最強は天敵と邂逅する①
いつも誤字報告、いいねありがとうございます!
「ミッシェルねぇ~」
「ミッシェルに対する罰か~」
「散々やらかしといて、そのままってのは腹立つよなー」
源次的にはどうでもよさそう。ティタは、考えているようで特に考えていない気がする。白は眉間にしわを寄せている。きっと、何かしら返したいと思っているのだろう。
あれから先生、宮ネェと三人で話していたけれど結局いい案が浮かばないためリビングへ移動した。クラメンたちの意見を聞きつつ、ミッシェルをどうするか決めた方がいいだろうと言う考えからなんだけど。
「ミッシェルに対する罰なら、多分renの本音ぶちまけたらいいと思うぞ?」
と、軽い調子で言い出したチカに周りの視線が集まる。
「どういう事よ?」
「本音をぶちまけるだけって、意味わかんねー」
訝し気な顔を作りつつ聞いた宮ネェに、黒が追従した。そんな二人の言葉を受けたチカは顎に指を添えると唸りながら考える。しばしの沈黙ののち――。
「兄貴の受けうり? なんだけどさー、兄貴ってミッシェルの友達だったじゃん? で、ミッシェルがこのゲーム始めてから兄貴が思ってたことがあったみたいで……それが、ミッシェルってren同族意識? してるとかなんとか言ってた。そん時に、兄貴がrenの本音知ったらあいつマジ凹みすんだろうなって笑ってたからなんだけど」
同族って……何? 私とミッシェルが同族とか嫌だな……。
「うーん。俺兄貴じゃないから上手く言えないけど、renは基本独りで狩りをしたいけど、俺らから声がかかれば渋々でも付き合うだろ?」
「うん」
「けど、ミッシェルが思ってるrenは、孤独で自分が唯一の支えにならなきゃいけないって感じ?? あー、難しい!!」
「……あー、何となく言いたいこと分かった! けど、説明は難しいなw」
「孤独なrenを自分が支えてあげないといけないってミッシェルが思い込んでるってことかしら?」
何となくチカの言いたいことは判る。説明するにはすごく難しいことも。
何となく理解したうえで言葉にすると……多分こんな感じ?
何をするにしても邪魔されるのが嫌で、私はボッチを好む。だがミッシェルから見た私は、仲間に尽くしてもボッチにされている状況的な感じなんだと思う。
感覚の違いと言うか何というか……微妙な気分だ。
「……ミッシェルの罰になるかはわからないけど、やってみるのもいいかもなw」
「現状あいつを引退に追い込める何かがないし、ありなんじゃね?」
チカ言葉に触発されたであろう鉄男と風牙が、うんうん頷きながら同意をしめす。
「とりあえずは、捕まえてからね~」
「で、どうやって捕まえる?」
宮ネェの言葉を引き継いだキヨシが、実に楽しそうな笑みを作って問いかける。その笑顔につられるように周りのメンバーも笑みを浮かべた。
笑顔であることは認める。認めるけど……黒い。皆どうしてこうも笑顔が黒いのか? 別の意味で悩みが増えた気がするが、気にするのはよそう。
捕まえるための手段や張り込み、追尾方法などを楽しそうに話し合うクラメンたちを見ながら私はそっとため息を飲み込んだ。
それから二日、いつも通り狩りをして、トーナメント戦に出場。結果は、言わずもがなで特に変化もなく楽しい日々を過ごした。
敢えて言うとすれば、最近周りの経験値スクロールの使用量が多いぐらい。作るの一人、使うの五、六十人じゃ値段的に割に合わない!! もう少し考えて使ってくれと同盟にお願いをしてみたり。
そしていよいよ本日、ミッシェルとロナウドDことアクセルの密会が行われるらしい。
『「よーし、今日で全部終いにするぞ! 各部隊のリーダー人数揃ったか報告よろしく!」』
『密偵班、現在全員いるでござる』
『包囲網担当A。デンス宿北側にて待機中』
『包囲網担当B。デンス南側ー待機』
『ミッシェル捕縛係。デンス宿内にて待機中だ』
『ロナウドD捕縛係A。フォルタリアアジト側で待機中』
『ロナウドD捕縛係B。デンス宿内でミッシェル捕縛といますー』
捕縛する準備が整ったようだ。指揮である先生の声に宗之助、白、聖劉、黒、千桜、大和から次々と返事があった。
楽しそうな様子で待機してる同盟の面々なんだけれども、ただ捕まえるだけよ? 町だからPKできないし、外に逃げて殺したら神殿復活だからね? と、何度目かわからない注意を同盟チャットで流しているのだが、誰も返事をしてくれない。同盟主の意味とは……?
私は今回、包囲網ABとロナウドD捕縛Aの補助係—―トランスパレンシーを配るだけのお仕事ですよ。どうせ、そんなこったろうと思ったけど、なんか納得いかない。まぁ、とりあえず捕まえた後に大仕事があるので、今回は皆に譲っておこう。
フォルタリアのハウス側に移動して、トランスパレンシーを入れる。すぐさま次へと移動する。
移動代金が半端ないんですけど……後で、クラン費で補填していいかな?
『協力者より入電—―タゲが移動開始』
『「密偵班、直ぐにタゲを目視で確認すること」』
『タゲ発見しました。現在アフロディーテ神殿前移動中』
『「ミツルギ他数名はデンスへ移動。残りは宗之助と共にタゲが移動するまで街中待機」』
『了解でござる』
『了解っす!』
宮ネェと先生、ミツルギさんを始めとした面々のこのやり取りを見て思う事と言えば、刑事ドラマの見すぎじゃないか? の一言に尽きる。
デンスに移動して、トランスパレンシー入れながら呆れた顔で隣に立つ先生を見れば、にっこり笑ったドワ爺のサムズアップを返された。
う、うん。いいんだよ。楽しんでるんだったら、うん。いいってことにしとこう。皆鬱憤が溜まってたんだろうと言うことにしてそっと視線を逸らしておいた。




