プロローグ
ここは……どこ?
私が目を覚ましたそこは、天井から床まで真っ白の。ある病室だった。
私はここで、今まで寝ていたようだな。
ガチャ
ドアノブの音が部屋中に響きわたる
誰かが入ってきたようだ。
「調子はどうだ?」
入ってきたのは、一人の青年だった。
「うん。大丈夫。」
私は、青年の質問にそう答えた。なにがどう大丈夫なのかは、自分自身でもよくわからないが、青年に心配をかけるわけにはいかない。
率直に言うと、私は間もなく死ぬ。これは避けることのできない『事実』。
ほかの言い方をすると、『運命』と言えるかもしれない。
私は、自分が死ぬ時間。死ぬ方法。死ぬ原因。それらすべてがわかる。
だから、「調子はどうだ?」という質問は、おそらく私の心を察してくれたからかけてくれた言葉なのだろう。
私は、死ぬのがコワい。
この入院期間。色々考えてしまった。死ぬというのは、痛いのか。死んだあとはどこに行くのか。身近なひとはどんな顔をするのか。意識はどうなのか。天国と地獄はあるのか。転生することができるのか。転生するとしたら、どんなものに転生するのか。
そう考えるうちに、死ぬことに抵抗があまりなかった私に、死ぬことに対する恐怖が植えつけられてしまった。昔は、自分で命を絶とうと思ったことすらあったというのに………
だが、私は死ななければならない。
それが世界のため。
それが この子のため。
私はこの子を産み、そこで死ぬ。
そう。あの時に決めたんだ…………