8-11
「女子準決勝、第2試合。白、2年A組、横関歩美。青、1年A組、時実未来。前へ」
大柳校長の掛け声で、ミクと一緒にバトルスペースに上がってきたのは……。
ドスッ、ドスッ、ドスン……と、体育館に地響きと軽い揺れが起こり、天井に吊るしてあるライトが微妙に動く。
しかしこれは地震じゃない。ミクと対戦する横関の足音だ。
ミクが3人くらい重なったような体型。よく入る防具服があったなぁ。
バトルスペースに立つが、靴だけでも30cmあるので、一歩動いただけではみ出しそうな横関あゆみだ。
「両者、礼!」
「「よろしくお願いします」」「キャッ!?」
ミクと横関が互いに頭を下げた時、バトルスペース上に異変が起こった。
横関が頭を下げた時の風圧がミクの体を襲う。体重の軽いミクはその風で体がよろけた。
幸い上半身が傾いただけで済んだが、そのまま飛ばされてバトルスペースから足が出たら即失格になってしまう。
「「未来さん、しっかり!」」「「時実さん、ファイト!!」」
「ミクちゃんが珍しくよろけたね」
「あぁ、でも大丈夫だろ?」
フラッと動いたミクの姿に、観客席にいる男子生徒達から悲鳴のような声が飛ぶ。
見た目はか弱い美少女に見えるが、柔道3段の猛者だからな。心配ないと思う。
ミクが体勢を直すのを確認した大柳校長が右手を肩より上に上げた。
「それでは両者セット!……RPS GO!」
その言葉にミクと横関の右手が動いた!
ミクの出した手、グー。横関の出した手、パー。白、横関の攻撃権。
白、横関の電光掲示板に「Attack」と点灯される
その瞬間、横関の左手がミクの顔面に飛んでくる!
女性とは思えないグローブのような大きい手は、ミクの顔よりデカイ。
しかしミクは右腕を素早く上げて、そのグローブのような手を受け止めた!
「よし、よく抑えた!」
「いや、ユウ、待て!」
トモの言葉で、ミクをよく見ると、体が左にスライドしていく!
そう、横関の攻撃を受け止めたが、横関の左手はそのままミクの体をバトルスペース外に押し出そうとしていた。
ズズズズズーッ……と、ミクの両足がずれる。
「ハアァァァッ!」
ミクは大きな声を出し気合を入れると、足を踏ん張る。――ピタッ。
後、数センチでバトルスペースから足が出るところで、何とか踏み止まった。
その瞬間白、横関の電光掲示板の「Attack」が消え、青、ミクの電光掲示板に「Defense」と点灯された。
「デフェンス。両者リプレイ」
大柳校長のコールでミクの防御が認められた。今の危なかったなぁー!
しかし、立ち位置や体勢を直すミクに対して、横関は微動だにしていない。
「両者セット!……RPS GO!」
大柳校長の声で、再びミクと横関の右手が動く。
ミクの出した手、グー。横関の出した手、キョキ。ミクの攻撃権だ!
青、ミクの電光掲示板に「Attack」と点灯される前に、ミクの左手が横関に迫る!
「はぁぁぁっ!」
ミクの素早い攻撃が横関の目の前にきたが――
「えっ!?」 「はぁっ!?」 「なっ!?」
その瞬間、ミク、トモ、俺は、驚愕の声が出た。
な、何と、横関のグローブのような手がミクの左拳を包み込むように、しっかり握っていた。
「横関先輩の素早さ、半端じゃない」
「あぁ、見た目はどすこいだが、すごい動きだ」
その瞬間、青、ミクの電光掲示板の「Attack」が消えた。そして、白、横関の電光掲示板に「Defense」と点灯された。
「デフェンス。両者リプレイ」
ミクにとっては辛いコールが大柳校長から告げられた。