1-2【奇跡を呼ぶ召喚師】
城下町 『ミスラ』
「はぁ~この人の書く本。駄作ばかりになったって聞いてたけど ここまで落ちる?」
城下町と言っても、人は少なく、昼間であるのに物音ひとつしない。 そんな町だった。
そんな町に、一人の少女がベンチに座り、本を片手にぼやいていた。
「この人の書く本。 好きだったのにな~」
この町は敷地面積こそ大きいが、それに見合う人口ではない。 それには理由があった。
約一ヶ月前、この町に大規模な爆発が起きた。
その爆発の正体はとある一人の人間だったそうだ。 その人間が、なぜこの町にそんな爆発を仕掛けたのか。どうやって一人でそんな大がかりなことができたのか。その人間が 何を考えているのか。それらは一ヶ月たった今でもわかっていない。
「まぁでも…………そんなバカなことするヤツにロクなこと考えてるヤツはいないかぁ~」
いっそ。 私の目の前に現れてくれれば、私が懲らしめてあげるのに…………
そんな、自分でも戯言と思えるようなことを考えながら、なにもない空を見上げた。
なにもない。平凡。退屈。私はそれが嫌いだった。
この世界では、『能力』と呼ばれる超能力を使うことができる人間が、一握りではあるがいる。
普通そういう世界では、なにかしらの物語があるはずだ。
しかしそれは幻想の中だけ。 現実はそうではない。こんな世界でも、私は朝に起き、なんとなく生き、夜に寝る。その繰り返し。平凡すぎてつまらない。
『夢見がち』と言われればそうなのだろう。私は非現実的なことにひかれる。だから私は本を手に取る。
本の中では、この世界とは違い、同じぐらいの少年少女が戦い、冒険をしていき、仲間を集め、ラスボスを倒しに行き、世界を幾度となく救う。
こんな平凡で、戦いというよりは争いに近い薄汚い戦争しかできない世界はもう飽きた。
ドカン!!
突如、その爆音が耳を劈いた。
「爆音!?」
私は勢いよく飛び上がり、その音のする方へと急いだ。
「ぐぁ~ここはどこだ!!!!!!!!」
「だから落ち着けバーン!!」
そこには、二人のこどもが居た。
「ちょっとアンタたち!! なにやってるの!!」
「ん? なんだお前? リュウ、お前の知り合いか?」
「いや。 知らねぇな。」
この二人がさっきの爆発を? いや、でもこんなこどもが…………それにやったのは一人だったって言うし、違うか。
「あ~そこの二人。さっきこのあたりで爆発が起きなかった?」
「あ?それってこれのことか?」
片方のこどもは、こぶしを固く握り力を入れ始めた……………
いったい何? このガキ。手品でもやるつもり?
ボッ!!
音とともに少年のこぶしには炎がともった。
それを、少年は壁に向かって思い切りぶつけた。
「オラッ!!」
ドカン!!
