表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/371

最強はイベントに励む⑤

途中ロゼの視点が入ります。

 寝起きの頭でぼーっと昨日の狩りを思い出す。クラメン達との狩りは、私の予想を軽く超える感じで経験値スクロールを消費した。その分ドロップ品で補えているので、お金は問題ないけど……イベント中に経験値は、溜まりきれないだろう。そうなると、やっぱりボスで例のチケットをゲットするしかない。


「ボスやるしかないかなぁ~」


 今日はボスに行くと決め、自室を出る。何を食べようか考えながらシャワーを済ませ、キッチンへ移動。そのまま冷蔵庫を開け、私は暫し固まった。


「…………わさびチューブとマヨネーズしかないとか嘘でしょ……なんで!!」


 悲壮感漂いながら打ちひしがれた所で、自分自身の所業のせいだと気付いた。

 そう、何を隠そう、昨日の時点で飲み水一本以外の食材は底をついていた。本来であれば、その場で買い物に行かなければならなかったのだ。が、昨日の私は一日ぐらいならごはんを抜いても大丈夫! なんて高を括りイベントのためゲームに熱中した。

 その結果が、これである。


 自分の行いとは言えこのクソ寒い中、外に出るのは非常に億劫で渋々買い物にでかけ、即食べられるコンビニお弁当を買って食べる。腹を満たしたところで漸く病ゲームへログインした。


 こうしてイベント三日目が始まった。

 クラン内ハウスの自室で目覚め、いつものローテーションであるウルを愛でる。そして、ログインしているであろうクラメン達へ挨拶を流した。しかし、今日に限って誰もいないのかクランチャットに反応が無い。

 早い時間帯ではないので誰かしらいると思っていたに……残念だ。


 さて、どうしたものか? 誰もいないとなれば、誰かを誘う必要がある。ログインしているフレに声をかけるべく、フレンドリストを開き、白文字でログインしているフレ一人ひとりを思い浮かべる。※黒灰色は、オフライン中と言う表示。

 ただ、予想していた以上に、開いたフレンドリストに登録されているフレは少なかったのは言うまでもない事である。


 まずは、雪継と千桜。ログインはしているようだが、この間の狩りを見る限り……無い。前回の狩りで、あれだけ騒がれてしまったが故どうしても狩りに行こうとは言えず無しと判断した。

 

 次に浮かぶのは、小春ちゃんなのだが残念なことにログアウト中だった。

 その後に浮かぶのは、ロゼと白影だ。白影はログアウト中だったけど、ロゼが珍しくこの時間にログインしている。

 クラメンが一人でもいれば……我慢出来る。けれど、今回は私一人を、ロゼの所のPTに入れて欲しいとお願いする事になる。イベントでなければ絶対に言わない事だけど……どうしても狩りに行きたい。と言う事で、ここは最大の勇気を振り絞りロゼに密談を送る。


”ren” ロゼ、いる?


 あぁ、ヤバイ。心臓が……痛い。

 ロゼの返事を待つ間、私が考えていたことは超絶ヘタレた事だったりする。


”ロゼ” どうした?

”ren” あの……突然で悪いけど、ロゼ……狩りいこ?


”ロゼ” いいけど、そっち何人だ?

”ren” 一人デス


”ロゼ” は? ren一人って事か?www

”ren” y


”ロゼ” え? 大丈夫なのか? 割と本気で心配なんだがw

”ren” 絡まれなければ、耐えられると思う。


”ロゼ” マジで大丈夫なんだな?

”ren” しつこい


”ロゼ” まぁ、いいけどw どうせ同盟組む訳だし行ってみるかw

”ren” よろ


”ロゼ” じゃぁ、15分後、デメテルのNPC前で

”ren” k



 ロゼと会話を終え、ふぅーーーーーーーーと長く息を吐き出す。予想以上に緊張していたらしく、手を強く握りしめていた。カクつく関節を伸ばしながら、執事へ向かう。倉庫から予備のゲッターサークルスク、MPPOTを取り出すと鍛冶屋に向かい装備の耐久を戻す。

 漸く準備が整い、ロゼの住む街【デメテル】へ移動した。



********



 俺は、イベントに合わせ有休をもぎ取った。上司には渋い顔をされたのだが、俺にとって経験値イベントは外せない。人が稼ぎまくっているところに、俺だけ仕事とかまずありえない。

