれると、ニヤニヤして帰って行く。小さなコミュニティでは惚れた腫れたという類の話題が人気らしい。




「けど僕、服とか持ってないし」




 和樹は三〇〇年前からコールドスリープで目覚めた一六歳——厳密には三一六歳の少年だ。数日前までは平均寿命が一五〇歳の環境に驚いていたが、まさか自分が年長者になるとは思ってもいなかった。


 そして三〇〇年前の衣類が残っている事もなく、和樹は入院服しか持っていない。正式には入院服はレンタルなので、何も持っていない。




「そうですね。じゃあ私がプレゼントしますので任せてください!」




 コーディネートを考えてくれているのか、一人ぶつぶつ言い出した椎名はしばらく自分の世界に潜り込んでいたが、不意に現実に戻って来た。




「服のことはお姉さんに任せて、和樹くんは一条さんをデートに誘うんですよ!」




 和樹はコールドスリープする前、不治の病を患っていた。そのため、中学そして高校にまともに通ったことのない少年に女子を、それもすごく可愛い女子をデートに誘うテクニックも度胸も持ち合わせていなかった。


「大丈夫ですよ、もう付き合ってるんですから! 少しの勇気ですよ!」


 勇気か。


 和樹に協力的な椎名は笑顔でサムズアップしている。




「それに、女子は待ってるんですよ。平安時代から女子は待つ生き物なんですから」




 妙に説得力のある言葉だが、和樹の脳内に草食男子、肉食女子というワードが浮かぶ。


 半ば勢いで幸に告白をした和樹は思い出すだけで顔が熱くなる。そんな和樹が幸をダートに誘うのはかなりハードルが高い。病院の外に出たことがない和樹にとっては絶壁である。そこで病院の外に出たことがない和樹に一つの疑問が生じる。




「幸は外に出ても大丈夫なんですか?」




 幸も入院患者の一人で、入院しているということはまだ完全な体調ではないのだろう。一見、和樹からすると健康そうに見えてもである。




「大丈夫ですよ! 外出許可は取れるので問題ありません!」







 もう一二月になったが和樹が椎名からもらった服は、化学繊維でできた黒いTシャツとパンツだった。少し薄いとは思うが、普通の服だった。




「和樹くん、これの使い方わかる?」




 椎名は言う。




「これはね、この端末からデータを送れば好きな形に変化するから。もちろん色もね」




 入院服と病院の制服しか見たことのない和樹は、どんなに奇抜なファッションでも驚かないと決めていたが、予想外のファッションの進化に言葉を失った。


 椎名が言うには、伸縮性に富んだ生地に機械を埋め込んでいるらしい。機械を埋め込むことで、伸縮性に富んだ生地は自由自在に形を変えることができるのである。服の色も変えられるのも生地に埋め込んである機械の機能らしい。


 試しに形を変えてみようか、と言って、乾電池ほどの大きさの端末から空間上に表示される映像に触れ操作する。映像には様々な種類の服が映っている。その中から、トップスを女性が着る白いワンピースのようなものを選択した。


 すると和樹の手にある黒いTシャツは形を変え、端末に表示されている姿に変化した。




「せっかくなんで着てみてくださいよ」


「ここで、ですか?」




 頂いた身の和樹としては断るという選択肢は存在しない。しかし女性の目がある環境では着替え辛い思春期の和樹。




「今さらじゃん」




 今さら。確かに和樹の体が自由に動かない時期、椎名に何から何までお世話になった。裸なんて今さらである。


 椎名は退室する様子もないので、和樹は入院服を脱ぎ、白いワンピースを着る。


 薄いのにあったかい。


 やっぱり男子のワンピースはオシャレですねー、なんて言いながら次々に服の形を変えていく。しばらく和樹はまるで着せ替えない着せ替え人形のようだった。




 15




 和樹と幸は交際を初めても、なかなか距離は縮まらない。


 だいたい和樹が幸の病室に行き、定位置になりつつある、幸の腰掛けるベッドの横に座る。手が触れると、お互い手を引っ込めるが、少しして、どちらからともなく手を重ねあわせる。そしていつもと同じく、お互い一つ質問をしてから話をする。


