最初の電話
この作品は三部作となっております。
…一体何がどうしたらこうなるんだ!
額には汗を滝のようにドバドバ流しながら、誰かに追われているようだった。
ちょうど一週間前だ。あの電話から忙しくなったんだよなぁ、ほんとどうなってんだ?
男は必死に逃げる。
・
・
一週間前
・
・
まだ夏は本番とお天道様が見栄を張り、セミは季節はずれの紅白歌合戦でもしてるんじゃないかと五月蠅い八月下旬の木曜日である。何気なく畳四畳半の一室で仰向けになりながら、天井を見つめていた時だった。
プルルルル…プルルルル…
仕事用携帯から、着信音が鳴り響く。半月ぶり程の仕事だろうか、ここ少しばかりは平穏に過ごせると思ったのにな。蝉より煩わしい折り畳み式携帯をパカッと開く。
「もしもし?」
「あっも、もしもし…人殺しの仕事屋さんでしょうか?」
声は若く、弱々しい女性であった。
【人殺しの仕事屋さん】という、まるでお花屋さんと同等に近くストレートな呼ばれ方をされ、僕は困惑気味に
「まぁ、暗殺業で金食ってるものです。ご依頼でしょうか?」
と受け流した。
「は、はい…どうしても殺してほしい相手がいるんです。だから依頼の電話をさせて頂きました。」
「了解しました。本題の前に、まず報酬額の方から話をさせてください。」
僕の暗殺依頼は報酬から入る。なぜなら、金こそ信用に価する物理的条件であるのと、先に依頼内容を聞くと断りにくいからだ。何故断りにくいかだって?それは話を散々聞いた後に金額も聞いて、断るなんてできない。つまり、僕の性格の問題である。そしてポリシーもある。私情を聞かないことだ。大体は身内殺しの復讐や隠蔽などだろう、やってる内に理由は察しが付くものだ。聞いてしまうと情が移ってしまうこともあるからだ。じゃあなんでこんな仕事やってるんだろうね?まぁ、金さえ手に入ればいい話だ。話が逸れたが、女性は金額を告げた。
「じゅ、十二億でどうでしょうか?」
「なるほど、了解しまsってえ?!えええええええええ!!」 ゴトッ
あまりの桁違いに、携帯を落とす。
「ど、どうかしましか?」
女性の返答には聞こえず、即座に拾い上げ、レスポンスする。
「マジで十二億ですか!」
「は、はい…何か問題でも?」
「い、いえめっそうもございません。私がしっかりきっちりと任務遂行する所存でございます!」
露骨に態度を変える。
「そうですか、それはありがたいです。」
「それでは本題のほうに移りましょうか。」
「そうですね、あなたに暗殺してほしい人は.....
「依頼の詳しい内容はメールを送るのでそちらで参照してください。それでは失礼いたします。」ピッ
話が終わり、座ってふーっと一息。己を落ち着かせるつもりが、身体から爪先まで震え上がっている。成功すれば十二億、こんな大金は初めてだ。もしかして、いままでのやつらには甘く見られていたのではぁ?まあ、いまはそんなことどうでもよい。先ずは落ち着いて作戦を考えよう。
「よーーーーーーし!!気合い入れるぞおおおおおおお!!」
この時、自分は暑さでおかしくなったのかもしれない。セミの鳴き声も励ますかのような一種の音楽のように聞こえた。
こうして奇妙な一週間が始まったのだった。
お久しぶりです。初めましての方はどうも
書きたいものがやっとかけました。毎日更新するのでどうぞよろしくお願いいたします。