珍問珍答シリーズ その2 「智恵子抄」に触発された短歌
おもしろい問題を出したら、おもしろい解答を引き出せるという実例の一つです。
昔、「国語表現」という時間がありました。選択制で、「英語」などに行った生徒もいましたが、いちばん勉強ぎらいな子が集まりやすい所として、私の所に14、5名の女子生徒が来ました。退屈しないよう、いろいろ工夫してみましたが、その例を、いくつか、紹介してみたいと思います。
詩や短歌、俳句を作ってみよう、という単元での取り組みとして、「智恵子抄」から、特に有名な詩6編を読み、それについて、定期考査で「一番印象の強かったのは、どの場面か、その場面の情景、または、その場にいた作者の気持ちを短歌にしてみなさい。いく首でもよい」という問題を出しました。
以下、解答の実例を紹介します。
年老いて変わらぬものがただ一つ あなたへの愛 今も昔も
あんなにも元気でいてたあの姿 思い出すたび 胸が痛いよ
想っても帰りはしない人なのに 想い出なおも めぐりめぐるよ
思い出すあなたの笑顔 今もなお 勇気づけられ ふと 空を見る
山を見て 今はなき人思い出す しらずしらずに涙流れる
最愛の妻の言葉を詩に書いて またよみがえる妻への愛が
この世にはいないあなたを追いつづけ 追いつづけても あなたはいない
亡き人の故郷思い懐かしや また行きたいな 智恵子と僕で
はっきりと最後に見せたあの笑顔 われの心の写真に残した
浜辺には海鳥たちがねだってる 貝がほしいと智恵子にたわむれ
人間の見栄や外聞捨て去って 裸のままで語る僕たち
たわむれる千鳥の陰が濃ゆくなり 笑う智恵子の影 遠ざかる
丘の上 肩を並べて見てたよね 故郷恋し 智恵子も恋し
ああ智恵子 最後に見せたお前の笑 われの体で生きつづけたり
レモンの木 見つめるたびに思い出す いとしき智恵子 今は亡き妻
海鳥と智恵子の姿 遠く見え 若いころの二人を想う
波の音 静かにひびき 美しき 追っては離れ 離れては追う
砂浜を一人飛び行く白い鳥 伸ばしてみたが 手を引っ込める
空青し あたたら山に光さし 川はキラキラ 安らぎ思う
死ぬまえの思い出ひたり涙ぐむ 信じられずに さがしつづける
口紅をつけなくても 君は きれいな女になって行くよ
ちょっと「智恵子抄」の解釈が、間違っているんじゃないの?的な面や、もう少し工夫すれば的な面はあります。けれども、あの子たちが、「智恵子抄」に感動したのは間違いない、という感想が、このデータを打ち込みながら、私自身、再確認できました。
次は、この子たちが書いた、「ある日の日記」を紹介するつもりです。