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レジスタンス  作者: 猪仲
時を超える研究
5/15

極秘作戦

【Г1059/4/5】


時間跳躍機の改良と並行して新しいRM剣の作っていたアンドレイだが、先にRM剣のほうが完成していた。新しいRM剣は刃が二重構造になっており、スキルを使用したい場合はスイッチを切り替えることで刃の内側から電気が流れる仕組みだ。


あとはスキルで電気を操作して刃を高周波振動させればおそらく何でも斬ることができる。実験はしていないので確証はない。



時間跳躍機のほうはというと、どうしても三環機の巨大化がうまくいかない。素材が足りないとか材質が合わないとかそういう理由ではない。一度サイズを大きくして試したことがあったがなぜか時間跳躍をすることはできなかった。


その原因がわからない限り装置の巨大化はできない。やはり装置自体を転送する方法しかないのかもしれないが、そうなると根本的な見直しをしなければならず相当な時間を要求される。やはりタイムマシンより巨大なものを転送するのは無理なのだろうか。



そう思いながらも一応改良努力をするアンドレイだったが、彼が得意なのは発明でありそこからより良くする改良という分野は苦手である。逆に改良が得意なのはシガールだ、もうあいつに丸投げしたほうがいいんじゃないだろうか?



「シガール、時間跳躍機の改良だが俺にはどうしてもできない。技術的にな・・・」


「お前の悪い癖じゃないか、いい加減発明じゃなくて改良という基本的なことをできるようになったらどうなんだ・・・?」


「いや、改良が苦手ってのももちろんあるんだが・・・」


「まだ親父がおかしいとか言ってるのか?」


「ああ、どうも気がかりでならないんだ・・・」


「お前な、親父がお前になにかしたわけじゃないだろ?ただ少し強く言われただけでそんな気にするなよ・・・」


「まあ、それもそうだな・・・」



言われてみたらそんな気もする。少し気にしすぎなんだけかもしれない、どちらにしろ時間跳躍機の改良はかなりの時間がかかることはわかっている。とりあえずその報告に行くことにした。



オニヒトデ要塞に到着し、国防軍総司令部へ到着したアンドレイだがなにかいつもと様子が違う事に気がついた。前来たときよりセキュリティが頑丈になっており、顔パスで部屋の前までいけなくなってる。



「技研のアンドレイ・ワーグナーだ、司令長官に会いに来た」


「アンドレイ・ワーグナーさんですね、少々お待ちください」


「ああ、早くしてくれよ」


「確認しました。司令長官から伝言を預かっておりますので読みます。アンドレイが訪ねてきた場合に伝えてほしい、時間跳躍機の改良を早期に行うこと。以上です」


「いや、その件について話に来たんだが・・・電話でもいいから対応できないのか?」


「申し訳ありません、現在その対応ができないことになっています」


「仕方がない、エドワルト・ワーグナーにつないでくれ」


「かしこまりました、今から回線をつなぎます」



どうやら陸軍大将には簡単に電話連絡できるらしい。オニヒトデ要塞の中でも総司令部はセキュリティが硬いため、周辺で働く人間は携帯デバイスを持つことを禁じられてる。固定電話で連絡するしか手段がないのだ。



「親父か?アルフォードにコンタクトが取れない、そっちでなんとかできないか?」


「すまない、実は俺たち大将クラスもまったく同じ対応をされていて困っているところだ」


「え?国防はどうするんだよ」


「それが、司令部を介さずに各軍で臨機応変に対応せよと指令が出ているんだ」


「総司令部はどうしたんだ?」


「俺にもわからん、分かり次第連絡する」



一体何が起きているのかまったく状況が読めなくなってしまった。今までこんなことがあったのかどうかはわからないが、最近ではこういうことにはなっていない。国防に対応できないほどの何かがあったのだろうか?



