表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/371

最強はアップデートを楽しむ㉟

長らくお待たせしました。

 スキルカットをすると決めてから、まずそれぞれのクランから専用のATKが選びだされた。うちからは、言わずともわかるだろうが宗之助と源次がメインで、白と聖劉は予備扱いだ。

 コカトリスの方は、十分に一度ぐらいの割合だ。鶏冠が大きく膨らむことでスキルを発動させることが分かった。そして、コカトリスのスキルカットは一度目から失敗することなく、コカのスキルカットに付随したヒヒのスキルも無事スキルカット出来ている。


 だが一方で、新たな問題も浮上している。

 POTは切れると同時にヒヒが即死とまでは行かないスキルをタゲを持っている黒に使ってくるようになった。

 スキルを発動する間際のほんの数秒前にヒヒの眼の色が、青になる。そして、そのスキルはタゲを持っているものにのみ効果がある。

 初めて受けた攻撃の時、黒のHPはほぼ満タンで、一気に四割を消失した。その為、急遽そちらのスキルカットもするよう先生が指示を出したのだが……タイミングを合わせるのが難しいようで……。


 二度目は、雑魚処理の追われている最中に起こった。ヒヒの眼の色が変わると同時に宗之助たちがスキルカットするためカウンタースキルを発動するも、タイミングが早く黒のHPが七割から一気に二割にまで減りチカと宮ネェがヒィヒィ叫び回復を飛ばしていた。


 三度目は、ロゼがギリギリのタイミングで放った矢でボスの動きが止まりカット出来たかに思われた。が、コンマ何秒かの差で失敗し黒のHPが八割から二割まで減らされた。

 このことから、ボスの強撃は回数を重ねるごとにその強さの割合が高くなることがわかった。


 そして、いよいよ四度目の挑戦。時間は、タイミングを合わせる為、個別のバフを専用ATKに配る事で測って貰う。残り数秒とかの違いは各自でどうにかしてもらうしかないわけだが、このメンツであれば大丈夫だろう。それにコカトリスも少しずつだがHPが減っている。


『そろそろ来るぞ』

『狙いは、腰の弱点! 集中~』


 個別に入れたバフのカウントが始まるのと同時に緊迫した黒の声が響き、ボスの周囲を囲っていたATK達がボス本体から距離を取る。残ったのは各クランから抜擢されたメンバーのみ。

 モーションもなく、黒をその巨大な拳で続けるヒヒの顔を全員が注目するかのように見つめていた。

 腰の弱点については複数個所あるうちの一つだ。今回腰を狙うのはただ単に、近接ATK達が一番クリティカルを出しやすい箇所だからである。


『青』


 先生の合図に、腰を落としカウンタースキルを放つ瞬間を待つ源次と宗之助。弓を引き絞り、狙いを定める白と聖劉。その姿は見ているだけならカッコイイ、中身を知ると非常に残念極まりない感じになってしまうけれど……。


 ボス部屋全体にチリチリとした緊張感が漂い始めたその時だった――。

 個別バフを回すため周囲を見回していた私の視界に、黒の後方から見慣れたローブ姿に大剣を装備した憤怒の表情をした回復がボスへ向かい走る姿が映った。


 …………ちょ、チカさん?


 ボスに向かい走ってきた足を踏み切り、跳躍したチカの大剣が何かしらのスキルを纏いボスの脳天に向け振り下ろされた。

 宗之助達――選抜ATKもチカにコンマ数秒遅れスキルを発動しカウンターを狙う。小気味に良いクリティカル音が複数回鳴り響き、ボスの本体が一時的に動きを止める。

 長い数秒が過ぎボスの眼の色を確認する。そこには元通りの色をしたヒヒの顔があった。


『ok! スキルカット成功。次もよろしく!』


 晴れ晴れとした先生の指揮チャットに、周囲の士気も上がりコカトリスへの攻撃を再開する。


[[宮様] チカ! 回復が攻撃しに行くってどういう事よ!]

[[黒龍] ren地のプロテクくれ]

[[聖劉] スキルカット緊張した~w]

[[†元親†] ……ストレス発散?]

[[ティタ] まぁ、まぁ、宮ネェ落ち着いてw]

[[ren] k]

[[源次] まさかチカが走るとはww]

[[ベルゼ] 上手くいったから良かったけど

     失敗してたら回復1枚になるとこだったって考えると

     怖いなw]

[[宮様] ストレス発散ねぇ~?]


