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レジスタンス  作者: 猪仲
時を超える研究
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時を超える研究

【Г1058/8/22】

重厚に見える白い壁、地下室のような暗がりのとても広い空間で若い男が一人、研究成果を発表していた。少し背が高めで真紅色のTシャツに白衣を羽織り、黒髪で片目が隠れている。


男は言った。



「この国は古代技術に頼りすぎている!」



この国、ヴァストーク連邦王国は古代技術をリバースエンジニアリングしてなりたっていた。


たとえば、錬金術という技術。これは物質エネルギーという物質が必ず持っている物理原則とは異なるエネルギーを使い、様々な物質に変化させる技術である。


これは石なら物質エネルギー(EMC)1、鉄なら128EMCといった具合で決まった数字になっており、石128個分で鉄1個に変換できる。


ゴミから貴重資源にすることができる手段として非常に重要なものになっている。



「技術発展しているとこの状況で言うことはできないと俺は思う」


「そこで古代技術由来ではない、俺が考えついた最高の研究をここで発表する」



自身に満ちた表情で発言した男はさっきまで喋っていた端末がある場所をゆっくりと歩き壇上へ向かっていった。



「今からこの銃に入った弾丸を、10秒後へ転送する!」



小さめの回転式拳銃を持ちながら男は発言した。壇上で弾丸を銃に装填する。わざわざ古い回転式を選んだ理由は細工をしていないというのを誇張したいのだろう。


10秒後へ転送するということは時間跳躍するということだ。


10秒間とはいえ、時間を移動することはできるのだろうか。



彼の名前はアンドレイ・ワーグナー、ヴァストーク国防軍技術研究所の研究員である。軍事研究やリバースエンジニアリングを主に研究している、セキュリティレベル5の主任研究者である。



薄暗い巨大な実験室の中央部にあったスライドを移していたホワイトスクリーンが上へ収納され、下から3つの輪のような機械が浮き上がってきた。


3つの輪はそれぞれ大きさが異なっており、それぞれ違う速度や回転向きで回り始めたが、均等に距離が離れており、2つは連動しているかにも見える。



3つの輪に青白い閃光が走ったとき、アンドレイはいった。


「括目して見ろ、歴史が動く瞬間だ!!」



拳銃の撃鉄を起こし、輪の中心部を狙った。弾丸が発射され輪を通過した瞬間、銃弾が消えた。


回転式の拳銃とはいえ、拳銃であり速度もそこそこあるが風切り音までは聞こえないため、発射されたと同時に銃弾が姿を消したようにも見えた。



「5,4,3,2,1、着弾!」




アンドレイが言ったタイミング通り、弾丸が再び出現した。そのまま3つの輪の後ろにあるターゲットに命中した。



「今はこの程度しかできない」


「だが、今に20秒、1分、1時間、そして何日、何年と伸ばすこともできるはずだ」


「この研究を進めようと思う、是非予算を増やしてほしい」



この研究成果の発表は予算を獲得するためにアンドレイが仕組んだものだ。ヴァストークでは研究には力を入れている方であり、有望だとわかるとかなりの予算が降りるのはよくある話である。


特にレベル5の研究は重要と認識されており、大御所が来ることは稀ではない。



この発表会にも、技研の所長、副所長を初め、王国議会のお偉いさんも来ていたようだ。時間に干渉する技術に参加者は全員唖然としていた。信じないもの、信じるものいるだろう。


参加者の大半は唖然としたあと拍手を送り、目を輝かせていたように見えた。



発表が終わり、壇上から降りた先に一人の研究者のような若者がいた。



「アンドレイ、研究の成果見せてもらったよ」


「シガールか、冷やかしに来たわけじゃないようだな」


アンドレイがシガールと呼ぶこの男は、背が低く、そのうえ女性的な顔立ちをしている。青いワイシャツに黒いスキニーパンツ。純白の白衣を着こなしている。


眼鏡越しに鋭い眼光が見えた。



「またすごい発明をしたんだな、僕も負けてはいられない」


「まあな、お前もこの間学会向けに研究成果上げてたけど

いつ実用化できるんだ?」


「まだ改良の余地はあるが、すぐにでも実機を出せるレベルには来てる」



シガールは技研の副所長で、当然セキュリティレベルは5である。


セキュリティレベルとは、レベル1から3が一般研究員も開示可能な情報レベル4が軍事機密、レベル5は国家がらみで秘匿している技術にかかっているプロテクトである。技研の研究員はそれぞれレベルによって研究している分野が異なる。


