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魔法少女も愚痴りたい  作者: がらんどう
13/16

バース・オブ・ザ・マギ

     13 バース・オブ・ザ・マギ



 あの事故から三ヶ月が経った。

 検査につぐ検査検査検査検査!でもう退屈になって飽きちゃうほどの時間が経った。

 アタシはなんとか動けるようになったのだけど、まだまだ全快には程遠い。体も鈍りき

っている。医者からは奇跡的な回復力だと言われたけれども。

「君、運がいいネ」

 だってさ。どっちかっつったら悪いってーの。病院に三ヶ月も入院しているか弱い乙女

にいう言葉かってーの。医者の言うことかってーの。

 驚異的な回復力。そりゃそうだ。だって、アタシが生きているのはハルカが起こしてく

れた〈奇跡〉のおかげなのだから。

(奇跡………か………)

 アタシはぼそっとそう呟いて、自分の右眼をさすった。時折この右眼が疼く。ぎちぎち

ぎちぎち。

 〈奇跡〉といえばこの右眼もそうなのかな?そういえば、あの時、爆発の後、アタシを

救ってくれた人は何者なんだろう………?目の前で自分の眼をえぐって、(思い返すたび

に寒気がするおぞましい光景だ、ああ、やだやだまた思い出しちゃった)アタシに押し付

けた。そしてそれは正常に機能している………。不思議で仕方がないし気味も悪い。うう

っ………。けれども、誰に言っても信じてくれないだろうし、考えてもきりがないのでそ

のことは棚上げしておくことにした。まあめんどくさいし。考えてもわからないことは考

えるだけ無駄無駄無駄無駄!やめやめやめやめ!

 とりあえずは、自分の体のことと、ハルカのことを考えなくっちゃあね。気味の悪いこ

の右目のことは頭の隅に追いやってしまえ。

 まだ長時間上手く歩けるまで回復していないそうなので、車椅子を使ってハルカの病室

まで面会に行く。いや、アタシとしてはもう十分歩けると思うし、リハビリもうまくいっ

てるし………なんだけど、まあ親も心配してるし、医者もそう言うから仕方がない。アタ

シの体の事はアタシが一番わかってるのになあ。ああでも右眼のことはわかんないや。

(ああ、またあの光景を思い出しちゃったああいやだいやだ………)それに、ハルカとの

面会時間は限られている。アタシが自由にホイホイ出入りできるというわけでもない。

 ハルカの体はアタシよりも軽傷だったそうだ。とはいえ、大重症だったアタシと比較し

ての話しなので、軽くはない。むしろ回復のスピードはアタシより遅いので、今ではアタ

シのほうが軽傷って感じだ。心配だなあ………。

 トントン、とノックの音がする。はーい。

「失礼します。こんにちは、タマキさん。」

「こんにちは。タダさん。いつもすみません〜。」

「いえいえ。お気になさらず。私の仕事でもありますから。」

 そう言って多田さんはニッコリと笑った。

 ハルカの病室に面会に行くときは、いつも車椅子を押してくれる。ありがたいことです。

 よいしょっと、車椅子に座る。多田さんがスイーッと車椅子を押してハルカの病室まで

一直線。レッツゴーペッツゴー!

 この人は多田聖人さんという人で、ハルカのお爺ちゃんのお付きの人だ。アタシとハル

カが入院してからは、なにかと身の回りのお世話をしてもらっている。アタシの方はつい

でなんだけどね。わざわざお手数をお掛けしてもうしわけありません。

 多田さんは、背が高くってすらっとしてるイケメンだ。まあ、アタシのタイプじゃあな

いけどね。いつもスーツ姿で何故か右手に白い手袋をしている。初めて会った時は(怪我

でもしているのかな?)って思ったのだけど、未だにつけたままだ。それが気になって気

になって仕方がない。数ヶ月たっても治らない怪我なんてそうそうあるもんじゃあないよ

ね?傷跡が目立つのかな?それを見られたくないのかな?でもでも、怪我は男の勲章だっ

て言うし、そう隠す理由なんて………?はっ!?もしかして刺青があったりとか………?

