最強はアップデートを楽しむ㉔
戻った黒と大和が、漸く半分になったモブを元の量に近い感じで戻したおかげで、チカ曰くエンドレスゾーンに突入したらしい。回復職のバリアが無くなり残るは私のみとなったにもかかわらず、この量を処理しなければならない現実に本気でイリュージョンを発動すべきじゃないかと思案した。
入り口にいたPTも既に居なくなり、ここにいるのはクラメンばかり。これなら、イリュージョンを使ってもなんとかなりそうだ。本当はクラメン用に使いたいのだが、この状況でそうも言ってられないし死ぬよりはましだろう。
意を決して、クラチャを開いた私は、未だモブを引きまわしているティタを呼び寄せる。
[[ren] ティタ、戻って。先生、白、聖劉は周囲警戒。一般居ないか確認して
黒、大和は、ティタが合流するまで走ってて!]
[[ティタ] k]
[[宮様] チカ、回復飛ばしちゃだめよ]
[[白聖] おーけー]
[[大次郎先生] わかった。私、南の入り口にいくよ]
[[聖劉] じゃぁ、東の方に俺行くわ]
[[†元親†] 大和のHPが怖えぇ!]
[[黒龍] k]
[[大和] 死んだらごめんね~?]
指示を飛ばし終えて、ひとまずバフの個別のバフの更新を入れる。そして、ティタにバフを入れるため追走してくれていた鉄男のモブを先に残りのメンバーで倒す事に。
モブを倒し終わり周囲を警戒しながら、ティタの到着を待ったのだが……戻って来ない。いったい何があったのか? 死に戻りしたなら、そう言うはずなのに言わないと言う事はまだ生きているはずで、もしかしてラグか? とも考えたが内蔵電源完備のVRでラグはほぼほぼ無いと言って良い。
[[黒龍] ティタ??]
[[大和] まーだーなーのー?]
[[聖劉] もしかして、死んだ?]
戻って来ないティタに、クラメン達も不安顔を見せ始めた時だった。大量のモブを引いていたはずのティタが、ひょっこりモブを引かずに戻って来る。
そんな状況につい「はっ?」と気抜けた声を出してしまうのは仕方ない。黒、大和以外の全員が動きを止め、悠然と笑顔を振りまき戻ったティタを見つめていた。
[[宮様] ちょっと、ティタ。あんた後ろの大群どうしたの?]
誰よりも先に再起動したらしい宮ネェが、ティタに問いただす。
[[ティタ] 実は……逃げ場無くなって、焦ってボス部屋入っちゃってさ
で、入った途端、タゲ切れたんだよねw
ボスは、元気に攻撃して来たけど……w]
ティタの言葉にそう言うことかと私は納得した。
モブに囲まれ逃げ場が無くなったティタは、猛獣のボス部屋に逃げ込んだ。ボス部屋に入れば特殊マップに入るため、雑魚モブのタゲは切れる。その上でここのボス部屋は少し特殊で、入り口に扉などはなくボスに攻撃をしない限り入退室が出来る。
今回はこの特殊な環境だったからこそ、ティタは生きて戻ったみたいだ。
ティタの引いていたモブが居なくなったのであれば、別にイリュージョンを使う必要はないよね? モブを未だに引く黒と大和には、申し訳ないけど自力で頑張って貰おう。
大幅に予定を変更するためクラチャで、その事を伝える。
[[キヨシ] まー。生きてて良かった! 勇者様ぁ~]
[[鉄男] 死んだと思ってたわw]
[[ベルゼ] 生きてるなら言って~?]
[[ren] ティタのモブ居ないなら、これ以上増えないしメテオで殲滅できるから
メテオと回復、頑張って?]
[[ミツルギ] 本気で恐怖だったっすよ。ティタさん]
[[さゆたん] 鬼畜がいるでしゅ!]
[[風牙] 鬼が居る]
[[聖劉] 夜叉が……]
[[大次郎先生] あ、イリュージョン無しになったんだな?]
[[宮様] 私、吐きそうよ!]