特にレベル5の研究は特に機密とされており、表向きには存在すらなかったことにされているほどだ。



「明日にでも予算が下りるはずだ、今のうちに資料のブラッシュアップしとけよ」


「資料か、まずは紙に起こすところからだな・・・」


「お前はいつも思うがどうやって設計図や実験記録を記録せずに研究や発明ができるんだ・・・」



やるぞー!と言わんばかりに勢いよく走り出したアンドレイとは対称的にシガールはゆっくりと実験室を出ていった。



【Г1058/8/23】


先日の研究発表後、国家上層部や軍幹部たちはあっさりと予算の増強を決めた。時間を操ることができれば文字通り最強になれると考えるのは当然の話である。


予算の増強が決まったことをシガールが伝えにアンドレイの研究室へ向かっていた。



無機質で窓もない永遠と続くような錯覚に陥りそうな通路。天井には太いパイプが伸びている。


そんな長い通路を抜けると黒い空間にぶつかった。25mプールほどの大きさの空間に赤い照明が転々とついており中央にコンソールらしきものがある。シガールはコンソールに手をかざし、カードキーを差し込んだ。



----- 002、シガール・エルディア

----- ヴァストーク国防軍技術研究所副所長

----- 認証、レベル5区画へのロックを解除します



「毎度これをやるのは面倒くさいな、なんとかしたいが・・・」



重厚な音とともになにもないと思った黒い空間から白い光が漏れ出す。少し明るくなった周りを見ると、無数にセントリーガンが並んでいた。特に気にする様子もなく、黒い短髪をかきながら開いたドアの向こうへ移動した。



レベル5研究区画、国家機密しかない場所である。しかし、先程の廊下とは違いユーモアな空間が広がっている。


ある研究室はおもちゃやゲームがずらりと並び

ある研究室は生物かもわからない標本が並び


どうやら研究者の趣味によって研究室をいじることを許されているようだった。



シガールはアンドレイの研究室に到着し、ドアを開けた。


「アンドレイ、時間跳躍機の予算だが、無事に降りたー・・・・ぞ?」


「おー、シガール!いいところにきたな!」



スパナを片手に、意気揚々と現れたのはアンドレイだった。目の前には先日の時間跳躍機を小さくしたような機械があった。特に3つの輪はかなり小型化されており、小さなものくらいしか通りそういない。



「お前、まさかとは思うが」


「ああ。予算が承認される確信があったからな、先に金を使わせてもらったんだ」



堂々と資金横領を宣言するアンドレイにシガールはため息を付きながら言った。



「お前な、予算降りなかったらどうするつもりだったんだよ」


「そうだな、レベル5の情報を他の国にでも売っぱらうか」


「冗談でもそれだけはやめてくれ・・・・」



レベル5の研究の中には錬金術があり、希少物質が希少でなくなり、世界の金銭のバランスが確実に崩壊するものも混ざっている。冗談でも冗談にならないような研究が多い中、その冗談は死罪になっても言い訳できないものだ。



「そんなことより、これが試作二号機だ」


「小さくなったくらいであんまり差がないようだが?」



研究や発明においてそれを小型化するのはかなり努力と技術力を要することである。アンドレイはそんな地味だが重要な努力より新しいことを進めるほうが好きなタイプでありそれだけではないことは容易に想像がつく。



「お、お前持ってるの大福じゃないか、一つもらうぞ」


「まったく、忙しないやつだな」


アンドレイは大福をシガールから奪い去ると、早速試作機の中においた。


「フハハハハハ!!さあ大福よ、20分後にいってこい!!」


「食べるんじゃないのかよ!」


「よく見ろ、一口だけ食べたぞ」



確かに一口分大福が欠けていた。早業であるが、そこよりも試作一号機で10秒未来へ弾丸が向かったわけだが今度は20分らしい。たった1日でそこまで長くすることができるものなのだろうか。



「続きは20分後だな」


「食べられる状態ならな」



その後、具体的に予算の話をしながら20分間を待っていた。予算は12,000,000,000Eエメラである。Eは日本円にするならば1.4円相当になる。


「3、2、1、出てきたな?」


「大福は無事だろうか」


当然大福が食べられるかどうかを心配した。時間跳躍という未知の現象を経験した大福は本当に大福のままでいられるのだろうか。なにか有害物質に変わっている可能性も十分考えられる。



