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魔法少女も愚痴りたい  作者: がらんどう
7/16

晩餐

    7 晩餐



 青い閃光。暗転。そして灰色の空。

 体の感覚がない。肺がひゅーひゅー鳴っている。眼の奥が熱い。

 ああ、なんだ、俺、死ぬのか?

 頭がまわらない、体も動かせない。何かが近づいてくる。

 ハム公?がらんどうの眼が俺を見つめる。

 そいつはどんどん俺に近づいてきて、徐々に消えていった。

 体が熱くなる。どくんどくんと俺の心臓が脈打つのを感じる。

 ああ、なんだ、俺、まだ生きてんのか?


     …………


 目が覚めると、灰色の空は真っ白なものに変わっていた。空?いや、天井だ。誰かが俺

の顔をのぞき込んだ。早苗さんだ。

 早苗さんはボロボロと泣きじゃくっている。わんわん子供のように。ポロポロと大粒の

涙が俺の頬に落ちてくる。ああ、ゴメンよ早苗さん。なんか俺、すげえ迷惑かけちゃった

みたいだな。

「サナエ。ドクターを呼んでくるよ」

 女性の声がした。誰だろう?聞いたことがあるようなないような?

 頭はひどくぼーっとしている。うまく事態が飲み込めない。何があったんだっけ?警備

のバイト、洋平、経帷子の口裂け女。赤い閃光。逃げて逃げて屋上。叫び声。ゴスロリの

女の子。そしてハム公。青い閃光。

 ああ、そうだ。青い閃光のあと、爆発が起きたんだっけ。そして俺の体は吹っ飛んで、

フェンスにおもいっきり叩きつけられたんだった。

 自分の骨が軋む音を聞いた。ビシリと砕ける音も。体の中が一気に熱くなって、内臓が

ぐちゃぐちゃになったのを感じた。

 ああ、これで俺死ぬんだって思ったんだっけ。

 でも、俺は生きている。頭はぼーっとするけども。体の感覚は?ある。ゆっくりと指先

を動かしてみる。動いた。足の指は?動いた。嘘だろ?あんだけダメージ喰らったてえの

に………。体を起こそうとすると、早苗さんが制した。そして俺をゆっくりと抱きしめて

またわんわん泣いた。

「えっぐ、ひっぐ。コーちゃん………気がついてよかっだぁ………よかっだぁ………」

 香水の匂い。ああ、ちょっときついかな?仕事先から飛んできてくれたのかな?ゴメン。

化粧も崩れちゃってて。こんなはずじゃあなかったんだけどなあ。すげえ迷惑をかけちっ

た。

 早苗さんの体温が伝わってくる。心臓の音も。ドクンドクン。俺の心臓の音も。ドクン

ドクン。

 ああ、俺、生きてるんだ。何故だかわからないけども。あんなに体中がボロボロだった

のに。何故?わからない。最後に見た風景。灰色の空。がらんどうの眼。ハム公?俺に体

を押し付けてゆっくりと消えていって、その途端、体が軽くなったんだっけ?

