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最強はクランを作る⑦

長いです。申し訳ないです。

 陣形を整え相手を伺う。喧嘩を売られていう事でもないけれど、相手をするだけ無駄だとしか思えない。だって、彼らの装備から言って、三次職になったばかりだろうから。

 うちのPTは全員、三次職の後半――カンストしているので、Lv差と装備の差でかなり手を抜いても余裕で勝ててしまう。


 威勢がいいだけのヤンチャなお年頃なのだろうけど、正直全員でやる必要があるとは思えない。彼らの装備をマジマジと見てしまった私は、急激にやる気が萎えるのを感じた。

 面倒だし人数的にこっちが多いから見学してもいいか聞いてみよう。


『ねぇ。人数的に卑怯だし、私見学してていい?』


『ちょっと、ren! 何萎えてんだよ……。お前が一番対人好きだろ?』


 白に萎えたことを見抜かれてた! 確かに対人は好きだし、こいつらには多少なりとも邪魔されてイラっとした。けどさ……Lv差が……あるじゃん。

 私の持つ杖――+30クロドラスタッフを使ったとしたら、間違いなくブレスオブアロー五発で終わる。


『つまらない対人は興味ない』

『確かに、相手は二次か三次になったばっかりだけど……』

『ブレスオブアロー一発ずつで静められるから、つまんない』

『それ、本気で言ってるの? ren』

『y』


 先生に聞かれ私は、素直に答えた。それなのに皆が私に注目している。

 そのせいで彼らの視線も私へ向いていた。


 まだ始めないようだし、暇だから相手の職業を見てみる。

 回復職だと思われるおっとり眼鏡巨乳――話は通じない電波ちゃん。

 気持ち悪いニヤニヤ笑いの魔法攻撃職と思われるエルフの男――ニタメン。

 大盾のヒューマン――チンピラ。

 白猫――顔色的に赤猫。

 槌を構えるドワーフ――偽物のサンタクロース。

 どれもこれも弱そうで、しつこそう。 


『さっさと終わらせて良いなら私一人でいい。今日中にクエ終わらせたい』


 条件をつけて提案してみれば、構わないと皆から許可も得た。私以外の全員が、背後へと移動する。

 クエ終わらせて狩り行きたいから、ここはさくっとやってしまおう。


「いつ、はじめるの?」


 攻撃してくる素振りすら見せない五人に白チャで聞いてみれば、血の気の多い大盾のヒューマンがチンピラみたいな顔で睨んでくる。

 宮ネェが『煽っちゃダメ!』とか言ってるけど、私煽ってない。ていうか始めますって宣言してあげないと彼らは攻撃してこないらしい。

 

 未だニヤニヤした男がバフらしき物を一人ずつ丁寧にかけている。


『え、今なの? これ待ってあげたほうがいい?』


 PTチャで確認すれば、盾越しに肩を震わせた黒が声を殺して笑い。宮ネェはニヤついた顔で空を見上げ、白は俯き身体を震わせている。先生は、ぷるぷる全身を揺らしつつ口を拳で隠し、ティタは持っていた武器が、カタカタと鳴っていた。


「ぶほっ、あはははははは無理だった―!」


 唯一キヨシだけが噴出して笑い声をあげ、大爆笑。

 それが勘に障ったらしい、白猫がギャーギャーと喚き散らす。


「煩い」

「あんたねー。さっきから一言しかしゃべらないくせに!! むかつくのよ!」

「赤猫さんと()()()()ある?」


 唇に人さし指を置き可愛く首を傾げてみせれば、見事に挑発は成功し白猫の顔が更に真っ赤になった。


「なっ!」

「ren、それ一応白猫でござるよ。赤猫じゃないでござる」


 訂正しているかのように見せて、煽る宗之助の高等テクニックを私も是非習得したい。

 笑い続けるキヨシが、ヒィヒィ言いながら赤猫を指さす。そして、また爆笑。

 キヨシのツボが判らない……。


「それで、バフ終わった? 待っててあげたんだから少しは根性見せて?」


 相手の前衛が口角を引き攣らせ、眉を吊り上げ怒りの表情を見せる。


 大盾を持つヒューマンが一歩を踏み出すと同時に、ブレスオブアローを後方にいる電波ちゃんへ放つ。

 私の片腕ほどの長さの金矢が、瞬く間に大きく変わり電波ちゃんの身体を貫く。

 貫かれた電波ちゃんは、そのまま仰向けに倒れ死亡――灰色の表示――した。


「は? 何? なんで……?」


 何が起きたかわかっていない様子でニタメンが呆然と呟く。


「なんでって、攻撃したから?」


 誰も答えないのでニタメンに答えてあげた。


 ブレスオブアローを一本ずつ放つ予定だったけど、MPの無駄かもしれない。そう考えた私はドラゴン オブ ブレスでMPの節約に努める事にする。

 銀色の炎のエフェクトが五人目掛け吐き出される。

 

