最強はアップデートを楽しむ⑯
指輪の件はさておき、クラン貢献ポイントを確認した私は人知れずニヤリと笑った。今回のトーナメント戦で、皆が稼いでくれたクラン貢献ポイントは約6000。これだけあれば、クランLvを上げた上で、クランスキルをひとつだが得る事ができる。
クランスキルについてはひとまず先生が帰ってから相談することにする。
まずはクランLvだが、上昇に伴い同盟に参加するクランの数を増やせるシステムになっている。簡潔に説明すると、現在のBloodthirsty FairyがクランLv5で、同盟に加入できる数は一つ。Lv7で二つ、Lv8で三つ、Lv10で五つのクランが加入できるようになる。
とりあえずクランスキルを取るにしても、どうせあげるならLv10まで上げた方が選択肢の幅が広がる。
クランをLv5からLv6に上げる為には、一つの通過儀礼的にレイドーー七星竜とプレイヤー間で呼ばれている名前付きのワイバーン、セプテントリオンズの討伐がある。ぶっちゃけこれが時間的にも人員的にも面倒で、同盟主になるのを渋っていた訳だ。
図らずも人員の確保は、ロゼの言葉で解消された。
後は……時間だ。クランLvを上げる為のレイドはクランLvを上げる必要が無くともドロップが美味いと言う理由で、ほぼほぼ沸いたと同時に狩られてしまう。その為、クランLvを上げたいクランは沸き待ちをして、レイドを食べに来たプレイヤーを押しのけLAをクランマスターが取らなければならない。
前回の討伐情報が無い状態で、一時間前に倒されたとして次に湧くのは四日後とかのレイドの沸き待ちなどしたくない! と考えた私は、まずはクラメンに相談する。
[[聖劉] 眠い!]
[[宮様] あら、クラン費結構たまったわねぇ~w]
[[ヒガキ] お疲れ様です]
[[ren] 誰か、七星竜の沸き時間知らない?]
[[ティタ] 聖おつかれw 相変わらずの社蓄?w]
[[鉄男] 何? ren 七星やるの?]
[[キヨシ] うおーレイドじゃぁ!]
[[†元親†] 金! 金がくるぞーw]
[[ren] ポイント貯まったし、クランLv上げようと思って]
[[ベルゼ] チカとキヨシは相変わらずかw]
[[黒龍] あー。同盟の為かw]
[[鉄男] 調べて来てやるよw]
[[大和] ポイントって貢献度?]
[[ren] よろしく>鉄男 そう、貢献度>大和]
情報通の鉄男が調べてくれると言う事で、私は事前にロゼ、雪継、小春ちゃんへと話を通しておく。正直うちのクラメンだけでも行けなくはないと思うけど、対人戦になった場合人数は多い方が良い。
{[ナールニ] 地下採掘場PT募集~ @回復1、近接2 密plz}
{[ブルーノ] ハルおめでとぉ~!}
{[ren] ロゼ、雪、小春ちゃん ヘラ神殿come}
{[銀の矢] ハル三次カンストおめでとぅ!}
一人一人に密談を送るのがめんどうだったことから、全チャで三人を呼び出す。神殿までは目と鼻の先である事からのんびりと歩いて向かう。神殿の位置口で宮ネェが佇んでいた事から話し合いに来たものだと思いこみPTに誘っておいた。
神殿内部の床に体育座りをして待つ事十分、漸く五人が揃った。
この前よりも疲れた表情に見えるロゼと白影、いつも通り美を追求した格好をしている小春ちゃん、そして、疲れてみえるロゼ達より更に悲壮な表情の雪継と千桜。
どうしたのか聞くべき所だろうが、どうせ内容を語りはしないだろうと予測して敢て聞く事を止める。
『元気そうねん! renちゃん、素材余ってるなら買うわよ~w』
『あら、小春ちゃん以外は相当しんどそうねw』
『しんどいなんてもんじゃねーよ。もう発狂しそう俺ww』
『素材って何が欲しいの? 後でいい?』
『もうな……本当死んでくれって思うわ……』
『雪、落ちつくわいねw』
