最強はイベントに励む⑥
ロゼとSGのクラメン+私でイベント狩場に移動した。狙うはジュエルフェアリーとそのボスなのだけれど……。移動中ロゼが「うちで範囲厳しいと思うぞ」と不穏な言葉を漏らした。ロゼの所であれば問題なく出来るはずだ。それを厳しいと言うロゼに、どうしてそう思うのかを聞いてみれば「実際に、うちでも範囲やってみたんだけどな……。全然動き違うんだよ」と試した結果のようだった。
『なるほど、あぁ、POT買いたいから小川の方経由で』
当然ロゼ達も知っていると思って、POTを買いに行きたいと伝えた。別にフェアリーは隠されている訳ではないし、皆利用しているものだと思っていた。なのに、ロゼは『は? POTって何のPOTだよ?』と聞き返す。
そこで実際に鑑定して、使ったPOTに関する情報をロゼ達に話すことに……。すると、見事にロゼが『マジかよ! ちょ、なんで大和達教えないんだよ!』とキレた。
『そこを左に迂回して』
キレるロゼを完全にスルーしつつロゼの連れてきた盾のミスターXに進む方向を伝える。今回ロゼが連れてきたクラメン達は、PTとしてとても均等の取れたPTだ。盾のミスターX、両手剣のカズヒコ、短剣のユージング、弓のロゼ、魔法職のハルミとLow、回復のウーノ。それにバフであるメンバーを足せばどこに狩りに行っても通用するだろう。
突然のお願いにも関わらず、快く応じてくれたロゼとクラメンの皆さんには心から感謝している。そう、心の中で……。
『この先だけど、ここからアクティブ増えるからトランスパレンシー入れる』
『はい』
『よろw』
ジュエルフェアリーがワラワラいる付近に差し掛かる手前で、トランスパレンシーを入れるため先に予告する。私の言葉に立ち止まったミスターXに驚いた。それだけでなく、盾が止まれば他も止まっている。
これがうちだったら……間違いなく……あぁ、考えるのを止めよう。いい笑顔のキヨシとチカが肩を組みサムズアップする姿が脳裏に浮かぶ。それを軽く頭を振って飛ばし、トランスパレンシーを入れ『k』と言うと再び歩きはじめた。
目指したフェアリーを見つけロゼ達が口々に『マジでいた』『POT意外と高い』などと言い合っている内に、私は自分の欲しかった分のPOTを十個購入する。ロゼ達も全員買い終わり、狩場となる丘の上へ移動した。
『ここにするか。引きはXとカズヒコ頼むな。不安あるしrenと俺がゲッター使うでいいか?』
『了解』
『ロゼさん、どれぐらい引く?』
『k』
『あぁ、そうだな……とりあえず様子見で、3PT分ぐらい引いてきて』
様子見にしても引く数が少なすぎる。魔法職は二人もいる。挙句私も加われば三PT――二十四匹など直ぐに終わってしまう。POTの性能を知らないロゼの指示は正しいのかもしれないけれど、狩場に人がいない今、出来るだけ多くのモブを倒すべきなのだ。
カズヒコに答えるロゼの意見を見なかったことにして『少ない。今ここに人いないから、引けるだけ引いていい』と伝える。
私の意見に暫し固まったロゼは、溜息と共に『引いていい』と意見を合わせてくれた。ロゼいい奴。
一度目の引きは、黒たちと狩りするときの三割と言った感じの引き具合だった。盾と両手剣の二人のタイミングが旨くかみ合っていない事が気になる。が、今は引いたジュエルフェアリーを優先する。
ロゼがゲッターサークルスクを使った場所と同じ位置に、交互に二度ずつゲッターサークルスクを使う。モブが纏まった所で魔法職のハルミさんとLowさんが、サンダーストームを叩きこみジュエルフェアリーが沈んだ。
『マジかよ……』
『すげぇ~』
『なんで? マスターなんで?』
『うそ、でしょ?』
ただ普通に狩っただけなのに、なんでこんな反応なのか気になる。だが、先に引き二人の戻るタイミングに声を掛け合うよう助言をしておく。
『ミスターXさんとカズヒコさん、引いてる間マップ見てお互いの位置把握してる? 戻る時は、何秒後に陣地に向かって戻るよ~って意味で、盾の方が10とか15とか秒数打ち込んで? 後、ロゼ、ロゼ以外のメンバーで手の空いてる、回復とか短剣とか暇そうにしてる人にもゲッターサークルスクの使い方教えないと、何時まで経ってもできないよ?』
『うぉー。ドロップすごw』
『マップ方向確認ぐらいでしか、見て無いです』
『この数ヤバイねw』
『戻るときに打ち込むか……了解です』
『バフが凄いのかPOTが凄いのかわからんwww』
『ミスっても私とロゼが修正できるから、思い切ってやった方がいい。折角の範囲なんだから多少バラけても問題ない』
『カズヒコ、マップと秒数見逃さないように』
『確かにそうだな。ウーノとユージング取りに来て、とりあえず50枚ずつ渡しとくから、使ってみてくれ』
『k』
『はい』
『緊張する』
せっかく一緒に狩りに来たのだから、多少なりともロゼ達にうま味が有ればいい。そう思っての助言だったのだが、予想以上に真面目なクラメン達だったようだ。一つ一つを真面目にこなし、吸収する。その様はまるで、どこかの社会主義国の軍隊のそれのような状態だった。
二時間ほど狩りしたところで、トイレ休憩を入れ更に一時間が経過した。その頃には狩場にも、複数のPTがウロウロし始めていた。ロゼの所のクラメンは、雪継の所のように私に話しかけると言ったことも無く、安心して狩りが出来ている。
盾のレンジヘイトが少し遅いのが気にはなるが、まぁ四人でゲッターサークルスクを使っているのでタゲが誰か一人に行くことはないので大丈夫だろう。
『なぁ、ren』
『?』
『クラメン入れ替えてもいい? 無理にとは言わないけど、嫌じゃなかったら頼む』
『なんで?』
[[ティタ] ノ]
『他の奴らにもこの狩りを経験させたいって言うのと、ゲッターサークルの使い方マスターさせたい』
『なるほど……』
[[ren] ノ]
ロゼの事だ、きっと真面目にクラメンのためを思っての事だろう。ようやく慣れたPTメンバー達と別れるのは名残惜しいが、狩りに連れてきてもらっているのは私なので致し方ない。それでも、せめてもの抵抗として、たった今ログインしてきたティタを巻き込む事にする。
『いいけど、あんまり絡んでこない人にして? 後、ティタ呼んでいい?』
『わかってる。いいぞ~。ティタが引き方旨いし教えてくれるんだろ?』
[[ティタ] ren一人? 狩場?]
[[ren] ロゼと狩りしてる。来るなら枠貰えるって、来る?]
『多分、言えばやって見せてくれると思うよ?』
[[ティタ] 行くw]
『一度帰還で、PTM入れ替えるわ』
『わかった』
[[ren] デメテルのモコモコに来て]
[[ティタ] 準備していくねーw]
ロゼとティタの二人と交互に話終え、一度帰還の護符を使い帰還する。ついでに、清算もしてしまおうと言うロゼに頷き、魔石使用個数とドロップ品を渡した。
お待たせしました!