このことを報告にシガールのところへ向かった。



「シガール、総司令部が孤立状態になってたぞ、お前なにか知ってるか?」


「へ?孤立状態ってどういうことだよ」



さっきのオニヒトデ要塞、親父との電話を全てシガールに伝えた。シガールは少し考え込んでから冷静に告げる。



「冷静に聞け、ほぼ確実に時間跳躍機が原因だ。この装置がどれだけのものなのかお前は理解できていないから言っておくが、時間を制すということは世界を制すのと同義なのは理解できるか?」


「できん」


「だろうな、お前はそういうこと考えたことないもんな。いいか?未来を見ることができるだけならともかく、実際に行って強引に結果を捻じ曲げることだってできるんだ」


「それがどうかしたのか?アルフォードがそんなことするとは思えないんだが」


「もし第五次世界大戦が起きたとする。未来を変えられる力を持っているヴァストークはどうする?親父の性格を無視しろ」



「そりゃ有利に進められるなんてもんじゃないだろ、10年後あたりに飛んでから戦況がどうなったのかを全て記録してそれを叩けば簡単に勝利できる」


「それともう一つ、未来技術あったよな?確かに使える技術ばかりだが革新的と言えるほどのものは存在しなかった。これは過去の俺たちに渡せなかった理由があったとするならどうだ」



「もちろん取りに行くだろうな・・・・まてよ」


「気がついたか?」



「総司令部にハッキングする、シガール手伝ってくれるか?」


「いいぜ、僕もこんなのまっぴらだからな」



二人はレベル5区画から出て、ヴァストークの中枢とも言える中央データサーバーへ向かった。


首都の全軍事機能、政治的機能、セキュリティ機能など全てを管理している場所でヴァストークの最重要拠点の一つである。何百台というスーパーコンピューターを直列で配置しており、どんな複雑な計算もあっという間に処理できる。



データサーバーの入り口に到着した。ここはノルデン鉱山の地下に存在する場所である。入り口は鉱山の事務所のような場所で、ぱっと見ただのプレハブである。



「技研副所長のシガール・エルディアだ、サーバーの点検に来た」


「シガール様、かしこまりました。セキュリティを解除します」



ロックが解除され、扉が開く。すると地下に進む階段があり、少し行ったところにエレベーターがあった。ここまではプレハブから少し地下に進み洞窟のような空間が広がっている。エレベーターは洞窟風ではなく、普通のエレベーターだ。



エレベーターで地下に降りる、データサーバーはここから1200m地下にあり、エレベーターは普通のものに見えるが超高速エレベーターだ。よく見るとセントリーガンが設置されている。監視カメラで怪しい人物が写ったら作動する仕組みのようだ。



扉が開き、目の前に巨大な空間が広がった。直径300mほどの球状の空間に巨大なサーバー群が並んでいる。お目当ての総司令部のサーバーはもう少し先にある。



「アンドレイここだ、コードを差し込んでアクセスしろ」


「任せろ、フハハハハ!俺に突破できないセキュリティはない、さらけ出してもらうぞ!!」



国防軍のデータサーバーはここからオニヒトデ要塞に直接つながっている。独自の暗号技術を用いているため、途中の回線からデータを拾うことができても解読することは不可能だ。通常はこのデータサーバーに侵入することは不可能であるため、ここまで入れば解析はあっという間である。



「アクセス完了!さて、お前らの計画を見させてもらうぜ!」





国防軍総司令部発案、極秘作戦「レジスタンス」


本計画は外部漏洩を防ぐために全ての軍、並びに技研への情報は遮断する。



■作戦概要


フェイズ1

時間跳躍機を用いて、未来の王族の行動を把握する。王立警務部隊の介入を防ぐために最高のタイミングを得る必要があるため、1年監視する。タイミングを掴み次第王族全てを暗殺し、革命を達成する。新たにヴァストーク連邦帝国を建国する。



フェイズ2

時間跳躍機を用いて、1000年後の日本国に攻め込み技術者を捕縛し、戦艦を拿捕する。未来技術は想像以上に進んでおり、以前の実験で持ち込まれたもの以上の成果を上げることを目標とする。



フェイズ3

1000年後の技術や戦艦、宇宙軍を用いて第五次世界大戦を引き起こす。ヴァストークの領土を惑星全域に拡大させ、他国を全て滅ぼす。



フェイズ4

異星人やスキルクラフトを教育し、軍隊を増強する。増強でき次第他の惑星へ攻め込み、さらに領地を拡張する。



以上が作戦の概要である。作戦実行の肝である時間跳躍機の改良を早急に終わらせる必要があるため、手段を検討中。



以上...




