第22話 君よ 気高くあれ
【おことわり】
うつ状態で休職中の身の上であるため、精神科デイケアに通いつつ、規則正しい睡眠習慣と運動習慣の定着を心がけております。
その為、深夜帯に割くことが多かった執筆の時間を減らし、小説の更新頻度が輪をかけて遅くなっております。ご容赦ください。
【タイトルについて】
ガンダム関連の主題歌のタイトルつなぎでやってきましたが、今回はあの作品から。
「アーレア・ヤクタ・エスト。決闘を承認するッ!」
太陽が正中をわずかに過ぎた。平原に雪解けも靄が立ち込める。
冬空は雲無く冴えわたり、吹く北風もなく。
冬にしては麗かな日差しに、汗だくになった兵士たち。
溶けかけた雪と泥、流血で彩られた石畳の街道に、王都とテッサリア両軍の一番槍が相対する様に息を呑んでいた。
「大丈夫かな、大将」
「ひとりで数百人と斬ってたバケモンだ、ダイジョブさね」
「ノットンって……たしかテッサリアのお貴族様だろ? あーしらトンデモないヤツと戦争してたんだな……」
「うっさい! アンタら黙ってな。騎士様の決闘なんざ今日日めったにお目にかかれねーんだから」
戦場でも姦しき、アバズレと呼ばれるのも仕方がないシャルルの私兵たち。その誰もが固唾を呑んで見守る視線の先。
敵方の一番槍が名乗りを挙げる。
「インタミス・ノットン! テッサリア第一軍の筆頭騎兵長なり。亜人と見まがうその体躯、『竜殺し』と名高き、カロルス・アントニウス殿とお見受けするが、相違ないか?」
「そうだ! 俺がカロルス・アントニウスだ。一つ尋ねるが、こうして出てきたってことは、お前が此度の襲撃の頭目だな?」
『お前たちは反逆者である』、その意識を植えつける意味でも、シャルルはあえて言葉を選んで問う。
だが、彼が王国の筆頭の騎士であるのならば、これに相対するのもまた一流の騎士である。
「いかにも! 横暴なる王都軍を叩き潰さんと誓って軍を動かし、愚かにもすり潰した当人だ。その責を果たすため、貴殿に決闘を申し込みに来た!」
「良いだろう。受けて立ってやる」
舌戦では互いに一歩も引かず。
互いの軍馬が鼻息を鳴らし、わずかにたたらを踏んで間合いを見計らう。
手綱を握る反対の手には馬上槍。穂先はいずれも鋭く命を穿つ輝きを秘める。
ノットンの口許が動いたのを、シャルルは認めた。
「風よ、巻き狂え――愚者の慈愛、祝祭の血、人形の告解――ブリーズ・ドライヴ!」
瞬く間に、馬が駆けだす。
原理がわからない理外の加速で疾駆する騎馬に、彼は瞠目するほかない。
(な……ッ!?)
雷撃とともに衝撃が襲う。
心臓を穿つ一撃が突き立てられた氷嵐竜の鱗。
火花を散らし、長槍の切っ先が割れ砕ける。
見守る誰もが凍りついたなか、絶叫とともに、柄だけ残った槍を切り払った。
逆に目を見開いたノットンの首筋を薙いだ瞬間、見えない何かに食い込んだ。
よぎる既視感。剣の柄を握り込む。
弾き返されたその一瞬を逃したら、間違いなく、彼の手からすっ飛んでいた。
(お嬢が使ってた、あれだな)
相手は将。
さすが、有象無象の兵たちとはわけが違う。
ふたたび距離を取り、抜剣する敵将に向かって叫ぶ。
「まさに電光石火! だが、残念ながら俺の命には届かないようだな」
「心の臓を貫いたはずの穂先が消し飛ぶとは。貴殿の護りは城塞か何かか」
「俺が討伐した竜の鱗だ。そこらの安物の刃じゃあ傷一つつかん」
二つの驚きに舌を巻く。
軽口混じりの言葉が互いに出るのも当然だろう。
一つは尋常ならざるノットンの速さ。
もう一つはこの竜の装備の頑丈さだ。