 病院の外庭でティータイムもいいけれど、二人なら何をしても楽しかった。




「今度デートしませんか?」




 少しの勇気を振り絞った結果、初対面以来の敬語に、耳まで熱くなる和樹。そして幸も幸で顔が真っ赤だった。




「よ、よろしくお願いします」




 混乱したのか幸も敬語で、少し早口に話す。




「い、いついく?」




 と幸。和樹は日にちまで考えていなかった。というか入院生活の和樹と幸は、心の準備さえ出来れば明日にでも行ける。




「いつでも大丈夫、かな」


「待って、少し時間が欲しい。準備があるから」




 いつの時代も女子は大変なのだ。


 という訳でデートは一週間後の月曜日になった。週明けで人も少なそう、という理由である。







「どこか行きたいところはありますか?」




 椎名は和樹と幸に尋ねる。和樹の部屋で三人でデートのプランニングをしているのだ。というのも入院患者で、しかも未成年の二人。一応、病院としての対応があるらしい。




「おすすめはですね——」




 しかし乗り気な椎名に限っては個人的な部分もあるのでは、と和樹は思う。


 和樹は基本、幸に任せるスタンスだった。コールドスリープから目覚めた少年は観光名所やデートスポットに明るくない。というか真っ暗の無知である。




「記憶喪失なのでよく分からないです」




 と、正確には記憶喪失ではないが、そこは多めにみて欲しい。院内では記憶喪失で通っているので、今さらコールドスリープから目覚めました、なんて言っても混乱するだけだろうと考えたのだ。




「そうでした。ごめんね和樹くん。じゃあ一条さんはどこか行きたい所ありますか?」




 幸は俯いて思案している。




「分からない。和樹とならどこでもいいから」


「一条さん、変わりましたね」




 椎名は優しい笑顔をしている。以前から和樹は検査中に幸の話をよく聞かされたものだ。幸の変化を嬉しく思っているのだろう。


 それでもうんうんと考えている幸。




「海……」




 和樹は呟いた。以前、幸に質問している時に聞いたことを思い出したのだ。




「海ですかー」




 今は十二月である。


 看護師のお姉さんは何かを考えているようだったが、幸の目は輝いていた。そんな目を見てしまった椎名は即決する。




「じゃあ、海にしましょう!」




 看護師のお姉さんの決定により和樹と幸の初デートの行先が決定した。




 16




「じゃあ行きたい所をエアタクシーに入力すれば着くから」




 車の形をした乗り物は垂直に上昇する。


 基本、車は空を飛ぶので道路がない。道路がないだけで街が新鮮に見える、などと和樹はエアタクシーから地上を眺めて思うのだった。


 全てプログラムで動いているので交通事故はない。三〇〇年後の世界では人は運転をしないらしい。


 和樹は外の景色に興味津々な幸の方を見る。




「服、可愛いいね」


「椎名さんに選んでもらったの」




 少し照れ臭そうに幸は言う。


 膝下まで伸びている黒色のワンピースを身につけ、首元からは大きくて丸みを帯びた襟が出ている。三〇〇年経ってもあまり変わらないファッションに和樹はどこか懐かしさを感じる。


 浴衣はまだあれば一緒に夏祭りに行ってみたい、と思う和樹は考えていた。


 和樹は脳内で幸の浴衣姿を想像する。長く艶やかな髪をまとめ、首筋から見える頸。手に持つ巾着と袖を揺らす姿。普段よりも可愛く見えたりするのだろうか。


 もし夏祭りがあったら誘ってみよう。


 その間もエアタクシーはかなりのスピードを出している。景色がゆっくり動いているのは高度が高いからだろう。このスピードで地上を走っていると綺麗な景色も一瞬で流れてしまう。空中の仮想道路(空路)は信号もなく渋滞もないので、病院から海まで二〇分も掛からなかった。海に到着するとエアタクシーは垂直に下降する。