「ん?20分前と味かわらんし大丈夫だろ」


「お前ちゃんと調べてから食えよ!」



アンドレイがよくマッドな研究者だと言われる所以がこれだ。基本的に自分の研究に絶対の自信を持っており、失敗を恐れていない。


だが何度か過去に失敗したことがあり、片腕をふっとばされたこともあった。この国の医療はそれしき程度なら完治させることができるため本人は痛かったという感想以外持ち合わせてはいなかったがだいぶ危険な話である。



「そういうのを悲観的と言うんだぞ、俺はそんなことは絶対にしない」


「そういうのを楽観的って言うんだぞ、僕はそんなことは絶対にしない」



二人の声が重なった、概ね同じことを言っているのだが意味は正反対だ



「まったく、お前と話をしているとどうも流れがつかめん・・・」



シガールは呆れながら機械を眺めていた。方法や手順はともかく、たった一日でだいぶ進んでいる。この調子なら予算さえあれば何年、何千年飛ぶことができるかもしれない。



「さて、次はポテトも試してみるか」


「なぜ食べ物ばかりなんだ・・・・」



早速ポテトを用意しようと、勢いよくアンドレイが部屋を出て行く様子をシガールはただ呆然と眺めるのだった。




【Г1058/9/20】



約1ヶ月あまり立った頃、研究成果がどうなったのか気になり再びアンドレイの研究室に訪れた。研究室そのものはとくに変化はなかったが、機械は少し変わっていた。



「おー、シガールか」


「研究成果を見に来た。あれからなにか変化はあったか?」


「生物実験の段階まで来たんだが・・・」



珍しく苦渋に満ちた表情を浮かべていたアンドレイ。シガールは息を呑んだ。



「マウスを30日後へ転送したんだ、その結果なんだが」



アンドレイは写真を取り出してシガールに見せた。写真にはマウスらしきものが写っており、何かの圧力で潰されているようだった。



「圧力のようなものがかかっているように見える、つまりこの機械だけでは長期の転送は不可能ということだ」


「そこで、時間跳躍機の中に装置を一つ組み込んでみたんだ」



30日前に見た機械に確かに小型の乗り物のようなものがあった。俗に言うタイムマシンの乗り物タイプと言ったところだろうか?



「なるほど、これで何らかの圧力から中のものを保護するんだな?」


「それもあるが、30日を超える転送を行った場合、スーパーコンピュータを使っても座標の計算が難しくなるんだ」



惑星というのは常に同じ場所に存在しているわけではない。宇宙空間で惑星が所属する銀河ごと動いている。まったく同じ位置に存在していることがまずないため、転送先を座標を指定しないと見当違いの場所へタイムアウトするらしい。



「そこでこれを作った、これは現時点どこの座標にいるのかわかるように記録するためのものだ、時空アンカーとでも言うのかな」


「そこまで考えていたのか、意外と将来性も考慮しているんだな」



アンドレイは優秀だが、発明をしたらそれを改良したりせずに誰かに投げている。本人がずっと改良し続けているといえば、錬金術の物質製造機くらいなものだ。


ただ、当の本人は現時点で乗り気ではない。研究され尽くした技術には基本的に興味がないのである。



「そうだ、将来のことを考えてな、お前の論文にあった対消滅発電機・・・!」


「うん?」


「この研究室に収まるくらいにして配置してほしい」


「うん???」



アンドレイがシガールに頼み事をするのは非常に珍しいことだ。シガールは完全に上から目線で対応している。



「・・・・・オネガイシマス・・・・」


「しょぉーーーがないなぁ?アンドレイくぅん??お前もまだまだ万能ではないということがよーくわかったよぉ?」



完全に調子に乗ったシガールだが、アンドレイは冷静に聞いた。



「一週間くらいかかるかな・・・?」


「舐めるなよ、一日で十分だ」



そう自身に満ちた表情で言い切ったシガールは、早速予算や資材などを計算し始めた。アンドレイは明日作業が終わるまでなにか暇つぶしはないかと研究室を出た。



技研の外は軍事施設ではない。都市部ほど建物が多いわけではないが、民間企業の研究所のように街の中にある。アンドレイはこれといった趣味があるわけではないがたまにこうして散歩をすることで頭をリセットすることがある。



「みつけたぁぁぁあああああああ!!!!!」



ずいぶん遠いところから叫び声が聞こえた。よく見るとオレンジの長髪に白い七分袖のジャケットを着ている女の子だ。歳は16歳くらいだろうか、迷彩柄の長ズボンに、黒いTシャツとあまり女の子という姿には見えないが間違いなく女である。


