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最強はクランのLv上げを目論む⑤

読んで頂きありがとうございます。


 十七時間後にはPKを開始すると言う頃になって、ティタとキヨシは何をやってるんだか…………。

 ……結論だけを言えば奴らはあふぉだった。


 宮ネェと先生以外のクラメンに部隊リーダーを投げて、事後報告のクラチャを流す。自分たちが勧誘した人の面倒ぐらいは、勧誘した人が見てくれ。

 前回の経験も活かしこうしておけば、私自身の仕事が大幅に減る。そして、思う存分PKが楽しめる。


「くふふっ」


 先を思いやり歩きながら声に出して笑う。その声を聴かれたらしくギョッとしたような驚いたか顔で見る、NPCの視線を受け急いでその場を離れた。

 つい、嬉しくて、声に出てしまった……次からは気を付けよう。


 転移するため魔法陣へと移動する。行先は【 ヘスティア 】の城下街だ。

 この街は、女性が多い。言わずも知れたヘスティアと言う女神が、家政を司る女神だ。衣服関係や家事に関するもの販売が盛んで、私の持つ花魁衣装もここで生地を選び購入した。

 町並みは、童話にでも出てきそうな丸太づくりの小さな家々が立ち並び、布や貝殻、ガラスなどで玄関先が飾られ女性プレイヤーが多く好む街並となっている。

 

 そんな街中をクエストを受けるため歩く。ログイン前にネットで調べた情報を元に目的地の孤児院へ向う。目的地は街の北にある古びた教会のような見た目の孤児院だ。到着すると沢山の子供達が楽しげな声を出して遊んでいた。


 本来であれば断りを入れ中へ入るのだろうが、ここはゲームの中であり呼び出し鈴が無いため無言で入り口から建物の中へ進んだ。軋む廊下を真っすぐ進み、一番奥にある焦げ茶色した軽めの大きな両開きの扉を開けば、クエストNPCのシスターが室内をウロウロと歩き回っていた。


 意外と歩く速度が速い彼女に近付き、話かける。すると直ぐに足を止め、ウィンドウが開く。それと同時に悲壮感を感じる声音で問題を訴えて来た。

 

【 あぁ、なんと言うことでしょう! 今朝から、ボビーの姿が見当たらないの。どうか、どうか、あの子を探して下さい。あの子さえ無事なら何でも差し上げますから! 】


 ボビー君が居ないと言う彼女は、その場でウィンドウを書き換えクエストを表示する。内容は【 ボビーを見つけ連れて帰って下さい。 】だった。クエストを受諾するボタンをタップして、既知のボビー君の居場所であるオークの巣へ歩く。


 【 ヘスティア 】の街から、徒歩で約三十分ほどの山間にあるオークの集落は、最奥にオークキングの洞窟を構える狩場だ。外周が一次の狩場、内側が二次。その更に奥が二次~三次の狩場になっている。モブはアクティブで、今の私にとっては雑魚に等しい。この程度であればブレスオブアローかドラゴンオブブレスの範囲魔法を使えば即終了する。今回はバフも必要ないだろうと判断しオークの集落へ踏み入った。。


 初期のオークがワラワラ湧いている狩場の中を悠然と歩き回る。ボビー君を探して右往左往する度に、無差別で攻撃して来るオークは全てブレスオブアローの魔法を叩きこみ駆逐している。集落の内側に入る。するとモブの量が明らかに少なくなった。この狩場は、範囲狩場だし私以外にも狩りをしているプレイヤーがいるのだろう。

 のんびり歩きながら他のプレイヤーの邪魔をしないよう様子を伺いつつ進んだ。近くで魔法を連発する音とエフェクトが聞こえ様子を伺えば、見知った顔の魔法遠距離職がチグハグの装備を纏い狩りをしている。


[[ren] え? ……キヨシ]

「おぉ~。ren、お前何やってんの~?」


 まさか、なんで? と思いつつ三次職カンストのキヨシから視線を逸らす。このまま立ち去ろうと思っている内に、漏れた相手の名がクラチャで流れた。私が名前を呟くのと同じタイミングこちらを視認したキヨシが、白い歯をキラリと光らせ清々しい笑顔で片手を上げ声をかけてくる。

 

「クランのクエ」

「あぁ、なるほどな。Lv5に上げんのここだっけ? 手伝おうか?」

「いや、NPC探すだけだから……。それより、何してたの?」

「うん。まぁ、狩り?」

「狩り? ここで?」


 気前よく手伝うと言ってくれるが、ここでのクエストは大したことはないので断る。私を手伝うよりクエスト系を進めるための狩りをした方が彼の為でもあるし。

 ありがたく思いつつ、クエならば逆に手伝おうと何をしてたか問えばあからさまに視線を逸らしボリボリと頬を掻く彼は狩りだと言った。

 そして思い出されるさっきの装備強化……そう言えば、見事に消滅させてたし、お金が無いんだなと思い至る。しかし、この装備では明日からのPKでは生き残れない。同じ三次職カンストであろう相手に、どう見ても初期装備に近い装備のままでは、紙以下の防御しかなく即死してしまうレベルだ。