 そしてドアが開いた。




「「すごい!」」




 和樹と幸の目の前に広がるのは碧。


 その碧は石垣島のような綺麗な海でしか見れないような色だった。


 冬の海ということもあって、周りに人がいないので人の目を気にすることのない二人のテンションはどんどん上がっていく。




「すごい! 綺麗!」


「幸、海は初めて?」


「うん! 写真や映像では見たことあったけど生で見たのは初めて!」




 和樹は隣の少女に目をやる。隣にいたのは見栄や虚勢も張らず、恥かしがることもない純粋な少女だった。




「誰もいなーい!」




 あはは、と。笑いながら幸は海に向かって走り出す。


 つられるように和樹も走り出した。


 砂浜を走ったり、冬の海に足を浸けてみたり、また走ったり。


 入院生活を送っている上で走ることはあまりないので二人ともすぐに体力が尽きる。しかし、息を切らす二人の顔は疲労感ではなく充実感に溢れていた。跳ねるように鼓動する心臓を落ち着けるために、二人は砂浜に腰を下ろす。


 透き通るような碧の海を眺める二人。静かな空間には透き通るような波の音だけが流れていた。波が寄ってきては帰って行き、また寄ってくる——その繰り返し。もう何度目か分からない波が去っていった。




「私、和樹と一緒にいれてすごく楽しいし幸せ」




 ポツリと幸は呟く。




「和樹はどう?」




 和樹はどこまでも続く海を見ながら答えた。




「俺も楽しいし幸せ」


「よかった」


「うん」


「私こんな時間がいつまでも続けばいいのに、って思ってしまうの」




 幸は続ける。




「俺も」


「でも、そんな贅沢は神様が許さないんだよね」




 幸は笑っていた。綺麗な笑顔だけど、どこか渇いた笑顔で。


 幸の話を聞いて、和樹は花さんとの日々を思い出していた。今の幸せとは少し種類の違う、けど大切な幸せな思い出。




「私、和樹に隠していることがあるの」


「なに?」




 和樹は幸の目を見る。しかし幸は真っすぐ海を見たままだった。そして和樹を見ることなく幸は続ける。




「私たち毎日一つ質問をするけど、私がなんで入院してるか聞かなかったよね。その理由」




 確かに和樹は幸に入院の理由を質問しなかった。ただ、意図的に避けていたわけではない。幸は元気そうだったし——この世界では病死することがないなら、どんな病気も通過点に過ぎないと——大した意味はないと思ったから。


 なぜ元気な幸がなぜずっと入院していたのか。




「私——」




 和樹は胸が痛くなる。聞いてはいけない何かがあるのではないか。嫌な想像が頭を支配する。




「私、新種の心臓病なの」




 空白。波の音が鮮明に聞こえる。




「そ、それは治るんだよな? ていうかもう治ってるんじゃないか? この世界の医学は発達してるし」




 不幸にも和樹の嫌な想像は当たってしまう。




「治らないの」




 幸は和樹に左腕につけているバンドを見せる。それは脈拍数で残りの寿命をカウントする機械。




「一一〇万……八八〇〇……?」




 和樹はベルトの数字を声に出していた。




「私の寿命は二週間」




 小さな波の音が和樹の聴覚を奪っていく。




 17




 あの後のことはあまり覚えていない。


 日が高い時間のうちに病院に戻ってきた和樹は、病室のベッドに突っ伏していた。


 衝撃だった。和樹は幸よりも早いと思っていたから。事故死、病死、ありとあらゆる危険が取り除かれた世界一幸福な国での唯一の例外。一〇〇年以上ぶりの例外。和樹はやるせない気持ちを必死に堪えていた。もしかすると、いいや絶対に、三〇〇年前に自分が余命宣告された時以上に落ち込んでいる。