 まあいいや。

 とても眠い。すごく眠い。後のことは起きてから考えよう。また目が覚める保証?多分

ある。とにかくゆっくり、ただゆっくり、今はひたすら睡魔に身を任せたい。

 そして俺は、ゆっくりと目を閉じて、眠りに入った。


     ◆


 布施弘毅が運ばれた日向学園大学付属病院の正門前は喧騒に包まれていた。ビルの爆発

事故に巻き込まれた少年が担ぎ込まれたとの情報を仕入れたマスコミと、どこからともな

く騒動を嗅ぎつけた野次馬が人だかりを作り、それを、日向学園が契約している警備会社

の人間が諌め、事態を収束させようと躍起になっている。

 事態を把握し、捜査、収束を図るために駆けつけた市警察関係者も勿論その中にいたが、

警備会社の人間と揉めに揉め、辺り一帯は混乱に包まれていた。

「一体全体どういうことなんですか?」

 若い刑事が警察車両の助手席に座った年配の刑事に半ば突っかかるように聞いた。

「何故?警察が捜査に入れないんですか?さっきから、『入るな!』の一点張りで………

特に警備会社の人間の態度はなんなんですか!?一向にこちらの要求を聞く様子はありま

せんし………しかも銃器携帯許可を持っているなんて!普通の病院の警備レベルじゃああ

りませんよ!」

 語気を荒げる若い刑事に向かって、年配の刑事は、苦い顔をし、煙草をひとつ取り出し

て、火をつけた。ゆっくりと煙を吸い、ふうっと紫煙をくゆらせた後「吸うか?」と若い

刑事に勧めたが、拒否された。「あっそう」と言い、再び煙草の煙をくゆらせると、年配

の刑事は重い口を開いた。

「ーーーオメエは、まだ赴任して間もないから無理もねえか。オメエの疑問はよく分かる

さ。『何故警察がこんなにも介入できねえのか?』ってよ」灰皿には煙草がぎっしりと詰

まっている。それを見て、チッと舌打ちした後、トントンと、煙草の灰を窓の外に落とし

ながら続ける。「この地はよ、旧家の確執と因果で凝り固まっている。古参の〈遠野家〉

と新参の〈日向家〉だ。よく覚えとけ。このくそったれの病院はな、日向家が取り仕切っ

てる場だ。しかし、警備会社の人間は遠野家の息の掛かった連中だ。この地じゃあよぉ、

己たち市警察も介入できねえケースがあるんだよ。今回がそのケースだっつうわけだ。重

要参考人である被害者がこの病院ーーー日向のやつらの経営しているこの、なーーーに収

容された時点で、己達現場の人間にゃあ介入できねえのよ。」

「しかし、しかし………」

「急くな青年。気持ちはわかる。己も悔しい。しかし、どうにも動けねえ。これはそう云

うケースだ。背後にある大きな力が、お偉いさんの政治のパワーゲームが既に始まってい

る。舞台の幕は上がった。しかし、己達は既に舞台に立つことすら制止された。ーーー演

者にはなれない。哀しいかな、観客席で見守るしかねえのよ。観客が舞台に飛び入ったら

どうなる?〈排除〉だ。つまりはそういうことだ………」

 年配の刑事はそう語ると、若い刑事を見据えた。若い刑事は承服できないと言った表情

をしている。

「哀しいかな青年。正義ってのはよ、為されねばならないよな。しかし、己達にできるこ

とはもう何もないのも事実だ。命を大事にしろ。事を急ぐな。承服できずとも今は耐えろ。

忍耐だ。忍耐が必要だ。」

 と、無線が入った。年配の刑事がそれを受け、短いやり取りをした後、再び若い刑事に

向かって言う。

「ーーー ビルの方に向かった連中から連絡が入った。そっちもこの有様だ。既にカーテン

コールは鳴らされた後だった。俺達ができることは何もねえ。ーーー撤収だ。哀しいかな。

そういうことだ。」

 そう言って、年配の刑事は若い刑事に車に乗るように顎で促した。若い刑事は不承不承

ながらもそれに従い、運転席に乗り込み車を発進させた。

 病院の敷地内から出た後、年配の刑事が呟く。

「旧家同士のパワーゲーム。遠野と日向。両家の確執。おまけに尾張の大御所もな。