公共の場だと隠した方がいいし。そういえば、ハルカのお爺ちゃんは大きな旧家の人だっ

て言ってたっけ。お父さんは跡継ぎじゃあ無いから関係ないけどねって笑って話してたけ

ど。今こうしてハルカの世話役として人を遣わせるだけの余裕というかそういうことがで

きるのってすごくない?お付きの人だって聞いているけど、実際は秘書とかそういう事務

系なんかじゃあなく、こう………肉体労働系というか………ボディーガードなんじゃあな

い?だとしたら刺青があってもおかしくない世界の人だろうし………えええ………!?だ

ったらハルカのお爺ちゃんってどんな人なんだろう………?すごい有力者なんじゃあない

かな?裏社会にも力がある的な………うわあなんかすごいなあ………思い切って多田さん

に聞いてみる?それともハルカに聞いてみる?………いやいやいやいや、さすがにそれは

ない。余計なお世話だアタシ。

 そうこう考えているうちに、ハルカの病室に着いた。

 面会は数十分。三十分もないくらい。いつもアタシが一方的に喋ってばっかりな気がす

る。昔からそうだったけれども、もっとハルカの話も聞いてみたいなあ。でもやっぱりア

タシばっかり喋ってる。そしてハルカはいっつもニッコリ笑ってうなづいてくれるの。今

日もそんな感じであっという間に面会時間が終わってしまった。毎日面会できるってわけ

ではないから、すっごく寂しい。体の方はアタシ同様、驚異的な回復をしているって聞い

ているけど、原因不明の体調不良が続いているの。だからあまり無理はさせないようにっ

てことで、そうなっているのはわかっているんだけど………。

 原因不明、か………あの赤い光のせいかな………?でもアタシもそこにいたし………青

い光かな………?

    ハルカが私を守ってくれた光。アタシを守るために、不思議な力を使ったからそ

の反動で体調不良が続いているのかな………?

 そう思うと、胸が苦しい。アタシはあの時、何もできなかった。ただ、震えるだけで、

ハルカにしがみつくだけで………。そのことをハルカに謝ると、ハルカはううんと首を振

って、

「あの時、タマキは爆発からワタシを守ってくれたじゃあない。お礼を言うのはこっちだ

よ。ありがと。」

 と、逆にお礼を言われてしまった。

 ううん、あれはとっさのことだったし、結局アタシ達は吹き飛ばされてこのザマじゃな

い。アタシはハルカを守ってあげられなかったよ………。その言葉をぐっと飲み込んで、

アタシは力なく笑い返すことしかできなかった………。

 そんなアタシの顔を見て、ハルカは少し困った顔で笑って返した。ああ、ハルカにはア

タシの心の内もお見通しなんだろうなあ。気を使わせちゃってゴメン。でもね、少しだけ

でも顔が見られて、話ができて嬉しいよ、ハルカ。

 楽しい時間はすぐに終わって。名残惜しみながら病室に戻ると、女の人が居た。そうい

えば、心理カウンセリングを受けるように言われていたんだっけ。体のリハビリだけでな

くって心のリハビリも必要なんだって。アタシは全然大丈夫だと思うんだけど、大きな事

故だったから、そういうのも必要だって医者が言ってた。そう言えば、今日からだっけ。

きっとその人かな?

 白衣を翻して女の人が振り向く。

 その顔を見て、背筋がぞぞぞぞっとした。心臓もドクドク言って飛び上がってる。アタ

シの体も車椅子から少し飛び上がったよ。あの時、あの公園で、瀕死の私の前に立ってい

た女の人だった。

 あまりの衝撃に声が出ない。左眼に眼帯をしている。そうだ、あの時、あの人は自分の

眼をえぐってアタシに………。えっえっえっ?同じ人だよね?やっぱり?えっえっえっ?

