二つの目の電話
土曜の朝、時計は10時近くを指してた頃だった。二日酔いでいびきをかきながら寝ている最中、電流が体に流されるが如く、黒電話が鳴り響いた。
プルルルル…プルルルル… ピッ
「ふぁー、もしもーし?」情けないことにあくびをかいていた
「モシモシィ!聞こえんのかーー!!」
怒鳴りつけられるような大きな声だった。寝起きのポンコツ頭には響いたらしく
「うっせーぞ!コノヤロー!!!」と返してしまった。
「お、お前それが客に対する態度なのか?!」20代前半くらいの若々しい男の声である。
「きゃ、客?…あ」すぐさま
「すいません!すいません!寝起きのもんで頭が回ってませんでした…」といつも通り、態度を変える。
「そうか、まあいいけどよ。依頼の方をお願いしたい。」
「了解しました。金額の方は?」
「10万でどうだ?探偵にしては割にあってると思うが?」
そういえば、実は探偵業も行っているのだ。小説のようなことはできないが、偵察や張り込みなどが主である。物騒な世の中ではないので、暗殺一筋では少し厳しいものがある。
もう一つの仕事に邪魔が入らないだろうし、立て続けに仕事なんてラッキーである。ここはやる他にない。
「凄くいいですね!引き受けますよ。」
「よし成立だな。男の偵察をしてほしい。情報はある、そっちでメモは取れるか?」
「了解です。」タンスの中から紙とペンを取り出す。
「準備しましたお願いします。」
「わかった。相手の名は源というロン毛の男だ。俺の大先輩にあたるやつでな、ここ最近なんか怪しい行動をしてる気がするんだよ。」
「怪しい行動とは?」
「それは言えないな、すまない。とにかく俺の兄n、いや俺の命が狙われてる可能性があるんだ。だから明日の昼の13:00から見張っててほしい。」
「そうですか。わかりました。」
「場所は○○駅前の最近できた喫茶店だ。俺が窓際のテーブルに誘い込むからわかるはずだし、俺は金髪で分かりやすいだろう。そっから18:00まで頼む。終わり次第報告の電話をして欲しい。」
「了解です。」
「それじゃ、俺はここで失礼する。なにか聞き逃したことはあるか?」
「いやないです。」
「それでは失礼。」ピッ
受話器を置き、背伸びをする。しかし依頼人にしてはかなり丁寧な方だった。口は悪いが結構な苦労人なのだろう。まさか人を殺す前に救うような仕事をするとは、暗殺に対する神のアンチテーゼなのだろうか。そこに深く考える必要はないな。寝るか、起きたら打ちに行こう。
僕は布団に戻り二度寝をしようとしたが、セミのせいで気持ちよくは寝られなかった。