ドラパレ攻略②
本日は2話更新しています。
森を抜け、入口の亀の像につくまでに一時間。
それだけモブが多かった訳で、私はホクホク顔だ。
時間がかかったおかげで、欲しいクエストアイテムがかなりの数溜まったから。
次から、クラメンを連れて籠ろうかな……。
なんてことを考えている間に、登録が済んだようだ。
一時間も狩りをすれば流石に、消耗品の消費が激しいということで、一度村に戻り改めて入口へ戻ることになった。
せっかく街に戻るのであればと私は、リアルに戻ってトイレを済ませておく。
途中で、ログアウトできなくはないけど、寝袋をおける安全地帯があるかもわからないので用心する。
「これ、マジで入るのか?」
「かなりヤバそうだよなぁ……」
「ここの最上階って、ドラゴンいるって噂だけどマジ??」
「へぇ~。ここってドラゴンいるんだ」
「ちょ、ren。行くとか言うなよ! 俺、無理だからな!」
別に行くとは言ってない。ただ、ちょっと見たいだけだ。
それなのに必死の形相で止めてくる黒は、私を一体何だと思っているのだろうか?
次々と戻ってくるクラメンたちを迎え、全員揃ったところでバフを回す。
「とりあえず、黒、大和先頭。白影、千桜殿で」
「おう」
「また、前~~~」
「後ろは、任せろ!」
「なんで私だわいね!!」
黒は当然のように答え、大和は泣きそうな声を出す。
白影は、ニヤニヤ笑い、千桜は納得いかないと言いたげな声だった。
ドラパレの入口は、人ひとり入れるかどうかと言う大きさだ。
そこを入ると浮遊感を感じて、別の場所のマップへ飛ばされる。
途端に広がる洞窟は、薄っすらと青く光っている。
ゴツゴツとした黒い岩肌をさらした道は、薄気味悪い。
こういう洞窟は、間違いなく罠がありそうだ。
「宗之助、ミツルギ、源次、春日丸、ベルゼ。罠察知よろしく」
五人が頷き、前後と左右に位置を移動する。
警戒しながら、まとまって移動していると大和が素っ頓狂な声を出す。
「え、ここでスライム?!」
「やべぇ……スライム、俺とHP変わらねーんだけど??」
「ドラゴンじゃないのか!!」
黒が驚愕したように言えば、チカがスライムに突っ込んだ。
一般のスライムの見た目は緑色のアメーバ。
得意攻撃は、気づかれず近づいて、己が纏う粘液で装備を破壊すること。
なんだが……ここのスライムは、黒と同じぐらいのHPを持っていて、黒光りするボーリングの球のように丸い。
どう見ても、普通のスライムではない。
「全員警戒! 攻撃してくる前に潰すぞ! 黒、大和!」
「おう」
「わかった!」
黒がまず、ヘイトを飛ばす。
だが、スライムは一切反応しない。
続けて大和もヘイトを飛ばすが、こちらも同じく反応がない。
おかしい……そう思った時だった、突然ボーリングの球が、ぶくぶくと膨れ上がり巨大化していく。
巨大化した黒い球は通路を塞ぐ大きさになると、今度は周囲を囲っていた薄い膜が粘液っぽいものに代わり落ち始めた。
「ちょ! 聞いてないぃぃ」
「もうやだ。俺、帰りたい!!」
「キモ! これ絶対、夢に見そうでしゅ!」
叫ぶメンツを他所に、私はスライムだったものを見つめ続ける。
一体どんな強敵が現れるのか……。
私の心臓が早鐘を打ち、心がワクワクと沸き立つ。
全てが溶け落ちる。
「シャー!」と言う鳴き声と共に元スライムがいた場所には、黒光りする双頭の蛇がチマッとした姿で現れた。
………………。
…………。
「え?」
「アレ??」
「マジかー」
「俺の期待を返せ!」
怒りを込めて、個別バフを更新する。
そして、刀を取り出した私は同じく自分にもバフを入れ、蛇に向かい斬り込んだ。
「ピュシャー」
十人以上で囲まれ、スキルを撃ち込まれ、タコ殴りにされた双頭の蛇は一分立たずHPを枯らして消えていった。
「くそ、期待外れもいいとこだぜ!」
「まったくだ!!」
「運営ふざけんじゃねー」
「なんで、あそこまででかくする必要があるんだよ!」
ぶちぶちと文句を垂れながら、私たちは道なき道を進む。
マッピングするため階段を見つけても登らず、一階のエリアを全て回る。
そうして分かった事は一階に出現するモブは、変身する黒光りスライム――主に蛇か蜥蜴、ミニチュアワイバーン、ドラゴタンチュラと言う三種類と言う事。
ドロップは、クエストアイテムとゼルだけで他はでない。
ティタたちに試して貰ったが、ここならソロでも余裕なようだ。
マッピングが終わり二階へ。
二階は、一階と同じような見た目をしている。
少し違うのは、猛毒やしびれ、混乱を引き起こす罠が多くなったことぐらいだ。
出てくるモブは、一階とは比べ物にならないほど強い。
見た目はかなり可愛い。きっとペットに出来れば女子ウケするだろう。
もふもふ度合いが特にいいと思ったのは内緒だ。
だが、攻撃は容赦ない。
可愛い見た目に反して、一撃がとても重いらしくヘイトを飛ばした黒のHPが吹っ飛びそうになっている。
必死に回復する宮ネェと小春ちゃんは、MPが枯れそうだ。
更に防御力もえげつない。
もふもふなのに、アイアンゴーレム並みの硬さを持っている。
近接組は砥石を使いながら、必死に斬りかかっているが一向にHPが減らない。
「この犬がぁぁぁ!!」
「砥石無くなりそう……」
「魔法はどう?」
「結構きいてるでしゅよ」
「なるほどね。もしかしたら、スキル必須なモブなのかも」
さゆたんの答えに思いついたことを言えば、近接組がスキルを打ち込みだした。
ガツガツ削られていく犬が、悲し気な瞳で私を見ている気がする。
そう思った私は、痛む心を鬼にしてポリゴンになって消える犬を見送った。
二階は、どうやら黒犬——近接耐性とグレーと黒のぶち猫——スキル耐性、十倍の大きさのネズミ――遠距離耐性の巣窟だったようだ。
三種とも翼を持ち、可愛らしい見た目をしているがアクティブで、察知範囲がかなり広い。
ドロップはクエストアイテム、ゼル、毛皮。そして、何故か爆弾耐性のポーション……。
ここで爆弾耐性のポーションが出ると言う事は、この後これを使う機会があると言う事だ。
「とりあえず、一人十本ずつ集めるしかないよな」
「だなー」
マッピングも終わり先に進みたい気持ちをぐっと堪え、私たちは二階で爆弾耐性のポーションを集めることにした――。