『白影、それは言うな……俺だって、出来る事なら殺したいわ』
『いいわよ~んw たんまり売って頂戴ねん♪』
小春ちゃんの挨拶に答えた宮ネェが、疲れきった顔をした四人へ視線を向け言葉をつづけた。その声に答えるように、雪、白影が殺意に満ちた声で状況が芳しくない事を伝える。そんな二人をそれぞれの相方である、千桜とロゼが落ち着くよう言えば大きく息を吐き出し此方を向いた。
間で、素材を買い取ると言う小春ちゃんと話していたのは私だ。
と……そんな事はおいておいて、まずはレイドについて話をしておこう。
『呼んだ理由だけど、クランの貢献度が貯まったからレイドやる。手伝って』
『おー。トーナメント戦ほぼほぼ、BFだったからなぁそりゃ貯まってるわなw』
『いいなー。うちも欲しい……クランバフ用に』
『あら、レイドやるのねん。いいわよ~ん♪』
『沸き時間は、今鉄男が調べてくれてるからハッキリしたら伝える。対人になる可能性あるから、うちのクラメンで対応する?』
本題をさくっと伝える。するとロゼ、雪継、小春ちゃんの順で各々が返事をする。時間については追って連絡すると言う形で締めようと思ったのだが、このレイドはPKになる事がままある事を思い出しついでに話し合う。
『あー。七星はPKなりやすいからな……レイドに関してはクラン戦にしないって言う暗黙の了解があるから、俺らも手出しはできるぞ』
『なる。じゃぁ、全員で潰してゆっくりレイドやるでいい?』
『わかった』
『了解』
『素材が手に入るならなんでもいいわ~w』
三人共に了解を貰えた事で安心した私は、小春ちゃんに以前から計画していた事をお願いする。
『そうだ、小春ちゃんに頼みがあるんだった』
『あら、何かしらん?』
『えっと、双剣を一対と杖を一本、短剣の二刀を一対、作って欲しい』
『双剣って刀の方かしらん?』
『ううん。剣の方、うちの新人さん達の三次職祝いに……』
『あぁ! ゼン、ヒガキ、ミツルギ用ね?』
『そう。三人とも頑張ってくれてるし、クランにも貢献してくれてるから余った素材で作って貰おうと思って』
『なるw 三次職の武器高いからなぁ~。そういや、俺らも貰ったな~w』
『懐かしいわね~ん。あたしも、未だにあの武器だけは倉庫に残してるわんw』
『俺も取ってあるなー』
『アレは売れないよなぁ~。なんか認められた証拠つーかさ、アレ貰って始めて一人前!って言われた気分になるもんなw』
『分かるわいねw』
『俺も取ってある。何度も売ろうか悩んだけど結局手放せないw』
懐かしそうに語る宮ネェ含めた六人。そんないい思い出になっているとは知らなかった。ぶっちゃけ、あの当時は、ただ単に代行の鍛冶が面白くて作っていただけなのだ。それをそんな風に言って貰えるとはありがたい。
そうは思いながらも、お金が無いなら売ってしまって良いのにとも思う。私が皆にあげた武器は、二次カンストの時なので、三次職で使う事もまったく無いのに取っておく必要もないはず……そう思った途端、つい口が本音を呟いてしまう。
『え……倉庫の邪魔だし売っちゃえばいいのに』
盛大に『おい!』『折角の思い出に!』などと皆から突っ込み的な何かを貰い、会話を終わらせる。後は、時間が分かってからと言う事でその場は解散になった。
その後、三人の武器を作る為に必要な素材を小春ちゃんに渡すついでに、欲しいと言うものを駄賃として渡す。素材で足りない分は、出来あがってからお金か素材を追加で支払うと伝えた。出来あがりまでに十日程欲しいと言う小春ちゃんに頷き倉庫で別れる。
三人に渡す装備は、特出したものではないし大したものではない。それでも、喜んでくれるといいなと喜ぶ三人を想像しながらハウスに戻った。
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