会議02
「村祭りを、開催しようと思っとる!」
いきなり大きな声を出され、ちょっと耳が痛い…じゃなくて、今、何と言った?
「村祭りじゃ、むーらーまーつーりー!
…ほら、この村が認定されてから、もう一年たとうとしておるじゃろ?ここまで頑張ってきたんじゃ、お祝いしたってバチは当たるまい。まあ、規模としてはかなり小さい、ささやかな物になってしまうじゃろうが…外の人間も呼びたいから、まず話しておこうかと思っての。」
「なるほど、それは確かに面白そうですね。でも、お祭りって何するつもりなんですか?」
「…開催してからのお楽しみじゃ。」
何も考えてないな、多分。
「なんじゃ、その顔は…メインだけはきーっちり決まっておるわい。」
「へぇ…何をやる予定なんです?」
この村初の一大イベントだ、つい期待してしまう。
「おぬしに任せた!」
…唖然とする、とはこういう事だったのだと身をもって知る。
何を言っているんだこのジジィは。
「そんな顔をするでない!これには、ちゃあんとした理由があるんじゃ。」
固まる私の心境を知ってか知らずか、村長は語り続ける。
「さっき、外部の人間も呼ぶといったじゃろ?そして、ここの顔役はおぬしじゃろ?…そういう事じゃ。」
…突っ込みきれねぇ。言いたいことは沢山あるはずなのに、上手くまとまらない。
ていうか、絶対考えるのが面倒なだけなのだろう。
「まあ、詳細は後日に追って沙汰を出す!ってことで、今日はお開きじゃ、お開き!」
そそくさと追い出されてしまい、結局断れなかった。こうなっては、後日断りに行っても聞いてくれないだろう。何と言うか、そういった類のオーラが出ていた。
外はすっかり日が傾いている。あれから少し考えてみたが、さっぱり案が思い浮かばない。
故郷でも村祭りはあったが、その頃は友人とはしゃぐのに夢中で、何のための祭りなのかさっぱり理解しておらず、参考になりそうにない。…考えていても仕方がない、後で同業の友人たちに手紙で他の町の祭りについて聞くとして、日常の業務をこなそう。
村中の街灯を灯して回る。この村の明かりは、火を使っておらず、星片石と言う魔力に反応して光る鉱石を使っている。割とどこにでもある鉱石で、村近くの洞窟からもとれる。それを住人のゴブリン達に食料と引き換えに取って来てもらったのだ。
不純物も多く、加工もしていない原石なので明るさは心もとないが、火事の心配がないというのが最大の強みだ。
例外的に、明るさが必要な村の入り口と見張り台のかがり火、それからオーク達は基本的に魔法を嫌うので、オークの集落は松明を使用している。
…黙々と作業をしていても、やはり祭りのことが頭をよぎる。とても困った事になったが、別に、祭自体が嫌なわけでは無い。村一丸となってやる祭…小さな非日常に、幼い頃は胸をときめかせたのだ。それは今でも変わっていない。頭痛の種は増えたが、楽しみもできた。ふと、思い立ち、石に願いながら魔力をこめてみる。
その淡い光はいつもより暖かに感じられた―――
―――いつか来るであろう非日常を夢見つつ、彼女は小さな明かりを灯していく。その姿がいつもよりやや軽やかなのを、輝きだした一番星だけが知っている―――