最強は準備を始める②
お待たせしました!
『チームA 配置完了!』
『チームB 今バフ回して貰ってます』
『盾 準備万端だ』
『弓、いつでもいけるぞ』
『遠距離1 いけるでしゅ』
『遠距離2 任せるのである!』
『「全員、今一度、配置確認、作戦確認を頼む。ren、終わったら合図plz」』
『終わった』
『よっしゃぁぁぁぁぁ、いくぜぇぇぇぇぇ!!』
『『『『おおー!』』』』
『「ちょ! あー」』
折角ロゼがかっこよく決めようとしてたのに……キヨシのせいでGOの合図が消えてしまった。
この一月、経験値を犠牲にしながら同盟員たちは、ドラパレ六階まで自力で来れるようになっていた。
鬼軍曹と鬼教官と鬼……なんだっけ? 色々鬼が沸いたおかげで、あの竜種へ挑むことができる。
ドーラフィールの攻撃パターンは四種類――頭突き、尻尾を振り回す、噛みつく、竜巻を起こす。
四種と言うが、頭突きから連続で尻尾の攻撃。
噛みつく攻撃の後、獲物を逃がすと竜巻を羽で起こすと言った具合に、二通りの攻撃パターンが多い。
ただし、初撃である頭突きと噛みつきを躱してしまうと攻撃パターンが統一化されず、タゲがランダムに飛ぶ上、何の攻撃が来るのか分からなくなってしまう。
そして、あくまでもこの攻撃は、第一段階――私たちが調べた結果であって、中ボスであるドーラフィールが変化形態をとるのなら、二段階目、三段階目と変化する可能性が高い。
『頭突き来るぞ! 盾、ダイヤモンド鉱石製に持ち替えろ!』
『「頭突きから尻尾の連続で来るぞ、盾以外十五メートル以上離れろ! 気張れよ、黒、大和、影」』
『『『おう!』』』
黒が言うなり自身が全財産を投じて作ったキラキラと輝くタワーシールド――ダイヤモンド鉱石とオリハルコンの混合品を取り出す。
黒に続き、大和、白影も同じ型のタワーシールドを出した。
タワーシールドは上半身を隠せるほど盾に長く、少しだけ円柱っぽい盾だ。この形にしたのには、この後の攻撃を凌ぐためだ。
ドーラフィールは、既に頭突き体勢だ。三人は即座に腰を落とし、頭突きを上部正面から受ける形で盾を構える。
次の瞬間、ドーラフィールの頭突き――見る角度によっては顎突きに見える攻撃を繰り出した。
耳をつんざくような轟音と共に黒が一人で、歯を食いしばり受け止めた。間髪おかずドーラフィールが後ろを向き尻尾を振り回す。
既にロゼの指揮で、ドーラフィールの範囲から外れていた近接組は問題ない。
残るは――黒、大和、白影の盾三人だ。
攻撃を統一化させ、タゲ飛びを避けるため黒たちは、真っ向から尻尾の攻撃を受けることになった。
左に盾を構える大和。
右に盾を構える白影。
黒はと言えば二人を支えるように、二枚の盾と盾の間に自身の盾を横向きで構えている。
ドーラフィールの尻尾が右から左、左から右に鞭のようにしなり二度振り回された。ドーラフィールの尻尾が砂塵をあげ私たちの視界を奪う。
…………
……
表示された三人のHPを確認した私は、ほっと息を吐いた。
『いけたぜ!』
『死ぬかと思ったぜ……マジ、怖えぇ』
『良かったね』
『「よし! 全員攻撃再開! バリアは第二まで温存するぞ!」』
私たちが死に戻りで確認できたのは第一段階のみだ。もし第二、第三があるとしたらバリアは出来る限り温存しようと言う考えで、今回バリアを使わずに往なす方法を考えた。
ニヤっと唇の端を持ち上げた黒が、ドヤぁ! と言う顔でバフを要求する。それに無言でバフを入れ、HPバーを確認していく。
そんな中、ふとドーラフィールへ駆け寄る近接組の中に、回復を見つけた私はそっと宮ネェへ駆け寄った。
「ところで、アレいいの?」
「……もう、見殺しでいいんじゃないかしら?」
「宮ネェがいいなら、問題ない」
「えぇ、もうアレに期待するのは止めましょう。それに大丈夫よ。小春ちゃんもいるし」
「わかった」
『「ごらぁ、チカてめー、回復だろうが!!」』
宮ネェと話し終えた途端、ロゼの怒号が響く。
名指しされたチカは、周囲のクラメンたちに蹴りだされ、泣きそうな顔をしながら元の位置に戻っていた。
縋るように私を見られても……チカ回復だし、無理だよ。
諦めろと言う意味を込めて首を横に振れば、チカはがっくりと項垂れていた。
それよりも私が今気になっているのは、異様に大人しい博士だ。
ドラパレの爆弾を研究して、出来上がったばっかりのPOTをあの博士が使いたがらないのがおかしい。
そう思いつつ、あの時出来たと見せて貰ったPOTの鑑定結果を思い出す。
ランドーマン・パラライズ(地雷・麻痺)。攻撃範囲は二百メートル。踏んだら起爆する爆弾で、攻撃を受けた相手を麻痺させる効果がある。
ただし、敵味方関係なく作用する効果がついていた。
ボスに効果があるなら使わせるのも悪くはないけど……この高揚してる状態で、POT使わせるのもダメかな……。もう少し後で、タイミングを見て声をかけてみよう。
たまには、大人しいのもいいよね。うん。気にするのやめよう!
『いくのであーる!! 我が英知の結晶No.17』
そう思った途端、ドーラフィールに走り出す博士を私は、呆然と見送る。
『ちょおおおおおおお』
『やめろぉぉぉ!』
『ばっか、お前、今じゃねーだろ!』
『「博士えぇぇぇぇぇぇ!」』
『やべぇ、全員退避ー!』
『死にたくなきゃ逃げろ!!』
『ここ逃げ場ないでしゅよー!』
『ぎゃぁぁぁぁぁ、博士のばかぁぁぁ!!』
響く怒号を残し、私たちは――(次回へ)。