6話
蓋を開けると中には、直径10cmほどの水晶玉が入っていた。
「水晶?これに何の意味が?」
水晶を持ち上げてみるが、何か起こる様子もない。
これ以上この小さな遺跡に調べるところがあるとは思えない。とりあえず水晶を布袋の中に入れ何を聞かれるか分からんが、ギルドに戻るか。
ギルドに戻ると、まだ時間的には3時ぐらいと早いこともあり、ちらほらと冒険者らしい姿が丸テーブルに見えるがまだ少ないと思う。
受付嬢は皆クエストを受けた時の人たちだったので、さっきと同じ人間の女性の所へ近づく。
「お疲れ様です。
無事にクエストを完了されたようで。」
「まぁ、一応な」
クエストがよく分からないだけに、曖昧な返事になってしまう。
「それでは、質疑応答をさせて頂きますがよろしいですね?」
どんな質問が来るか分からないが、ここまで来た以上できることしよう。
「では、質問です。
遺跡の中へは入れましたか?」
「あぁ、急に扉が光ったかと思ったら文字らしき物が刻まれて扉が開いたぞ。中には、また扉があったが」
(日本語がこの世界にあるのか分からない以上、余計な事は言わない方が良いな)
「それは、古代文字です。今まで色々な学者が研究しています。
2つ目の質問ですが、その扉ですが開きましたか?」
!!なるほど、そういうことか。
「イヤ、光ったのは同じだったが開かなかった。」
「やはり、そうですか。あの遺跡は小さいですが、未踏破遺跡なんです」
未踏破?
「古代文字の研究からすべての解析が出来ていませんが、一人で扉の前で開くことは確認されています。しかし、それ以上先に進んだ者は居らず古代文字の研究もここしばらく進んでいません。」
やはり、そうか。あの文字を見る限り、第一の扉は一人で立つだけで通過できるが、次の扉は明らかに文字を理解し答えなければならない。
日本語がこの世界で完全に読める者がいない以上、あの扉は開かない。
だから、試験と称して危険が少ない遺跡へと向かわせ、一種の研究材料にしているのだろう。
(異世界生活1日目で目立ちたくはない。)
布袋に入っている水晶のことを気にしながら、何でもないかのように話しを聞いていく。
「何はともあれ、クエスト成功です!
ギルドへの登録をしていきます、よろしいですね?」
(俺の異世界での人生はここからだ)
覚悟を胸に頷く。