「なるほど。では、槍で駄目ならば剣で殺らせていただく」
再び馬を駆るノットン。
その速さは先程ほどではない。しかし――
(また、何かあるに違いないが。今度はなんだ)
湧き上がった疑問は霧散する。
油に火をつけたように燃え上がる剣。それを打ち下ろす膂力。
その腕の太さから想像できない重い斬撃。
火花。火花。また火花。
主人であるソフィアから賜った一振りの守り刀は折れず、曲がらず、粘り強い。
霰のごとく降り続いた攻撃を、余すことなく受けきった。
「貴殿もよい剣をお持ちのようだ。並の剣なら、とうに折れている」
「ソフィア王女殿下から賜った逸品でな。じつによく斬れる。竜の腸だって掻っ捌いてみせた」
「それで我が首や腹を裂くか。面白い。刺し違えてでも、ここで討つ!」
「来いよ。やれるもんならやってみろ!」
鍵剣を持つ者。
竜を殺した者。
背負わされた称号の重圧を乗せて、火炎を帯びた剣と打ち合う剣戟。
互いの放つ殺気はひりつくほど熱い。
にもかかわらず、決め手を欠いた戦いが三分、五分、十分と続いた。
「なぜだッ!」
「どうした?」
それが、敵将の問いで唐突に打ち破られた。
肩で息をするノットンに、平然と受け答えする。それが気に障ったらしい。
「貴殿、よもや手を抜いているのではあるまいな?」
「バカ言うな! こちとら同じ釜の飯食った仲間を半分以上殺されてる。いくら切り刻んでも足りないくらいだぜ」
「ならば、なぜ互いの刃が届かぬ。資格者の持つという特殊な魔術とやらか?」
嘘偽りは何一つない。
「むしろ、厄介な術式を使ってるのはそちらだろう」
ここまでの戦いは舌戦も含めて互いに致命打がないのは事実だ。
シャルルはノットンを殺す気で剣を振るい、しかし、すべて阻まれている。
傷一つつけられていない理由は知っていた。
彼が身にまとう竜の装備は、彼を護る鉄壁の要塞である。それ以上でもそれ以下でもない。
では、傷一つつけられない理由は何か。彼が振るう剣はどうか。
ウーツ鋼で鍛造されたそれは、竜の内臓と堅固な皮膚を易々と切り裂いた。火の魔力を帯びた業物を受けても折れず、砕けない。しかし人間の女の柔肌ひとつ切り裂けないのはなぜか。
思索を巡らし、答えが出ないと断じると、馬を奔らせ、ノットンから距離を取る。背後から罵声が飛んでくるが、今は眼中にない。
「――カリス。ちょっといいか」
『いかがしましたか、騎士殿』
「さっきから敵の大将と斬り合ってるんだが、剣があと一歩届かないんだ」
『――届かない、とは?』
「風か何かで弾き返されてる感じがする。これさ、なんだと思う?」
風切る音にため息が混じった。
『魔術の基本は教えましたが、武術は私の専門外ですよ』
「まあまあ、そう言わずに。知識くらいはあるんだろ?」
『――おそらくは、風の魔術による防壁でしょう』
「だから、それはなんなんだ」
『物理的な攻撃を空気の壁で弾く魔術。と申し上げればおわかりで?』
「そいつは割と簡単な魔術か」
『テッサリアではどうか分かりかねますが、王国の兵士であれば過半が使えるでしょうね』
「なるほどな!」
魔術の使えない者は、一兵卒にすらなれない。
その理由がわかった。
『しかし――テッサリアの魔術と言うのは無駄が多いようですね。詠唱に無駄が多いし、そのわりに効果が長続きしない。そのうえ、そうした魔術をこうも乱発するとは……多少は疲労するものですが』
「どうにもまだまだ元気いっぱいで追っかけてきてるな。ここが街道の上だからか?」
『よく覚えておいでで。龍脈、すなわち地下に流れる魔力の真上ですから、効率は良いはずです』
