12話
この世界で目覚めてギルドに登録した、あの日から一週間が経過した。因みにこの世界での一週間も7日である。
地球と同じように曜日が存在し、炎の日,水の日,土の日,風の日,光の日,闇の日,無の日となっている。無の日があるということは、それらは魔法と同じだろう。
この一週間で俺は、この世界のことや俺の力のことについて調べられるだけ調べていた。力については、ギルドのクエストを受け金を稼ぎながら調べていたが、この世界に関する知識は面と向かって調べて怪しまれる訳にもいかないため、人の会話を聞いたりすることで情報を集めていた。
「それでも分かったことは少ない。
この町が、ノクワールという国の西にあるということさらに西には遺跡しかなく、東にノクワール王国城下町が、南には港町が、俺が超えてきた北側には目覚めた時後方にあった森や山を越えることでガマスク大国が存在するらしいが、それぞれの国に関することは調べられなかった。
あとは、この世界の通貨がtemということぐらいだ。」
さらに魔法のことは全くと言っても良いぐらい知識はゼロだし、一週間ギルドでクエストを受け続けたにも関わらず、お金は全く溜まっていない。
というのも、俺が受けた依頼が森での薬草採取だったり、町での雑用だったりで、薬草採取の時はクエストで半銀貨1枚に森で捕えた獲物を売って半銀貨2~3枚、雑用依頼は一日に複数受けて半銀貨3~4枚になる。
つまり、その日の宿代でほぼ使い切ってしまうのだ。
だから俺は、新たな一歩を踏み込むためにギルドへと赴いた。
この一週間で見慣れてしまった冒険者でごった返すギルドの中を歩き、受付の両横にあるクエスト板の内、左側へと近づいていく。
これは、あの後で知ったことなのだが左が赤以下のクエストになり、右が黒以上のクエストになっている。といっても、この町で黒以上のクエストはなく、あるのは世界中のギルドに配布されている特別クエストのみである。
俺は、クエスト板に貼ってある依頼書を眺めその中から1枚剥ぎ取り、受付へと持っていく。
「この依頼を頼む。」
「相変わらず、君は誰でも構わないんだね。」
俺は依頼書とギルドカードを受付嬢へと渡す。猫の獣人の受付嬢へと。
彼女の名前は、ケシル。初めて依頼を受ける際、人間の受付嬢の所には冒険者が列を成していたので、彼女の所へと依頼書を渡したのだ。
その時は、大変驚かれた。基本獣人族は、差別の対象になっており、特に人間族はその傾向が強く獣人族の冒険者は獣人の受付嬢へ、人間族の冒険者は人間族の受付嬢へと頼むのが主流である。
初日に、人間族の女性が対応したのもその理由である。
ケシルは俺が出した依頼書を見て、少し意外そうな顔をした。
「へぇ~、今まで黄色ランクの森の採取クエストしか受けてなかったのに、緑ランクの東の荒野にてグリーンウルフの討伐の依頼を受けるなんて。
確かに、ランクによる依頼の規制はないけど危険だよ?」
彼女は、種族にこだわらない俺の考え方が気に入ったのか、最初は敬語を使っていたのに今では友達感覚である。だが、
「大丈夫だ、なんとかなるさ」
「もう!そんな適当なこと言って、怪我してもしらないからね。」
そう言うと、ケシルは依頼書に向けてカードをかざす。
「はい、承認しました。幸運を祈ります。」
カードを投げるように渡してきた。
彼女が今したのは、カードへと依頼を登録したのである。
カードを懐へとしまいながら、彼女に背を向ける。外へと出て、東の門へと向かいながら頭を掻く。
(怒らせちまったな。)
帰ってきたら、どうやってご機嫌を取ろうか考えながら。