「ぁ……」

『どうした?』

『MPの節約しようと思ってドラゴンオブブレス使ったら、盾以外死んだ』

『ちょ、笑かすのやめろ!』

『まさか、これで死ぬとは思わなかった』


 皆が盛大に拭き出す中、申し訳なさ過ぎてせめてもの償い代わりにブレスオブアローで盾を殺してあげた。


『終わったな』

『はえーわ』

『いくら二次職でも、本当に一発とは思わなかったでござるよ』

『出番すらなかったな』

『まぁ、renだしね。また名前が真っ赤に戻っちゃったわね』

『バフかけてるの待つrenが、一番面白かったわw』


 先生の言葉を皮切りに、黒、宗乃助、シロ、宮ネェ、キヨシがそれぞれ感想を口にしてする。

 殺した彼らの死体はそのままの状態だが、クエストアイテムのため狩りを再開する。

 バフの更新を終えたところで、引き役の二人が走り出す。

 

『あー。さっきのPTLが、何で死んだのか教えて欲しいって密談してくるんだけど、ren教えて良い?』

『別に構わないよ』


 先生に密談で、死因を確認してきていたらしい。なんで私じゃないのだろうか? 殺したのは私だし、私に聞けばいいものを……。


 その後、狩りは順調に進み、10回でクエストアイテムである誓い(空)を必要個数集めることができた。


 街へ戻り、夕食の時間が近いメンバーが半分ほどいたためポータルで次の街ネキュレネへ移動して、三時間の休憩をとる。

 流石に私も何かを食べないと身体が持たないので、宿屋で一度落ち食事とついでにシャワーを済ませた。


 一時間半で再びゲームにログインする。私は本当に廃人なのだなと、実感しつつ宿を出て倉庫へ向う。


 ネキュレネの街は、イギリスにあるバイブリーの街並に良く似た石造の建物が多い。ここに来ると、必ず、昔作られた有名な魔法使い映画を思い出す。きっと、それを見て作られたのでは無いだろうか? と考えつつ街並を眺めて歩けば、倉庫に到着した。


 アイテム整理ついでに、倉庫を物色する。

 正直、五百マスある倉庫のマスが、残り三十とかなり心もとない。

 いい加減物を減らさないと枠が足りなくなるとは思いつつ結局整理できずに、別キャラへ。

  

「そのうちまた、クエ……めんどい」


 大きく息を吐き出し、さっき拾ったアイテム+7オリハルコンダガーを取り出す。この短剣の持ち主はキャンキャン鳴く赤猫だろうと予想して全チャで取りに来るよう促す。


{[ren] 白い赤猫 10分以内に密談 plz}


 分りやすく手短に打ち込み、時間を確認すれば18:21だった。

 赤猫のために十分もぼへーと待つのは面白くない私は、倉庫整理で要らないなと思った+10 炎のリングを四十個強化しながら待つことにした。


 結果は+16が一個……残っただけだった。シビアすぎる強化の確率に、ガックリと項垂れた。

 消滅するまで強化するか悩んでいるとTPチャで白、ティタ、黒が戻っていることに気づく。


 そうだ! 要らない物は売ってお金にすればいい。


『おかえり』

『おぉ。renおけーり』

『ただいま?』

『おか』


 PTチャで挨拶すれば、黒、白、ティタの順で返事をしてくれる。


『+16 炎のリング 誰か買わない?』

『いくら?』

『45Mまでなら出しても良い』

『+16かぁ、欲しいけど金がない!』


 黒が値段を聞き、ティタが45Mまでなら買うと言い、白は欲しいけどお金がないと言う。

 良心価格で42Mなら、良い値段だろうと思いティタに売りつけることにした。


『42Mで売る』

『倉庫でいい?』

『いる』


 倉庫でティタと取引をして時計を見れば、18:41になっていた。折角返そうと思った+7オリハルコンダガーは、消滅するか+20行くまで強化する。どっちでも構わないから適当で……。


{[ren] 赤猫が連絡をくれないから+7 オリハルコン ダガー。強化の石・ダガー}

{[白聖] 赤猫ww}

{[黒龍] 白猫www}

{[ティタ] 顔真っ赤?www}


 ノリの良いPTメンバーたちのチャットを眺めつつ、ポチっと強化をタップするれば+8になった。

 消滅してもいいと言う気楽さから何度もしつこく強化して、ついにオリハルコンダガーは+18まで育ってしまった。


 あぁ、なんでこんなところで強化運を使ってしまったんだろう。こんなのに運を使う位なら別のを強化しとけばよかった。


{[黒龍] 無言だ……。まだ、ダガーは生きてるのか?}

{[白聖] 失敗ログ流れないから、生きてるんだろ……。

    持ち主に似たんだな、あのダガー}

{[宮様] 何の話?}

{[ティタ] 持ち主に似るって怖い。ガクガクブルブル} 

{[ren] 【 +18 オリハルコン ダガー を手に入れました。 】}

{[大次郎先生] 60Mで買います}

{[ren] 売ります}

{[白聖] 即決www}


 全チャで、先生が買うと言うので即決で売り払う。

 直ぐ隣にいた先生がトレードを出したので、その場で取引を完了させた。

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