「それでも消耗はする、そういう認識で良いんだな?」
『その通りです――それで、ずいぶん手こずっておいでのようですが、こちらも負傷者の対応で手一杯でして。おあいにく様、助太刀できそうにありません』
「気持ちはありがたいが、それでは騎士として面目が立たん。俺ひとりでやる」
『そうでしたか、これは失礼を――武門の習いとやらは詳しくありませんので』
「いろいろありがとな! そっちは任せたぞ」
インタミス・ノットンと名乗った敵将。
彼女もまたテッサリアの貴族ならば、防御術式が使えて当たり前と合点がいく。
(そうすると、剣で殺すのは無理ってことか……いや、待てよ。コイツは)
爆撃のような火槍が目の前に降り注ぐ。
これにもまた見覚えがあった。
耳をつんざく轟音に驚いた馬が跳ねる。
宙を舞った手綱にあと少し、手が届かない。
(――火の投槍。アグネアの得意技だな)
とっさに頭をかばった。
痛みはないが、もんどりうって受け身を取った。
癖のようなものだ。頭で考えずに、身体が勝手に動いた。
頭は次の手を考えていた。彼がこの世界で得た、彼なりの知識で。
(一か八か。賽の目は振ってみなけりゃわからん)
かろうじて上半身を起こすに留めた彼のもとに、馬蹄があった。
「敵に背を見せ逃げた挙句、馬に投げ捨てられるとは。竜殺しの名が泣くぞ」
「クッソ、いてぇな畜生……言うじゃねえか。俺がどんな目に遭って竜を殺したか、知りもしねえくせに」
痛そうに振る舞うシャルルが見上げた、ノットンの顔に満ちるのは侮蔑。
鼻息荒く、前肢を高く掲げ、振り下ろさんとする馬の影が立ちふさがる。
「敵前逃亡する臆病者の事情など、知る必要もない」
嘶いた軍馬の太い両脚が、全体重で彼を踏みつぶした――はずであった。
「俺が何も考えずに逃げ回ったと思ったか?」
わずかな思考の乱れ。
その隙間を剣で一閃。
崩れ落ちる馬。乗り手が背中を打つと同時。
掛かり跳ぶ。斬りかかる。また、弾かれる。
虚空を舞った剣が弧を描き、大地に突き刺さると同時。ノットンの腹部にずぶりと彼の脛がめり込んだ。
「ガハッ――!!」
豪快に吹き飛び、雪煙を立てて転がる身体。
風の壁など無かったように、蹴りが入った。
「やっぱり! そういうことかッ」
風をつかさどる竜の装備の前には、風の壁など有って無いようなモノだと。そう踏んで、徒手空拳に切り替えた。
あれほど破れなかった風の抵抗をまったく受けなかった。
竜の装備は最大の防御にして、最大の攻撃たり得る確信を掴んだ瞬間だった。
骨や内臓の一つや二つ、破壊せしめたか。にもかかわらず、ノットンは血反吐を吐き、立ち上がった。ただ者でない。
「ぐッ……騎士の戦いに拳を持ち込むとは……この、野蛮人が――絶対に殺すッ!! 殺してやるッ!!!」
血走った眼で、すかさず絶叫する敵将。
「鮮烈なる物! 賢者の蒙昧、晩餐の骨、葬列の喚起――ファイア・クラッカー!」
両手に握りしめた火の玉を投げつけた。
枯れ草が火炎地獄に変わる瞬間、敵の姿を見失った。
「ここで果てよ、竜殺しッッッ!!!」
爆炎に目が眩む中、背後からの袈裟斬り。
脳天を砕かれる未来が「見え」て、身体をねじった。
紙一重で頭部への直撃を避けて、肩から背中にかけて斬られた。
(今の喰らってたら――確実に死んでたな)
破滅的な未来を予測する異能。
きっと死ぬまで、この悪夢を見る羽目になる。
だが、ここで死ねば――いつか見た悪夢が今、現実になる。
(俺の生死が、ここにいるみんなの命運を決める。絶対、死ぬわけにいかねえ)
背負ったモノが重すぎるぜ!
