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僕は暗殺者。俺は下っ端。そして私は…  作者: 秋村 楼
僕は暗殺者
5/6

暗殺開始

 仕事を一つ終わらせてから三日後の夕方、つまり水曜日である。あいだの二日間は特になかった。()いていうなら、間違い電話くらいか。夏の終わりは夕陽の(しず)む速さが物語っている。セミの鳴き声も、先週に比べたら減った気がする。

 今僕がいるところはピザ屋OSERO(オセロ)の前で、既に注文されたであろうピザは手元にある。中身は照り焼きチキンとチーズベーコンのWと他に二枚。どうやって手に入れたかっていうと…一発グーだ。服ももちろん奪った。ごめんなバイト君、これも仕事なんだ。大人しく一時間は寝ててくれよ頼むぜ。

 僕は、ポケットにある毒を取り出し、標的が食べるであろう()()()()()()()()()ににしみこませる。開けたときの(とり)の香ばしい匂いに誘われそうになるが、これを口にしたら即地獄(じごく)行きが決定してしまう。終わったら、僕もひとりピザパーティでもするか。

 しかし、服装は下に仕事用のモノを着てるためものすごく暑い、しかもヘルメットも被る。ただでさえ残暑があるってのに、脱ぎたいのは山々だがここは我慢(がまん)だ。よし行くか。三枚重ねのピザを後ろの荷台に入れ、エンジンをかけた。本格的に暗殺任務が始まったのだ。


 運転中は色んな妄想をしてみた。十二億が手に入ったらどうしようかなぁと。最初は家を買おう。あんな狭い部屋にいてたまるか。っていうか、パチンコも辞めようか。何度も辞める宣言を誓ってきたが、全て破ってしまった。だが今日は違う、昨日を最後に辞よう!神にも(ちか)うし仏にも誓おう、ついでに釈迦(しゃか)にもな。後はそうだな、旅行もしたい。フランスのルーブルには是非行っておきたいものだ。なんて夢が(ふく)らむことだろう。おっといかんいかん。仕事に集中せねば。前回も成功とは言いにくい、今回こそ名誉挽回(めいよばんかい)といかなければならない。

 そんなこんなで、目的地の近くまで来た。場所は住宅街が密集したところで、ボロのアパートだった。組織に入っているような連中だから、借りているのだろう。人気も少ないが、安全運転を心掛ける。そして曲がろうとした時だった。三輪バイクがギッと音を立てた。「えっ」と声を出した時にはもう遅く、ズシャーンと大きな衝撃音と共に横転する。ヘルメットが命綱(いのちづな)となったが当たり所が悪く、頭から地面にぶつかった。


 「ごめんなさいね店員さん。少し寝ててくれるかしら?おやすみなさい。」

 これが最後に聞こえた声である。



 女性の声であった。さらにわかったのが、三輪バイクのタイヤが透明(とうめい)(ひも)に引っかかったのだ。倒れる寸前にその紐が見えた。そしてこれが完全に僕を()()()犯行であることだ。罠かいや......


 そのまま意識を失った。

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