何にせよ、碌なもんじゃあねえだろうよ」そう言って、若い刑事に向かって続ける。「コ

ダイ。因習だ。この地にこびり着いたどうしようもねえ旧家同士の業が邪魔をしている。

この件は国警が、しかも公安が動く。つまりはそういうことだ。ますます、俺達の領分か

ら離れていくだろう。だが耐えろ。間隙に己の生き様を刻め。今は耐える時だ。今はな…

……」

 ピンっと煙草を指で弾く。煙草は車の窓から綺麗な放物線を描いて水たまりに落ち、ジ

ュウと音を立てて消えた。


     ◆


 あたりを包む深夜にそぐわない喧騒とは対照的に、日向学園内の来賓室は酷く静謐で、

緊張感に包まれていた。

「さて、こんな深夜に晩餐の招待を受けるとは、少々趣向の変わった事をなさいますな、

ヒナタマツリカ君?」

 遠野正臣が言った。

「深夜にご足労をお掛けして大変申し訳ありません。火急のお呼び出しではありますが、

できうる限りの歓待を。いささか奇異な時間ではありますが、晩餐の席を用意させて頂き

ました。お付きの方々の席もご用意しております。事が事だけに歓談とまでは行きませぬ

が。」

 そう言って、日向茉莉花は来客を招いた。まずは遠野正臣とボディーガードの多田聖人。

そして、荒神元夢だ。

「連れは外で待たせてある。何しろ大所帯であるからな。歓待の場にはそぐわぬ」

「お心遣い感謝いたします。」

 来賓室には先客が居た。日向茉莉花の姉である日向向日葵と日向月下香。日向茉莉花の

ボディーガードである平忠路と、秘書の伊坂裕太だ。

 それぞれ立ち上がり、会釈をし、午前三時に晩餐は始まった。

「既に、お耳に入っているとは思いますが」日向茉莉花が口を開いた。「今宵、深夜一時

頃、〈澱〉の処分に於いて不手際が発生致しました。まずはそのことについて私から謝罪

を。」

 そう言って、日向茉莉花は席をたち、深々と頭を下げた。

「不手際」遠野正臣が言う。「そのようなもので済むと良いのだがね?話に聞く所では、

結界の展開に問題があり、一般人を巻き込んだとのこと。」

「一般人に関しましては、日向の病院に収容しております。そちらの対処については、今

後、ご報告を随時………」

「一般人を巻き込むという禁忌。とんだ失態ですな。そちらの〈澱〉の管理システム自体

の欠陥を疑いざるを得ないとこちらは考えているのだがね?アラカミ様もそうお考えであ

るようですが?」

「いかにも。事は重大である。一般人を巻き込んだだけではなく、実体魔術を行使し、物

理損害を周囲に与えた。ーーー事態は我々魔術師の世界だけの問題だけではなく、一般世

界にも影響を与えている。官憲の動きを抑えるのも一苦労だ。特にミナトの娘なんぞ、せ

っついてきてな。あれは特殊犯罪などと称してこういった件に関して首をいささか突っ込

み過ぎる………いや、話がそれたな。一般の世のことであった。」

「いえ、ご尽力に感謝しております。私共も事態の収束に対して、手を尽くしていますが、

荒神様のお力があってこそ。感謝の極み………。」

「そう肩肘を張らずとも良い。私にとって、君たちは可愛い孫のようなものだよ。こちら

も出来うる限りのことはしよう。」

「しかし、荒神様。一般世界への影響と対処はともかく、結界の展開の不手際とその状態

での実体魔術の行使が与えた我々の世界への影響はそう少なくはありませぬぞ。私めの配

下が観測した情報では、〈世界の修正力〉が発動してもおかしくない規模の意識エネルギ

ーの偏向状況であったと聞き及んでおります。アラカミ様もお聞きになられたはず………」

「まるで、事が起こることを前もって知っていたかのような印象を受けますけれども?」

 日向向日葵が言った。

「如何に遠野家が魔術工学に長けた優秀な実行部隊を育成、保持、運用をしているとはい

え、この自体を偶然にも精緻に〈観測〉していたというのは腑に落ちませんわ。我々の管

理する地に対する侵犯行為があったとも推測出来ますが如何に?」