 無理やりとった有休だが、四次職までは行かないまでも新たに取得したサブを三次職にまではなんとか持っていけるだろう。


 昨日のような狩りをイベント中常に出来るのであれば、三次職の半分まではなんとか持っていけるだろうが他人を当てにし過ぎる事は良くないため諦める。


SG(うち)じゃ、あの狩り方は厳しいからなー。どうにかできればいいけど……無理だろ」


 昨夜の事を思い浮かべ出た言葉に、苦笑いが浮かぶ。

 昨日、BFのさゆにイベントマップの狩りに誘われた。BFも人数が足りないと言う事で、俺、白影を含めた四人を連れてきて欲しいと言う。うちとしてもクラメンの人数が常に八の倍数となるわけじゃないから有難い申し出だった。


 大和と白影が引き、ジュエルフェアリーを大量に引いて、チカとヒガキがゲッターサークルスクを使って纏める。そして、さゆが範囲魔法を放ちほぼ全てを鎮めるというものだった。


 確かに殲滅者の頃から効率のいい狩り方と言うものを心得ている奴らではあったが、ハッキリ言うと異常だ。

 大体にして一般人と言ういい方は失礼だが、俺や白影も含めあのクランに所属している以外の奴らにあの狩り方で狩りをしろと言ったところで、まず無理なのだ。

 その理由を上げるのなら、俺はこう考える。


 一つ目は、連携だ。

 BFの場合、引き役が戻ってくると同時にレンジヘイトを全体にかけた。その直後、引きに行かず待っていたメンツ――手の空いている者が、なんの指示も無くゲッターサークルスクを使う。これの位置と発動タイミングが本当に絶妙だった。引き役がダメージを追わない場所――正確に表すなら約二メートル。そして、スクが切れる前に、範囲魔法が飛んでくる。

 この間、約十五~二十秒だ。その間で成された会話は、戻る引き役のカウントする言葉だけ……。


 実際に、BFとの狩りの後クラハンで試した。その結果は、ゲッターサークルスクの位置とタイミングが噛み合わない、引き方が悪くモブがバラつき纏められないなどなど……散々たるものだった。

 

 二つ目は、攻撃力――装備が違いすぎる点。

 ハッキリ言うが、今回のイベント狩場のジュエルフェアリーは、相当に硬い。+20、火属性MAXの弓を使う俺ですら一匹倒すのに一分以上かかったのだ。なのに、さゆは攻撃力が低くなる範囲魔法を使って一撃……。本気で弓から魔法職へ転職するか? 悩みかけたほど凹んだ。


 ちなみにSG(うち)でも強いと言われているさゆと同職のタピオカに、同じことをして貰ったが視線を逸らし、閉口するしかない悲惨な状態だった。

 ありえないだろうが、もしうちの狩りにrenのバフが入れば違う可能性もある。それについてはBFも同じだろうと白影と二人話した。


 そうして終えた二日目を振り返り、もっとうちも頑張らなければと気持ちを改め病ゲーへログインする。

 ログイン早々、クラチャにログインの挨拶を流し、メールを開く。

 先週の戦争で城主クランになってしまったため、毎日城からの税収を記載したメールがクランマスターである俺に届くのだ。税収を確認して自室から執事へ移動する。執事――クラン倉庫内から城の税収分のゼルを取り出し、執務室へ移動する。

 執務室に入り、税収を戦争に参加した同盟相手の各クランで均等割り、そして相手のマスターへ、合計金額、割った金額、を書いて取りに来るようメールを出すまでがログイン後に行うべき一連の作業だ。


 相手のクランマスターが続々と取りに来る中、突如renから密談が届いた。その内容に俺は少なからず動揺する。何度か大丈夫か? と問いかけてみたがrenは、本気で狩り行く気のようだ。とりあえず、renには十五分後にデメテルのイベントNPC前でと伝えた。


 税金を取りに来た最後のマスターを見送り、クラチャを開く。renの性格と今ログインしているクラメンの性格を考え、出来る限り絡まなそうなメンバーを選び執務室へ呼び出した。

 五分程で集まったクラメン達に、これから行く狩りについて話をする。時間にして約三分ほどで説明を終え、PTを組むとデメテルの広場へ移動した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 病ゲームの真髄は、リアルすらも侵食するところなんでしょうねw おぉ… あの人見知りなrenが自らPTを組むとは… 取り敢えず無事を祈ります(何のとは言わない)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