何故なら



「兄!!今日ワーグナー家の大事な会合があるっていったでしょ!!」


「お、落ち着け!俺だって遊んでいたわけじゃない!」



彼女の名前はリナ・ワーグナー、アンドレイの妹である。ワーグナー公爵家はヴァストーク連邦王国の大貴族である。ただしヴァストークが連邦政府になってからは貴族は形骸化しており名ばかりとなっている。


特に剣術において右に出るところがないと言われており、ワーグナー流はヴァストークでもポピュラーな剣術になっている。そんな一家の娘であるリナは当然剣術は人一倍習得しており、なみの人間では太刀打ちできない。



「いいから!まだ間に合うから!!早く行くよ」


「まてまてまて、いくから!!わかったから!!」



唐突に赤い刀身の西洋風ロングソードのようなものを取り出したリナは問答無用でアンドレイに切りかかった。



「やめろ!しゃれにならねえって!」


「腕吹っ飛んだくらいじゃ死なないでしょ!」



マッドな研究者と言われているアンドレイも、妹の暴走にはたじたじになってしまうようだ。観念したのかワーグナー家に向かっていったのだった。



【Г1058/9/21】



先日アンドレイがどうなったのかは置いておいて、研究室には新たな装置が追加されていた。シガールは本当に1日で発電機を設置していったらしい。机の上には請求書のような紙が置いてある。



「副所長なんだから勝手に研究口座から抜いていけばいいじゃないか、面倒なやつめ」



独り言を呟きながら、電力問題を解決できたことに満足したアンドレイは、早速生物実験を続けた。30日という時間の問題なのか、電力不足で力場を失った影響で圧力に負けたのかまだ決着していなかったのである。



しかし、他称マッドな研究者であるアンドレイはこんなことを検証する気は全くない。自分の勘を信じて電力と圧力は特に関係なく、時間を長くすればするほど電力消費も圧力も高まると仮定付けて装置の大型化を進めることにした。



いよいよ時間跳躍機を大型装置にして大規模な実験を行うつもりらしい。




【Г1058/10/20】



たった一月で試作2号機を大型化し、さらに細かな改良と時空アンカーによる座標習得で転送先の座標計算を簡略化させたものを完成させた。時間跳躍機の試作段階から実験段階まで進化させたのである。



3つの輪は20mほどまで巨大になり、レベル5実験室には収まらないため国防軍内部にある兵器実験棟の中に場所を移した。セキュリティの問題を解決するために兵器実験棟を完全に貸切り、レベル5権限がないと入ることができないようにした。



ただし国防軍内部のため、軍上層部のセキュリティだけは少しだけ甘くせざるおえなかった。そこで、時間跳躍機そのものにある程度ロックをかけて代用した。アンドレイもレベル5の研究というのがいかに秘匿され重要なのかは理解している。



「へー、あにぃこれが新しい機械だね?すごーい!」



どこからともなく現れた声に、特に驚く様子もなかった。アンドレイにとっては見慣れた光景だったからだ。



「ナビ、またお前は事前に連絡もせずにセキュリティ無視してきたのか・・・」



困惑することもなく、少し嬉しそうに突然現れた人物の方を向いた。そこには赤紫色の短髪、紫色の水玉模様が右下の方に点々としたデザインの黒いパーカーにサイハイニーソの小柄な女の子が立っていた。紫色の瞳は、何やら少し嬉しそうにも見える。



彼女の名前はナビ・エルディア。シガールの妹でありアンドレイの妹ではない。だが彼女はアンドレイのことを「あにぃ」と呼んでいる。俗に言う幼馴染なのだが、彼女は「スキル」という特殊能力を持った人間「スキルクラフト」だ。彼女のスキルは「空間移動」簡単に言うと瞬間移動能力だ。



故に彼女にはセキュリティはほぼ無意味である。



「それで、これは何?」


「んー、本来であればレベル5研究員にしか語ることができない内容だが、それでも聞くか?」


「うん」


「ふふふ・・・知らんぞ・・・何があっても・・・」



「アンドレイ、その辺にしておけ」



後ろからまた声が聞こえた、今度は正規ルートでやってきたシガールだ。特に咎めるつもりで言ったわけではなく、アンドレイが調子に乗ると、とにかく話が長くなるので止めに来たのである。



