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最強は準備を始める⑯

おまっとさんですー!

 深海入り口の売店で、50k――五万ゼルする酸素ボンベを十個ずつ購入した私たちは、洞窟内へと入った。

 勿論キヨシの分は、私持ちで購入。


 鍾乳洞と聞いていたからか、かなり油断していた。

 入口を潜った途端、足元の支えが無くなり落ちるように深海へ落とされると言うハプニングがががが。


 景色を楽しむ余裕なんて与えて貰える暇もなく呼吸ゲージが一瞬でお亡くなりになると、HPが一定――この場合五秒に五十ずつ減っていく。

 何というデンジャラス体験!! なんて考えながら酸素ボンベを口に含む。


 この酸素ボンベの良い所は、口に含むだけで呼吸が出来るところだ。売店のNPC――おばちゃんが、オススメよー! と言っていたので間違いないだろう。 

 

『ちょ、聞いてないんですけどおおおお!!』

『やべー、深海舐めてた、やべー』

『ボンベ使え!』


 叫び声をあげる聖劉に突っ込んだ源次は大人だ。

 自分が咥えるより先にちゃんと突っ込んであげているから……。


 無事デンジャラス体験を終了させて、全員のHPを回復する(POTで)


『鍾乳洞どこ行ったんだよー』

『まさかの直深海とか笑えるw』

『誰かここ来たことある人いる?』


 無言で待つこと数秒、誰も来たことがない事が判明すると言う……。

 何とも言えない空気を孕みつつとりあえず、道なりに行ってみようと言う事になり大和を先頭に歩き出す。


 海の中だからだろう、視界が薄暗く青い。

 ところどころでイソギンチャク――ノンアクティブが、触手を伸ばして食事をしている。ここに現れるモンスターが何か、誰も分からない状況なため恐る恐る進んでいると、綺麗な小魚の大群が私たちの頭の上を通り過ぎていった。

 それにつられて上を見ていた私の視界には、ゆらゆらと揺れる七色に発光する物体が浮かんでいる。

 クラゲかな? と思いつつ上を見上げていた私の耳に突然、大和の声が入る。


『ちょw 毒?! は?』

『回復いねーよwww』

『自力直せ』

『どんまい、大和』


 大和の食らった毒は、麻痺系を孕んだ毒だったらしく、会話の間に麻痺っていた。

 仕方なく近くにいたミツルギが麻痺毒を消すPOTを大和に振りかける。


『こわ!』


 麻痺毒が溶けた途端大和が発した言葉はこの一言。

 狩り終わりに聞いたところ本人曰く、理由が分からないまま麻痺毒に陥り、挙句視界も何も見えない状況に陥ったからとのこと。


 とりあえず細心の注意を払いつつモンスターを探していた私たちは、薄暗い視界の中ぼんやりと光る灯りを見つけた。

 マップ上は敵判定が出ているわけで……。


『あんこうか?』

『肝鍋食べたい!』

『あの灯りの大きさだと、かなりの大きさじゃね?』

『麻痺毒は勘弁してほしいっすねー』

『味噌鍋いいよなー』

『鍋と言えば醤油だろ?』

『僕、塩派』


 PTチャットは味噌か醤油かでグダグダしたはじめた頃、どう見てもアンコウだろう生き物が私たちの視界に大きな口を開けて飛び出してきた。

 

『悲しすぎる……』

『出汁しかとれねーじゃん!』

『肝がないだとぉぉぉ』


 クラメンたちの頭の悪い会話の通り、アンコウはアンコウでも身のない骨だけのアンコウが私たちを襲う。

 アンテッドかと言われれば違うらしいアンコウの名前は、フウートボールフィッシュボーン。

 そのままやないかい! と、どこぞの芸人さんなら突っ込みそうな名前をしたアンコウは、その身を大きく翻すとヘイトを取った大和に向かい高速で突進をかける。

 盾とアンコウの頭蓋骨?? がぶつかり合い鋭い金属音が上がった。

 大和が、アンコウのタゲを維持したまま再びヘイトを入れた途端、ハイエナの如く紙装甲たちが突っ込んでいく。

 聖劉は少し離れた岩の上から矢を射かけ、キヨシは何故かアンコウの範囲内で杖を構え魔法を放つ。

 

『キヨシ……そこ死ぬから下がって、ほら、renの方にね?』


 大和の気遣いを受けたキヨシが、すごすごと下がるのに合わせるようにアンコウがひと際大きく身体をうねらせる。

 一気に距離を取ったアンコウが、じっと眼玉のない目で大和を見定める。

 時間にして約十秒ほど二人のにらみ合いが続き、意を決したかのようにアンコウが再び大和へ突進をかけた。


 ヘイトが入りアンコウが大和に固定される。

 大和のHPがジリジリと減り始め、私はPOTを大和に投げつけながらバフを更新する。


 と、そこへクラメンたちから不穏な声があがる。 


『アンコウのゲージが出てなくね?』

『出てないっすね』

『詰んでね?』

『詰んでるねー』

『あぁ、くそ、まどろっこしい! 誰か、ここの戦い方しらねーのかよ?』

『初だし』

『同じく』

『来たことあったら言うってw』

『よし、鉄男に聞こう!』


 アンコウに攻撃を仕掛けてはいるものの戦闘中の表示にならない。どころか、アンコウ自体にHPゲージが表示されておらず、どんなに攻撃しても意味をなしていなかった。


[[キヨシ] 鉄男ー。h]

[[黒龍] さゆ、もう少し奥?]

[[鉄男] おう、どうした?]

[[源次] 深海のモブのゲージがでないんだが、どうしたらいいんだ?]

[[大和] ちょっと、僕、もう岩に背中ががりがりしてるから急いで?]

[[鉄男] 深海? 深海って確かフラッシュさせて

    どうとかって掲示板にかいてあったような?]


 クランの情報屋が全く役に立たない! さてどうしたものかと悩みつつ私はフラッシュと言う言葉にディティクションスクロールを思い浮かべてしまった。

 

 ま、ダメ元だしやってみようか? なんてことを考えながら目的のディティクションスクロールを取り出し放る。

 すると直ぐに一筋の球が打ち上げられはじけ飛んだ。

 その光に一瞬だけ周囲が明るくなる。


 と、そこには分厚そうな身を携えたモンクフィッシュと言う、アンコウが出現していた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 海、特に深海はサブノーティ○のせいでトラウマですw 深く暗い海で突然襲われるのは心臓麻痺ものですよw ren達は複数人なのでむしろ楽しそうですがw
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