閑話 その時、アースは……。
差し込みしなおしました。
renたちが、デメテルを攻めているらしいと言う情報が、ログインしたばかりのクラメンによって齎された。
事前に今週末攻城戦に参加するとは聞いていたが、まさかSGの根城デメテルに行くとは……。
「あいつら何考えてんだ」
「雪落ち着くわいね」
「あぁ、分かってるけど……だってこれじゃぁ、俺らはいいけどロゼと白影がっ」
「うーん。先生とrenがいるわいね。あの二人がいてロゼたちの今後を考えなうわけがないわいね」
確かにあのクランで唯一の良心である先生がいる。それにrenもいるからーーrenの思考がまともなら多分……大丈夫なはずだ。
大丈夫だと何度も言い聞かせ、なんとか思い込もうと努力しながら千桜と連れ立ってヘスティアの街中へ向かう。
「PT組もうか」
「リーダー頼むわいね」
攻城戦を観戦するため街の北にある城門まで移動して、PTを組む。
観戦中は白チャでの会話が出来なくなる。クラチャは出来るが、事情を知らないクラメンたちに今回の内情を知らせるわけにはいかない。
『ふー、なんで俺がこんな緊張しなきゃいけないんだ』
『まぁ、身内だからこそだわいね』
『だよなー』
ため息混じりに千桜に同意して、門番が立つ右にある尖塔の中に入った。
尖塔内の中央にある水晶に触れれば、1000ゼルと引き換えにウィンドウが開く。黒文字で表示された文字を飛ばし、白文字で書かれたデメテル城をタップする。
視界が一気にデメテル城に変わった。
白壁の城の城門は、既に破られ原型を留めていない。
『ここにはいないわいね』
『あぁ、そうだな』
場外門にいないとなると城内か?
画面右上にあるカーソルを使い城内で一番込み入りそうな続きの間へ進む。が、ゲーム仕様のせいか、テラスまでしか行けない。
舌打ちしそうになるのを堪えて、どうにか見えないか試行錯誤してみたがダメだった。
『あー、くそっ、見えない!!』
『この仕様どうにかして欲しいわいね』
『状況わかんないじゃん』
『白あたりに聞いてみるとかどうだわいね?』
見られていないはずなのに、白の名前を言われただけでブルっと身体が震えた。マジで、白パイセンはトラウマでしかない。
千桜に言われた通り聞いたとして、機嫌が悪かったら? フラグどころか確実に俺の死亡が確定する。
『…………それはなんか嫌だ』
『相変わらず……なんだわいね』
千桜の呆れた声に視線を逸らした。
【 クラン BloodthirstyFairy がデメテル城の城主となりました。 】
眼前にデカデカとシステムログが流れ、renたちが城主になったと知らされる。
『本気で城落としてんだけど?』
『アハハ』
ロゼたちを見捨てる気か? あいつらならやりそうだ。と、一瞬考え慌てて頭を振った。ぽつりと零れた言葉に千桜の乾いた笑いが返る。
もしもrenたちが城主のまま攻城戦が終わったら、それこそロゼたちは逆恨みされてPK戦になるんじゃないのか? まぁ、それも奴らにとっては楽しいお遊戯会みたいな物だろうが……、狙われるロゼたちにとっては迷惑この上無いはずだ。
『やっぱ、BFの誰かに聞くしかないか?』
『誰に聞くわいね?』
『そこが問題なんだよなぁ……。千桜誰がいいと思う?』
『私に振らないで欲しいわいね』
二人して誰とは言えず、ただただ時間だけが過ぎていく。そして、終了間際になりーー。
黒の「帰還!」と言う白茶だけが聞こえたかと思えば、城主がフィスタルトになったと言うシステムログが流れて攻城戦が終わった。
『意味がわからないわいね』と言う千桜の声に俺は頷くことしかできなかった。