 シーツは湿っていて気持ちが悪い。


 気がつくと窓の外は暗くなっていた。


 和樹は病室から駆け出す。


 行き先はナースステーション。看護師のお姉さんたちの基地である。




「すみません! 幸の——一条幸の担当の先生は今どこにいますか??」


「右京先生は研究室にいますよ」




 答えてくれたのは椎名だった。和樹はお礼を言うとまた走り出す。




「一条さんのこと知っちゃたんだね」




 看護師の誰かがそう呟くが、和樹には聞こえなかった。


 研究室には地下にある。研究室とは各医師が持つ休憩室のような部屋で、和樹にはあまり馴染みのない場所だった。


 和樹は右京というネームプレートを探す。三〇もない部屋では目当ての名前はすぐに見つかった。和樹が三回ノックをするとすぐに「どうぞ」と返事が返ってくる。それは一度聞いたことのある声。扉の向こうにいたのは白髪の医師だった。和樹に母親からの三〇〇年越しの手紙を届けた医師である。机に向かっている右京は一瞥する。




「手紙のことか?」


「いいえ、一条幸の病気について教えてください」


「新種の心臓病だ」


「それは知ってます。幸は治らないんですか?」


「今彼女の病については研究しているところだ」




 右京は書類が積み上がる机に向かいながら片手間に和樹の相手をしていた。




「今!? もう幸に残された時間は二週間しかないんですよ! なに悠長なことを言ってるんですか!」




 静かな部屋に和樹の怒涛が響く。




「彼女の病については一〇年近く研究してる。それでも治療法が見つからない」




 対する右京の声は何も変わらない。ただ事実だけを述べている。




「そんな……」


「私だけではない。日本中の医師が必死に研究してる。一六四年ぶりの病死者を出さないように」


 日本のプライドをかけてね、と付け加える。




「……だったら、コールドスリープは?」


「それはできないよ」


「なんで?? 俺は——」


「君が生まれた時代とは違うのだ。今コールドスリープは国際法で禁止されている。重罪だ。三〇〇年前、君が生まれた時代にはコールドスリープに関する法律が整備されていなかった。まず蘇生させる方法がなかったからね。分類としてはミイラに近かったんじゃないかな。一つの葬儀方法……程度のね。でも今の医学では蘇生は簡単にできてしまう。すると人はこう考える——不老不死が実現する時代までコールドスリープしておこう——と。だから世界の国々は倫理観の崩壊を恐れて禁止にしたということだ」


「本当に必要な人に届かない技術なんて……」


「悔しいが、彼女が助かる可能性は極めて低い」




 右京は言った。




「君の名前は?」


「佐藤和樹です」


「そうか、佐藤和樹くん——君は一条くんとの時間を悔いのないように過ごして欲しい。私は今まで通り研究をするよ。一縷の可能性がある限りはね」




 和樹は糸が切れた操り人形のように膝から崩れ落ちた。視界はぼやけて、頬には生温かい感触が一筋。うまく酸素を吸えずに呼吸が乱れていく。そして漏れる嗚咽混じりの情けない声。




「一秒でも多く一条くんの隣にいて欲しいが、その顔を見たら彼女は悲しむ。いっそのこと今ここで枯れるまで流しなさい」




 和樹の耳に右京の声が微かに届く。その声は今までに聞いた右京のどの声よりも暖かく優しい声音だった。


 そして和樹は一人やるせない感情を爆発させた。




 18




「幸、昨日はごめん」




 翌日和樹は幸の病室に訪れていた。


 心は完全には晴れていない。けど目とまぶたはもう晴れた。


 突然の余命宣言に和樹は打ちのめされていた。大切な人の寿命を知るのは辛いものだった。できることなら和樹の命と引き換えにしてでも、幸には生きて欲しい。けどそれは不可能なことだ。三〇〇年という長い時間が経ち『死の恐怖』は克服できても『死』は克服することができない。