「キヨシ。まだ起きてる?」

「うん。そのつもり」

「なら、クエ終わったら声かけるから、倉庫ね」

「あぁ。わかった」


 装備を貸し出すことを決めキヨシと倉庫でと約束して別れ、ボビー君の捜索を再開する。

 探していたボビー君は、オークの集落の右端にある木の枝を屋根にしただけの小屋とも呼べないような建物の外にある小柄な人なら一人は入れそうな瓶の中に隠れていた。


 近付き話しかけると、ウィンドウが開く。

 彼はどうやら、母親の形見である鼈甲(べっこう)の髪飾りを探すためにここまで来たが、見つからず、壷に隠れて様子を見ていたら、髪飾りをオークが持っているのを見たと訴える。

 ウィンドウが切り替わり、クエストを受諾するかと問われ受諾をタップした。


 軽く自身にバフをかけ、とりあえず狩場の中を走り回る。

 私に反応した、アクティブのオークたちが折り重なり追いかけてくる。ある程度の数に達したところで、振り返りドラゴン オブ ブレスを使い、一気に駆逐する。


「ブモォォ」と言う声を漏らし、倒れていくオークたち。黄色い粒子になりその姿が消えはじめると同時に、大量に流れるシステムログ。

 スクロールして確認するのも面倒なので、アイテムボックスを開き鼈甲の髪飾りがあるかを見る。

 今回はハズレだったようだ。


「あぁ。ダルイ……」


 クエストアイテムが出にくいと本当にダルイ。

 明日のPKのためだ。と思いなおし、また走る。ある程度集まるとドラゴン オブ ブレスで駆逐する。を繰り返すこと15回。

 漸く、漸くアイテム ボックス内に、【 ボビーの母の形見 鼈甲の髪飾り 】と言うアイテムが表示された。


 やっと終わると思い。マップでNPCの位置を確認する。

 どうやら走っている間に、NPCからかなり離れていたようだ。

 急ぎ(きびす)を返し、NPCの元へ戻ろうとしている最中。昼間に、逃げ出したあの男の姿を発見する。


 何故、こんなところに? と考え、あることに思い当たる。

 確かこの先にあるのは、オークキングの出る洞窟だ。周期は判らないが、二次職にはそれなりに人気のある狩場であることは確かだ。


 そしてボスであるオークキングは、三次職の魔法書、スキル書、他にもレアアイテムを落としたはず。それを目当てに三次職が、キングを狩ることも多かった。


 ならば、あいつの目的はキングだろう。その読みが正しいと教えるように、次々と後方からプレイヤーが2PT歩いていくのが見えた。


 顔が緩み、ニヤリと口角があがる。

 直に出発しようと思ったのだが、先生がPKKで声をかけてくれなかった際、自身がクラチャで言ったことを思い返し、クラチャで声をかけることにする。


[[ren] 報復PK、来る?]

[[宮様] そうなのよね。困っちゃうわ]

[[黒龍] どこ?]

[[白聖] 行く]

[[ティタ] ノ]

[[ren] オーク洞窟]

[[宗乃助] いくでござる]

[[キヨシ] 参加するぜ!]

[[大次郎先生] 相手は誰?]

[[さゆたん] うっ……。娘と寝るか……PKか悩むところでしゅ]

[[宮様] キヨシが行くなら行くわ]

[[キヨシ] ren。PTくれ]

[[ren] 昼間、逃げたドッセイ。3PT]

[[黒龍] さゆたん無理すんな。娘大事だろ?]

[[さゆたん] うぅぅ。3PT……、行くでしゅ]

[[大次郎先生] なるほどね。参加する]


 流石にPKとなれば反応が早いクラメンたち。さゆたんは悩んでたようだが、娘よりPKを選んだようだ。そう言うところが、奥さん曰く、廃人。なのだろう。

 早速キヨシが、PTを強請られ招待を送った。

 全員参加することになり、集まるのを待つ間。流石に装備的に厳しいキヨシに、私の予備装備をトレードで渡す。


『とりあえず、これ貸しとく。終わったら返してね』


『うぉぉぉ。すげぇ。なんだこれ!』


『返してね?』


 大事なことなので2回言いますとも。

 病ゲーをやる上で、狩場の属性により装備を使い分けるのは当たり前となっている。

 基本PK中は、軽鎧にするか花魁のアバターを着せた、ローブにするかなので、今回は使わないであろう、狩り用のローブ、杖などの一式を、貸したのだが……返事が返ってこない。


『キヨシ? 聞いてる?』


『ウン。キイテル。オワッタラカエス。ゼッタイ』


 壊れかけの機械のような返事したかと思えば。早速、装備を着替えたらしいキヨシが、奇声をあげながら、オークの群れへと突っ込んで行った。

 彼のいるであろう狩場では、火柱があがり、竜巻が起こり、落雷が落ち、石が降っている。


『キヨシ、MP配分考えないとPKでへたる』


 そう忠告すれば『ぁ……』と言う声と共に、慌てたように側へ戻ると瞑想をはじめる。

 そんな彼に掛ける言葉は、これしかない。


「……バカだ」


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