毒づき、殺気を背に疾走し、剣の間合いから脱した。
「なぜだ! なぜ死なない!!」
「死ねと言われて、てめーはおとなしく死ぬのかよッ!!」
また駆けて、守り刀を拾う。
即座に打ち下ろされた燃える剣を受け流す。
足払いで、激昂するノットンの体勢を崩す。
飛び掛かった瞬間、拳で頬を殴られた。
「痛ッてェ! コイツは効くな」
「そうかッ! 弱点は頭だなッ」
首筋を削がれる未来が「見え」て、全力で後ろに跳んだ。
燃える剣が目の前で円弧を描く。武者震いが走った。
執拗に首から上を狙う剣筋に手も足も出せない。
獲物に追いすがる狩人の目がぎらついた。
「さっきまでの威勢はどうした。弱点を握られたのがそんなに恐ろしいか?」
「グダグダとやかましいな。この野郎!」
「そんな勢いで魔力を使うと、そろそろ魔力枯渇になるぞ。貴様の詰みだッ」
あ――。
思わぬ勝ち筋が閃いた。
「カリスッ!」
絶叫。閃光。爆発音。
それらに間延びした応答が混じる。
『――今度はなんですか? 騎士殿』
「俺がいる一帯の魔力量を可視化できないか? 人や動物とかも含めてな」
『また無茶を仰る……うーん――』
カリスが思索を巡らせているあいだ――機動甲冑でなく生身の状態で、無数の剣筋を凌ぐ。守り刀で流し、籠手で受ける。
鉄火場で、それも決闘のさなかに他のことを考えるなど、ばかげている。しかし、それをやるだけの価値があると見込んだ。
頭以外ならどこを斬られてもいい。そう割り切って、首から上を守った。極振りの守りの中、答えを渋る小賢者に迫った。
「できるか。できないか。どっちだ!?」
『できなくはありませんが。具体的にどうなさりたいので?』
「濃淡を色で表現して重ねて見せてくれると、すげー助かる」
無茶を言ってる自覚はある。
カリスへの期待が過大かもしれないと。
わずかな沈黙。それは思いのほか長い。そう思わせるほど、ノットンは加速する。四方八方から彼を滅多打ちにする。
『――わかりました。ではそのように。ドラヴァイデン、やってください』
瞬時に、視界に別の色がついた。
特徴的な赤い色がノットンと重なった。
「よしッ!!!」
ノットンの色はやや濃い耀き。
それに比べ、彼自身の耀きは非常に濃い。
お互いの光彩の強さを星に譬えるなら、天狼星と明けの明星か――それ以上の開きがあった。
『どうでしょうか?』
「ばっちりだ。敵の魔力もよく見える。助かった!」
そして、通信を終えて気づく。
この周囲の色は、非常に薄い。
(ここ、魔力の量が薄いのか!)
街道筋には非常に濃い色がついている。
そこに陣取る兵士たちもそこそこ濃い。
馬で逃げ回っている間に色が薄い――つまり、魔力の量が少ない原野に迷い込んだらしい。
ノットンの口にした意味がようやく解った。
(ジリ貧なのは――相手のほうってことだ)
つまり、追い詰められたふりをすればよい。
首から上を斬られないように、守り刀を上段に構え、守勢に回る。
絶え間ない剣戟。飛び散る花火。鋼の金切り声が耳に刺さる。
「その忌々しい魔力結界、まったく破れん。実に面倒だ」
「へへっ、降参か。クソ野郎」
「まさか! しかし、ちぐはぐだな」
「――何が言いたい?」
「それほど堅固な護りがあるのに、なぜ頭だけは弱い? これほど頑丈な剣があるにもかかわらず、なぜ剣で斬ってこない?」
「知るかバカ! 余計な考え事してると死ぬぞッ」
「弱い獣ほどよく吠える――先に力尽きるのは、貴様だ!!」
一方的に続く打ち下ろし。
剣が折れないのが奇蹟だ。
時間が経つのを忘れて、ひたすら剣を受けるに徹する。
どれほどの時間が経ったのか。
ノットンの息が上がっている。魔力の濃さも明らかに薄まっていた。
「おかしい――こんな無尽蔵の魔力がどこにある?」
汗が滴る。
焦燥を隠せない女が叫ぶ。
「莫大な結界を維持して、とっくに魔力枯渇を起こしているはずだ! 本物の竜でもない限り」
「そういうお前、無理してるよな。魔力切れが近いんじゃねえのか?」
図星。凍りついた顔が憎しみで覆い尽くされる。
ノットンの左手に激しい光――火の魔力を見た。