「な・・・なんだこれ・・・」


「ぱっと見革命プランってところだな、親父なんてこと考えてやがる」


「俺が時間跳躍機を作ったせいでこうなったっていうのか・・・どうなんだ?シガール!!」


「あまり言いたくはないがきっかけには間違いなくなっているな、王国反対の派閥はいつも一定数居たからな」


「たった一つの研究で王様が死んで戦争も起きるってことか・・・?」


「時を超えるってそういうことだ、流石の僕もここまでのことは考えていなかったけどな」


「止めないと・・・」


「どうやって止めるんだ?てかお前そんな正義感なんて持ち合わせていたんだな」


「これは俺の責任だ、俺の研究で起きようとしているなら全力で阻止してやる」


「離反行為になるぞ、それでもいいのか?」


「かまうものか、もう十分研究はしたしな」


「そうか、安心したよ。僕も全力でサポートしよう」


「お前こそいいのかよ」


「僕はサポートに回るだけだ、技研を離れる気もないし時間跳躍機の改良は僕がやっておく」


「・・・すまない」



データサーバーを離れ、技研に戻った。研究室には山本が難しそうな顔でこちらを見ていた。どうやら一人で時間跳躍機の調整をしていたようだ。



「おめぇさんら二人してどこにいってたんでぃ」


「ああ、ちょっとな」


「山本さん、この研究は僕が引き継ぎます」


「どういうことで」


「山本、お前を1000年の日本に送り返す。ついたら時間跳躍機を破壊してくれ」


「何を言ってるんだアンドレイ君?」


「この国は時間を超える力に溺れたようなんだ、俺はこれを阻止しないといけない」


「この研究はかなり有意義だが危険だからなぁ、わかってはいたんだがよぉ」


「研究者なら未知の探求には逆らえない、だろ?」


「わかってるじゃねぇか、そのとおりでい」


「時間がない、1年もかからず行動を起こされるかもしれない。今から施設に向かって電源を入れてくる。3日後に飛ぶぞ」



山本を師匠と仰いでいるリナには悪いが、状況が状況だ。王族の暗殺を止めるのも大事だが、何より日本国と戦争状態になるわけにはいかない。時間跳躍機で移動しない限り日本国と接触することができない以上こうするのがベストなのだ。


あとは時間軸を固定して破壊前には飛べないように仕込むことができれば諦めざる負えなくなるだろう。そうアンドレイは祈りながらツァイトヴェトリーブへ向かった。



【Г1059/4/8】


時間跳躍機の電力チャージは終わった頃だろう、あとは山本をツァイトヴェトリーブへ連れていき、時間跳躍機を起動するだけだ。山本は現在技研のレベル5区画にいる、アンドレイは護衛のためにリナをそばに置いていた。


リナもいつもならじゃれてくるのだが、アンドレイの真剣な顔に真面目に対応してくれた。新しいRM剣が実戦に使われなければいいのだが、そんなことを気にかける余裕は今のアンドレイにはなかった。



「時間だ、リナ行くぞ」


「わかった」



まず向かうのは技研だ、レベル3からの抜け穴を利用する。こんなことをするために作ったものではなかったが、作っておいてよかったと心底思った。シガールはこの間に時間跳躍機のセッティングをしている。


レベル3まではアンドレイは顔パスで通れる、レベル3の小会議室でリモコンを操作し、地下通路を出現させた。そのままレベル5区画へ侵入し、山本と合流することができた。



「山本!待たせたな、いくぞ」


「アンドレイ君、よろしく頼むぁ」


「師匠、私が援護します。いざというときは背中を任せてください!」


「我が弟子ながら心強いねぇ、さぁいくぞ!」



再びレベル3への隠し通路を通り、技研を出た。流石に異変に気がついたのか国防軍が巡回し始めているようだ。会敵は時間の問題であるならば、こちらから攻めるのみである。アンドレイは自動拳銃とRM剣を手に国防軍の警備網に突入した。



アンドレイには秘策がある。右目を隠していた髪を髪留めで止めて右目を露わにする。右目は青く、リナと同じく蛇目の瞳孔だ。アンドレイもスキルクラフトであり、スキルは「未来予知」40秒先の未来を事前に見ることができ、五通りの未来のうち、次の行動によって選ぶことができる。



ただし、右目を完全に露わにする必要があるのと、常にスキルが発動したままなので基本的に髪で隠していたのだ。警備網に突入して、自動拳銃に装填していた麻痺弾を兵士に打ち込み、ツァイトヴェトリーブへ急ぐ。