 しかし余命宣告は悲しい事ばかりではない。あらかじめ知ることができていたからこそできることがある。残された時間を大切にできるのだ。


 これからの二週間は和樹の今までの一六年よりも大切にしようと決めていた。今までのどの時間よりも濃い時間を、幸と過ごしたいから。


 自分勝手かもしれない。


 でも悲しいのは残される方だ。だからわがままは許してほしい。




「ううん、私こそ隠しててごめん」


「幸が謝ることじゃないさ」




 人は有限だと、花さんは言っていた。


 終わるために始まる。


 皆に終わりは等しく訪れる。




「俺が言うのもおかしいかもだけど、精一杯生きよう。奇跡が起きるかもしれないから。神様は見てるよ——きっと」


「だね……」




 誰かの靴音が聞こえるほどに静まり返ってしまった病室。




「何かしたいことはある?」と和樹は沈黙を破る。すると幸は少し考えて、


「和樹となら全部楽しいから難しい」




 微笑むように困った顔をする幸に和樹の胸は締め付けられる。




「それに私、物心ついた時からずっと入院してて友達もいなかったし、遊びに行くことなんてなかったから、よくわからないんだ。ごめん」


「じゃあ今日は二人でこれからの予定を考えることからだ」




 二週間だけじゃなくてこれから先のことを。




「そうだね。じゃあ和樹は何かしたいことはある?」







 和樹と幸は一日中話し合った。


 映画や水族館、動物園に温泉旅行。そして夏祭り。二人とも思いついたことは全部言って、その度にノートに書き留めた。予定を組んでいる時間が一番楽しいと言うように、二人は終わりのことなど忘れて語らう。


 そして二人のノートにひとつ、またひとつと横線が増えていく。それは達成の印であり、カウントダウンでもあった。


 映画館で見る映画は、病室で見る映画と比べて音が大きい。体を震わせる音に興奮して、甘すぎるラブストーリーに胸を焦がす二人。


 幸は初めて行く水族館と動物園。初めて見る動物に興奮する姿はまるで小さな子どもみたく、純粋で可愛らしい。水族館は薄暗く、色とりどりに踊る魚に目を奪われる二人。


 海に浮かぶ鳥居を見たり、伝統のある美味しい料理を食べた旅行。温泉上がりの上気した頬に、艶やかな髪から上品な花の匂いを放つ幸。


 楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


 真冬の空を照らす花火のような笑顔。


 異なる二つの体温は、繋いだ手から混ざり一つになる。初めは遠慮がちに繋いでいた手も、やがて指を絡めるようになっていた。


 二人で見た朝日を決して忘れることはないだろう。




 19




「ハッピーバースデー!」




 幸は目を見開いて、クラッカーの弾ける音に小さな肩を弾ませていた。


 火薬の匂いがするのは、古い教会のような場所。『死の恐怖』を克服した世界に宗教が流行るとは考えられないけれど、実際に病院の敷地内にそれはあった。小さいながらも四方のステンドグラスは迫力があり、漏れる光は色鮮やかに空間を照らしている。


