2話
俺は今、冒険者ギルド…ではなく門をくぐってすぐの大通りの前で立ち尽くしている。
理由は、通りを歩く人を見たからだ。
通りには、髪の色が赤やら緑やらのファンシーな色が目立つがそれがまだ人間ならばまだ問題ない。
が、中には明らかに人間じゃねぇだろと思う姿をした人?が歩いているのだ。
人間に犬や猫のしっぽと耳(ピコピコ動いている!!)が生えていたり、耳が長い美形がいたり、鷲のような顔で背中には翼があるが体は人間なんてものもいた。
「日本どころか、地球ですらねぇじゃねぇか!!」
突然大通りで大声で叫ぶ俺を、ジロジロ見てくる輩もいたが大抵は見て見ぬふりである。
日本のように無関心なようではなく、これはあれだ不審者に対する対応だ(実際、母親が自分の子に「見てはいけません!!」と言っている)。
状況を、理解した俺はそそくさとそこから離れる。
「それにしても、まいった。
外国でもなく、異世界とは。だが、これはこれでおもしろそうだ」
俺は、ニヤニヤしながら歩いていた。まるっきり不審者である(今度は猫耳が生えた母親が子に「目を合わせるんじゃありません!!」と言っているのが聞こえてくる)。
…俺は、黙って歩く速度を速めた。
大通りを歩いていると様々な人とすれ違う、どれも地球では見ることの出来ないものだ。
俺は、年甲斐もなくワクワクしてしまっているのを自覚していた。
小学生から、マンガを読んでいたし異世界というものにも憧れた。
そんなものはないと諦め、落ち込んだこともあった。しかし、俺は今こうして異世界にいる。
もちろん地球に心残りがないかといえば、もちろんあるが帰り方が分からない以上俺はこの世界を楽しむつもりだ。
そのついでに帰り方でも探そう。
「楽しむにしても、まずは先立つものが必要だな。」
そう言って、俺はある建物の前で立ち止まり見上げる。そこには、盾の前に二本の剣がクロスしている看板がかかっていた。下には、ギルドと書かれている。
もちろん日本語の訳がなく、知らない言葉や文字が理解できるようになっていたのだ。おそらく書く分にも支障はないように感じる。
「これが、異世界補正というものか?」
俺は、ギガの言うとおり短剣を腰に差す。
今の今までいきなりの異世界説のせいで忘れていたのだ。
ここが地球でない以上、治安そこまで良くないだろうしギガの言葉を思い出すと外も何かと危険がありそうである。
「すぅ~、はぁ~」
深呼吸をして、ワクワクして緩んでいた気合を戻す。
「(ここは異世界!今までの守られていた世界とは違う。
知り合いもいないここで頼れるのは、自分だけ。
自分の身は、自分で守る!)」
俺はその想いを胸に、ギルドの扉に手をかけた。