「侵犯行為などと。言いよるわ、小娘が。そもそも日向家の管理方法に瑕疵があるのでは

ないかね?それを補佐するために遠野家が協力していることをお忘れか。管理?長子であ

るにも関わらず、この末妹のマツリカにこの地の霊脈の管理をさせている分際でよくその

ような口を聞けたものだ。しかも馬鹿げたシステムの構築を許すなど………」

「〈魔法少女システム〉のことかね?」

 来賓室の扉の方から声がした。皆一斉に振り返る。

「イロハ………」

「遅れてすまんね、マツリカ。アラカミの翁も遠野のおじさまもごきげんよう。遅れて申

し訳ありません。少々立て込んでいたもので。使いもだせたのですがまあ、不向きな場で

すし。遅れを承知の上で直接参りました。」

 そう言って、真希いろはは着席し、続ける。

「私たちの構築した〈魔法少女システム〉に不満があるのはわかりますよ、トオノさん。

あなたの孫も、それに組み込まれてしまっているのだから。しかし、あの場で、事態を収

束できる方法はそれしかなかった。それはあなたも理解しているはずだ。それに、その発

端となった〈蝕〉を発生させたのは遠野の配下の〈紫煙〉の不手際じゃあなかったのか

ね?」

「不手際とな?アレは未だに原因は不明だ。協議会でもそう判断したではないか。ウチの

〈紫煙〉が関わっているなどとは言いがかりもいいところだ。むしろ事態の把握と収束に

向けて尽力していた。貴重な人材も失った。   布施啓介という逸材をな。うちの孫   

ハルカに関しては私達に委任してもらいたいとはかねがね思っているがね。君たちが、

〈魔法少女システム〉などというもののひな形を作ってさえ居なければ今すぐにでも私た

ちの統御下に………」

 そう言って、遠野正臣は日向茉莉花の方に目線を向けた。日向茉莉花は、冷静さを保と

うとしてるが、少し動揺が伺える。

「そう苛めるものではない。マサオミ。」荒神元夢が言った。「六年前の〈蝕〉による影

響を受けたのは君の孫や配下だけではない。皆それぞれ少なからぬ被害を受けたのだ。日

向家は当主を失った。才気あふれる、あの男をな。魔術師としては新参にも関わらず、ア

レだけの才気を持った男はそうは居なかった。故にこの地の管理を遠野家から日向家に託

したのだ。」

 荒神元夢にそう言われ、遠野正臣は眉をひそめつつも、おずおずと引き下がった。

「日向家に管理を託した以上、その管理方法に関して口出しをするのは野暮というものだ

よ。各々のやり方というものがある。個に干渉しないのは我々魔術師の不文律であること

は君もわかっているだろう。それに、若くして当主代理を務めているマツリカが可哀想で

はないか。」

「外部の魔術師を側近として組み入れることもですかね?」

 そう言って、遠野正臣は真希いろはに視線を向けた。

「そもそも、マツリカの特異な能力と君の入れ知恵によってできた児戯に等しいシステム

なのだ。それが日向のやり方であるし、うまくいっているのであるからと荒神様は眼を瞑

ってきたが、今回の様な失態があった以上は〈協議会〉を開廷する必要がある。如何に個

に対して不干渉の立場を貫くのが我々魔術師の不文律であろうと、今回の事象はそれを開

くに当たる相応の失態だと私は考えますがね?」

 そう言って、ちらと荒神元夢の方を見やると、荒神元夢は、うむとゆっくりうなずき、

言った。

「〈協議会〉の開廷は決定事項とする。審問対象は言わずもがなこの案件について。そし

て裁きの場に立つのは日向茉莉花。管理責任について問責を行う。しかし………」

 〈協議会〉において、審問をする際にはそれ相応の条件を必要とする。特に、彼ら魔術

師達の間で重要視されているのは証人だ。そもそも、個を大事にする魔術師の間では、他

の魔術師に裁かれるということを好まない。しかしながら、彼らのように霊脈を管理する

古い家系間に於いては、裁きの場を設けなければ事が進まない事がままあることも事実で