少年が殴りつけた壁は、一瞬のうちに粉々に砕け散り、その時なった音は、まさしく先ほど聞いた爆発音そのものだった。
「爆発ってこれか?」
「え? ああ。そうよ。アンタだったの?一ヶ月前にこの町で大規模な爆発を起こしたの!!」
その少年の『力』を知り、私の口調が、少し荒くなった。
「ご、誤解だぜ。 第一、俺らはこの町に来たのは、ついさっきだしよ。」
「え? アンタたち、ここの住人じゃないの?」
「ああ。俺たち、旅してんだ。」
「え?」
私は、その言葉を理解するのに、しばし時間がかかった。
私の憧れが、今この場に、あっさりと姿を現した。
「旅って…………二人だけで?」
「二人じゃねぇ。四人だ。あと二人は、例の一ヶ月前のことについて、情報を集めてる。」
どちらしても、こんなこども四人で旅をするというのは、すごいことだ。
まさに、本の世界のような展開だった。 私は、自分の中の興奮を抑えることができなかった。
「ねぇ!!」
「!? なんだよ。いきなり。」
「びっくりした~」
二人はすごく驚いたようだが、私はそんなことに気がつかず、話を淡々ともちこんだ。
「私も手伝うから―――私も旅に連れてって!!」
私の言葉に、少し二人は戸惑っていた。
当たり前だろう。見ず知らずの人間から、いきなり一緒に生活してと言われたようなものだ。
二人は、少しの間互いの顔を見合わせた。
そして
「ああ。来いよ。一緒に。」
笑って私に手を差し伸べてくれた。
「で、そういえばなんで一ヶ月前の情報なんかを探してるの?」
「ああ。それは」
「俺たちがこの町に来た時。 腹減って死にそうになってるのを見て、助けてくれた老人がいてな。 恩返しだ。」
「見た目によらず結構丸いのね。」
「見た目によらずってなんだよ!!」
「フフッ。あ、そういえば、名前。聞いてなかったわね。」
「あ?ああ。俺の名前はバーンだ。」
赤髪の少年は『バーン』
「俺はリュウ。」
緑髪の子は『リュウ』
「二人ともすごい名前ね。私は『ミズキ』趣味は読書よ。よろしくね。」
この時、私たちは気づいていなかった。ずっと。見られていたのだ。そう。全て、『初めから』
「ほう。3人か。この者が私の脅威になるというのか?」
その男は、まさに玉座といえるほどの豪華な椅子に腰かけながら、頬杖をつき、大きな液晶モニターに映るバーンを指さしながら後ろの黒ずくめの男に問いかけた。
「いえ。そやつではなく、あちらです。」
その男は、玉座に座っている男とは違い、リュウを指さした。
「そうか…………それは楽しみだ。」と、その男は、まるで興味のないような顔をした。
「そう。じゃあアンタら、国にケンカ売っちゃったんだ。」
「ああ。天皇ぶん殴っちまった。」
「アハハ(笑)普通そこまでやる?」
この二人の、今までのいきさつは、どの本にも載っていないようなものだった。
私はこの二人の、このぶっ壊れたところにすごくひかれた。
「おい!!そこのお前ら。止まれ!!」
「ん?」
そこには、ここら一帯を取り仕切る警察達が行列をつくり、私たちの行く手をふさいでいた。
「お前ら。 国に欺いた重罪人だな。 所まで来てもらおうか。」
中心に立っているその男は、警察というより、そこらのチンピラという方が似合うような男だった。
片手にはタバコを 眼つきは獲物を狩る獣のような眼をしている。
「しゃあねぇな。」
バーンがそういい、仕方なくといった様子で手に炎をともした。
「私も加勢するわ。」
「え?お前戦えるのか?」
「ええ。私も『能力者』よ」
私は瞳を閉じ、ゆっくりと腕を前に突き出した。
「汝 鋼鉄の身体を持つ者。 その剛腕を見せるため 異界よりその姿を現せ!!」
私の足元には、私を囲む魔法陣と、その少し前に、それこそ城ひとつがたちそうなほどの大きな魔法陣が生まれた。
「ゴーレム!!」
その声をトリガーに、大きな魔法陣から鋼鉄でできた巨人が姿を現した。
「久しぶりですなぁ。 ミズキさん。」
「ええ。そうね。」
「今日はいったいどういう要件ですか?」
「戦闘よ。あの警察全員をやっつけっちゃって♪」
「わかりました……ッ!!」
ゴーレムが力を入れた瞬間。地面が割れ、そこに警官が何人も落ちていった。
一人を残して
「おお!!ミズキすげぇな!!」
「あの人数を一気に………」
二人が私の力に驚いている顔は少し面白い(笑)
だが、バーンの顔がすぐに真剣な顔に戻った。
「構えろお前ら。 来るぞ。」
「チッ………これだからこんなに連れてきたくなかったんだ。 てめぇら。そこ動くな。俺が全員ミンチにしてやるからよ。」
その男は、腰にさしていた二本の日本刀を取り出し、両腕で構えをとった。
その場の緊張により、私たちは息をしていなかった。
いや、息をしていないのは緊張によりではなかった。
目の前の景色が、赤一色に染まる。
速すぎて、太刀筋が全く見えなかったが、私たちは斬られたのだ。
全員が、この男に
瞬殺された