第一話【転生】
形を持たない炎のような者の前に可愛らしい少女が頭を下げていた。
「申し訳ございません!」
ただその一言にはどれだけの意味が込められているのか。
そもそもここがどこなのかが分からない。
「私は・・・ここで人の子を観察して記録やその改竄を担う者です。今回は貴方の記録を誤った改竄により死亡してここにいるわけです」
炎のようなそれは魂が具現化したものでこの少女によって亡き者にされた。
本来ならばまだまだ生きているはずだったがこうして死んでしまった・・・ということだ。
「普通ならばこのようなことは起きる事はないので、私の責任でございます。なので謝罪という意味で貴方を転生させようと思います」
喋ることが出来ない魂はただそれを聞くことしか出来なかった。
拒否することも出来ない為に話はどんどん進んでいく。
「転生のおまけで貴方に追加特典的な物をしようとしたのですが・・・何かご希望はございますか?」
「・・・なるほど、何も要らないのですか」
魂から心を読んだのであろう少女は少し驚くようなものがあった。
今までこのようなことは何回かあったからか対応も慣れていた少女は基本的に大量の特典を要求されていた。
当然ながらそんなものを容易く授けられないが、この魂に関しては強い興味を持った。
今までにない無欲さで、何を求めているのか神である少女ですらそれは読み取れない。
「・・・転生の準備が終わりました。もう会うことは出来ませんが、強く生きてください」
そういうと少女は何かを唱えはじめて魂は光り輝きこの空間から消えた。
「ん・・・」
真っ白な空間から一気に様変わりした景色に気がつくとそこは廃れた町のような場所。
遠くを見ると大きな城が見える事が分かるとこの場所は貧民が住む所だと分かった。
「・・・スラム街・・・か」
転生させられた感覚は初めてではあったものの、新しい人生が歩めると分かると少し楽しみがあった。
前世が楽しくなかったといえば嘘になるがそれでもこの世界ほど思う存分は出来ない。
生まれてすぐではあるが少年・・・およそ6歳ぐらいで一先ずこの世界を楽しむことにした。
「・・・あの人がこの町に会うよう服にしたのか」
自分が着ている服はかなりみすぼらしく、スラム街ではちょうど良いものだった。
「名前は・・・どうしようか」
前世の名前は捨てるつもりだったため、この世界の名前を考えなければならなかった。
「・・・後で考えよう」
だがそんなことよりもまずはこの世界を見てみたかったため、歩きだす。
初めてだらけの経験があったものの、それは少年の新しい人生となりはじめた。