「クソッ。これで仕留め――!」
「ウラアアアアアアァッ!!!」
絶叫を絶叫で上書く。
一歩踏み込む。跳ぶ。
火の玉に零距離で飛び込んで、膝を蹴り上げる。
炸裂する光に目が眩んでも、魔力が「見え」ていた。
ノットンの顎を打ち据え、脳を揺らす。
確かな一撃が入った。
ぐったりと膝をつき、意識を手放しかけたノットンが踏みとどまる。
「――うッ……ガッ……ッッ!?」
「誰だってそうさ――首から上が弱点だってのはな」
ノットンの意識が揺らいだ一瞬。
シャルルはその背後に回り込んでいた。
そして、右腕でノットンの首を絞めていた。左腕は右手首に添えるだけ。
ノットンの呼吸、そして血流を止める。致命的な隙を彼は逃さなかった。
「王は途方に暮れた――待ってたぜェ、この“瞬間”をよォ……ッ!!」
いくら魔術を使えても、首を絞められたら人は死ぬ。脳が頭部にない人外でもない限り、人体はそうできているはずである――と。
実に泥臭い。美学のかけらもない。
しかし、殺意さえあれば誰にだってできる人殺しのやり方であった。
「ガ……ッ!?」
「ぐっ……コイツはよく暴れる鶏だ。簡単に絞め殺されてはくれねえか」
「ア……アア……グアッ!!!」
じたばたと暴れるノットン。
火を握った両手が彼の頭を引っかき回す。無数の傷と火傷が折り重なる。それでもかまわず、獲物を捕らえた大蛇のごとく絞めあげているのは、ただの腕ではない。
それは竜の爪先にも等しかった。いくら撥ね退けようとしても無駄である。抵抗が弱まっていき、完全に止むまで、彼は微塵も力を緩めなかった。
テッサリアが生んだ不世出の将に、投了を宣言することも許さなかった。
やがて、魔力の耀きが完全に失われた。かくして、インタミス・ノットンの精魂は雪の荒野で尽き果てた。
「ひと思いに殺せなかった。苦しみを長引かせたのは本意じゃない。俺が勝つには、こうするしかなかった」
天を仰いだ。神に祈りを捧げた。
雲の隙間から「天使の階段」が降り注ぐ。
その光にきらめいた守り刀を鞘に納めて、捧げ持った。
そして、脈拍が止まった傑物の体躯を掴み、高々と掲げ、静寂を突き破った。
「勝敗は決した! テッサリアのインタミス・ノットンは、このカロルス・アントニウスが討ち取ったッ!!!」
腹の底からの叫び。
それが遠く離れた陣地へと伝播した。
「「「大将ォォォォッ――!!!」」」
感涙とともに、勝者に呼応する鬨の声。
統率者を喪い、散り散りとなった敗残の蹄音。
敵将の遺体を引きずってきたシャルルに、兵士たちが駆け寄っていく。
「ちゃんと勝ったぞ。どうだ!」
「うっわ、ひっでぇ顔! 顔も焼けただれて、こりゃ美顔が台無しだ」
「うるせー! 持てる総て使ってでも、最後に勝ちゃあいいんだよ!」
原野に響き渡った音をかき消すかのように、再び風が強まり始めた。
束の間の晴れ間は、死闘の幕引きと同時に、雪雲に閉ざされてゆく。
お読みくださり、ありがとうございました。
本来、なろうやカクヨムのような「毎日更新」が当たり前のように行われているサイトでは、本作のように執筆コストが高く、かつ作者が精神疾患を抱えている状態での執筆活動は、向いていないのかもしれません。
ここ最近まで、思い通りにならない私自身が惨めでしょうがなく思っていましたが、
「私の書く作品は、『人様のため』は二次的動機に過ぎない」
「一次的な動機は、『自分の箱庭』として世界を作り、表現すること」
なのだと割り切ることにいたしました。
多少のフォローやブクマがはがれるなど、最初からどうでもよいのだと。
執着を捨て、精神的にラクになろう。その方が、よりよい箱庭ができるのだと。
その方が、執筆に疲れ果ててエタることなく、完結にいたる道のりにより近いのだと。
私は私の歩みで、ゴールを目指します。
時に立ち止まることがあるかもしれないけれど、ゴールを目指します。
ご声援を賜る機会がありますと、それが得難い給水になって、ゴールを目指す助けになります。
これからも応援のほど、よろしくお願いいたします。