 チカの行動に切れる宮ネェの気持ちは分かる。ただでさえメインでクラメンの回復を回しているのだ。そこへ来てチカが攻撃に加わり、もし死んだとすれば……。宮ネェの負担は相当なものだっただろう。

 なので、チカが壁に吹っ飛んでいったことは見なかったことにする。

 

 一番厄介なスキルカットが成功し、コカトリスのHPも残り二割だ。討伐を初めて既に一時間経過、漸く三分の二が終わる。

 全体のMPの減り具合を確認しながら、マナチャージの告知を出すため先生に確認を入れokを貰う。


『雑魚殲滅後マナチャ』

『MP使い切れえええええええええええ!』

『きたあああああああああ!』

『全員出し惜しみなしでスキル連打しろー!』


 ノリノリでMPを使うつもりのキヨシと回復でMPの少ないチカは通常営業のようだ。それに触発されたらしい雪継が、クラメン達に激を飛ばす。 

 現在の状況は、まだ雑魚が沸いたばかりで殲滅には程遠い。近接がメインの大和の方が殲滅速度が遅い分時間がかかるだろう。遠距離メインの白影は、既に半分といったところだ。

 全体のMPは既に三割程度、宮ネェが大和の回復を担っている為チカよりもMPが少ない。白影を担当している回復も同じような状況だろう。


『回復はMP三割でキープよろしく』


 周囲のあまりの勢いに先生が、雑魚に攻撃を加えながら付け加える。


『ハヤセ。白影の回復に回れ』

『チカ、宮ネェと交代で大和回復しつつ黒の状況みといてー』

『大和の回復必要ならこっちからも回復回すわよ~ん♪』


 三割キープにいち早く反応したのはロゼで、同じく攻撃をしながらだがハッキリとクラメンの名を呼び指示を出す。

 続いてティタがチカの名を呼び、チカでは対応が難しいと思われる内容を告げる。小春ちゃんの申し出に大和はお礼を言いつつ「辻ヒールお願い~」と伝えていた。


『了解』

『えっ! 俺そんな難しい……』

『ちょっと、チカ頑張って、じゃないと僕死んじゃうww』

『こっちもちゃんと見とけよチカ~w』


 発狂するチカに、雑魚に囲まれた大和が茶化すように回復頑張れと言えば、黒がニヤっと黒い笑みを湛え大和にノッた。それに対しチカは必至なのだろう。『モウヤダ……なんで俺回復なんか選んだの?』 と何度も自身に問いかけ激しく後悔しているようだった。


 機嫌よく笑う宮ネェの横で、黒と大和を交互に回復するチカを不憫に思うがバフの更新時間が来たためそれに構っている暇はない。さくっと全体バフの更新を入れ、個別に属性プロテクトを追加する。


 次の強撃発動までは、残り一分だ。

 雑魚の殲滅よりも早く、ボスの強撃が来る。そのため選抜ATK達はその場にとどまりコカトリスへ攻撃を加えながら、その時を待っていた。


『来るぞ』

『青』


 バフが切れるタイミングで黒と先生が同時に叫ぶ。

 そして、数秒後再びのスキルカットが行われた――ボスの動きが僅かに止まり成功したかに見えた。

 だが、眼の色は青のまま、黒のHPが九割からニ割まで一気に減った。


『いっ!』

『なんでだ!』

『黒、回復するわいね!』

『おう』


 痛そうに顔を歪める黒が僅かに声を上げる。間違いなく成功したと言いたげに源次が眉間を寄せ叫ぶ。千桜が慌ててクラメンに黒を回復するように伝え、クラメンが答えていた。

 黒の身体に何本もの回復のエフェクトが上がる。焦っているとはいえ、どう見てもオーバーヒールが過ぎる気がする。そんな中呆然とボスを見るロゼ、宗之助、先生は、必死に理由を考えているようだ。

 

 三度目と五度目、そして成功した四度目で何が違うのか……?


漸く自宅に戻ったので、本日より更新再開したいと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] こう言うのはなんか変ですが、まずは、おかえりなさい。 戻ってきてくれて嬉しいです。 取り敢えずは執筆と投稿がm出来るくらいには無事なようで、一安心しました。 昨今は厄介な病気が蔓延してますか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