最強は同盟の運営に尽力す㉗
リビングに集まった面々—―最近だと毎回な気がする――を見ながら、さゆたんたちに聞いて考えた事を告げる。
「向こうもなりふり構ってられなくなったって感じだな」
「焦ってる感じがするわね~ん」
ロゼと小春ちゃんは、いたって冷静だ。顔は、マジで怖いけど……。
「ロナウドDが、アクセルね。あぁ、殺してぇ~」
指をぽきぽき鳴らしながら黒が、黒いオーラを纏っている。その横でいい笑顔を浮かべ頷いている白、宗之助、ティタ、源次も同じ意見のようだ。
「ぶっちゃけさ~、運営に任せればミッシェルの手駒は消えるんだろ? ならそうしちゃえばいいじゃ~ん」
「は? 馬鹿なのキヨシ!」
「うぇ、とばっちり!!」
「あのなー、まだ確定ってわけじゃねーだろ。相手だってこっちにバレたらヤバイから、名前濁してんだ。なら、こういう時はゲームのルールに則って殺るのが一番だろ?」
「そうである! 我の英知の結晶を使えば余裕である!」
「博士は黙っとけ! 余計な事すんな」
「そうだぜ。味方さえ殺すお前のPOTは却下だ」
キヨシの言葉は、風牙によって却下された。
風牙の言う通り、クレハとアクセルだと思われる密談の内容を写したSSを私も見せて貰ったが、アレではロナウドDがアクセルだと言う決め手にかける。
それにPKすることは確定してるのでここは、黙って流す。
博士のPOTについては、時と場所次第。新しいのできたなら、まずは鑑定して検証しよう。
「あの。少しいいですか?」
「どうしたヒガキ?」
「話を聞いていた限りですけど、まだ中身が入れ替わっていると言うのは確定ではないんですよね?」
「あぁ、そうだな」
「だったら、クレハさんに勧誘を受けた振りをして加入して貰ったらどうですか?」
「密偵を送る感じでござるな!」
ヒガキ、いい事言う。
彼が言う通り、内側に入って貰えれば色々とやれるはず。例えば、これまで奴らの好きにされ後手に回っていたが、こちらが先手を打つことも可能になる。
それにだ。水面下での動きになるけれどフォルタリアの中でクレハに仲間を募って貰って、瓦解させることもできんじゃないかな?
「でも、クレハはもう関わりたくないって言ってたでしゅよ」
ダメか……。かなりいい案だと思ったけど、先に相手が嫌だって言ってたとは。
ミッシェルが、焦りを見せているかどうかはわからない。けど、奴を引き摺り出すことはできると思う。というか、そもそも私、ミッシェルに恨まれることしてないんだけどな。なんでこうなったんだろう?
どんなに考えてもわからない事を考えはじめると思考がループする。それを避けるため、フルフルと頭を振り考えを吹き飛ばす。
なんとかクレハを説得できればいいんだけど……。
「クレハ脅すとか?」
「クレハに紹介してもらって、うちのクラメンのサブを入れるとかどうだ?」
「いや、それはダメでしょw 折角の協力者失くすわ」
「サブって言うのはいい案だけどね~。相手だって警戒してるだろうし、そこに見知らぬサブが現れたら……どうなるかはわかるよねw」
「だよなー」
「一番いい方法は、やっぱりクレハに動いて貰うだな」
「そうね~ん」
「だよな~」
何か彼女を動かせる物がないかと思案していたら、皆も同じ事に行きついたらしい。
だが、上手い解決策が浮かばない。二十人近い人がいるにも拘らず、リビングが静まり返る。
「なぁ、やっぱりクレハ説得しないか?」
「そうだな。それしかないな」
「でも、私たちが彼女に会ってるのがバレるのはダメよね~」
「問題はそこだな……」
静寂を破ったのは先生で、意見に同意するようにロゼが頷いた。バレるのがダメだと言う宮ネェの意見には同意だ。
皆が問題視する場所については、どうにでもなると思う。
ただし、説得する材料が問題だ。こちらとしては、協力してくれるのであれば彼女の求める物を差し出すつもりでいる。関わりたくないと言っている彼女に苦痛を与えるからこそ、キチンと恩に報いたい。
あと私たちが出来ることは、クレハが我慢できなくなった時にいつでも抜けられるように身代わりを用意することぐらいか。上手くフォルタリアに入り込んで貰うことが前提で準備をしておこう。
警戒されるのを防ぐため身代わりとクレハには、事前にお互いがリア友だと言うことにして貰う。なので、Lv帯を出来るだけ合わせること。それから事前に野良あたりで一緒に狩りをして貰った方がいいだろう。
もし、疑われた場合は、身代わりが一時休止していたとかにして貰って誤魔化そう。
クレハの身代わりになってくれるロゼの所のメンバーにも何か、欲しそうな物を用意しておこう。
なんにしてもひとまずやる事は、クレハの説得。
「話し合いの場所は、どうにでもなるからクレハに話しをしようって伝えてくれる?」
「わかったわ」
「それから、一応ロゼの所のクラメンのサブも用意しておいて欲しい」
「了解」
「できればだけど、用意するサブはクレハより少し下がいい。出来れば三次の前半で、無理なら二次の後半が希望」
「クラメンに聞いてみる」
「よろしく。で、今回やる事だけど――」
自分なりに考えた方法を話し終え、皆を見る。
こうして見ると見慣れた顔ばかりだ。でも、なんだろう。昔からこの連帯感に私はひどく安心する。きっと独りじゃミッシェルを引っ張り出そうとは思わなかった。
だからこそあの時、自分の事しか考えられず逃げるようにクランを解散させた事を今は酷く後悔している。と、同時に今こうして居てくれる皆を大切にしようと思った。