今度は装甲車と歩兵小隊が二部隊現れた。山本とリナが前に出て、刀とRM剣を構える。


「いくぞ、我が弟子よ」


「はい」


「山本流、螺旋琉!」




空中の全く同じ位置を高速で2回斬ったかと思うと、突然空間からかまいたちのような斬撃が装甲車のほうへ向かっていった。これは俗にいう真空斬りというものだろうか?装甲車は真っ二つに切断され、中に居た人間は無事だったようだが、恐怖に慄き逃げていった。


歩兵の二部隊も何が起きたかわからず、棒立ちになっていた。それを麻痺弾でアンドレイが仕留める。山本吾一、コイツはどれだけ剣術を鍛えてきたんだ。



ツァイトヴェトリーブまであと200mというところで、今度は戦車と装甲車が現れた。あれはアンドレイが作った戦車で、RMの装甲が施されている。そう簡単に破壊できる代物ではないが、アンドレイは秘策があった。


「リナ、戦車の後方にバッテリーがある、操作して破壊しろ!」


「わかった!」



こんなところでリナのスキルが役に立つとは思っていなかった。ヴァストークの戦車は電気で可動している。バッテリーをやられればいくら装甲が硬かろうが関係ない。もちろん実戦でもこうならないようにバッテリーは最重要と一番装甲が厚いところに存在している。


リナのスキルは場所さえわかれば電気を操作することが可能であるために装甲は無意味、バッテリーが暴走し、戦車は行動不能になった。装甲車は山本がさっきの技を使い再び真っ二つにしてた。



ツァイトヴェトリーブに到着し、シガールと合流した。シガールは転送装置を使って技研に戻った。彼を関係者と悟らせてはいけない、だからこそ転送装置でこっそりと出ていかずに地上で一暴れしたのだ。ここでアンドレイのスキルはクールタイムに突入し、しばらく使用不能になっていた。



「タイムマシンに乗り込め!早くしないと本隊が来る!」


「アンドレイ君、世話になったなぁ。いつかまた会おう」


「ああ、じゃあな!」



<<電力貯蓄率95%、時間跳躍機メインシステム起動>>


<<時空アンカーの転送先情報を読み取りました>>



「あと5%か、時間稼ぎをしなければ」


「兄、新しいRM剣の機能使う?」


「わからん、何があるかわからないが施設を破壊することはないだろうからここで迎え撃つぞ」


「え?ちょっと私なんていったか聞いてた?使うの?使わないの?」



<<電力貯蓄率100%、三環機回転開始>>


<<作業員、研究員は退避してください>>



「そこまでだ、アンドレイ」



聞き慣れた声、アルフォードだ。前線に出てくるとは思っていなかったが、ついに姿を表したのだ。手には回転拳銃を持ち、アンドレイに銃口を向けている。周りは国防軍の特殊部隊が囲んでおり、二人で応戦するのは不可能だ。



「お前に何があったのかはわからないが、勝手はやめてもらおうか」


「貴様ら総司令部の作戦、俺は見たぞ」


「極秘資料にアクセスしていたのか、生かしておく価値はほとんどなくなったな」


「アルフォード、お前なんでそんなことを考えた!そんな人間だったのか?俺たちを騙すためにずっとあんないい性格していたのか?どうなんだ!!」


「言う必要はない、今すぐ時間跳躍機を停止させろ!」


「断る!リナ、お前は逃げてろ!」


「でも、兄はどうするのさ!!」


「邪魔だ!もういい、死んで後悔しろ!」



アルフォードが引き金を引いた。銃声が鳴り響きアンドレイに命中したかと思った瞬間、一人誰かがアンドレイに倒れ込んだ。



「・・・・・・・・・え?」


「ま、間に合った・・・、お兄ちゃんから聞いてたんだ・・・」


「お、おい・・・ナビ・・・?」



そこには血まみれになったナビがいた。銃弾を自分の体を盾にアンドレイを守ったのだ。致命傷なのか、それともまだ助かるのか、そんなことを確認する暇もなく、二人はタイムマシンに瞬間移動させられた。



「あにぃ、じゃあね・・・あとは頼んだよ」


「ナビ!おい!!何をしているんだ!おい!!!」


<<実行コマンドを確認しました、時間跳躍機起動します>>


ナビが時間跳躍機のコンソールにあるレバーを力いっぱい引き上げて時間跳躍機が作動した。タイムマシンが光に包まれ、完全に姿を消した。

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