ある。〈協議会〉はそのために作られた審問の場なのだ。

 虚偽の審問が行われた際には、証人が裁かれる。被審問者が不当に裁かれるのを防ぐ目

的と、個に干渉する〈協議会〉を不必要に、不用意に開かないためのルールである。つま

るところ、物証よりも証言、いや、証人そのものが重視される。それが担保できなければ

事実上、協議会は開けない。それが、彼ら魔術師の家系に連なる者達の間で交わされてい

るルールなのだ。

「その点に関しましては」遠野正臣が言った。「私共がなんとか致しましょう。協議会を

開くに足る、審問に足るだけの証人の確保はおまかせを。」

「しゃあしゃあとまあ」真希いろはが言う。「遠野家は〈監視〉がお得意ですものねえ。

人の庭にも忍びこむのがお上手ということで?」

「人聞きが悪いですな。こちらは日向家の不手際と、不足している能力をお貸ししている

立場なのですがね?伊坂も平も元々は私の〈紫煙〉からの出向者だ。貴重な人材を日向の

ために割いておるのだ。それに、外部の魔術師という点では貴女も同じでは?」

 と、日向茉莉花が席を立ち、歩きながら言った。

「………証人に足る人物。〈協議会〉の開催をそこまで望まれる。そして可能であると判

断できるということは、遠野家には既に、〈証人〉を確保していると考えて構いません

ね?そしてその人物は………」

 日向茉莉花は、歩みを止め、その〈証人〉たる者に対して言った。

「伊坂裕太。あなたがその証人となるわけですね。」

 伊坂裕太は何も答えない。沈黙をもって返す。日向茉莉花は遠野正臣にも視線を投げか

ける。遠野正臣も何も答えない。表情も変えず、じっと見つめ返すのみだ。

 しばしの沈黙が、場を支配した。ピンと張り詰めた空気の中、荒神元夢が口を開いた。

「………この件に関しては後日、協議会にて明らかにしてもらおう。ここで話しても埒が

明かん。開廷時期は近々に。証人に関しては開廷まで不可侵とする。伊坂裕太。お前が証

人であれ、そうでないのであろうとな。マツリカ。お前は今現在、伊坂裕太の身柄を預っ

ているそうだな?それは解除し給え。彼が本当に証人であった場合に、不平等をもたらす

ことになるのでな。」

「不平等などと!」真希いろはが言った。「伊坂裕太が証人であり、遠野家がそれを仕組

んだというのは明白ではありませんか?」

「イロハ。状況証拠と推測だけでは何もできんよ。如何に君達がそう推測したとしても、

誰もそれを明示しない限りはな。」

 そう言われて、しぶしぶ真希いろはは引き下がった。そして、荒神元夢は続ける。

「遠野家、日向家両家ともそれで良いな?」

 荒神元夢の言葉に全員が頷いた。

「ではこれにて休戦だ。晩餐というにはちと遅すぎるが、まずはこの場を楽しもうではな

いか。夜は長い。協議会の開催までもまだまだ時間はあるのだからな。ほれ、ゲッカを見

習え、お前はいつも美味そうにものを食べる。実に気持ちが良いものだ。はっはっは。」

 そう言われて、全員の視線が日向月下香に向けられた。日向月下香は実に美味しそうに、

そしてマイペースに食事を楽しんでいた。その視線に気づくと、

「あらあら皆さんお顔が暗くってよ?せっかくのごちそうなんだから楽しまなくっちゃあ

ね?」

 そう言って、ただ一人周りの空気に感化されずパクパクと目の前のごちそうに食いつい

た。

「ゲッカの言うとおりだ。さあ、晩餐と行こうじゃあないか。」

 荒神元夢はそう言って笑い、各々に、食事を楽しむように促したが、誰も楽しむ胆力な

どあるはずもなかった。

 ただ一人、マイペースに食事を続けていた日向月下香を除いては。

「マツリカちゃん、後でシェフにレシピを聞いてもいいかしら?これ、とっても美味しい

わ。」

 ええ、ええ。あとでいくらでも。日向茉莉花はそう呆れ返ってぐいとワインを飲み干し

た。


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