 祭壇の前には和樹がいて、向かい合うように、教会の出入り口付近で破裂音に驚いた幸が小さな口を開けて立っている。


 幸は和樹に呼び出された。日付は十二月二四日。和樹と幸にとって大切な日だった。


 クリスマスではなく——


 幸の誕生日で、和樹の誕生日である特別な日。




「幸、おめでとう!」


「和樹もおめでとう」




 幸はそのまま和樹のいる祭壇に向けゆっくりと歩き出した。


 向かい合う二人は満面の笑みを溢す。




「これ、プレゼント」




 と言うのは幸で、小さな箱を大事そうに持っている。


 開けると中には白を基調としたシンプルな腕時計が入っていた。




「私も和樹と同じ時間を過ごしたいなって」




 ちょっと重いよね、と恥じらう。




「すごく嬉しいよ、ありがとう」




 さっそく腕時計を身につけた和樹の目元の滴はステンドグラスの光を反射する。




「座ろうか」




 和樹はすぐ後ろの祭壇へと続く階段に腰を下ろすと、幸は和樹の隣に並び、和樹の肩に寄り掛かかる。


 ふわりと甘いシャンプーの匂いがした。


 右には幸、左には和樹。




「俺からもプレゼント」




 入院服のポケットから和樹は握り拳ほどの箱を取り出した。正方形に近いその箱を左掌に乗せた和樹は、右手で箱を縦に開ける。




「わあ!」




 幸は思わず声を漏らす。


 中からは大きさの違うシルバーの指輪が二つ。




「俺もちょっと重いかも。でも幸につけて欲しい。いいかな?」


「うん、私、付けたい」




 和樹は小さい方の指輪を箱から取り出し、箱をしめてそのままポケットにしまう。


 左手で幸の左掌を優しく救い上げて、右手の指輪を薬指へ。


 指輪は細い指に吸い込まれていく。




「きれい……! じゃあ次は私がつけるね」




 幸は和樹のポケットから小さな箱を取り出し、指輪を摘む。そして和樹の左手を丁寧に救い上げる。




「はい」




 器用に指輪を嵌めた幸は満足そうな表情をしている。


 そして左手をかざす幸。


 笑みを浮かべる幸にステンドグラスから透きでた光が差す。映画のワンシーンのような光景は、どの美術作品よりも美しい。




「私、もうそろそろみたい」




 幸はかざしていた掌を和樹の方へ向ける。すると入院服の長い裾の隙間からデジタル時計のようなバンドが顔を覗く。




 一八〇〇




 和樹は深呼吸する。




「そうだね」




 長くて三五分程度。


 指輪を包み込む両手は胸の前に移動して、何かを堪えるようにギュッと握っている。




「いつもと何も変わらないね」




 と幸は寄りかかったまま話すのだった。


 幸は慈しむように右手で繋いだ手の指輪を撫でる。そして細い指は和樹の腕時計に伸びた。




「私、本当は怖いの」




 呟いた。




「怖くて仕方ない。死ぬのも怖いけど、もっと怖いのは和樹ともう会えなくなること」




 幸は『死の恐怖』を克服できていなかった。今まで和樹の前では弱音を吐いたことのない幸は、ただ強がっていただけだった。


 胸が締め付けられる和樹は歯を噛み締め、こぼれ落ちそうになる涙を堪えようとする。だが、仮初の心は脆く、もう耐えることはできなかった。


 一粒だけ涙がこぼれ落ちる。




「大丈夫! 大丈夫だから!」




 和樹の情けない声を聞いた幸の瞳は次第に潤っていく。




「俺が生まれ変わった幸を絶対に見つけるから。だから覚えてて、この指輪が目印だから」




 和樹は薬指の指輪を見つめる。そして。




「今度会う時は結婚しよう」




 その為のお揃いの指輪。


 罰の悪い表情を浮かべていた幸に対して和樹は続ける。




「少し離れ離れになるだけだから、大丈夫」


「そうだね……ありがとう和樹」




 涙を溢す幸の表情は晴れやかで。




「私が死んだらこの指輪は和樹が預かってて」


「わかった」




 七五〇




「じゃあ、今日の質問していい?」




 と和樹はいつものように会話を始める。その光景は病室の一幕と何も変わらない。




「じゃあ私も質問」




 初めは和樹が一人勝手にやっていたのが懐かしいほどに、もう二人のルーティンになっている。質問を終えると二人で会話を楽しむ。これも和樹の一人語りだった頃が懐かしい。それでも、幸と初めてあった日は鮮明に覚えている。虚勢を張った姿も、何を言っても返事すらしてくれない幸も、ありのままの姿の幸も全て。


 左腕のカウントは止まらない。




 二五〇




 始まりがあれば終わりがある。




 二〇〇




 でも、終わりがあればまた始まりもある。




 一五〇




「またね」




 一〇〇




「うん、またね」




 五〇




「「愛してる」」


 〇




 0




 和樹の腕に抱かれる幸の表情はとても穏やかだった。まるで眠っているようで、今にも目を覚ますのではないかと錯覚する。


 今まで和樹と幸は一日一個質問してきたけど、同じ日に二人が同じ質問をすることはなかった。でも今日は初めて同じ質問をして、同じ回答をした。




「幸せですか?」


「もちろん」

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