 わけがわからなくなっているアタシに向かってその人は、

「こんにちは。ミカサタマキちゃん。君の心理カウンセリングを担当するマキイロハだ。

驚かせちゃったかな?ごめんね?」

 そう言って、ニッコリ笑った。そして、アタシをベッドに寝かせるよう、多田聖人さん

に促した。アタシはなんだか落ち着かないまま車椅子からベッドに移動した。多田さんが

お姫様抱っこしてくれる。あ、自分で移動できるけど、嬉しいです。はい。すると、マキ

イロハさんが、

「腕の調子はだいぶいいようだね?」

 と、多田さんに言った。

「いえいえ。大雑把な動きはともかく、まだ細かい作業はなかなか………指先がどうにも

………」

 そう言って、多田さんは右手の指先を動かして見せた。

「調整が良くないのかもね。また今度見てあげるよ。」

「よろしくお願いします。予定が合い次第ということで。」

 うん?なんだかよくわからないけれども、多田さんの右手って義手かなんかなのかな?

それで白い手袋をいつもしてたのか。でも硬い感じもしなかったし、ゴム?みたいなそん

な感じでもなかったけど………それに〈調整〉?あれ?マキイロハさんってカウンセリン

グの先生じゃあないの?多田さんの右手が義手だとしたら全然違う種類の仕事だよね?あ

れ?

 色々考えている内に、多田さんとマキイロハさんは話がついたらしく、

「済まないが、此処から先は私の領分だ。そろそろお暇願えるかね?」

 と言って、多田聖人さんを部屋から追い出した。

 部屋の中にはアタシとマキイロハさんだけ。なんだか緊張する。いや、緊張しないほう

がおかしい、っつーか、警戒に近いよ。だってこの人、絶対あの時の人だ。カウンセラ

ー?嘘でしょ?この人は一体何者なの?

 何から話せばいいものか全くわからない。うーん、うーん。

「さてっと」

 と、マキイロハさんが口を開いた。

「何から話したものかな?なかなかこう………うまい切り口が見つからなくてねえ。」

 それはアタシの方です!だってあの時の人でしょ?自分の眼をえぐりとってアタシの右

眼に押し付けて………。

 アタシは自分の右目を触った。ウズウズする。また思い出しちゃったよ!もう!ゾワゾ

ワするよ!

「そう、その眼の話からしようか。それはね、私の眼だったものだよ。今は君のもの。正

常に視えているかい?」

 はっはい、それはそれはとてもとても。不思議なくらいに、はい。ってものすっごくス

トレートに入ってきますね。遠回しとか無いんですか。直球ですか。マキイロハさんの眼

だって。やっぱそうですよね。状況的に。アタシの幻覚じゃあ無い限りは。 

「幻覚じゃあ無いよ。紛れも無い現実だ。そうか、なら良かった。ちゃんと定着化が進ん

でいるようだ。経過観察は医者のカルテを通して間接的にしかできなかったものだから心

配してたんだ。」

 定着?えっと?あのその、眼ってそんな簡単に移植できるものなんですか?普通、手術

しますよね?でもあの時はただ押し付けただけでなんか自分と融合していく感じでまるで

魔法みたいで………。

「そう!魔法!」

 そう言ってマキイロハさんは両手をパンっと合わせて鳴らした。

「鋭いね。いや、まあ魔法としか捉えられないよね。まあ実際そうなんだが………まあ魔

術って言ったほうがこっちとしてはしっくり来るんだけどね。」

 えーっと、あのその、何言ってるかわかんないんですが………?

「君の無くした右眼の代わりになっているのは〈魔眼〉でね、ちょいと普通の眼とは違う

んだ。だからこれから君は私の指導を受けてその魔眼をコントロールできるようにならな

いといけないんだなこれが。」

 〈魔眼〉………て………。おとぎ話の世界?あー………北欧神話のオーディーンとかそ

んなの?何言ってんのこの人?意味分かんない………でも、うん、あのとき不思議な体験

をしたのは事実で………あの赤い光景と気味の悪い人型の幽霊みたいなものもハルカの青

い光もアタシの見えなくなった右眼も………それにこの体だって、医者がびっくりするく

らいの回復力だって言ってるし………。

「信じられないのはわかるよ?そう簡単にこんな不思議なことが信じられるわけないって。

そんなの重々承知さ。でも事実だ。実際に君は不思議な体験をした。君の知っている知識。

科学なんかじゃあ説明がつかないことをね。君の体だってそうさ。」

 そう言って、マキイロハさんはアタシの心臓に人差し指を当てた。

「君の体はあの時既にぼろぼろでね。ハルカもそうだった。」

 ハルカ!ハルカのことも知ってるの!?

