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最強は壊滅を齎す⑮

 水晶を取り囲むように全員で立ち、ロゼの合図を待つ。


『全員死ぬ準備はいいな?』

『それはやめよ?w』

『え? じゃぁ、全員カリエンテに殺される準備はいいな?』

『一緒だわいねw』

『もうなんでもいいからカウントしろよw』


 気合の入れ方がおかしいロゼに、ティタが突っ込む。それを聞いたロゼが言い直すも、今度は千桜が無いわと言う。

 締らないセリフに焦れたらしい黒が、カウントを要求した。


 そんなロゼがカウントしようと『カ――』と言ったところで、フライングしてうちのクラメンたちがゴソっと消えて行った。


『おいいいいいいいいいいい!』

『だって、おっせーんだもんw』

『ごめんなさいね?』

『うはははははw』

『あぁ、もういいわ全員入れ―!』


 投げやり気味にそう言って、次々中に入る。

 最後まで残った私とロゼ、雪継・小春ちゃんがそれぞれ視線を合わせ頷き合う。

 そして、各々が同時に六芒星が刻まれた水晶に触れ、カリエンテの巣に入った。


 初めて入った巣の中は、火口の内部と言っていいだろう。


 ゴツゴツとした崖の所々から炎が噴き出し、溶かした鉄のような強いオレンジ色をしたマグマが幾重にも流れ落ちている。

 それを辿り上を見上げれば、黒い雲に覆われ空は見えなかった。

 そんなマグマが滴る最下層の中央で、見慣れた赤黒い色をした巨大なドラゴンが羽を休め眠ったように丸くなっていた。


 カリエンテが眠る場所に行くまでの道を探し、周囲を良く見回せばネジのような下り坂が目に付いた。


『うおおおおおおw カリエンテでかっ!』

『壮観だな』

『やっぱりこのゲームのグラフィックいいよねー』

『凄いな……しかも、でかいなw』

『ほえ~。凄く綺麗な場所なのです』

『これは綺麗でござるな』

『言葉がでないな……』


 私を含めクラメン達は初めて入ったメンバーが多い。そのせいか皆は、口々にその景観の美しさを湛え、カリエンテの大きさに驚いていた。

 既に見た事があるらしいロゼ達は、感想を述べる私達を放置する。


『そろそろ行くぞ―? 遠距離職は、茉鬼の位置に移動してくれ。

 残りは下に移動な』


 ロゼの声に反応するように茉鬼さんの姿を探せば、回廊の二段目にあたる崖の上にいた。

 遠い……。黒がその下に引くとしても高さ的に届きそうにない。個別バフ入れるとなると走ることになるのか……めんどう。


 先を行くロゼを追いつつ、道を下りロゼにいくつか質問する。


『カリエンテ、既にアクティブ?』

『否、攻撃つーかヘイト入れるまでは寝てる』

『ふーん。引いて来る奴大変そうだなw』

『シロ……引き役黒なw』

『これ、矢届くのかよ?』

『うん。ただ、弓が微妙なんだよなー。

 メテオは届かないからいいけど……』

『あそこって、メテオ届かないんだ?』

『回廊には、かからない』

『へ~。便利だな』

『届く。だからバリア使う感じだな』

『じゃぁ、なんであそこなんだよw』

『うーん。ぶっちゃけ、火口に居る奴らのデバフかかり難いからって理由なだけw』

『なるw』


 カリエンテは、黒がヘイトを入れない限り目覚めないようだ。

 そして、更に聞こうした疑問をシロが聞く。するとやはりと言うべき答えが、ロゼから返って来る。

 流石にこの広さで、あの高さからの攻撃は武器を選ぶようだ。

 

 茉鬼さんが立っている場所は、カリエンテの正面。

 補充組の待機場所である入り口から、一段降りた中央だ。

 そこがデバフを貰い難いから選んだのだろうが、私のプロテクト オブ カリエンテがある状態でデバフを気にする必要はない。


 と言う訳で……ネジ回廊を降りたすぐ左の崖の窪みにカリエンテを引いても問題は無いはず。

 そこを少し登った回廊に、遠距離を配置するようにすればバフも届くし面倒事がなくなる。

 

『んー。弓どうっすっかな~』

『ロゼ、引く場所と遠距離の位置変えて』

『シロ、長弓持ってる?』

『二本あるけど、1本火属性なんだよ……』

『なんで?』

『プロテクト オブ カリエンテあるから炎系のデバフは効かない。

 それと、高すぎて個別バフは確実に届かない。

 移動がめんどくさい。入れなくていいならいいけど……』

『まじか……俺、あの距離じゃ届かないw 下に降りようかな』

『火属性でもいいなら貸すぞ?w ダメ通らないだろうけどw』

『あぁ、そうか! renのバフがあるのか!!