「ナビ、お前こんなところで油を売ってるわけにもいかんだろ、仕事はどうしたんだ?」


「さっき片付けてきたから大丈夫だよお兄ちゃん?」


「そうか、それなら良いんだが・・・」



そんなほのぼのムードの中、突然アラームが鳴り響いた。国防軍はアラームの種類によって警告度が変わるが今回は領空侵犯のようだ。



<<<領空侵犯発生、ワープアウト直後の未確認飛行物体と確認済み>>>

<<<大至急空軍と海軍は対応されたし>>>



「ワープアウト直後ということはワープ難民なんじゃないの?」



アンドレイは特に危機感を感じていなかった。このヴァストークが存在する惑星の重力が特殊な力場を持ってるために宇宙空間で近辺にワープアウトしようとすると、なぜかヴァストークの領空付近あるいは領空に誤ってワープアウトすることが良くある。


ヴァストーク政府はこれを「ワープ難民」と呼んでおり、敵対勢力でない限りなるべく保護している。稀に海底にワープアウトしたりするため、発見すらできない時もあるので、その場合は発見できれば救助している。



「可能性は高いな、まあ俺らは軍人じゃないし結果だけあとで聞くとしよう。シガール、俺はもうちょっと時間跳躍機を調整するから作業を再開するよ」


「わかった、対消滅発電機の不具合があったら報告してくれ、論文段階だったからろくにデータもないんでな」


「了解、お前が書いた理論だから概ね問題はないと思うが心得ておく」


「お兄ちゃん、送って行こうか?」


「ん?ああ、それじゃあ頼もうかな。行き先は技研の僕の研究所で頼む」


「はーい」



二人は瞬く間にその場から消えた。エネルギー消費もろくにない瞬間移動は本当に便利なスキルだ。当然色々な制約は存在するが、隠密行動単純な移動手段としてはこれ以上ないものだとアンドレイも認識している。



「さて、それじゃあ早速生物実験、30日の時間の旅をやってもらうよマウスくん」



前回の失敗は繰り返さないために、時間跳躍機とは別に乗り物を製作していた。これが吉と出るか凶と出るかは30日後のお楽しみである。




【Г1058/11/20】



時間跳躍機の上に例の乗り物が出現した。30日の時間の旅をおえて戻ってきたのだ。もちろん飛んで行った当人にとっては一瞬の出来事であり30日を旅したなど当然感じていない。



恐る恐るロックを解除し、中をのぞいてみると、30日前の状態と全く同じだった。念のためにビデオカメラを設置して記録していたのだが写っていたのは扉を閉めて数秒後に扉を開けるアンドレイの姿だけだった。


どうやら成功したようだ。正真正銘30日という時間の流れをカットして未来に移動した事になる。アンドレイは電力消費と圧力の計算に入った。電力消費は計算したところ、1000年後まで跳躍した場合800京EU(1W=1EU)という途方も無い電力を消費することが判明した。



おそらく節電することはできないだろう、ヴァストークの蓄電池は100%蓄電可能で時間経過で電力が消費されることがない完璧な蓄電池だ。しかし、流石に800京EUという膨大な電力を蓄電することができる。蓄電池を作るとなるとかなりのサイズになってしまう。



また大きな施設が必要になった。とりあえず一年飛ばすことを念頭に再計算し300m2に収めることにした。



もう一つの問題だった圧力に関しては仮説が間違っていた。どうやら一定数の圧力以上はかからないらしい。


つまり別に乗り物を用意するという発想は完全に正しいものだったと言える。偶然とはいえ、アンドレイは喜びを隠しきれなかかった。



「フハハハハハ!!ついにやったぞ!!電力の問題さえ解決できればもう完成したも同然ではないか!!!」


「古代人め見ているか、お前らができなかった時間跳躍をついに成し遂げたぞ!!フハハハハハ!!!」



圧倒的なオーバーテクノロジーを有している古代技術。それのリバースエンジニアリングでこの国は成り立っていたわけだが、時間を制すという意味ではたしかに古代人を超えた。と言うことができる。



事実遺跡群の中に時間を移動する技術は存在しなかった。今までずっと古代技術しか見ていなかった上層部を少しは動かすことができるかもしれない。アンドレイはもう少しだけ実験を続け、ついに人間を時間跳躍させる実験を行うべく調整に入るのであった。

皆様初めまして、猪仲(旧HN万代)と申します。この度は初投稿の小説を見ていただきありがとうございます。この小説はニコニコ動画に投稿していた「レジスタンス」という動画作品を組み立て直して小説化した作品となります。


動画ばかり作っておりましたので、文字媒体に起こすのが非常に難しくまだまだ不慣れにではありますが、10月中にはレジスタンスは完結させたいと思っておりますので、これからも見ていただけると幸いです。


これからもよろしくお願いします。

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