「ハルカのことは昔から知ってる。ちょっとした付き合いで直接的な知り合いではないけ

どね。話を元に戻そう。あの時、君とハルカの体は爆発に巻き込まれてボロボロだった。

普通ならそのまま死んでいた。」

 うん。それはそう思う。自分でもこれはもう駄目だなって思ったもん。真っ赤な空。ど

んどん元の青い空に戻っていって。でも、アタシの体はボロボロで、右眼は全く見えなく

て。ああアタシ、このまま死んでいくんだってすっごく悲しくなって………。あれ?なん

だか泣けてきちゃった。

「ああ、ああ、すまない。思い出したくないことを思い出させてしまったね。」

 そう言って、マキイロハさんはアタシをギュッと抱きしめた。グレープフルーツの香り

がする。何故だかわからないけど、アタシは火が着いたようにワンワンと泣き出してしま

った。嗚咽が漏れる。うまく、息が、できなくって。

「大丈夫。もう大丈夫だ。心配ないよ。君は私が守る。」

 マキイロハさんがあの時のハルカと同じ事を言うもんだから、余計に悲しくなって、な

んだか不思議な気持ちにもなって、またアタシはワンワンと泣き出してしまった。

 マキイロハさんは、そんなアタシを何も言わず抱きしめて、背中をずっとポンポン叩い

てアタシが泣き止むまでずっとそうしてくれていた。


     ………

 