[[†元親†] え? 無しかよおおおおおおお]
何とでも言え! そう心の中で言いながら、周囲を回る黒達が壁の定位置へ戻るのを待った。ジグザグに走りながら、タイミングを合わせる黒と大和は、互いに視線のみで会話を交わす。
そして、一気になだれ込んでくる二人。壁際に二人同時に入り込み、リズライフフォース――三次職盾のスキル。二十秒間自身の防御力を高め、自身が受けるダメージを抑える――を発動させた。そのまま続いてレンジヘイトのエフェクトが上がる。
エフェクトが消える間際、モブが不自然な動きでに強引に黒と大和の二メートル手前で纏まった。そこへ地揺れと共に轟音をあげ降り注ぐのは、さゆたん、キヨシ、ゼンさんのメテオだ。
[[黒龍] リズライ@3]
黒の声に合わせ、プロテクトスケイルを発動させるタイミングを計るべく3……2……1とカウントを始めた。0より少し早く黒と大和の周囲を守るように四方を囲っていた青白い盾にヒビが入り割れるエフェクトをあげ消え失せる。
[[ren] プロテク]
エフェクトが消えると同時にプロテクを詠唱し、発動する。
このまま順調にいけばいずれ殲滅はできるだろう。無双する鉄男がハッスル気味の笑顔で隣を通り過ぎ、己の身体を回転させながらモブの塊に突っ込みトルネリアアタック――三次職槍のスキル自分の身体を回転させながら、周囲にいる相手に対し槍の矛を突きだしダメージを与える――を決めた。
流石に範囲魔法を持っている私が、バフ以外何もしない訳にはいかない。と言うか、鉄男に挑発された気がする……イラッ。
無言で鉄男にジト目を向けつつインヴィスをカリエンテに変更、設置型のファイアーウォール(+17)を可能な限り設置して発動させる。設置時間に、ディレイがあるファイアーウォールは間に魔法を挟むことができる。そこで、間にドラゴンオブブレスを挟み、私だって余裕だけど? と言わんばかりに鉄男に視線を投げた。
「チッ」
[[さゆたん] MP@600でしゅ!]
[[ゼン] 僕もう、後500もないです!]
[[ren] マナチャ入れるから、MP使って!]
[[キヨシ] @550~]
無意味に鉄男と張り合っていると今回の火力を担っている二人から残MPが心もとないとクラチャで報告が入る。マナチャを入れる事を伝え、MPを出来る限り減らしてくれるよう促した。
結果、白、聖劉はダウンプルを連発。鉄男、先生、ティタ、村雨、風牙、宗乃助、ヒガキさん、ベルゼ、ミツルギさんは、スキルを連打する。黒や大和までもが、盾のスキルを使っていた。
花火のようにエフェクトが上がっては消えて行く、全体のMPが三割を切った所でマナチャージを詠唱発動。
メテオは切れる事無く降り注ぎ、モブの七割をなんとか殲滅し終えた。残り三割になったところで、さゆたんたち遠距離魔法組にMP回復の時間を与える。その間は、槍を持ちだした近接組と弓職の二人が頑張り、モブのHPを削った。
[[キヨシ] 俺、超働いたぜ~!]
[[白聖] ren。インヴィス、闇くれ]
[[宮様] ふぅ。なんとか落ち着いたわね……]
[[ren] k]
いつの間にか弓を持ち替えていたらしい白の声に答え、テネブラエのインヴィスを入れる。白が弓に矢を番え、天に向かい大きく弓を引き射を放つ。その行動から白が持ち出した弓が、月弓・ツクヨミである事が遠目に見ても分かった。
そんな白を羨ましそうに、聖劉が見つめている。同じ職だからこそ、白の持つ月弓・ツクヨミがどんなものであるのかわかるのだろう。
月弓か、同じイベントで出た強化+12の天弓・アマテラスならあるんだけど……聖劉、買わないかな? 後で聞いてみようか?
スクロール生産素材を大量に買い込みお金が無い私は、そんな事を考えた。
足をお運び頂きありがとうございます!
スキル系統は、補足的に――の中に効果などを記載しています。