 茉鬼、移動で~。ren何処?』

『ロゼ、少しだけ待って』

『了解』


 ロゼに口で説明するのは難しいと考えた私は、暇そうなティタと、どうせ行く予定の黒を使い移動先を教える事を考えついた。

 そこで、二人にクラチャでお願いをする。


[[ren] ティタ。

    ターゲットマーカーの所に行って

    黒、二個目ね]

[[ティタ] ほいw]

[[黒龍] おうw]


 めんどくせー。そう言われると思っていたが……意外と素直に言う事を聞いてくれる二人に感謝しつつ、PTチャットでロゼにティタと黒のとこに行くよう伝えた。


『説明、めんどう。茉鬼さんティタのいるとこ行って?

 黒のとこが嵌める場所』

『めんどくさがりすぎだろwww』

『renのチャット不精www』

『なんつーか……クラチャですら説明ないからなw』

『寡黙な人って言われてるけど、実はただのめんどくさがりw』

『あれだよね。皆妄想し過ぎなんだよw』

『ちょw お前めんどくさいからって理由で俺ら使うのかよw』

『そうそうw』

『renが、酷い……!』

『ティタ、相手が悪い諦めるにゃw』

『黒……いつものことなのですw』


 好き放題に言うクラメン達にカリエンテに試そうと思っていたトニトゥールスを、召喚してしまおうか激しく悩んで自分の失言のせいだと思い留まった。

 本当の理由は、ドラゴンvsドラゴンの方が見ていて面白いからだけど……。


 ブ―垂れるティタにターゲットマーカーを使い、場所を指し示す。ティタからクラチャで「わかった」と返事があった所でマーカーを消した。

 次に、黒の場所を示す。すると首を振りながら『了解』と返して来たのでこちらも問題なさそうだ。


 長いネジ坂を下り終わり、ロゼが諸注意をPTチャットで行う。

 それを聞きながら、黒が引く場所でバフをかけるための準備をする。


[[ren] キヨシ>出来る限り後ろの壁の傍に立って。

    さゆたん> 左に移動して]

[[キヨシ] ここか?]

[[ren] 見えないからw とにかく壁に寄って]

[[さゆたん] このあたりでしゅか?]

[[ren] もうちょい左]

[[さゆたん] この辺りでどうでしゅか?]

[[ren] k 試しに1個かけるから、教えて]

[[キヨシ] うぃw]

[[さゆたん] わかったでしゅw]


 そう伝えてから、全体用のバフをひとつかけた。

 

[[さゆたん] 問題ないでしゅ]

[[キヨシ] 入ったぜーw]

[[ren] さゆたん。その位置動かないで貰っていい?]

[[さゆたん] 分岐でしゅねw]

[[ren] y]

[[キヨシ] 俺はー?w]

[[ren] さゆたんより左に行かなければ好きにしていい]

[[キヨシ] わかったぜーw]


 さゆたんとキヨシに頼みバフの位置を決める。

 さゆたんの位置は、私がティタに示した位置から15メートルほど左だ。

 その位までなら、私が逆サイドに行ったとしてもバフは届くだろうと予想して移動して貰った。


 PTチャットでロゼの諸注意が終わり、私からもさゆたんより左に行かないよう注意を促した。


『バフ頼む』と言うロゼの声に全員が理解したものとして、バフをかける。

 バフが終わり、メインで攻撃するだろうクラメンと元クラメンにそれぞれカリエンテとウラガーンを追加した。

 そして、メイン盾の回復役である宮ネェ、チカにはフルークトゥスを追加しておいた。


『バフ確認』

『うちok』

『うちもー』

『こっちも大丈夫よん』

『うんじゃま引いて来るわw 道開けといてなw』

『俺が追走するねー。黒死んだら大和、タゲとってねw』

『わかった~w』


 バフが終わり、ロゼ・雪継・小春ちゃんが代表で返事を返す。

 その発言を受けて、引き役の黒と追走のティタ、そして黒が死んだ時用の大和が走りカリエンテに向かって行った。


 黒が窪みに入りやすいよう、近接のATKたちがサイドの壁に避ける。

 それを遠目に見ていたらしい黒から『カウントよろしく』と言う声がかかり、ロゼがカウントが始まった。


『カウント――5……4……3』


 いよいよカリエンテ討伐だ。遊びと言いながら意外と本気で討伐する気のクラメンたちの顔を見ながら、私もまた討伐するため出来る限りの事をしようと思った――。


足を運んで頂きありがとうございます。

ブックマークや感想・誤字報告を頂き、非常にありがたいです!


次回いよいよ、カリエンテ討伐開始です(進行遅くてすみません……。


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