 しばらくアタシはマキイロハさんに抱きしめられたまま泣いていた。すっかり涙も枯れ

果てて落ち着いた後、マキイロハさんはゆっくりとアタシに、色んなことを説明してくれ

た。あの時何が起きたのか?とても信じられないような内容だったけど。

 まず、真希いろはさんは魔術師だっていうこと。いきなりそんなこと言われてもピンと

来ないけど、信じる他ない。そういう世界があるっていうことを。そして、ハルカの家は、

魔術師の家系だってこと。

「とはいえ、ハルカの家ーーーハルカのお父さんは魔術師の世界とは無縁なんだけどね。

あそこの家は長子にしか魔術師であることを明かさないからね。」

 それでも、ハルカには魔術師としての才能があったらしく、それがあの事件をきっかけ

にして目覚めたということ。あの青い光は、それだったんだ………。

「君たちが巻き込まれた現象は我々魔術師の中では〈蝕〉と呼ばれていてね。なんて説明

すればいいかな………この世の因果律がでたらめになるって言うのかな?とにかく、異常

な事態だったんだ。そのただ中で君たちが生き残れたのはハルカの魔術能力の開花のおか

げだ。」

 そっか、やっぱりハルカが不思議な力で守ってくれてたんだ、ありがとう、ハルカ……

…。

「で、なんとか君たちは蝕をやり過ごしていたんだが、あの大爆発でね。君たちの体はボ

ロボロになってしまった。」

 そう、アタシ達は爆発に巻き込まれてピンクのたこ焼きドームが崩れて………そして吹

き飛ばされた。でも生きている。

「君とハルカの体にはこいつが融合していてね。ボロボロだった体の代わりになってい

る。」

 そう言った真希いろはさんの横にはいつの間にか変な生き物がいた。猫みたいだけど変

な顔をしている。人面猫?まあるい眼にハの字の眉毛にムの字のような口。「ハ、ム?」

思わず口に出してそう言ってしまった。

「ハム?ああ、こいつのことか。確かにまあそう見えるね。じゃあこれからこいつの名前

はハムということにしよう。」

 このハムという生き物は真希いろはさんが創った人工生命体だそうだ。よくわからない

けど、私とハルカのボロボロになった体の代わりをしてくれているそうだ。医者も驚きの

回復力ってのは実のところ、このハムがアタシ達の体の代わりになっているだけで、本当

の体の回復力自体は何ら変わってないらしい。

「体が回復するにつれ、ハムは徐々に出て行くよ。それまでの代わりだ。そこまではいい。

問題は………。」

 そう言って、アタシの右眼を差した。

「君に移植した〈魔眼〉とハルカの〈体調不良〉についてだ。」

 アタシに移植された〈魔眼〉というのは相当厄介なものらしい。真希いろはさんの眼な

んだけど、すごい力が込められていて、それをどうにか制御できるようにならないと、ア

タシの命に関わるとのことだ。

「あの時、君の体はハムの修復能力だけではどうにもならなくてね。咄嗟の判断で私の

〈魔眼〉を移植したんだ。これには生命力も込められているからね。一か八かだったんだ

が。まあなんとかうまくいったようだ。でも、今の君にとっては危険なものでもあってね。

例えるなら、運転免許もないのにいきなりレースカーに乗せられて運転しなきゃあならな

いっていう様な状況だ。」

 とてもわかりやすい例えだった。それは無茶ってもんだ。生き残ったはいいけれども、

そんなの事故るに決まってる。元気に回復してきたと思ってたけど、結構危うい状況なん

だな、アタシ。

「そして、もう一つ。ハルカのことだ。ハルカの体調不良は〈澱〉の影響だと思われる。」

 ハルカ。ハルカの体調不良の原因?〈澱〉ってなんなの?

「〈澱〉ってのはね、そうだな………〈悪いエネルギー〉だと思ってくれればいい。これ

はね、幽霊とか妖怪とか、そう言う類の形をして現れて、時折人に悪影響を与えたりする

ことがあるものだ。この土地には、〈霊脈〉と言うものがあってね。他の土地よりもその

エネルギーが多いんだ。そういうのを管理するのも魔術師の仕事だ。この土地は日向家が

管理している。私はその関係者だ。〈澱〉の対処もしている。ハルカは〈蝕〉をきっかけ

にして、その〈霊脈〉とつながってしまった。つまり、土地が持つ悪いエネルギーの影響

がそのまま彼女の体調に現れてしまっているんだ。」

 なんだかよくわからない言葉ばかりでわけがわからないよ。とりあえず、難しいことは

どうでもいいから、ハルカのことを。どうすればハルカは元気になるの?その〈澱〉って

のをどうにかすればいいの?

「そうだね。今のところはハルカに影響を与えている〈澱〉を   正確には顕在化した

〈澱〉を退治することでなんとか症状を緩和できるといった感じだね。」

 緩和?完全には治らないってこと?

「そうだね。いまのところは。根治の方法は私がなんとかして見つける。それは約束する。

〈澱〉を退治することは対処療法にすぎないんだが何もしないよりはマシだ。ハルカの症

状の根治のための方法を探る手がかりが見つかるかもしれないし、時間も稼げる。そこで

提案がある。」

 そう言うと、真希いろはさんは、少し間をおいて、

「〈魔法少女〉にならないかい?」

 私にそう提案した。何言ってんの?ふざけてるの?

「ふざけてなんかいないさ。真面目も真面目、大真面目な話さ。」

 真希いろはさんが言うには、アタシがその〈魔法少女〉になることで、目下の問題がと

りあえず解決の方向に向かうとのことだ。アタシが〈魔法少女〉になって〈澱〉を退治す

れば、ハルカの体調不良も楽にさせてあげられるし、アタシの〈魔眼〉の制御方法も同時

に学べるから有意義だとのことだ。

 正直、そんなこといきなり言われても困る。突然、そんな、突飛なお伽話の世界の話を

されてもってのがある。でも………、アタシはともかく、ハルカの体調が少しでも良くな

るなら………。考える時間が欲しかったけど、ハルカの体調のことを考えると、早く決断

しないと大変なことになるような気がする………。

 ーーーええい、ままよ。即断するしか無い。

「ーーーわかりました。アタシ。〈魔法少女〉になります。そのかわり………」

「ああ。ハルカの治療方法は私が必ず見つける。   約束だ。」


 ーーーこうして、アタシは魔術師と契約して〈魔法少女〉となった。


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